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2004年12月31日

PNAS 12/28

"Lentivirus-based genetic manipulations of cortical neurons and their optical and electrophysiological monitoring in vivo" PNAS 101: 18206-18211; Tanjew Dittgen, Axel Nimmerjahn, Shoji Komai, Pawel Licznerski, Jack Waters, Troy W. Margrie, Fritjof Helmchen, Winfried Denk, Michael Brecht, and Pavel Osten [EndNote format]
Lentivirusを使ってin vivoで一個のニューロンレベルでgene scilencingとかやってる仕事。Pavel Osten@Max Planck Instituteは以前岡崎にトークしにきたことがあって("Single cell genetics: a novel approach to study experience-dependent plasticity in vivo")そのときの話を聞いて私も遅ればせながらRNAiあたりを勉強したのだけれど、その話がやっと論文になって出てきたということらしい。トークの内容からすると仕事の進み具合はまだまだ途中段階だけど非常に面白い、という感じだったのだけれど。Communicated by Bert Sakmann@Max Planck Institute、ということでぶっちゃけ身内ですな。NatureかScience蹴られたか。
ちなみに今年のSFNで"Novel Approaches to Monitor and Manipulate Single Neurons In Vivo"ということでやったシンポジウムのレポートがJNSにあり:"Novel Approaches to Monitor and Manipulate Single Neurons In Vivo" J. Neurosci. 24: 9223-9227 Michael Brecht, Michale S. Fee, Olga Garaschuk, Fritjof Helmchen, Troy W. Margrie, Karel Svoboda, and Pavel Osten [EndNote format] わたしはべつのシンポジウムに行っていたので参加できませんでしたけど。
あと、LentivirusではなくてSindbis virusを使った話はすでにpublishされています。Methodologyのpaperですな:
"Sindbis vector SINrep(nsP2S726): a tool for rapid heterologous expression with attenuated cytotoxicity in neurons" Journal of Neuroscience Methods, Volume 133, Issues 1-2, 15 February 2004, Pages 81-90. Jinhyun Kim, Tanjew Dittgen, Axel Nimmerjahn, Jack Waters, Verena Pawlak, Fritjof Helmchen, Sondra Schlesinger, Peter H. Seeburg and Pavel Osten


2004年12月30日

カテゴリー別保管庫=おすすめスレッドリスト

これまでのエントリをサブカテゴリでまとめて読めるようにしました。随時更新されてゆきます。最新のものはreadmeページで読めるようにしてあります。
  • Paper[314]
    • Carpenter's LATER model[6] 一般に行動の反応潜時は逆数を取ると正規分布する。これをニューロン集団が表象する意思決定シグナルが時間とともに蓄積して閾値に達するというモデルにおいて蓄積速度が正規分布する、というLATER modelをCarpenterは作り、説明をしようとした。
    • Episodic-like memory[6] エンデル・タルヴィングの最新の定義によれば、エピソード記憶とは過去の出来事に自分の身をおいて追体験する"mental time travel"である。意識の存在を実証できない動物において、そのようなmental time travelは可能か、もしくはそれのアナログとなるものは存在しうるか。
    • Glimcher '04 Neuron 神経経済学[16] 被験者対コンピュータでナッシュ均衡になるようなゲームをしているときの神経活動を記録すると、大脳皮質頭頂連合野LIPは選択肢の期待効用の比を表象していると著者は言うのだが…
    • Newsome '04 Science 選択行動[9] ある選択肢のどちらを選ぶかを決めるときに、人間や他の動物はその選択肢の持つ価値(expected value)によって選択する確率を変化させる。大脳皮質頭頂連合野のLIPニューロンはそのようなexpected valueの比をローカルな時間スケールで計算したものを表象していると言う。
    • Two-photon in vivo imaging[3] ニューロンの活動を電極でひとつずつ記録してゆく"single-unit recording"と、脳全体の活動を見ることはできるけれども個々のニューロンの動態はわからない機能イメージング(fMRIなど)、この両者が抱える限界を克服するために個々のニューロンの活動を広い範囲から光学的に同時に記録する方法論が発展してきている。
    • ガヤScience article論文[14] 池谷裕二君がRafael Yusteのところに留学して行った仕事。大脳皮質の切片上で自発的に活動するニューロンの活動パターンはまったくのランダムというわけではない。正確に同じ発火パターンを繰り返す"repeating sequence"がある。
    • 伝染するあくび[4] あくびはうつると言うけれどもこれは「共感」などの高次な機能が備わっていることで可能な現象で、小さい子供ではあくびはうつらない。今回、霊長研の松沢先生がチンパンジーのアイちゃんはあくびがうつることを発見した。
  • 脳科学メモ[126]
    • Chronostasis[2] 時計の秒針に目をやった瞬間、秒針がとまったように見えることがある。これがChronostasisだ。人間は目を動かしている途中には視覚情報が入ってこないように情報をシャットアウトしている。そしてシャットアウトされている期間、人間の脳は目を動かす直前まで時間を巻き戻しているのだ。
    • Goodale and Milner[6] "The visual brain in action"において、視覚腹側路がperceptionを、視覚背側路がactionに関わる視覚処理を、というように分けて考えることを提唱したために論争が起こっている。その根拠となったvisual agnosiaおよびoptic ataxiaの症例をよく読みこんで検討する必要がある。
    • オートポイエーシス[7] 人間が世界を見るとき、一人称の世界から環境と関係するといったある種閉じた状況としてしか捉えることができない。脳を明らかにすることで人間の心を明らかに使用とするときに見えてくる三人称的世界と一人称的世界とのギャップの問題を、あくまでシステムの中から見る立場を徹底することで克服しようと試みた体系がオートポイエーシス。だが、当時発展しつつあった自己組織化の概念と混ざりあってしまったために定式化の問題を抱えてしまった。そのエッセンスをなんらかの形で継承していくことができないか考えつづけている。
    • クオリアについての「心の哲学」[9] Qualia-MLで村上/felineさんとともにStanford Encyclopedia of PhilosophyのQualiaの項目を読みながらあれこれと議論した記録。広義のクオリア、知識論法、逆転スペクトル、逆転地球、などの基礎的な事項がおさえられてます。
    • 内部モデル、遠心性コピー、アフォーダンス[9] リゾラッティらが前運動野で発見した「ミラーニューロン」は「自分の行動遂行」と「他者の行動の観察」とでinvariantに活動するニューロンだが、これは頭頂連合野や上側側頭溝などとネットワークを作っている。Arbibがこのシステムをアフォーダンスと結びつけようと考えているが、少なくともオリジナルのJJギブソンによるアフォーダンス理論と脳科学とは食い合わせが悪いはずだ。
    • 大学院講義「記憶の脳内機構」[24] 大学院講義「記憶の脳内機構」の準備のために記憶障害の患者さんの症例研究に基づいて宣言的記憶と非宣言的記憶との分類、エピソード記憶と意味記憶との分類について最新の知見までフォローする。
    • 第一次運動野は何をコードしているか[2] 第一次運動野は何をコードしているか、という基本的なことですら現在でも論争が続いているが、StrickとScottの仕事でほぼ決着はついたといえる。Grazianoの仕事はそれに新しい切り口を付け加えたといえるが、microstimulationの特殊性と限界とを踏まえる必要がある。

引越しほぼ完了しました

これから更新はこちらのさくらインターネットのほうで行います。書き込みもこちらでお願いします。
http://pooneil.sakura.ne.jp/ pooneilの脳科学論文コメント日誌
アンテナやブックマーク使用の方、新しいサイトのほうの登録をしていただけるとありがたいです。お手数かけて申し訳ありません。
皆様の書き込みもこちらに移動させました。コメントの移動に関して問題のある方は申し出てください。すぐに対処します。
はてなとniftyはしばらくおいておきますが、そのうち消します。これまでどうもありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
早急に直さなければならないこと:

  • コメントの改行がなくなっているのを直す
  • 個別のアーカイブページで前後のエントリーに移動しようとすると前後の日の一番目のエントリにだけリンクがつく
  • トラックバックできるようにする
  • はてな上にある画像ファイルの移動
  • mimetexを使った数学記号の移動

こんなかんじですが、とりあえずは動いてます。書き込みも時間が多少かかりますので気長にお待ちください。

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# kami

新サイトへの移転おめでとうございます。当サイトでも、新アドレスにてリンクさせていただきました。よろしく御願いします。
自らサイト・CMSを立ち上げてブログ管理というのも大変でしょうが、手のかかる子ほど愛着が沸いてくるものだと思います。色々と新機能を期待しています!

# pooneil

さっそくのコメントありがとうございます。あまり手をかけずに済むようにだいたいの原型を作り上げた、といったところです。何ができるか少しずつ模索していくつもりですが、まずは引越しで失ったものを少しずつ取り戻してゆくつもりです。これからもよろしくお願いします。


2004年12月29日

さくらインターネット

でmovable typeで構築したサイトに引っ越すことにしました。というか年賀状にさくらインターネットのURLを入れてしまったもので。けっきょくのところ、11/9で書いたような点ではてなダイアリーの利点を充分オーバーライドできたかというとそんなことはなくて、テンプレートをいじっていて、はてなダイアリーがいかによくできているかということを痛感したのですが*1、それでも枠の中にはまっている状態から逃れたいと思ったので、えいやと移動するつもりです。今年じゅうにniftyのサイトと併せて完全に移動して、更新と書き込みはさくらインターネットでできるようにしてはてなのほうははてなポイント使い切るまではリンクだけ示して、そのうち消す、そんな順番で行く予定です。
XOOPSに関しても多少調べたのですが、まだ私には少なくとも1年くらいは早いと思いました。私はこれまでせいぜいearly majorityあたりのスタンスでネットに関わりつづけてきました:はてなへの参入が各種日記サイトのはてなへの移動を見てから、movable typeへの参入がver.3で日本語化されるようになってから、はてなアンテナは使っているけれど、RSSリーダはまだ使っていない、というあたりで私のスタンスはわかってもらえると思います。XOOPSはまだinnovatorからearly adopterのものであるかと。こういう私はダサいかもしれないけどしょうがない。オライリーの本が出るよりも遅く、おっさんパソコン雑誌で採りあげられるよりは早いくらい、これからもそのくらいでキャッチアップしてゆく所存。

*1:だいたい、movable typeのデフォルトのテンプレートでindexページの続きの過去ログを見ようとするとカレンダーをクリックしたり、アーカイブをクリックしなければならない、ってところからして不親切だと思います。はてなのような過去ページへのナビゲーションをmovable typeで実現するためにはMTpagenateを入れなければならないし。コメント欄がデフォルトでは個別エントリのページに入らないと見えないとか、デフォルトでの字の小ささとか(あれがカッコいいとでも思っているのだろうか)ほぼ全ての点においてはてな、というかtDiaryのほうがナビゲーションが親切にできていると思うし。あと、この1年分のエントリを再構成するだけでものすごい時間がかかります。ネットが混んでる時間とかだとぜんぶ再構成できずに止まったりするし。なんかこんなことだったら、ローカルでのapache+PHP+movable typeの環境で生成したhtmlをftpで送ったほうが速いんではないかと思ったりします。意味ねー。コメントの書き込みが反映されるまでも死ぬほど遅いです。はてなだと5秒かかることないですけど、movable typeで作ったサイトでは今の状態(8/31からのエントリしか入れていない)で1分とかかかります。いいことなんてひとつもない。とはいえ、私の書き方による点は間違いなくあるので、なにがボトルネックになっているのか見極めないと。いまのところ、データベースにあまりアクセスしないとき(readme.htmlを再構成するときとか)には時間がかからないということを確認しています。なんかデータベースを共有しているどっかのサイトが重いのの影響を受けているだけのようにも思えるのだけれど。


2004年12月28日

忘年会

の二次会はカラオケ。私のセットリスト(すまん)は

  • ウグイス (スネオヘアー)
  • Don't look back in anger (Oasis)
  • 銀河鉄道999 (ゴダイゴ)
  • ピント (スネオヘアー)
でした。毎度のことながら盛り上げるとかそういうことをまったく度外した選曲。サニーデイサービスの「空飛ぶサーカス」とかイースタンユースの「雨曝しなら濡れるがいいさ」とかグレイプバイン「愁眠」とかがDAMには入っていなかったので歌えなかったのが残念。ちなみにこないだのセットリスト(しつこい)は
  • 天体観測 (バンプオブチキン)
  • immmigrant song(Led Zeppelin)
  • 君を想う(元ちとせ)
  • ワンダーフォーゲル(くるり)
  • 光について(グレイプバイン)
でした。


2004年12月27日

我が家のクリスマス

子供が大きくなるといっしょにうたえる歌が増えて楽しいのだけれど、子供は移り気なのでギターのコードを拾っているあいだに次の歌をうたうことになってけっきょく伴奏せずにいっしょに歌いました。
酔っぱらった私はワインを絨毯にこぼしてしまい、食事そっちのけでふき取り仕事に……どうもすみません。
そんなクリスマスでした。
http://d.hatena.ne.jp/ryasuda/20041226#p2
うちも似たかんじです。我が家では上の子がプレゼントについているジャスコのシールを発見したのですが、サンタさんはジャスコでプレゼントを買ってきてくれたことになったようです。


2004年12月25日

JNS 12/15

sciencedirect

はそれぞれの論文が長いURLでしかもその中にuseidが入っているからURLでfulltextにリンクしても私しか使えないよな、と思っていたらcitationのexportの画面でASCII formatでexportするともっと短いURLを出力してくれることをいまさらながらに発見。これだとsciencedirectでfulltext読める人は直接アクセスできるのでしょうか。ということでテスト。http://www.sciencedirect.com/science/article/B6VRT-4F13RF4-9/2/8a69e9eb48557a8e8869067734b7113a


2004年12月24日


2004年12月23日

PNAS 12/21

Jonathan R. Wolpaw, and Dennis J. McFarland "Control of a two-dimensional movement signal by a noninvasive brain-computer interface in humans" OPEN ACCESS PNAS 101: 17849-17854 [EndNote format]
12/11にAOPに言及したやつが出版されました。OPEN ACCESSです。
もういちど。脳表からのEEG記録による非浸襲的な方法(BCI: Brain-computer interface)を使うことで、浸襲的な方法(Miguel NicolelisやAndrew SchwartzなどによるBMI: Brain-machine interfaceで電極を脳に埋め込んでニューロンの活動からカーソルなどを動かす)に匹敵するぐらいの正確さ、速さでコンピュータのカーソルを動かすことに成功したとのこと。
詳細はよくわからないけれど、adaptiveな方法でこれまでよりもカーソルの動きの正確さなどを上げているらしい。二次元の動きなので自由度が二つあればいいわけだけど、Fig.1を見るかぎり、ある被験者では脳波の24Hz成分のパワーを記録して、記録部位の2点(第一次運動野/第一次体性感覚野あたりの電極を左右2点)間でのパワーの比の大小でもって垂直成分のコントロールに使用しているらしい。同様にして12Hzの成分でもって水平成分のコントロールをすると。んでカーソルの動きを計算するときの重み付けを練習を積む段階でそれまでの試行のエラーを加味してオンラインでadaptiveに変化させてゆくと。なんか書いているだけだとかなり原始的な感じはするのですが。
被験者としては二人の脊髄損傷の患者と二人の健常者とで行っています。正しい位置までカーソルを移動するのに脊髄損傷の患者で1秒くらい(すでにBCIを使ったコントロールの練習をたくさんしている)、健常者の被験者でも2、3秒くらいで移動することができています(Fig.2)。この脳波によるコントロールは筋電図とは相関していない(Fig.3)と。健常者ですら。これはニコレリスとかのBMIとかでも見られる現象だけれども(被験者ははじめのうちは自分の手を動かしてカーソルを移動しているけれども、そのうち手を動かさなくてもいいことがわかると手を動かさずにカーソルだけを移動させるようになる)。
見た限りmethodologicalにはそんなに大きなブレークスルーがあったようには見受けられないのだけれど、かなり実用度は上がっている様子です。
ムービー(2.9MB mov)もダウンロードできます。ってなんでmovだけですか。QuickTimeインストールしたくないんだけど。mpegとmov両方あるようにすべきではないでしょうか。というわけでムービーは見てないです。
というわけで詳細は読んでいないけれども、なにによってそれだけ速く正確にカーソルを移動できるようになったのか、そのあたりを読むべきでしょうな。


2004年12月22日

SFNレポートつづき

上の論文関連でSEF関連の二つの発表についてメモしておきましょう。

  • 378.4 "Separate representations of eye - and head - centered goals in the macaque supplementary eye field" J.Park, M.Schlag-Rey, J.Schlag
  • -378.5 "Microstimulation of SEF can change the order of spatial memories" M.H.Histed, E.K.Miller
どちらもhead-restrainedなのでeye-centeredかbody-centeredかを分離することはできません。SEF微小電気刺激がfixed vector(eye positionによらずに同じだけ目が動く)かgoal-directed(視野のある場所に向かって目が動く。だからどういうsaccade vectorかはeye position-sensitive)かを検証したのがSchlag-Reyのほうのやつ。結論としては、SEFにはanteriorとposteriorとに二つ微小電気刺激に応答するサイトがあって、anteriorのほうはfixed vectorでposteriorの方はgoal-directedである、というもので、結果はなかなかきれい。両者がanatomicalに投射様式が違うとかそういう知見はないか聞ければよかったのですが。
E.K.Millerのほうはdouble-step taskで、二つ出た刺激の位置に順番にサッケードする課題でdelayの時間に微小電気刺激(subthresholdで)してる。結論としては電気刺激によってサッケードする順番を間違えるということでした。質問で聞かれていたけどSchlag-Reyの結果に照らし合わせるとどうかというと、goal-directed仮説の方を支持する結果になっていて、刺激部位もSchlag-Reyでのposterior spotのほう(goal-directed)を刺激していたんだろう、という話になっていました。
  • 378.6 "Attention and stimulus contrast modulate saccade latency but not kinematics" J.C.Martinez-Trujillo, A.Z.Khan, J.D.Crawford
ついでにおまけ。いっぽうでその次のプレゼンでMartinez-Trujilloがしゃべっていたのは今回のNeuronの内容ではありませんでした。注意を分散させるか否かの条件でサッケードのパラメータ(peak velocityやmain sequence)に変化がないので注意の効果はpremotor仮説(注意はoculomotor outputも変える)ではなくてsaliencyによる効果だけで説明できる、と結論付けていました。これはかなりヌルい議論なので集中砲火を浴びていました。その裏でNeuron出しているわけです。超味わいぶかい。Schlag-Reyの発表のほうが私は好きですが、きっとあれはいつものようにJNPに出てくるのでしょう。んでなきゃEBRか。

Neuron 12/16

Julio C. Martinez-Trujillo, W. Pieter Medendorp, Hongying Wang and J. Douglas Crawford "Frames of Reference for Eye-Head Gaze Commands in Primate Supplementary Eye Fields." Volume 44, Issue 6, 16 December 2004, Pages 1057-1066
SEFがどういう座標系をコードしているか、という問題についてですが、眼球運動と首の動きと両方の自由度のある条件でSEFを微小電気刺激しています。
可能性としてはbody-centeredか、head-centeredか、eye-centeredか、ということがありうるのですが、結論としては、いろんな座標のがあった、だからSEFはこれらを変換している場所なのだろう、というきれいな結果が分離しなかったときのための常套手段のまとめ方をしています。あんまり印象よくない。きれいに分かれないなら分かれないなりに変換の過程を追うような解析をしているかどうかでしょうな。


2004年12月21日

JNS 12/15

James Cavanaugh, and Robert H. Wurtz "Subcortical Modulation of Attention Counters Change Blindness" J. Neurosci. 24: 11236-11243; 2004 [EndNote format]
James CavanaughってかつてMovshon JA@NYUのところでV1やってたひとですよね。nonhuman primateでChange Blindnessだそうです。

Neuron 12/16

Christopher D. Chambers, Mark G. Stokes and Jason B. Mattingley "Modality-Specific Control of Strategic Spatial Attention in Parietal Cortex." Volume 44, Issue 6, 16 December 2004, Pages 925-930
Jason B. Mattingleyはこれまでにもいろいろ出てきました。今回は視覚での注意課題と触覚での注意課題とでTMSの効果を調べています。二つのタスタスクでの視覚と触覚の刺激は同じになるように統制してあって、視覚と触覚のどちらに注意を向けるかどうかだけがこの二つのタスクで違うようになっています。んでもって、TMSをinferior parietal cortex(supramarginal gyrus)に加えたときには視覚の注意課題に影響が出て、触覚の注意課題には影響がでない、と。だからsupramarginal gyrusは視覚の注意のみに関連しているのであって、視覚触覚といったモダリティによらない抽象的な注意の機構に関わっているのではない、と結論付けています。
ちなみにsuperior parietal lobuleやtemporoparietal junctionやangulara gyrusをTMSしても視覚注意課題、触覚注意課題両方とも効果はないとしています。これは例の半側空間無視の原因部位の議論と合わせてみると面白いものがありますが、ちょっとtemporoparietal junctionと言っているところがあまりに前すぎるような感じがします。
また、触覚注意課題でTMSが効く場所が同定されていません。つまりdouble dissociationさせることに失敗しているのです。よって彼らの結論はそんなに強くない。触覚課題がTMSが効くような条件設定がされていなかっただけの可能性があるのですから。


2004年12月20日

Journal of Cognitive Neuroscience 11月号

"The Functional Neuroanatomy of Episodic and Semantic Autobiographical Remembering: A Prospective Functional MRI Study." Brian Levine, Gary R. Turner, Danielle Tisserand, Stephanie J. Hevenor, Simon J. Graham, Anthony R. McIntosh
講義を終えてみると絶妙に関係ある論文が。
via http://am.tea-nifty.com/
via http://www.eurekalert.org/pub_releases/2004-11/bcfg-whi111604.php
この論文はどういうものかというと、fMRIなんですが、autobiographical episodic memoryとautobiographical semantic memoryとを分けて想起時のactivationを見た、というものです。autobiographical episodic memory(過去の一回きりのエピソードをそのときの気持ちまで思い出してmental time travelしてもらう)を思い出しているときとautobiographical semantic memory(過去なんども繰り返した習慣や行動を事実として思い出してもらう)を思い出しているときとのあいだで差分を見てやろう、というわけです。autobiographical episodicとautobiographical semanticとを別々に評価するためにautobiographical memory interview(AMI)を使う、という話を以前書きましたが、AMIにしろなんにしろ、retrograde amnesiaを見るときに使うテストでは昔の記憶を思い出してもらうということが必要なため、AMIを繰り返しやってたりするとその想起をなんども繰り返すことになってリハーサルによる効果や記憶の再活性化による効果などが出てしまうのが難点です。今回の論文は健常者でのfMRIですが、構造的な問題としては同じです。
そこでどうしたかというと、被験者にあらかじめ日記をつけておいてもらう(じっさいにはカセットレコーダーで吹き込んでおく)ことにしたのです。半年分くらいの日記をカセットレコーダーで吹き込んでおいてもらって、それを聞き返さないでおいてもらいます(リハーサル効果の除去)。日記の記述のうちでautobiographical episodicと言えるような描写とautobiographical semanticと言えるような描写とをMR撮影中に聞いてもらってそのときのことを思い出してもらって、二つの条件の差分を取る、というわけです。
その結果、autobiographical episodicのほうがautobiographical semanticよりもmedial temporal, posterior cingulateが強く出たこと、それからautobiographical episodicとautobiographical semanticとで共通に出た部分(general semanticや他者のautobiographical episodicを聞いているときとの差分をとっているのでこれは自己に言及している成分と言える)として、left anteromedial prefrontal cortexが活性化した、ということだそうな。
著者らはTulving門下の人たちですな。B LevineとAR Mcintoshは今回言及はしなかったけれど
Brain '98 "Episodic memory and the self in a case of isolated retrograde amnesia."
の著者だし、AR Mcintoshは
Nature. 1996 Apr 25;380(6576):715-7. "Activation of medial temporal structures during episodic memory retrieval." Nyberg L, McIntosh AR, Houle S, Nilsson LG, Tulving E
にも名前を連ねています。それ以外にも

といった興味深い論文の著者でもあります。


2004年12月17日

Neuron誌の目次

Neuron誌の目次のフォントがあまりに小さすぎるのが前から気になっていたので、ソースを見てみました。
論文のタイトルと著者はcontentクラスがstyles.cssで定義されていて、FONT-SIZE: 10px。fulltextやpdfへのリンクはfulltextクラスがneuron.cssで定義されていて、こちらもfont-size: 10px。これは小さすぎる。おそらくはモニタが72dpiに設定されているマックでデザインされたのでしょうけど、96dpiがデフォルトのwindowsユーザにとってはこれではアリンコのようです(さらに悪いことに、私は最初に画面のcalibrationをしているので104dpiです)。
しかもフォントの大きさをpixelで設定しているため、internet explorer6では文字サイズの拡大縮小(ctrl+スクロールボタン)が効かないのです。前述"Designing with Web Standards"ではpixelで設定してやる方法が他の方法(emやpointを使う方法)よりも良いとは言っているけれど、こういう事例を見ると疑いたくなります。ちなみにfirefoxではpixel単位で設定されている文字のサイズの拡大縮小は可能です。というわけでinternet explorer6のバグのひとつなわけですが。ちなみに著者のzeldmanはこのことはわかったうえで、それでもemは機能しないし、pixelで表記するのがいちばんブラウザ間の見栄えのばらつきが少ない、という意味でそう主張しているわけではあるのですが。

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# ryasuda

フォントに関しては、テキストブラウザ(w3m)を使ってる私には何の問題もないのでした(上つきも下つきも無視ですけど)。

# pooneil

w3mだと書き込み時にテキストエディタが立ち上がるから、IEでのAreaEditorの対応物とかを探す必要もないというメリットもありますね。http://www.kowa.org/modules/pukiwiki/176.html


2004年12月16日

ウェブログとジャーナリズムと余暇

via 参加型メディア時代におけるウェブログとジャーナリズム 著者: Rebecca Blood 日本語訳: yomoyomo
Nieman Reports Magazineの2003年fall issue (pdf)というので"Weblogs and Journalism"という特集がまるごと読めます。もうこれだけでおなかいっぱいというか、読みおえるうちに話題が収束してしまいそうなボリュームです。Rebecca Bloodの上記論文の原型だけでなく、DAN GILLMORによる"Moving Toward Participatory Journalism"なども含まれてます。ちらっと読んだかぎりでは、ジャーナリズムの立場からものを言っている人が多そうな感じがしました(雑誌の性格上、しょうがないのだろうけど)。
ところで、「中途半端に書くと馬鹿だと思われるし、真面目に書くと暇人だと思われる」、これ、他人事ではないのですが、上記の特集のp.63-64 "Is Blogging Journalism?" By Paul Andrewsで似たようなくだりがあります。


とあるパネル・ディスカッションでベテランのジャーナリスト集団に向けて、私は一日平均2時間を自分のウェブログに充てていることを話すと、驚きの反応がそれこそ部屋全体から聴こえてくるかのようだった。いったいだれが報道業務の中から毎日の2時間を割くことができるだろう? これはまっとうな質問だ。いま私はフリーランスなのでそれができるけれども、私の25年間のフルタイムでの記者経験からすれば日々の作業でブロッグを書くことに充てる余裕などなかったであろうことを知っている。

つまり「暇人」と思われると困るのは、9to5で働いて余暇にブロッグするとか、時間のたっぷりある学生がブロッグを書くのとかとは違って、自分の使える時間を全て仕事に充てなければいけないような職場(9to24、お好みなら7to26で)にいる人がどうして仕事以外のことをしていることを公表してしまえるのですか、という話なのです。

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# kami

>「中途半端に書くと馬鹿だと思われるし、真面目に書くと暇人だと思われる」名言ですね。とある、NPO・読者参加型ネット新聞というのがあるのですが、そこで活発に議論されている方は、結局睡眠時間を削ってますね。そこまでやるんかいなと思いましたが、しっかりソースを調べて、論理的に展開し、かつ相手の反論(時にただの詭弁・揚げ足取り)に答えていくには、そうなってしまうんでしょうね(半分中毒性あり?)。そのサイト自体は、結局、個人情報登録必須かつ実名報道・議論という展開になって、常連さんの一部は、個人ブログやアンチテーゼとしての新サイト立ち上げて撤退という風になってしまいました。

# pooneil

>>真面目に書くと暇人周りから、あー、この人は仕事もそこそこにネットばかりやってて窓際族なのだな、などと思われないように実績をガンガン出していきましょう、とけっきょくいつものオチにわたしの場合話が向かいます。この点で、ガヤ日記は明白にすばらしかった。>>個人情報登録必須かつ実名報道・議論こちらはまた別に議論する価値のある話題ですね。私が巡回している各種ブログやweb日記の中でも、実名を出している人いない人、プライベートなことを書いている人いない人、ボスに読まれることを想定している人いない人、などいくつかの点でそれぞれスタンスが違っていますが、実名でガンガン議論する、というのとは違ったスタンスの方が多いという印象があります。私だってググって探しものをしているだけの人にはわたしの名前が露出しないようにしてあるわけでして。実名でガンガン議論、というのは技術系MLとかからの流れで、それとはちょっと違ったコミュニティの一部としてある感じがしてます。このことはもちろん、そういう中でどのように議論を活発化していくことができるだろうか、というこれまでにも話題になった問題意識とも大いに関連しています。

# ryasuda

あじわい深い言葉ですね。でも、ブログの記事がポリッシュされていなくても、それほどInsightfulではなかったとしても、馬鹿だと思われることはない、と思うのですがね。少なくとも、私はそうは思わないけど。ブログが仕事の一部のようになってる人もいるのかもしれませんが。あと、年齢では、F1-ATPaseでノーベル賞をとったボイヤーは、60才のときの仕事で、88才でとりました。高齢のほうを探してみるのも励みになりそう?

# pooneil

なるほど、どちらかというと「真面目に書くと暇人」の方に反応していたけど、「中途半端に書くと馬鹿だと思われる」かどうかは再考の余地がありますね。じっさいのところ私も、ただ来訪者数を稼ぎたいというわけでもありませんし。これまで書いてきたようなリスクうんぬんの問題があるので、隙のあることは出さないほうがよいと思うけど、prematureな考えをメモってく、という気軽さもblogの利点ですしね。ってryasudaさん、とってもinsightfulな指摘をしているではないですか。あと、60才のときの仕事で88才に受賞、ですか。その場合いかに長生きするかがノーベル賞を取れるかどうかの最も重要な要因となりそうですね。

# kami

実名・所属を明らかにしての議論するか、ニックネームだけでよしとするのか結構難しい問題ですね。いろいろなフォーラムやMLを見てても、やはりそれぞれで問題が起きてました。必ずしも、実名だから議論が形式的になるとか、問題が起きにくくなるとも思いませんが、気軽に議論しにくい面はあるかもしれませんね。

年齢

がいくつであろうとやるべきことをやるしかないのだけれど。
ryasudaさんのところになにげなく書いてあるSvobodaが38歳という情報に涙。誰かそのへんの若手-やり手の年齢リストを作るべきですな。机の前に貼って、なにくそと思って働くの。ノーベル賞受賞者が受賞に値する仕事をした年齢リストってのはどっかにあったかもしんないけど、それより身近に感じれてよいのではないでしょうか。ShadlenとかSchallあたりはそんなに歳ではないですよね。Stephen ScottとかTirin Mooreとかは私よか若いですよね。ちなみに作るときは全角文字で作ること推奨。


2004年12月15日

Science 12/10

  • "The Mentality of Crows: Convergent Evolution of Intelligence in Corvids and Apes." EndNote format Nathan J. Emery and Nicola S. Clayton。かなりレビューっぽいんですが。(追記:レビューでした。) なんども言及しているNicola S. Claytonのepisodic-like memoryの話も少し出てますが、episodic-like memory(what-whre-when memory)を持つscrub jay(アメリカカケス)はカラスの仲間なのです。カラスが頭がいいことは皆さん実生活でご存知かと思います。だからイモムシを埋めて隠して保存しておいてあとでそれが腐る前に回収するというアメリカカケスの習性(すでにこの中にwhat-where-whenの概念が全て含まれていることは明白)を生かしてwhat-whre-whenの保持が出来ることを鳥かご内での統制された実験で示したのがClaytonの'98 Natureだったというわけです。それだけに限らず、鳥類(特にCorvids)もさまざまな認知能力(霊長類が行うのと進化的にconvergeするような)を持っていますよ、というお話のようです。

Science 12/10

Addictionとtemporal-difference reinforcement learningについてです。

mmrlさんにばかりあまり負担がかかるのはよろしくないですし、mmrlさん以外にもこのへんよくご存知の方は読んでいらっしゃるはずで、ぜひ、どのくらいインパクトのある仕事なのかというあたりの評価などあればコメント歓迎します。なんか一番目の論文のfig.2のような回路図をなんども見たせいかなにが新しいのかもうよくわからなくなっているのです。


2004年12月14日

サイトの再構築

つづき。
EndNoteとの連携を考えたほうがよいんだろうか(ぜんぜん活用できてない)。データベース化するときになにを情報としてもっておいたらよいのか、というあたりが重要そう。でもPMIDだけ持ってればいいか、というとそうでもなくて、いまダイアリーでリンクしているURLは(私が)full textにダイレクトにアクセスできるようにひと手間かけたURLを入れてきたわけで(たんにPubMedのURLを入れていたわけではないし、hippocampusやexperimental brain reserachなどのようにPubMedからはリンクが張られていないものもある)。
だんだんデータベースの設計みたいなことを考えたほうがよい気もしてきました。現状では日々の複数のエントリーが一つのデータで、それらの間にリンクが貼られていて、そのリンクは場合によっては違う日のエントリーだし、場合によっては論文へのリンクなわけです。これを論文単位でデータベース化しようとすると、ほとんどの論文はURLを貼っているだけで、いくつかの論文ではコメントが複数日付けられている。一つの論文にコメントする際には他のいくつかの前報にもコメントしているし、そういうときにコメント文を論文の属性としたデータベースを作ると重複してしまうし…だんだんわからなくなってきた!
さらに、PubMedとの連携、EndNoteとの連携など考えてゆくときりがないのだけれど(いつのまにかセマンティックWebとか調べてしまっている私)、このへんおろそかにしていたので少しは考えておいたほうがよいのかもしれません。Blogで論文メモ作るのとEndNoteに論文を取り込むのとがバラバラになっているというのはおかしな状況だし。Movable typeにエントリを入れて再構築するとEndNoteやReference Manager形式で落とせるようなものを出力できるようにして(RSSみたいに)、自分のEndNoteにコメントごと取り込めるようにするとか(こういうこと言うだけは簡単なのだけれど---たぶんPHPが使えれば可能なんでしょう)。いやいや、順番が逆か。ジャーナルのサイトで気になるものをEndNoteに取り込んで、そこからの出力をサイトに貼るとか。もうぐちゃぐちゃ。

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# ryasuda

Endnoteは、昔はよいプログラムだったのに、バージョンが新しくなる毎に不安定で使いにくくなってるんですよん。なんか他にいい方法があるといいんですが。。。御隠居さんの紹介していたiPapersはよさそうかな?

# pooneil

私はwindows版 ver.6を使っているのですが、wordとの連係あたりでけっこうかたまったりします。というわけでバージョンアップしたほうがよいのだろうかと考えていたのですが、>>バージョンが新しくなる毎に不安定で使いにくくなってるうーむ、どうしよう。手元のpdfファイルの管理ということを考えるとwindowでもiPaperみたいなことができるものがあるといいなあと思います。

# cogni

XOOPSでのPubMed PDFはどうでしょうか。WindowsならXSASを使えば2分ぐらいで構築出来ますし、ネットに設置も出来ました。http://pubmed.hardproblem.org/。一応、ID・パスワードともにguestで利用できます。でもネットはデータを持ち歩かなくて良いものの、動作が遅いのが難点になりますね。僕個人としては、学校が機関登録しているRefWorksを使っています。

# pooneil

cogniさん、ご無沙汰しております。PubMedPDFよさそうですね。Xoopsまでは手を広げまい、と思ってましたが、げんざい「XOOPS入門 ―― ひとが集まるWebをつくる。」翔泳社ISBN: 4798106186を読んでいるところでして、movable typeよりもxoopsで新サイトを構築したほうがよいのではないかというふうに気持ちが傾いてきました。もう少しいろいろ調べてみるつもりです。どうもありがとうございます。

# kami

PubMed PDFは研究室での論文共有・検索にとてもいいですね。XOOPSだと、試薬の発注管理とか研究室セミナーのスケジューリングとか研究室管理のモジュールが増えてくると、研究室で導入する事例が増えそう(イントラで使うのがメインになるでしょうか)。

Van Essen '91

の有名な図(cortexの領野がずらっと並んで結合関係が図示されているやつ)が欲しかったんだけどきれいなのがないので、しかたなく昔のCerebral cortexのコピーを使っていたのだけれど、
"Neural correlates of consciousness in humans" Rees G, Kreiman G, Koch C Nat Rev Neurosci. 2002 Apr;3(4):261-70.
これにmodifyされたきれいなのがあるのを確認。pdfをillustratorで開けばピクセルではなくてベクターで情報を持っている。
というわけで必要なときのために保存しました。


2004年12月13日

MovableType3.11導入メモ

さくらインターネットのスタンダードプラン(ライトプランではphpが使えないし、データベースがBercley DBしか使えなくてMySQLは不可)にMovableType3.11を入れて、はてなの記事を移動するテストをしています。

現状まででやったこと、わかったことをメモ。

とりあえず以下の3つを見ながらやれば30分で投稿できるところまで辿りつけました。

  1. さくらインターネットのMovable Typeインストールマニュアル
  2. Movable Type 3.x 導入手順
  3. きままにポロポロ: 引越し&バージョンアップ

注意点としては、さくらインターネットのマニュアルの記載はBercley DB専用なので、データベースをMySQLにするためには設定ファイル(mt.cfg)にいくつか変更が必要になります。それに関してはきままにポロポロに書いてあることをやればいいだけですが、非常に簡潔に書かれているので、Movable Type 3.x 導入手順を見て一手一手手順を確認しながらやるのがよいでしょう。

私が引っかかったところ:FFFTPでファイルをアップロードする、これが一番大変で、途中で何度も接続が切れてやり直しを繰り返しました。それからあと、mt.cfgの「142-145行目の#を外す。」というのをしないでいたら、mt.cgiの動作がものすごく遅くて難儀しました。最後にindex.htmlの生成される場所の指定を間違えたのでhttp://pooneil.sakura.ne.jp/が空っぽでディレクトリが丸見えになってました。でもそんなもんで。

現在やっていること(1):Movable typeでは管理画面から編集できるテンプレートとスタイルシートでもってサイトの構造と見えを決めてやるわけですが、これはネットを見ながらデフォルトのテンプレートとスタイルシートをいじってゆく、という形で少しずつやってます。テンプレートの方はあとで変更をきかせにくいところだけあらかじめやっておくつもりです(MTPaginateを使うためにアーカイブページを.htmlではなくて.phpに変更するとか)。ほかに「エントリーからすぐ編集画面へ」 「プレビューボタンのみ表示してhashを仕込むというコメントスパム対策」、これらを入れる予定。スタイルシート自体はあとですこしずつ。あんまり凝らずに、カラムを使わないことで印刷しても読みやすいようにして、あとweb標準を目指す方向にて。

現在やっていること(2):log2mtを使用してはてなの記事(+画像およびコメント)をmovable typeの形式にexportして、これをmovable typeの管理画面からimportします。このファイルの形式はMovable Type Import Formatにあります(しかし、ver3.11から導入されたサブカテゴリーについての記載がない模様で、どうやって情報を入れればよいのかわからない)。log2mtだと一日のデータが一つの本文として認識されるため、別々のカテゴリーの記事が混ざっている日のデータを分けてやる必要があります。また、カテゴリーのデータに■ [Paper] とかで指定したものではなくて日付が入ってしまいます。また、コメントの改行がなくなってしまっています。このへんに対処するために、log2mtでexportしてできたファイルを編集してやる必要があります。Perlとか知っていれば簡単なんでしょうけど、私は知らないので秀丸のタグ付き正規表現を使ったマクロを探すか作るかして対処する予定です。

使い勝手:サブカテゴリーはいい感じです。コメントが続いた論文などを適宜サブカテゴリーに入れることで論文(Glimcher論文とか)やトピック単位(遠心性コピーとか)で書き込みとともに閲覧することが可能に。これがしたかった。ただ、論文タイトルをサブカテゴリー名にしたら文字数制限で途中で切れるし、アーカイブのファイル名が長くなってしまうとかのデメリットがあるので、なんらか別のidentifierを使った方がよさそう(PMID?)。

なんて書いておいたらhttp://d.hatena.ne.jp/go-in-kyo/20041203#p1iPaperというものが紹介されてます(日本人の方がCocoaで作ったMacOSX用のアプリケーションであるようです)。うーむ、まさにPMID。どうしよう。Windowsユーザーなので使えないし。

つづきます。


2004年12月11日

ジャーナルのfull textに<SUP>タグが入っている

ということで最近Designing with Web Standards―XHTML+CSSを中心とした「Web標準」によるデザインの実践 Designing with Web Standards―XHTML+CSSを中心とした「Web標準」によるデザインの実践とかweb designingの記事とかを読んでCSSとかweb標準とかにかぶれているのですが、firefoxに変えて一つ発見をしたんで報告。
JNSのfull textを開いてみたらslepnirで見ていたときと比べてなんか行間が広いんです。おかしいなと思ってhtmlソースを見たら、テキストに60文字ごとに<SUP> </SUP>とか入ってるんです*1。Fulltextのページでctrl-Aしたら一目瞭然でした。どうやらこの<SUP>タグでどのくらい文字を上にずらすかがinternet explorerとfirefoxとで違っているようなのですね。たぶんこのタグを使って行間を広めにしようとしてるんでしょうけど、ひどい技ですよね。たとえばブラウザの横幅小さくして30文字くらいしか見れないようにするとこのタグが入っている行と入っていない行とで行間がぜんぜん違って見えるわけです。しかもこのサイトはCSSを使っていないわけではなくて、論文のファイルごとに頭に埋め込んであるのです。だったら、line-heightで設定してやればよいではないですか。line-heightがInternet explorer 3ではバグるから回避した、とはちょっと思えません。しかもこんなことされるとhtmlファイルでフレーズ検索するときに<SUP>タグに引っかかって検索に失敗するということも起こるわけです。どうもテキストを溜め込んでデータとして活用する可能性というものをまったく考えてないのではないか、と思う次第です。本文と図のレジェンドの関係とか、もっと構造的にして再利用できるようにしてちゃんとXML的にですね……(<-かぶれ過ぎ)。
そういえばかつて論文のfull textのhtmlを貯めこんで全部つなげてコンコーダンサ用のコーパスを作れば論文を書くときに便利なのではないかと考えたことがあるのですが(いつもこういうことを考えるだけで実践しない私)、こういう変な技をしている例があることをよく確認しておいたほうがよいのでしょう。やるとしたら日本人含むnonnativeが書いた論文をはねるとかいくつかの前処理をしておかないと使いものにならないだろうし(ま、自分のことは置いといて)。
追記:こんなヌルいことを書いていたらNatureではすでに2001年の段階でThe Public Library of Scienceとの兼ね合いなどで"Future e-access to the primary literature"というdebateサイトを作ってXMLの可能性とかについてもextensiveに議論した形跡がアーカイブしているのでメモメモ。下のほうへいくとRichard StallmanやTim O'Reillyも書いてる。こんなのがあるとは知らなかった。とはいえ、最近はこのhttp://www.nature.com/nature/debates/は活用されていない様子だけれど。


*1:PNASやScienceなどもそうなってました(pdfのautomatic downloadをする画面を見るかぎり同じ所がweb製作を手がけているのでしょう)。Natureはそうなりませんし、ScienceDirectからダウンロードするところはみんなそうなってません。

OPEN ACCESS

のものやラボのサイトから落とせるものなど、有料でないものについてはできるだけ明記してみるつもりです。

PNAS 12/7(AOP)


2004年12月10日

Firefox 1.0

Firefox 1.0に乗り換えました。これまではslepnir1.62を使っていたのですが、いくつか不満なところが出てきたのをfirefoxが解決していることを確認したので。
以前mozillaやfirebirdを我慢して使っていたときに不満だったのが、タブの操作だったのですが、tabbrowser extensionsを入れることによってslepnirとほぼ同程度のタブ操作が出来るようになっていました(ブックマークを開くときやweb検索のツールバーの結果がアクティブにならずにバックグラウンドで開いてくれることが私にとっては重要)。また、PubMedの要旨のページやwired newsなどの2カラム(や3カラムのblog含む)のページを印刷するのに用紙に合わせて横幅を縮小して印刷してくれるようになっているのを発見したこと、これがデカかったです*1。たくさんのタブを開いたときにタブの横幅が小さくなってくれるのはMozillaとのときと同じですが、やっぱこっちのほうがよいです。Slepnirだとアクティブなタブがなんかの調子で見えなくなることがしばしばありますから(たとえば、ウインドウを最大化してから戻したときとか)。
あとはAreaEditorがFirefoxでは使えないことが問題だったのですが、これに関してはFirefox利用時にTextareaを任意のエディターで開く方法を発見しました。http://www.measure-zero.jp/blog/archives/2004/11/mozex_1.htmlにある通り、Show Old Extensions 0.1.7を入れないとmozexがインストールできないそうです……それでもインストールできない……またこんどにします。
あともう一件、ブックマークがfirefoxではスクロール式で長いリストから探索するのに手間がかかる(というかあほらしくて使えないので「ブックマークの管理」から開くようになる。一方、slepnirでは「お気に入りの続きを表示」で新しいカラムが出現するのですぐ開ける)という難点。とりあえず目的別拡張選び - Mozilla Firefox まとめサイト見るかぎりはそういうのはなさそう。なんかこの問題解決してくれるようなプラグインを誰か作ってくれないですかねえ(他力本願)。
……まあしかし、上記のメリットのほうがデカいと考えてfirefoxに乗り換えました。
追記:こんなことが起こっているとは知らなかったです。


*1:なんで世のwebサイトは横幅800pixelをデフォルトにするんでしょう。1カラムがデフォルトで読んでいる身としてはブラウザの横幅が800pixel分もあったら1行が長すぎて読みにくくてかなわないわけで。印刷するときはみ出るからテーブルレイアウトのhtmlをセーブしてwidthを消してローカルで開きなおして印刷したことがなんどあったことか。横スクロールバー超反対。リキッドレイアウト万歳。

EndNote

に取り込むためのリンクを付けられるものについては付けてみました(ScienceDirectはurlにuseridが入っているのでどっちにしろ使えない)。

Nature 12/9

Vision Research


2004年12月09日

川人先生

のトークがあったので行ってきました。前半は小脳の話と基底核の話ですでに論文になっているものです。何回か聞いた話ではありますが、いろいろと発見がありました。後半は今やってること、これからやっていることで非常にエキサイティングです。こちらに関しては書けませんが。
ATRのホームページhttp://www.cns.atr.jp/~kawato/にパワーポイントのファイルがいくつかあります。前半に関してはhttp://www.cns.atr.jp/~kawato/Ppdf/JCERE.pptが近い感じです。
それで前半に関して聞いてて考えたのは、どのくらいあらかじめ既知の条件を取り込んでモデル化してよいものなのだろうか、ということです。たとえば、階層型強化学習を使ってロボットが起き上がることが出来るようになるhttp://www.kawato.jst.go.jp/xmorimo/robo_sym2000.pdfという話の場合、それぞれの関節で行われる運動自体を強化するのではなくて、もっと上位のサブゴール(姿勢の高さ)が強化され、それによってこんどは下位の関節角などが強化される、という話なわけですが、たしかにそれは理にかなっているし、生物っぽい感じはするけれども、なんかそういう行動の全体を把握したホムンクルスのようなものが入り込んでいるように思えるのです。起き上がるという問題を達成するためにいくつかの問題に分割しなければならないのに、それをあらかじめモデルの中に取り込んでしまってよいのでしょうか。そうやって問題を分割する部分は未知のものとして、学習の過程で創発的に出てこないと意味がないようにも思えるし。しかしそのような上位の強化システムはいろんな行動で共通して使われているのだからよいのかもしれないし。考えれば考えるほどにわからなくなってくるのです。同じような感じで学習で獲得したいものがはじめからモデルの中に入っているというパターンをいくつかの点で見たように思うのです。
たぶんいま書いていることが飲み込めないと、複数のモジュールがあってそれぞれが内部モデルを持っていたり(Haruno M, Wolpert DM, Kawato M: MOSAIC model for sensorimotor learning and control. Neural Computation, 13 2201-2220 (2001))、それぞれが強化学習される(Doya K, Samejima K, Katagiri K, Kawato M: Multiple model-based reinforcement learning. Neural Computation, 14, 1347-1369 (2002))といったスキームの意義がわかってないことになるのだろうと思うのですが、まだ飲み込めていないのです。
というわけで少しNeural Computation '02のイントロを読んでみると、


"The basic problem in modular or hierarchical RL (引用者注:reinforcement learning) is how to decompose a complex task into simpler subtasks.
...
However, when the prediction models are to be trained with little prior knowledge, task decomposition is initially far from optimal. Thus, the use of "hard" competition can lead to suboptimal task decomposition."

と書かれているので、やっぱりどのくらいprior knowledgeを使うのはというのはnon-trivialな問題のようにも思えるし。どう分割するかの問題なのではなくて、すでに分かれているモジュールのどれが選択されるか、という問題を解けばいいだけなのかもしれないし(それがまさにこの論文で行われていることのようだし)。ああわからない。

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# mmrl

なんかまた呼ばれた気がする....。疑問を解消できるとよいのですが。もちろん、問題の分割が学習で創発的にでてこないとダメだというのは尤もなことです。MOSAICの肝は予測誤差を使っていくつかの部分問題に分割するという点ですが、それだけでなく、学習についても言及していて、予測誤差がより小さいモジュールを強化する(学習する)ことによって、はじめは似通ったモジュールが分化されることもありうるわけです。 特に、Doya et al 2002はイントロの一部だけでなく、中身も見てほしいわけですが、Figure 8(a)に書いてあるのは最初の50試行は1つの状況(振り子の長さが一定)であるのに後半は2つの状況が交互に出現する(振り子の長さが可変)のような場合、1つの状況を担当していたモジュールが2つの状況を分割できるように分化しているわけです。 こういうことができるモデルだからこそイントロでprior knowledgeが少ないような場合、それだけでばっさり切る``hard’’ competitionは危ないといっているのです。だからって、使えるpriorを捨てるのは得策ではないし、prior knowleadgeと学習によってposteriorに与えられる情報とをうまく統合して状況分割する良い方法は、というと``soft’’ competition であり、baysianであり、MOSAICではないかというのがこの論文の主張で、その次の節にそのことが書いてあるわけです。

# pooneil

すばやい反応感謝します。最初はそのつもりではなかったのですが、エントリ書き上げてみるとこれはどうにも呼びつけてしまったとしか思えないですよね。どうもお手数かけてすみません。んでもって、なるほど、このfig.8でのモジュールの分化、というのは面白い話ですね。これが「創発的な問題の分割なのか」というのに対する答えだということですね。よくよく読んでみます。いちばん近い道筋を教えてくださったことに感謝します。あと後半のコメントに関して私が今のところわかったのはsoftmax functionを使うということがprior knowledgeがないときのベイジアン的にやることであって、これを使ってモジュールの選択をするのがMOSAICやmultiple model-based reinforcement learningである、とそういうことであって、この段階ではまだpriorは使わずにボトムアップ的にやっている(ディスカッションの最後の”Combination of this bottom-up mechanism with a top-down mechanism is the subject of our ongoing study.”)、ということですね?とんちんかんなことを言ってるのかもしれませんが、ま、答え合わせみたいなもんということでご勘弁を。


2004年12月08日

はてなへの住所登録の義務化撤回

について(反応遅すぎ)。
なんというかはてならしく始まりはてならしく(とりあえずの)終結しましたね。はてな利用規約も新しいものが発効しています。確認しておくべきは著作権の問題くらいでしょうか。


はてな 利用規約 http://www.hatena.ne.jp/help/rules
第8条(当社の財産権)
  1. 当社は本サービスに含まれる情報、サービス及びソフトウェアに関する財産権を保有しています。
  2. 本サービスに使用されている全てのソフトウェアは、知的財産権に関する法令等により保護されている財産権及び営業秘密を含んでいます。
  3. ユーザーは、はてなダイアリーおよびはてなグループにおいて自己が作成した日記の内容および、はてなグループの有料オプションを利用しているグループのキーワードの内容について、著作権を有するものとします。
  4. 本サービスの提供、利用促進及び本サービスの広告・宣伝の目的のために、当社はユーザーが著作権を保有する本サービスへ送信された情報を、無償かつ非独占的に本サイトに掲載することができるものとし、ユーザーはこれを許諾するものとします。
  5. ユーザーが自己の保有する、本サービスへ送信された情報に関する著作権を第三者に譲渡する場合、第三者に本条の内容につき承諾させるものとし、第三者が承諾しない場合には、同著作権を譲渡できないものとします。

というわけで、はてな上で書いたことをどこか外部で発表もしくは出版するようなときにはてなが非独占的に持っている公衆放映権(など)を取りあげてcopyright transferをすることは出来ない、ということのようですな。でももしはてなの日記を全削除して脱退してからその記事を使うとしたらどうなんだろう。
なんにしろ、遅かれ早かれはてなからは出ようと思っております。それはサイトの再構成との兼ね合いなのですが。

JNS 11/24


2004年12月07日

こみゅにちさいと

から始まっていろいろと。超まとまらない。以前の話題に関して、コメントを貼りそびれたことの続きを。
http://d.hatena.ne.jp/go-in-kyo/20041111#p1
さすがご隠居はまっとうなことを簡潔に記してます。

  • フランクにやるにはクローズドで
  • きちんと議論するには実名で
  • よいアイデアにはクレジットをつける
まったくそのとおりです*1。しかしこれに頷いて終わってしまうと、じつはラボの内輪でのメールネットワークを使って実現していること*2以外は不可能になってしまうことになるのでもうちょっと粘ってみたいと思うのです(追記:多少表現を変更しました)。つまりいまここで考えているようなことは、学会や雑誌のようなオフィシャルな場と、ラボ内のディスカッションのようなクローズドな場とそのあいだに位置するようなものが必要などうか、ということなのです。そういうものを皆さんはどれだけ欲しているんだろうか。ここを読んで反応してくださっている方に留学中の方が多かったりするのがひとつは手掛かりかな、とも思うのですが。
私自身は議論に飢えてます。もっと自分の仕事について方々に行ってディスカッションしたい。しかし本当に私の仕事に直結したことはこのサイトには書けない。議論したいことと日記で書いていることが食い違ったままやらなければならないという矛盾を抱えていて、それはもっとクローズドなものをつくらなければ実現しない。それでいったん問題を棚上げして、この場ではやや間接的な話題について、ラボ内のディスカッションのようなフランクな雰囲気をかもし出しつつ厳しめなことも書いてゆく、ということをやってきております。そういう空気に違和感なく入って来れる方をお待ち申し上げている、というわけです*3
しかしこのことにはリスクが伴います。ちょうど現在(というか数日前)に参加型ジャーナリズムの話題が出ていましたが(起点としてこのへんを推奨:http://shinta.tea-nifty.com/nikki/2004/11/netjournalism.html)、このリスクに関する問題は他人事ではないのです。自分のconfidential matterを守る、ということだけではなく、各方面に厳しいことを書いてきたのですから(ラボのセミナーでだったら気楽に言えることだけど、学会で本人を前にしてするには言い方くらいは変えないと心証を害されてしまうようなことを書き連ねてきたのですから。)以前も書きましたが、Googleで翻訳の機能がテストでついています。これがどのくらい実用化してどのくらい普段のgoogle検索で使われるかは未知数ですが(今のところほとんど使いものにならないし、英語圏の人がわざわざクオリティの低い翻訳しているものまで探す可能性は低いようにも思えますが)、日本語でやっていることでかろうじて保証されていたhalf-closedなこのサイトの性格をそのまま保っていけるかどうかは不確定的です。でも、当り障りのないコメントを書くくらいだったらこんなサイトを公開する必要などないのです。即刻クローズドにして関係者(およびこれまでに獲得できた読者)の日本人だけが読めるような形に変更して普段のセミナーみたいに忌憚なくやったほうがマシです。でもそうしたくはない。というわけで話を戻すと、セミナーと学会の間が必要ではないか、ということでした。
というわけで答えはまったく出ていませんが、現在やっているmovable typeでのテストはそのへんまで射程に入れたサイトの再編成をすることを考えております(はてなへの住所登録の義務化撤回もあったことだし、たんなるコンテンツ引越しをするつもりもないです)。


*1:破壊的な意見かもしれないけど、と自嘲気味に付け足して意見を述べるご隠居の姿が目に浮かびます。
*2:mixiという可能性もありますが、完全内輪だったらクローズドMLのほうがリスクが少ないことでしょう。
*3:おかげさまでこういう限られた話題を扱っているサイトにしてはけっこう見にきてくださっている方を多く獲得することが出来まして、被アンテナ登録数もまだ上昇しております

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# go-in-kyo

あーうー,今はご隠居なので,定義上,はかい活動からは手を引いています.かといって,ていこう勢力だという訳でもありません.

# go-in-kyo

(解題)Webは自分の研究と直な関係はないけど興味があることを議論するにはとてもよさそうですし,(事実関係以上に踏み込んだ過度な批判を避ければ)危険もきっとすくないですよね.お陰様でここが繁盛している恩恵に私も大変有難くあやからせて頂いていますので...ただ,自分自身の一番の関心事の議論をするのはやはりちと難しいそうですね.ゴードンなどのクローズドなカンファや,知人ばかりのさらに小さいワークショップのweb版という感じなのでしょうか.もちろん議論の相手は同業者またはかなり近い人々になるわけですから,より有意義な議論ができるでしょうし,同時にクレジットをめぐる戦いの場ともなりうるのでしょうか.いずれにしろ,そのような試みに関しては共感するところが多いです.

# pooneil

どうもありがとうございます。
>>事実関係以上に踏み込んだ過度な批判を避ければ
これ、重要な助言として承ります。やはり日本人の仕事にコメントするときのようにいつもコメントすべきかと考え直しております。
あともう一つ重要な問題として、ここで採りあげることが私自身の研究と直では関係ないとしても、言及された人にとっては必ずや直で関係あるわけで、そうやって日本人著者を引っ張り出してしまうことにはジレンマが付きまといます。もちろん、発表されていることにしか言及しないように細心の注意を払ってきたわけですが、この非対称性を崩すためには私自身の仕事をさっさと出すのがいちばんではないかと考えます。
>>ゴードンなどのクローズドなカンファや,知人ばかりのさらに小さいワークショップのweb版
これも適正なイメージだと思います。けっきょくのところ、いまここでリスクうんぬんといったこと自体は私がその分野でちゃんとidentifyされる存在になって、関係者と顔をつき合わせてきっちり話し合える関係になってしまえばある程度は解消されてしまうことだったりもします。そのときには彼らと英語でやっていくことになるでしょうけど。というわけでどちらにしろ、さっさと論文出さないと、という結論になるのでした。

# go-in-kyo

いろいろと示唆に富む考察,大変参考になります.自分の発言のclarificationですが,「事実関係」というのは,論文発表という事実のみを指すのではなく,論文の結果などの中身,科学そのもの,を指したつもりでした.著者の主旨が実際に妥当であるかなどの,それに対する多少主観も交えた議論を期待してここに遊びに来ておりますので...あ,結局,がんばって〜,って応援したいだけですね.失礼しました.


2004年12月06日

大学院講義の反省文

を書きます。アウトラインとしては以前書いた20041127を基本にいくつか手を入れてこんな感じになりました。

  • Part 1 記憶の分類
    • 教科書的な分類
      • Squireの「記憶と脳」
    • 内側側頭葉についての解剖学
      • human
      • nonhuman primate
    • ヒトの臨床例の神経心理学に基づいて分類を見直す
      • 患者H.M.とE.P.による宣言的記憶と手続き記憶
      • 患者K.C.とA.Mによるエピソード記憶と意味記憶
      • 再認記憶課題のrememberとknow
  • Part 2 宣言的記憶の動物モデル
    • nonhuman primateでのlesion study
      • 再認記憶課題
      • 対連合記憶課題
    • nonhuman primateを使った対連合記憶課題での単一ニューロン活動記録
      • 宣言的記憶を支える連合関係をコードするニューロン
      • 視覚連合野から内側側頭葉記憶システムへの向きの情報処理(encoding)
      • 内側側頭葉記憶システムから視覚連合野への向きの情報処理(recall)
  • Part 3 エピソード記憶の動物モデル
    • 行動に基づいた操作的な定義
      • Episodic-like memory: ハトが「いつ、どこで、なにを」の情報を保持する
    • ヒトでの知見との平行関係
      • Recollection-like component: ラットが再認課題でfamiliarityではなくてrecollectionを使っている?
  • Part 4 ヒトでの知見と動物での知見との相互規定

Part 1のメインは症例報告で、ここはなかなか楽しんでもらえたのではないでしょうか。かなり具体的な話もできたし。本職の人がいたらツッコまれまくりだったでしょうけど、ここ数日私自身が論文を漁り読んで面白いなあと思った感じも伝わったのではないかと。エピソード記憶と意味記憶との間の不思議な関係、とくに自伝的記憶の中のエピソード記憶的成分と意味記憶的成分(personal semantic knowledge)との間の微妙な関係に質問が集まったと思います。

準備の順番が適切でなかったのでH.M.さんに関する原著を充分読むことができなかったことが悔やまれます。'68のMilner論文、それからとくに、"記憶の亡霊―なぜヘンリー・Mの記憶は消えたのか" 記憶の亡霊―なぜヘンリー・Mの記憶は消えたのかを読んでいかなかったあたりで。

また、記憶に関する心理学(Tulvingの符号化特定性、Collins and Qullianの反応時間課題、semantic priming)あたりに関してはまったく触れられませんでしたが、さすがに全部は無理でしょう。Human fMRIの知見をまとめるのとあわせてどっかで一回総ざらいしておこうと思います。

ここまでで1時間.5分休みを取って後半戦ですが、こちらは駆け足になってしまって大変悔いの残る出来でした。実際問題、part 2だけで1時間使って話す話題なのですが、私としてはpart 3の方が話したいことだったのでむりやり詰め込んでしまった次第。伝えるべきことではなくて伝えたいことを優先してしまったところがあることは認めます(でも、今ホットなのはpart 3のほうだと思うのですが)。

Part 3に関してはアメリカカケスの話は枠組み(what-where-when)と実験パラダイム(どうやってwhat-where-whenを課題に組み込むか)だけ説明できれば充分な話なのでよいのですが、Eichenbaumの方は厳しいものがありました。Signal detection theoryの解説をしないとROCカーブの形の意味が説明できないにもかかわらずそこをすっ飛ばして、ヒトでもラットでも海馬の損傷によってROCカーブが非対照的なものから対照的なものになり、ヒトでは海馬損傷によってrecollectionの成分が選択的に障害を受ける、だからラットでも海馬損傷によってrecollection-likeな成分が落ちるのだ、というロジックをどう批判的に紹介すればいいか、ほとんど無理でした。ここがボロボロなので、part 3で計画していた「行動に基づいた操作的定義」と「ヒトでの現象学的報告(rememberとknow)をモデル化してそれと平行なものを見つける」という二つの関係をもっと明確にすること(充分議論するに値するほどの話題提供)ができませんでした。これに関してはリベンジというかまた別に語る機会はあることでしょう。この問題は意識と脳の活動とをつなぐlinking hypothesisに関する問題であり、脳高次機能を脳の活動とつなぐ際に必ず出現する問題なのですから。

とまた気が先に行ってますが、もう少し基本的なこととして、参加者ときっちりあいコンタクトを取って話すこと(とくに、一ヶ所にかためずにある程度散らしてゆく)、実際に記憶課題をやってもらうなど受身にならずに参加してもらえるところを入れること、などは気を付けてすこしはできたのではないかと。トークの最初に笑えるネタフリがあるとよかったのですが、そこはちょっと痛げな体験談などを交えたぶっちゃけ気味トークで代用しました。あと、このネタフリを使って最後の最後にちょっとしたギミックを--参加者の皆さんにもrememberとknowとを実感してもらうということで最後に入れてみましたが、これで多少わかせて終えるのに成功したでしょうか(ネタフリが講義のいちばん最初でまだ全員が席についていないような状態だったのが反省点)。

参加者は院生の方々と、関係ラボ(同じフロアとか上のフロアとか)のスタッフの方々。基本的には院生の方々に伝えるつもりで話をしました。同じ時間に神経回路形成とシナプス可塑性に関する研究会をやっていたということもあってあんまりvitroの人には来てもらえなかった感じはありますが、とりあえず座席は埋まりました。

Part 1についてはせっかくなので再構成して「web講義」にしてみようと思います。


2004年12月03日

瞑想と神経現象学

"Long-term meditators self-induce high-amplitude gamma synchrony during mental practice." Antoine Lutz, Lawrence L. Greischar, Nancy B. Rawlings, Matthieu Ricard and Richard J. Davidson。Antoine Lutzは故Francisco J. Varela@CNRSのところでPNAS '02 "Guiding the study of brain dynamics by using first-person data: Synchrony patterns correlate with ongoing conscious states during a simple visual task."を出した人。現在はUniversity of Wisconsinだそうです。あれはほんとうにneurophenomenologyといえるような代物なのか、ってのが今でも気にかかっているのですが、その基準で言えば今回のもそうなはずで、あれをさらに推し進めたものとなっているはずです。今回はトレーニングを積んだ素人(PNAS '02)ではなくて現象学的分析をまさに日々実践しているチベット仏教の僧たち(ニンマ派とカギュ派)が瞑想時にガンマオシレーションを出しつづけることができるというのが内容です。こう書いてしまうと昔からある「ネタ系」と同じでしかないなあ。
ただこれが脳領域間でのphase synchronyであることから、以前のNature '99("Perception's shadow: long-distance synchronization of human brain activity.")や前述のPNAS '02と併せて考えるべきです。Nature '99で重要なところは、認知の起こっているところで脳領域間でのphase synchronyが起こっているだけでなく、そのあとに強烈にdesynchronizationが起こっていることです。
そういう認知の切り替わりみたいなものが僧たちでどういうふうになっているか、ということからどのくらいのことが得られるか、それがneurophenomenologyという研究プログラムがどのくらい意味のあるものであるかを占うことにもなります。つまり、neurophenomenologyにある「現象学的分析は単なる内観主義ではない」「現象学的還元や不変項の発見などを通した厳密な吟味によって経験に直接根ざした明示的なtermとして現象的なtermが立ち上がってくる」というような言葉が想定している厳密さ、突き詰め度がこの研究論文あるかどうかを見ておきたいのです。Varelaの瞑想経験やチベット仏教への入れ込みは単なる東洋趣味ではなくて、三人称的世界と一人称的世界とを橋渡しするときに必要な厳密な現象学を実践しているがゆえだったのですから。
こういうことを最近まったく書いてないなあ、いかんいかん。もう少し読んで、もう少し書いていきましょう。

PNAS 11/16

"Fly motion vision is based on Reichardt detectors regardless of the signal-to-noise ratio." J. Haag, W. Denk and A. Borst。Fig.1とか見てるとおもしろそう。Flyのmotion detectorはSN比が低いときはReichardt detectorでSN比が高いときはgradient detectorが働いていると考えられていたけど、two-photonでdendriteのCa2+を測って検証して広い範囲のSN比で調べてみたらどこでもReichardt detectorだったと。


2004年12月02日

大学院講義終わった

疲れた。あとで反省文を。

コメントする (3)
# ご隠居

お疲れ様でした〜.最近の日記本当に充実していますね.素晴らしすぎます.講義じゃ準備の百分の一くらいしかしゃべれなかったのでは?ぼくもこのところ全然読めていないので(申し訳ないです)時期を見て少しずつ勉強させて頂きます.

# pooneil

どうもありがとうございます。>>講義じゃ準備の百分の一くらいしかしゃべれなかったのでは?まさにそんなかんじでした。けっきょくH.M.さん、E.P.さん、K.C.さん、A.M.さんとVagha-Khadem論文までの症例報告で1時間、対連合記憶で30分、Claytonのアメリカカケスで15分、Eichembaumのrecollection-likeで15分、全体的にどうも消化不良、という感じになってしまいました(とくに最後のEichembaumは最悪、signal detection theoryを説明せずにROCカーブの形だけで議論をするというひどいことに。今回の最大の反省点です)。もちろん充分文献を読んで準備しておくこと自体は私自身の勉強にもなってよかったのですが、そういう意味では準備が遅すぎでした。せっかくなので再構成して「web講義」にしてみるつもりです。

# ご隠居

聞くほうは消化不良を起こしてしまうかもしれませんが(ぼくはweb眺めているだけでも下痢しそう...失礼)基本的な枠組みのみならず,ホットな分野だという臨場感,そして講師の先生の熱意はよく伝わったんじゃないでしょうか.あ,ところで,聴衆はどんな人たちだったのでしょう?> せっかくなので再構成して「web講義」にしてみるつもりです。楽しみにしています!

夜9時くらいに寒い中を車

でえんえん遠くの本屋まで片道30分かけていって、とくになにを買うこともなくぐるぐると回ってみて(そのへんでいちばん大きい本屋で、哲学書の棚が3列ぐらいある)、なにか(本ではなくて)あると思ってなにもなくてしかしがっかりもせずに淡々と帰ってゆくのです。
いつもこんなことばかりしてたような気がします。「なんかあると思ってなにもなくてしかしがっかりもせずに淡々と」。
20歳くらいの頃だったろうか、夜中の寒い中を自転車でえんえん遠くまで行って、国道でたくさんの車に追い抜かれて、大きな川を渡って、周りが畑だらけになって肥料の香りの中を一人で走っていることに気付いたあたりでなんか限界を感じて家に帰っていく、こんなことを幾度となく繰り返していたのです。
私の行動はそういった無意味なものから成っていて、なんかそういう人の姿の見えない衝動で夜を徘徊する(周りには誰もいない)、そんなことばかりをしているのです。
たぶんこういう行動をしているのはなんかのサインだったんだと思います。いつでもやってるわけではなくて、なんかのタイミングで無性にそういうことをしたくなっていたのだから。自分にサイン出してどうするんだろう。


2004年12月01日

宣言的記憶と症例H.M.

残るはこのへん(まだやってんのか!)。
Scoville WB, Milner B (1957) Loss of recent memory after bilateral hippocampal lesions. J Neurol Neurosurg Psychiatr 20:11-21
でのH.M.さんの症例報告の記述は1ページ足らずなのでまとめてしまいましょう(Corkin '97やCorkin '02の情報も多少足してあります)。Scoville and Milner '57では両側性の海馬摘出手術の結果として9人の症例を報告していて、そのうち3人(を含む)が重篤な記憶障害、5人が中程度の記憶障害、1人が記憶障害なし、としています。このような深刻な記憶障害が起こることが明らかになってそれ以降側性の海馬海馬摘出というような手術は行われなくなります。
H.M.氏は1926or27年生まれで10歳のときからてんかんの小発作を、16歳のときから大発作を起こすようになります。向てんかん薬を多用してもこの発作の頻度は上昇し、発作の程度も大きくなってゆき、働くこともできなくなってしまいました。
彼のてんかんの原因は不明だけれども、9歳のときに自転車と衝突して5分ほど気を失ったことがあるそうです。脳は計測をしてもてんかんの焦点となるようなものは見つかりませんでした。6-8Hzのslow activityがあり、診断中の発作ではspike-andn-wae dischargeが2-3Hzで見られました。
そこで1953年9月の27歳のときにScovilleが前後方向8cmにわたっての海馬摘出の手術を行いました。この手術のために海馬だけでなく扁桃体や嗅内皮質の一部も損傷されました。実際のlesion部位はJNS '97 "H. M.'s Medial Temporal Lobe Lesion: Findings from Magnetic Resonance Imaging."にあるようにもっと小さく、摘出された海馬は前後5cmで、後ろ側2cmは残されており、perirhinal cortex(のventral側、collateral sulcusのmedial bank)とparahippocampal cortexは残されていることが明らかになっています。
手術後患者は数日は眠そうにしていましたが予後に異常はありませんでした、ただ一つ、重篤な記憶障害を除いては。また、てんかんの発作は顕著に軽減され、75歳になった2002年には一年に2回くらい大発作が起こるくらいとなっています(ゼロにはならないらしい)。
記憶障害は手術後すぐから明白で、1955年の検査の時にH.M.さんは今が1953年の3月であり、自分は27歳であると思っていました。医師との会話では彼は頻繁に子供時代の出来事に立ち返り、自分が手術を受けたことにまったく気づいていない様子でした。
術後のIQは112で、術前の104よりも上がっていました(繰り返しの効果で上がるものですが)。Wechsler Memory Scaleでのstoryのimmediate recallは平均をずっと下回り、対連合記憶課題では0点で、繰り返しの練習によっての成績は向上しないばかりかその課題を行ったこと自体を忘れていました。
よってH.M.さんは手術以降の記憶をまったく保持していない前向性健忘であるだけでなく、手術以前の記憶も部分的に障害されている逆向性健忘を引き起こしていました(古い記憶については保持されているため、「部分的」です)。Scoville and Milnerの記載はこのくらい。
1968年のMilner et alを元にした記載が二木先生の「脳と記憶―その心理学と生理学」にあってそれによって補足:前向性健忘に関しては、30分前に自分が言ったこと、したことをまったく憶えていない。毎日顔を合わせている看護婦や医師の顔を覚えていない(たしか毎日は自己紹介から始まるという記述があったはずだけれどどこだったか)。逆向性健忘に関しては、子供時代の記憶は失われていなくて、10代後半から20代前半の出来事はよく憶えていますが、術前3年間(24-27歳)の記憶に関しては部分的に失われていました(Sager et al '85ではH.M.さんの逆向性健忘は術前11年までにわたると結論づけています)。
H.M.さんは何ができて何ができないか、Corkin '02(Nature Review Neuroscience '02 "What's new with the amnesic patient H.M.?")を元に。

  • スタイラスペンで星型の中をトレースするような感覚運動技能を修得することができる。'65
  • 鏡反転文字を読む能力が向上する(Squireが患者N.A.さんで調べたのと同様のもの)。Corkinはそれをperceptual learningと呼んでいる。'86
  • 複雑図形の再認記憶試験では呈示時間を20sec、遅延時間を10min,24h,72h,1wk,6moとすると、対照群で提示時間1secの場合の成績と変わらなかった。つまり再認記憶課題は解くことができて、familiarity judgementを使うことができる(そこでperirhinalが残っているという事実が効いてくる)。H.M.さん自身はそういったfamiliarityがあることは否定しているようだけれども。'87
  • 術後のあらたなsemantic knowledge(knowledge of the meaning, lexical status, perception, and pronunciation of words and famous names)は獲得できません。'88
  • しかし、H.M.さんは術後に引っ越して住んでいた家の間取りを書くことができます。つまり、H.M.さんの場合でもエピソード記憶は前向性健忘で失われているにもかかわらず、家の間取りというsemantic knowledgeを術後に新たに獲得することができたというわけです。 '02
  • word stem completionは1965年以降に使われるようになった新語ではまったくpriming effectがない。1953年以前の単語ではeffectがある。よってconceptual(semantic)なプロセスは術後に機能していない。一方で単語を短時間(<100ms)呈示して何だったか答えるような課題では新語でも旧語でもpriming effectがある。こちらはperceptual representation(pre-semantic)のレベルでの効果で、明白に宣言的記憶の範疇外。(Neuropsychologia '98 "Impaired word-stem completion priming but intact perceptual identification priming with novel words: evidence from the amnesic patient H.M.")
ところでそうなると再認記憶課題でのfamiliarityというのはどちらに入るんだろうか。Familiarity=knowは意識を伴うのか(autonoeticに対してnoetic consciousness)、familiarity judgmentはsemantic knowledgeなのか、宣言的記憶ではなくて手続き的記憶のprimingの範疇に入れるべきか、だんだん話が拡散しつつも重要な方向が見えてきたかも。もしfamiliarity judgmentをprimingに入れてしまうのであればDMSのような再認記憶課題のrecollection以外のところは宣言的記憶ですらなくなってしまう?
いや、混乱していた。再認記憶課題でrememberと思うのがepisodic memoryの要素で、familiarityを感じて報告するのがfamiliarityによるsemantic memoryの要素で、そのどちらの意識もないのでguessで解いている部分でchance levelよりも上になっているところがprimingによるeffectでこれは手続き的記憶の範疇に入る、これでいいか。Squireの「記憶と脳」では健忘患者のpriming effectはrecognition memory testでの既知、未知の判断の成績とは関係なく生じる(p.160)と書いてあるので、もしpureなpriming成分を見るとしたら上記のことが当てはまるはずだ。どっかに書いてあるだろうなあ。
余談だけれど、Postle and Corkin '98で使った1965年以降に使われるようになった単語のリストからいくつか抜き出すとこんな感じ:
AEROBICS / AFRO / BIKINI / CHICANO / CYBORG / FRACTAL / GIMMICK / GONZO / GRANOLA / HACKER / HYPE / MACHO / NERD / PAPARAZZI / SUSHI / TERIYAKI / YUPPIE
「スシ」と「テリヤキ」が入ってるんだ。どうしても外来語が多くなってしまうのは致し方ない。対照群の1953年以前から使われていた言葉の選択でなんとかするしかないでしょう。

宣言的記憶とエピソード記憶と

うーむ、どうやってもSquireの話を先に持ってきて健忘症の症例から宣言的記憶と手続き的記憶を分けたとして、エピソード記憶と意味記憶とは内側側頭葉の中に局在はない、という話をした後にTuVagha-Khadem論文やYonelinas論文の話をして海馬とperirhinalで分かれるかも、という話をするほうがわかりやすくなってしまう。時系列的に並べるとぐちゃぐちゃでわけわからないし。実際にはそう簡単ではないのだけれど、と但し書きを入れて話すしかないか。


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