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■ 細胞外電極はなにを見ているか リニューアル版

京都で開催された脳プロ分科会の「皮質脳波」のセクションで「細胞外電極はなにを見ているか」ということで10分トークをしてきました。

以前のブログのエントリ(「細胞外電極はなにを見ているか」)を元ネタにして作成していたのですが、あれは電気生理はじめての方も含めたトレーニングコースでのチュートリアルでしたが、今回は神経生理、工学系、臨床系の先生方の前ですので、かなり変更を加えることになって、けっきょくのところほとんど新しいものを作ることになりました。

そうしたら準備した内容が10分ではとてもしゃべりきれないものになりましたので、当日はいちばん関連する部分だけしゃべることにして、増補したものをハンドアウトで配布しました。さらに増補したものをLaTeXを使ってPDFファイルとして文書を作成しましたので公開します。ダウンロードはこちらから:「細胞外電極はなにを見ているか」(pdf)

最重要ポイントは、ニューロンの活動から細胞外電位が発生する過程の「順問題」と細胞外電位からニューロンの活動を推測する「逆問題」とに分けて考えることができるということです。図にするとこんなかんじです:

scheme5.png


くわしいことはPDFの文書をご覧下さい。

今回のプレゼンとこの文書にはいくつか狙いがあって、1) BMIという文脈で期待されていることにきっちり答える。2) Decodingとデータベース作成に関する自分の立ち位置を明確にする。3) トレーニングコースとブログで再利用。4) チュートリアル記事の執筆依頼お待ちしております。というかんじだったのですが、当日はECoG電極のspacingの議論に質問が集中しました。わたしはECoG使ったことないんですけど、専門家面して意見言ってよかったんだろうか。

ともあれプレゼンの方はけっこうおもしろがっていただけたのではないでしょうか。あとで何人かの方に声をかけていただきましたし。私も第一旭と新福菜館と駅ビルの「すみれ」でラーメン三食食って満足。(<-食い過ぎ)

LaTeXはインストールが面倒なのでなるたけmimeTexとかでなんとかしてきましたが、今回はさすがにそういうわけにもいかないなと思ってひさびさに調べてみたら、TeXインストーラ3というのでW32TeXを含むすべてが一括インストールできるようになっていて感激しました。ほんとはアンインストールも一発でさせてほしいけど。

今回powerpointに数式を貼りつけるときにTeXclipにお世話になりましたが、これは素晴らしいですね。(いま気づいたけど作者の方はMouseoverDictionaryの作者でもあるんですね。こちらもお世話になってます。)

こんなかんじでlatexの原稿ファイルをアップロードするとPDFが作成できる、みたいなwebサービスが出てこないですかね。本一冊書くとかでなければ、そういうので全然じゅうぶんだと思うんですけど。精神としてはhtmlみたいに、コンテンツ作る人はコンテンツ作りに集中すべきで、タグ打ちとかもなるたけ省力化する方に行くのがあるべき方向だと思うんですけど。数式書くときしか必要ないからなあ。論文書くのだってバージョン管理システムを使うよりはワードの履歴機能使う方が圧倒的によいですからね。

って話がずれてきたので、終了。

コメントする (15)
# mmrl

ども、おひさしぶり、mmrlです。

現在新しい多点電極で深いところの細胞外記録チャレンジ中なのですが、スパイク波形が従来のやり方と異なってとれてきていて、スパイクソーティングに悩んでいました。

むか〜し勉強した電磁気学の教科書と、Kochのを引っ張りだしてきてうんうんうなっていたのですが、大変参考になる資料を作っていただきまして非常に勉強になります。

# pooneil

ご無沙汰しております。
>>現在新しい多点電極で深いところの細胞外記録チャレンジ中
おー、たぶん深いへんだとニューロンのdendriteの形状が違うからpyramidal neuron用のアルゴリズムだと最適ではないのかもしれませんね。
"Biophysics of Computation"とか"Methods in Neuronal Modeling: From Ions to Networks"とかも読んでおかないといけないのですが、けっきょくHolt-Koch論文とかですませました。

# 元物理系学生

すみません。気になったので投稿します。
以前のエントリですが、


Vext = R/(4*pi)*Σ(Ij / rj) ---(3)

ただし、Vextは細胞外電極で測定された電位、Rは細胞間隙の抵抗でだいたい200-300ohm/cm。Ijはある場所jで流れた電流の大きさ、rjは場所jから細胞外電極までの距離。Σはすべての電流源jでの総和。(Nunez and Srinivasan(2006)より)


なんとなく意味は通じるのですが、空間上の一点を間接的に表現している r と一点では表現し得ない I が混在している時点で(3)の表式に違和感あるんですが。
生物系では慣例的にこういう表式するんですか?

# pooneil

psycho-resiさん、こんにちは。はてなダイアリー拝見しました。
物理出身で精神科医をされていて、ECTの効果を脳内でのマクスウェル方程式を解いてシミュレーションしてるということは、私よかよっぽどこのへんについてくわしいと思うんでこっちの方が教えていただきたいです。
ご質問いただいた件ですが、何段階かポイントがありまして、わたしもしぼりきれないのでそれぞれ書いてみます。
1) まず、ご質問への直の答えですが、上記の式自体は言及している教科書Nunez and Srinivasan(2006)の中でじっさいに使われている式ですし(p.168)、他の論文などでもニューロンの活動から周りの電位をシミュレーションするときによく使われる式です。
2) 新しい記事の方もそうですが、わたしの言葉遣いとして、currentとcurrent sourceや、currentとcurrent densityを厳密に使い分けていないところがあります。たとえば上記のIjはcurrent sourceと言うべきでした。このへんを正しくしたら問題は解決するでしょうか?
3) もし上記の式が∑ではなくて積分形で、微小領域dSで流出入するcurrent source I(x,y,z)の足し合わせ(∫I/R dS)だったら違和感は解消するでしょうか?
4) 電磁気学の教科書によく出てくるのは上記のcurrent sourceがpotentialを作るものではなくて、chargeがpotentialを作るものですが、こちらの場合も上記の教科書では φ = 1/(4*pi*ε)∑(qj/Rj) という表記がされています(φは電位、qjは位置jでのcharge sourceの量で、εは誘電率)。これには違和感はありますか? 積分形なら問題ないですか?
5) 細胞外電位で見ている現象は、細胞膜が静止膜電位で分極しているchargeによって影響を受けるようなミクロな系ではないので、4)のchargeの式ではなくて上記のcurrentの式を使うこと、上記のcurrentの式はあくまで細胞外電位で見ているようなmacroscopicな物理現象でのみ妥当であること、が上記の教科書には書かれています。このあたりが論点でしょうか?
以上です。ほかにもぜひこれらのエントリや文書で直すべき点、改良すべき点などありましたらご指摘いただけるとありがたいです。

# 元物理系学生

いえ、あんまりわかってないです。
ECTの科学的な基礎ができてないと感じたので着手したんですが、できたのは静解析のみです。マクロの大雑把な電位勾配や電流密度はそれらしく計算できたんですが、ミクロのつまりニューロンとそれらがどう相互作用するのかは課題として残ってます。

質問に関してですが、私、その教科書持ってないので印象でしかいえないんですが、膜上の局在した領域でのみ電荷の移動がおこるという前提があるようですね。ならばそのn番目の領域dSでの電流密度ベクトルjnを定義して

 In=∫jndS

細胞外電極で測定された電位Vextはこれらの足し合わせだから

 Vext = R/(4*pi)*Σ(In / rn)

とすると私の場合は激しく納得します(少なくとも表記の上では。式自体はどうやって誘導されたかわかりません)。
前提の理解が違ってたらたぶん見当違いのこといってます。

(4)は違和感なし。
(5)は難しいんでまた考えさせてください。

# OK

たぶん、問題の式がわかりにくい理由の一つは、Imがcurrentやcurrent densityではなく、current sourceをあらわしていることによると思われます。current sourceは-div(Jsource)(Jsourceは膜を通過するcurrent densityのうち、passiveな抵抗性電流で説明されないもの)と定義される量で、マクロ系の電磁気学でみかけるものです。

currentやcurrent densityを考えると、電荷の偏りがないかぎり、電流は閉じているはずなので(d(rho)/dt=0 -> divJ=0)、電流がある点にしかないというのはありえないことです。しかしながら、-div(Jsource)は、点状に分布し得ます。

ここのところは、マクロ系の電磁気学の議論に類似しています。すなわち、current density(J)をオームの法則の法則に従うpassiveな抵抗性電流(sigma*E)と、それ以外(=容量性電流 + active conductanceなど)に分解します。この後者をJsourceと呼ぶことにします。J = sigma*E + Jsource。Jについては、電流は閉じているはずなので、divJ=0。

active conductanceや容量性電流などがなければ、(sigma=const.として)常に、div(E)=0で、磁場でもあたえない限り、rot(E)も0で電場もなにも発生しないのですが、active conductanceが働くと、div(E)は0とは限らず、電場および電位が発生することになります。

ここでdiv(J)=0、およびJ = sigma*E + Jsourceより、
div(E)= - div(Jsource) / sigma = (current source) / sigma。

したがって電場(phi = - grad(E))は、
phi = -Laplacian (current source) / sigma 
となって、rot(E)=0より、r->infinity でphi=0の境界条件のもとで
(3)式のように解くことができます。

# pooneil

psycho-resiさん、どうもありがとうございます。基本的にはわたしのコメントの2)での「たとえば上記のIjはcurrent sourceと言うべきでした。」というのが論点だったようですね。
あと、教科書(Nunez and Srinivasan(2006))での記載では、たしかにI_mは点ではなくて、ある一定の大きさを持った小領域になっています。つまり、球をどんどん小さくしていって、その外側ではdiv(J)=0が成り立ち、その球面より内側ではdiv(J)=s(source current)になっていて、この球の中心からr離れた場所での電位φを計算する式となっています。この関係を使って、膜に広がって分布しているcurrent source/sinkを小領域に分割して足し合わせる、というのがここでやっていることであると理解しました。
式(3)の表現の仕方としては、ケーブル方程式で求まるtransmembrane current I_mという細胞の中から見た値が、細胞外からはsource current s (≡-div(J_source) )として捉えられていて、中からと外からの表現が混ざっているというあたりの問題なのかなとも思いました。

# pooneil

OK さん、どうもありがとうございます。ご指摘の「細胞膜ではdiv(J)=-I_m、それ以外ではdiv(J)=0」については、今回のPDFファイルの注5で多少言及しておりますが、以前のエントリのときはまだこのへんがわかっていませんでした。
J = σ*E + Jsourceの式に関してはOKさんの解説で非常にすっきりわかりました。どうもありがとうございます。(じつはこの式はNunez and Srinivasan(2006)のp.166で扱われていまして、該当部分を読んではいたんですが、十分理解できていませんでした。) Active conductanceとcapacitative currentだけがdiv(J) ≠ 0の点を作る、というのはとてもクリアーで、なんで膜にだけcurrent source/sinkがあるのかが明確になりました。(なんとなく、電極からは膜の向こうは抵抗が大きすぎて「見えない」から、その境界から出入りする電流はみな無から有が生まれたように見えるので、current source/sinkになる、というような理解の仕方をしていました。)
そうするとひとつ新たな疑問が生まれてきたのですが、わたしの図式では、ケーブル方程式で transmembrane potential V_mを計算した後に、transmembrane current I_mを抵抗性成分g_m*V_mと容量性成分cm*dV_m/dtの和として計算していました。その上でI_m/rを足し合わせる(式3)ということをしていました。しかし、電位に影響を及ぼすのが容量性成分だけであるなら、source currentの値としては、抵抗性成分g_m*V_mを差っ引くべきではないのでしょうか? つまり、ある位置での膜のsource current s = I_m - g_m*V_m であって、&phi = ∑ (I_m - g_m*V_m)/r とすべきではないのでしょうか? ただ、今回参照したPettersen KH, Einevoll GT. Biophys J. 2008 Feb 1;94(3):784-802では、式(3)のI_mがlinear leak currentとcapacitative currentの両方を含んでいると書いていますので、たぶんわたしがいま言ったことは間違っているんだろうと思いますが、このへんがまだよく理解できていません。

# OK

"Jsourceは膜を通過するcurrent densityのうち、passiveな抵抗性電流で説明されないもの"と書いたのは間違いでした。膜を通過する電流は抵抗性成分、容量性成分どちらも含める式で正しいと思います。
div(E)= - div(Jsource) / sigma とするときに、sigmaは一定でなければいけないので、細胞外空間だけを考えて、細胞膜のところは境界条件として扱うので、膜を通過する電流の抵抗性成分はsigma*Eには含まれず、Imのほうに入ってくるのだと思います。

# pooneil

OKさん、長々とおつきあいくださいましてどうもありがとうございます。これは細胞外の(σ1)と細胞膜の(σ2, ε)というふたつの領域があって、元々の話は細胞外の(σ1)の環境でのポアソン方程式を解くのに細胞膜の表面を境界条件として使うという話であって、私がケーブル方程式云々で言っていたのは細胞膜の(σ2, ε)の環境でのポアソン方程式を解くときの話であって、両者をごっちゃにしてしまったということのようです。またもう少し時間を取って勉強してみたいと思います。とりいそぎ御礼まで。

# 元物理系学生

このスレ長いですね。
この話題に微妙に関係するご相談なのですが、先日投稿した論文にレビュアーからコメントが返ってきました。
かなり見当違いなコメントで正直相手にしたくないのですが、なかでも凄いのが

between the field strength in the brain tissue with ECT and possible neurophysiological responses

の関係を明らかにせよというもの。
それがなかなかできないからシミュレーションしているんでしょうに…。

それでなんですが、仮に実験系を組むとしたらどんな感じがいいかご相談よろしいですか。

考えようによっては、この分野、基礎から臨床までシームレスですね。

# pooneil

>>このスレ長いですね。

以前はコメントが15個並んだこともあったのですが
(two-photon in_vivo imagingのカテゴリ)、これだけ長いのも久しぶりです。

>>between the field strength in the brain tissue with ECT and possible neurophysiological responsesの関係を明らかにせよというもの。

ちょっとこれだけだとよくわかりませんが、rodentとかで電気刺激によるseizureの誘導と記録の実験とかそういった過去の論文を引いて議論すればよいのではないですか?
実験系、というとちょっとわからないですね。
今回作ったPDF文書の中ではLogothetisのNeuron 2007論文というのを言及していて、それとかは微小電気刺激をしたときの応答からconductanceを計算してたりします。ただ、たぶんECTの場合はseizureまで起こすのが必須なんだと思うんで、ちょっと違いそうではありますが。
ではまた。

# Kensuke

どもです。現在LFPとスパイクの関係を調べてる者で、共同研究者が吉田さんのレジメを発見して来てくれたのは良かったのですが、僕も式(1)のphi = (1/4pi sigma) I_m/rで混乱してしまい、このスレで納得しました。感謝感謝。それで細かい事で申し訳ないですが、OKさんの

>>したがって電場(phi = - grad(E))は、
>>phi = -Laplacian (current source) / sigma 
>>となって、rot(E)=0より、r->infinity でphi=0の境界条件のもとで
>>(3)式のように解くことができます。

はE = -grad phiと
current source = -(1/sigma) Laplacian phi
の間違いですよね。

# pooneil

Kensukeさん、どうもありがとうございます。ちょっともう内容を忘れかけてますが、「E = -grad phi」の式はたしかにひっくり返ってましたね。
PDFのファイルのほうも、ここで皆様が書いてくださったことを元にしてアップデートしておきたいのですが、頭がそっちに戻らないので止まってます。
Kensukeさん、物理屋さんですよね。もしよければ、PDFの式(1)のあたりの表現をどう変えるといいかsuggestしていただければ、acknowledgement付けてPDFをアップデートしたいと思いますので、ぜひご考慮いただければ。

# pooneil

もしくはappendixに新たに項目を設けるとか。pLatexで書いてくだされば対応できますのでぜひ。


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