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2004年04月30日

ガヤScience article論文

4/27の「ん?」さんへのコメントからつづき。発表直前にガヤとメールのやり取りをして出たきた論点を踏まえて。

  1. 同期発火でない、時間遅れのあるsequence自体を最初に報告したのはMao BQのNeuron論文であるようで、厳密にはnew findingではないらしい。もちろんそれを使ってここまでガンガンに解析してその実在性を示したのはこの論文が初めてで、新規性に関しての問題はまったくないけれど。
  2. また、fig3とfig4cについて、これはたいへん微妙であると思う。Fig4cのsongはfig5でやっているようなregression analysisに乗せると、おそらくthetaは37degくらいになる。Fig5cにあるように、thetaが37degあたりのsongが検出される数はsurrogateデータと変わらず、有意ではない。またさらに言えば、fig5cを見ると、thetaをcollapseしたtotalでのsongの数はchance levelと変わらない。Thetaによるsongの数の分布がreal dataでは均等でない(fig5c)、regressionの残差がreal dataの方がより低い(fig5d)、ということに関してのみ有意性をテキストは主張している。このことからすると、fig4cのデータの鮮やかさに圧倒されてしまうのだけれど、実はfig4cのような繰り返しパターンがrandomな分布から得られる可能性があるのかもしれない。これは4/24の日記の最後のパラグラフで書いたことにつながる:おそらくfigS7のようにではなくて、ISIシャッフルして作ったcortical songのsurrogateデータはreal dataよりも少ないだろう。しかしこれはsequenceの数とsongの数とにcorrelationがあって、シャッフルして作ったsequenceの数が少ないことからして充分なcontrolとなりえていない。この問題を解消して、(detectされたsequenceからではなくて、)シャッフルした活動から作られたsongのsurrogateデータを作ることができれば、本当にfig4cのような繰り返しパターンがrandomな分布から得られるかどうかを検証できるのだろう。(たぶん、あるべき帰無仮説H0はランダムな活動の列からsongが出来ることであって、detectされたsequenceをランダマイズしてsongが出来ることではない。)
こういう二段階の検定(sequenceとsong)が持つ問題はmultiple comparisonと並んで一般的に起こりうる問題なので、どっかで誰かが扱っているような気もする。たとえば、メタアナリシスの研究あたりでは、個々の研究の解析をまとめてなんらかの結果を出さなければならないため、多段階での解析が同じように問題になるはずだし。どっかで方法論が研究されているはず。Biometricsあたりの雑誌とかにないかな。

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# ガヤ

上記の点2はすべて同意(&正解)です。今回の論文ではいかんともしがたかった、というより良い方法が思い付かなかったけれど(最後に指摘してくれている点はベターな方法ですね)、いずれ対処しなければいけない問題です。sequence自体については最近でた総説NatNeurosci7(2004)456の「Spike Pattern Classification Methods」の項にも同様な指摘ありますが、ただ、これが2段階になると数学的アーティファクトの危険性は格段にあがるわけです。また、今のところ誰も指摘していませんがシンクロの問題もやっかいで、シンクロによってrecruitable spikesの数がnonlinearに上昇するので、これによっても疑似sequence数が増加すると考えられます(Fig3Gでは意外ですが回避できません)。とりもなおさず「ん?」さんのlocal population modulationに直結する問題(この場合のlocalとはspatialな意味ではなくてsubsetという意味です)。だからcell assemblyの検出問題にもなってくるのです。これは時間窓を区切って「K means algorithm」でclassifyするのが良いかと今のところは思っています(まだ実行していません)。さらにもう一点挙げますと、Fig3Dがこの論文の真の最重要データになりまして、コレ故にPooneilさんがこれまで挙げて下さった“個々のsequenceに関する解析法”はすべて無意味化されてしまうくらいの影響力を持っています(この現象は次の論文のテーマの一つです)。ただ、これまでに挙げて下さった解析方法はそれ自体有意義なものばかりですので別の方向でぜひ活用させていただきたいと思っています。

# pooneil

Fig3Dか、うーむ。FfigS5にも入っていたし、なんか過剰な気はしたがそういうことか。これについてはJCのときに少し考えて説明したんだけれど、あるsequenceが繰り返されるのはある短いスパンでのみのことで、そのような繰り返しはどんどんドリフトしてゆく、つまりそのrepeating sequenceの出現は非定常的なもので、joint-PSTH的なanalysisには馴染まない、そういうこと? そういうglobalなcell assemblyの推移とでもいうか。たとえばなんかでcell asemblyを大まかに分類するとそれぞれのreactivationは/XXXX\のようなグラフになるとか? なんにしろ、コメントありがとう。

毎度ながら

コメントを書くときと日記を書くときとでの口調が違うので困ってしまう。あんまこういう書き方ばっかりだとコワモテな感じがしてしまうかもしれない。すべてをですます調にしたほうが楽なのかなあ。


2004年04月29日

Neuron '03

4/27の「ん?」さんのコメントで
Neuron "'03 Multineuronal Firing Patterns in the Signal from Eye to Brain." Schnitzer and Meister。
が紹介された。どうもありがとうございます。完全に見逃してました。ほかにも重要な論文を見逃してそうです。Clay ReidのNeuron '00 "Low Response Variability in Simultaneously Recorded Retinal, Thalamic, and Cortical Neurons."もsynfire chain的観点から関係付けられそうです。


2004年04月28日

PNAS 4/27

"The anatomy of semantic knowledge: Medial vs. lateral temporal lobe." Squire @ UCSD。自分自身でのcontribution。私のPNAS論文はSquireにeditしてもらったので足を向けて寝られない。
"Parietal cortex and representation of the mental Self."
"Human posterior auditory cortex gates novel sounds to consciousness."
"Cooperative synchronized assemblies enhance orientation discrimination." V1ニューロンは一個一個がそれぞれorientaionをコードしていて、V1すべてのニューロンを組み合わせることで視野全体のすべてのorientaionをコードしていることになる。んでもって、個々のニューロンが持っている情報はそれぞれ独立かというとそういうことはなくて、個々のニューロンが持っている情報以上をpopulationによってコードしていたり(synergyもしくはcooperation)、逆にpopulationでの情報は個々のニューロンの情報の総和より小さい(redundancy)ということも起こる。その辺について採り上げたのが12/19-21に採り上げたBialekのJNS "Synergy, Redundancy, and Independence in Population Codes."であった。今日採り上げた論文もKL divergenceとかを使ってるみたいだが、V1のorientationに関してはcooperationのほうが起こっているということらしい。
"Brain networks underlying human timing behavior are influenced by prior context."


2004年04月27日

Journal club

でのアンチョコとして使ってもらえたら幸い。そのくらい中身が充実しているようでありたいと思う。そういう意味ではガヤ論文に関してはかなり充実したと思うし、かなりcriticalにも読んでいるつもり。

ガヤScience article論文

4/24の「ん?」さんへのコメントからつづき。
Joint-PSTH的な扱いのつづき。Cell1,cell2,cell3があったとき、cell1の発火をreferenceにしてその時間遅れはt2,t3の二つで定義されるため、ふつうのjoint-PSTHよりも自由度が1減っている。t2,t3が負であることを許容すれば、cell1が最初に発火するsequenceのみに限定されないので三つのcellから可能なsequenceは(t2,t3)の平面ですべて捉えることができる。そうすると、cell1,cell2,cell3が時間遅れ(t2,t3)で発火するjoint probability P123(t2,t3)*1がたとえば、[cell1とcel2が時間遅れt2で発火する確率P12(t2,:)]と[cell1とcel3が時間遅れt3で発火する確率P13(:,t3)]との組み合わせよりも有意に高いことを示す必要があることがわかる*2。この視点はScience論文にはない。
そのうえで、multiple comparisonの補正をしなければならないことになる。ここでBonferroniを使うのは厳しすぎるだけでなく、おそらく間違っていて、fMRIのときのように補正した自由度を計算して対処する問題のようにも思う。もしくは、multiple comparisonを回避するために、次元を落としてしまう。たとえば、ランダマイズしたデータの(t2,t3)の平面上全体のデータをあわせて上位5%以上のcorrelationを持つものがreal dataでは30%あることを示す。こうすれば、real dataのどれが有意であるかは直接言えないが、(t2,t3)空間の分布が有意に片寄っていることは言えるだろう。この場合、t2,t3の範囲をどう区切るかでおそらく有意度が変わってくることになるが。


*1:t2とt3で積分すると1になる。
*2:もちろんcell1,2,3それぞれのfiring rateの組み合わせからも。おそらくこのへんでNakahara and Amari論文が関わってくるはず。

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# ガヤ

お?これなかなか良い方法っすね。今のデータは記録時間が長いのでそういう解析も可能かと思います。あと、「ランダムで上位5%以上がreal dataでは30%ある」のような判断は先週もメールで個人的に話した「シンクロレベルの評価」の過程で、今回のScience論文でもやったのですが、でも検定に困りました(とういうわけで改訂時に削除)。ラボ内の研究報告会ではカイ検定で報告したのですが、それはちょっと違うように思うし。。。

# pooneil

コメントサンクス。日記での紹介もありがとう。記録時間が長くてもかなり難しそうに思う。というのはそのjoint-PSTHの各セルごとの事象の個数はほとんどがおそらく0か1なわけで、これが充分大きくならないと難しいように思う。Abeles JNP ’93を読んだときに、Table 1だったかで長いsequenceの繰り返しが一個見つかってきて、これの出現の期待値が0.04だから有意だ、つうのがあったけれど、どんなに期待値が小さくても、たった一個見つかったことを有意だと言うのはどっかおかしいと思った憶えがある。逆にsequenceの繰り返しがどのくらいの個数集められればよいかということから必要な記録時間が決まるかもしれない、とは言えるかも。
こうして書いてみてわかったけれど、一昨日から私が書いているのは個々のsequenceの有意度を検定しようとするということであって、Science論文ではどのsequenceが有意かは言えないけれどもsequenceの個数は有意に大きい、ということまでに留めている(synchronous firngの検定で使っているような「ランダムで上位5%以上がreal dataでは30%ある」も同じようなアプローチと言える)、と整理できる。ゆえに前者は後者への反論、というのとはちょっと違っているようだ。Science論文の解析の不充分さを突くつもりだったのだけれども、意図せずより先に進んだ解析を提案している、という形になったようだ。

# ん?

先日の続きです。先日はlocal population modulationと書きましたが、Fig.4などを見ると、必ずしも局在しているわけではないので、幾何学的な制約は外して、cell assemblyと呼んだ方がいいのでしょう。Fig. 3から、同期発火で定義されるようなcell assemblyが存在して、それはCossart et al. (2003)でも示されていたが、imagingの時間分解能をあげることによって、その同期発火は、ある有限の時間幅を持った現象であることがわかった、ということは言えていると思います。問題は、このcell assemblyの(時間幅のある)同期発火の中で、さらに特定のsequenceが他のsequencesより有意に多く発生しているかということをどうやって示したらいいかということかと思います。これを示すのに、吉田さんのコメントにありますように、実際に発生しているsequencesの分布がcell assembly内のrandomな分布から予想されるものより有意に偏っていることを示すか、特定のsequenceがcell assembly内の他のsequencesよりも有意に多く発生していることを示すかの二つの方法があるかと思います。前者のほうが(後者より)有意に出易いのでしょうが、cell assemblyというものをはっきりと定義することはおそらく難しく(Schnitzer & Meister 2003のように一つのcellが複数のcell assemblyに属していたりするでしょうから)、実際にこちらを実行するのは難しいかと思われます。後者の方法では、必ずしもcell assemblyを定義する必要がなく、例えば、あるsequenceの順と逆順の発生に有意差があるかどうかなどを検定するだけでいいのですが、実際問題としては吉田さんのコメントにもありますように長さ3以上のsequenceの有意度を検定するには膨大なデータが必要で、さらにmultiple comparisonsの問題も入ってくると実行不可能に近いのではないかと思われます。筆者らは、上記のどちらでもない第3の道を行っていて、Fig. 4では、sequencesから構成される、より高次のsequenceの存在を示しています。確かに、Fig. 4Cのような繰り返しパターンがrandomな分布から得られるとは考えにくいと思います。従って、Fig.3はFig. 4と併せて評価されるべきなのでしょう。

# pooneil

コメントどうもありがとうございます。おおむね賛成です。二つほどコメントを。長くなりましたので、4/30の日記に書きました。


2004年04月26日

Neuron

Nature

"Perceived luminance depends on temporal context."
Distractorのonsetと同時に点灯したときのtargetと、distractorのoffsetと同時に消灯したときのtaretとで、感じるluminannceが違う。しかもそれはattentionによらないそうだ。
ちょうどJCでCarrascoのNature Neuroscience "Attention alters appearance."が採り上げられたところだったのだが、もちろん、attentionによってもperceived luminannceが変わる。AttentionによるSpatial resolutionの向上、perceived luminanceの上昇などがどう関係しているか興味がある。

ガヤScience article論文

を隣のラボのjournal clubで採り上げた。みんなシステム系の人たちなので、repating sequencesのfunctional significanceについて知りたがったが、Abelesのコメントにもあるように、これそのものがなんらかのneural correlateとして捉えるべきではないこと、これがvivoで入力によってどうmodulateされるかは今後の課題であること、Aertsenのoptical imagingの話をしてspontaが時空的構造をもっている可能性がすでに示唆されていることなどを答えた。


2004年04月25日

ガヤScience article論文

つづき。昨日書いたことをもうちょっと違った言い方で書いてみる。Cortical songのような高次の構造や長いsequenceの有意性を検定するためには、multiでrecordingしている人がやっているように、時間方向に膨大なデータが必要になるのではなかろうか、という直感があるのだ。

あるrepeating tripletが繰り返されるのが有意であるかどうかは、三次元でのjoint PSTHをあるcellの発火を基準にしてガンガン重ね合わせて作ることで確かめられるのではないだろうか。

以前、中原裕之さんと甘利先生のNeural Computation '02 "Information-Geometric Measure for Neural Spikes."を読んだことがあるのだが、高次のjoint-PSTHでのcorrelationの有意度検定にも使える。細胞a,b,cのcoincidence firingをpabcで1がfirngあり、0がfirngなしとして、p000, p100, p010, p001, p110, p101, p011, p111(全部の和が1になる)と書くと、三次の相関の大きさを

thetaabc = log( (p111p100p010p001)/(p110p101p011p000) )

として計算すると、細胞a、細胞b、細胞c、それぞれのfirng rateとは独立になる、というのがNeural Computationの情報幾何からの帰結だった。この式はもちろん、同時発火でない場合でも使える。Information rateを計算するときにはなんか外界の刺激のonsetにあわせてalignして作るのだろうけど、こういう場合はどっかの細胞の発火でalignしてしまえばよいだろう。データに重複があるときの独立性の問題とかがある気がするが、よくわからん、そんなこと気にしてたらspike-triggered averagingなんて出来ない気がするし。

三次の項ですら八通りの確率を充分正確なものにするのに膨大なスパイク数が必要になる(しかも時間遅れの組み合わせが爆発する)。ガヤがやっている話の場合は、スパイク数はそんなに多くないが、記録細胞の多さをたぶん活用しているということらしい。しかし、直感的には多くのspikeを含んだsequenceほど、そのdetectionと有意度検定にはものすごい数のspike数が必要になる気がする。もちろん、今回の論文はinformation rateのような定常的なデータを出すのとは別なことをしているのだろうし、直感的には、ということでしかないのだが。

Joint-PSTHをイメージしながらもうちょっと違った言い方をすれば、cellA->20ms->cellB->150ms->cellCとかのsequenceの有意度を検定するとき、それがたとえば、cellA->20ms->cellB->140ms->cellCと比べて有意であるという形になっていないという問題なのかもしれない。


2004年04月24日

ガヤScience article論文

つづき。
データは信頼性があるか。
私が一番重大だと思うのは、cortical songの有意度についてだ。Fig.3EFGを見ればわかるように、各種のshuffleで作ったsurrogateデータからできるsequenceの数と比べて、real dataのsequenceの数はずっと多くて、有意である。しかし、ここからが本題。基本的にはjitter=1 frame (=25-100ms)のところで解析しているようなので、横軸の1のところを見て、一番厳しいcontrolであるGのグラフ(で考えるのがフェアだろう)を見ることにすると、realデータで見つかるsequenceのうち半分近くはshuffleしたデータでも説明できることがわかる。(つまり、統計の検定で、alphaを考慮するだけでなく、 betaの考慮すべきであると言い換ええられるか。)ということは、それの組み合わせから作られるcortical songがby chanceでないsequenceのみから作られている可能性はずっと低くなる。
テキストにはcortical songは2-8 sequence (mean 6.2 sequences)から出来ていると書いてあるから、6個のsequenceのcortical songについて考えてみることにしよう。単純計算で、50%のsequnceがartifactとして、 平均6 sequenceからなるcortical songがartifactではないsequenceのみから出来ている確率は(0.5)^6 = 1.5%だけだ。低く見積もって30%のsequenceがartifactとしても、11%のみがartifactを成分に持たない。つまり、平均6 sequenceからなるsongのうち、本当に有意なsongに含まれるsequenceの数はずっと少なくなるであろう。また、検出されたsongのうちで有意なものが目減りする可能性もある。
SupplementのFig.7では、cortical songがby chanceで起こっていない証拠として、detectされたsongのsequenceをshuffleして、そこからできるsongの数が有意に多いことを検定している。このfigureのたとえばB7を見ると、real dataのsongの数60のうち、surrogateデータから説明できるsong数は45くらいになる。つまり、3/4はby chanceで説明できてしまう。しかも、このfig.S7の検定は、detectされたreal dataのsequenceを使ってshuffleしているので、上のパラグラフで私が指摘したような、このsequenceがpseudo-positiveである可能性というのを考慮していない。
さて、どうすればよいか。ISI shuffleして作ったsurrogate dataのsequenceからsongを作るのでもcontrolとして不充分だし、fig.S7のようにdetectされたreal dataのsequenceをshuffleしてsongを作るのでも不充分に思える。要は二段階の手続き(sequenceの検出とsongの検出)を取る必要がある点に私はひっかっているのかもしれない。

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# ん?

コントロールをどうとったらいいかは、とくにサンプル数が多くて、pseudo-positiveが出易い場合には、難しい問題ですね。Fig. 3Gは一番きついコントロールのようですが、これでも、まだ問題は残っていると思います。Fig. 3F, Gのコントロールで、population modulationによるpseudo-positiveの効果は取り除けているように見えますが、もしlocalなpopulation modulataionがある場合には、このコントロールでは不十分な可能性もあります。極端な例として、二つのニューロン群A,Bがあるとして、A群とB群が交代に(時間的にゆるい)同期発火するようなケースを考えましょう。A群は期間TAに同期発火をして、B群は期間TBに同期発火したとします。Fig. 3Gのexchangeが、A群のあるニューロンの期間TAにあるスパイクと、B群のあるニューロンの期間TBにあるスパイクの間で行われると、期間TAではA群のニューロンの発火数が全体として減少し、B群のニューロンの発火数が増大します(期間TBでは逆)。そうすると、期間TAでは、スパイクの総数は変わらないのですが、スパイクがA群に集中していたのが、A,B両群に分散するようになり、sequenceを見つける確率が減少するでしょう(期間TBについても同様。Sequenceの長さがnなら、最大、1/2^nまで減少しうる)。この例は極端なものですが、二群に分かれていなくても、localなpopulation modulationがあれば、同様なことがおこるかと思います。このように考えますと、Fig. 3Gのexchangeが、local population modulationの時間幅よりも十分時間的に短い範囲でなされていれば、Fig. 3Gで十分なコントロールになっているかと思われますが、そうでない場合は、まだコントロールとして十分でない可能性があるかと思われます。これが不十分な場合、時間的にゆるい同期発火があるということは主張できても、特定のsequenceがあると主張するためには、他の証拠が必要になるかと思います。論文中にもありますように、特定のsequenceが何度も出現するが、その逆は出現しないということは、証拠の一つになりそうですが、論文中にはこのことについての統計的議論はなされていないようです。この統計はいろいろと難しい点があるかと思います。たとえば、template matchingで得られたsequenceの一つだけあげて、その順の発生数と逆の発生数を使って、二項分布で検定するというだけでは不足かと思われます。これでは、fMRIの解析で、P<0.001で選ばれたvoxelだけを持って来て、t検定をmultiple comparisonsの補正なしでやるのと同様のことになってしまいます。まともに補正をかけようとすると、膨大な数のsequenceにわたっての補正ということになりそうで、ちょっと想像がつきません。他に考えられる方法としては、このホームページにあるように、「cellA->20ms->cellB->150ms->cellCとかのsequenceの有意度を検定するとき、それがたとえば、cellA->20ms->cellB->140ms->cellCと比べて有意である」というようなことを言ってもいいのかもしれませんが、これにも同様のmultiple comparisonsの問題が存在するものと思われます。

# pooneil

コメントありがとうございます。こういうコメントをお待ちしておりました(喜びをかみしめ中)。そうですね。Multiple comparisonの問題は重要だと思います。この点についてはcrosscorreologramやjoint-PSTHやunitary eventの有意度の検定などでもたいがい同じ問題が出てくるようで、難問だと思います。そういう意味ではfMRIでFristonがsmoothingのcorrectionを導入して解析を確立したのは、たとえ多分いくつか不備があるであろうにしろ、偉大だったと思います。
Fig. 3Gの難点についても、なるほど納得です。考えても見なかったです。三種類も違ったshufflingの図を出しているあたりからしても、ここはかなり難しく重要なステップだったことがうかがえます。
ん?さんならわかると思うんだけれど、私が4/25に書いたようなjoint-PSTHはspontaで使えるのでしょうか? 勘違いしている気もするんだけれど、可能ならそのほうがformalだと思うわけです(4/27で採り上げているように)。


2004年04月23日

ガヤScience article論文

速報。公開されてる。 おめでとう。
"Synfire Chains and Cortical Songs: Temporal Modules of Cortical Activity." ガヤ and Yusteラボ @ Columbia University。
Sliceの一個のニューロンからwhole-cell patchでspontaを記録すると、EPSC数個の時間的パターンが、msオーダーの正確さで繰り返される。これが前半部。さらにtwo-photonでsliceのCa transient (spikeまたはburstのonset)を同時記録(たとえば800個)すると、あるニューロンの活動から遅れて次のニューロンが活動し、また遅れて別のニューロンが活動する、といったsequenceが正確なタイミングで再び繰り返されるのを見出した。さらにこのようなsequenceのいくつかが同じ順番で繰り返される高次の構造"cortical song"を見出した。
ニューロンの活動を音で置き換えてみたり、タイトルのcortical songや繰り返されるmotif、といった言葉の使い方も遊び心がある。Synfire chainとcortical songがSCとCSで逆なのは偶然か*1。Cortical songが収縮して繰り返されるところもフーガのようですばらしい、と言いたいところだが、sequence自体は収縮しないのであった。というあたりで充分楽しませてもらった。論文のpdfとsupplementのpdfとでタイトルが違ってるあたりにrevise時の混乱が垣間見れる、とか余計なネタを入れてみたり。
ガヤ論文に関する私の論点は以下の通り。

  1. 内容がおもしろいか。 これは文句なしに面白い。一見ランダムなスパイク列が他のニューロンとの関係によってある種の時空間的構造として捉えられる、というのはすばらしい。究極的には、無駄なスパイクなんて一つもない、というところまで行くのではないかという期待が持てる。
  2. データは信頼性があるか。 どんな論文でも免れないが、いくつか問題があると思う。これに関しては明日。
  3. 解析は妥当性があるか。 個々の解析が非常にunconventionalで、わかりづらい。本当にそれらが最適な手法であるのか、あれだけの記述では充分に説明されていない。
  4. データは主張とconsistentに構成されているか。 前半のintraと後半のCa imagingで見てるものが違う点については、正直かなり苦しい、というか二つの仕事を無理やりくっつけたように見える。後半のデータへの信頼性を前半のイントラで押さえるという意味ではほんの少し記載があった二本刺しのintraのデータがもっと充実してあるべきだったようにも思う。
  5. タイトルどおり、Synfire chainとの関連はあるか。 AbelesがJNP '93についてsynfire chainと言っているかぎりにおいてsynfire chainと言っていいかなと考えた。
  6. Mao BQのNeuron '01やCossart RのNature '03とくらべてどう新しいか。二つのpaperはsynchronyを注目しているが、Science論文は複数のニューロンが繰り返し同期発火するのを時間遅れを考慮したものに重きをおいている。そして、収縮する"cortical song"。ゆえにこのへんの解析の妥当性が重要となる。
  7. AbelesのJNP '88やJNP '93とくらべてどう新しいか。 Abelesがmultielectrodeで記録したたかだか10個くらいのニューロンでかろうじて出したrepeating tripletなどの可能性を同時に800個とか記録することでより説得力強く再現して見せた。Abelesが喜ぶのは間違いない。本質的にはAbelesのと違ってないとも言えるわけだが。
  8. Functional significance。 これはもう、ガヤ日記の引用でAbelesが言っているとおり。押さえる必要のあることの一つはガヤが現在やってるとおり、予測可能性があることを示すこと。もう一つは、無理だけれども、あるsequenceのみを選択的に阻害してやって行動に変化が起こるか調べること。(Laurentの話で発火頻度を変えずにoscillationだけ阻害する話があったが、そんな感じ。)偉そうなことを言えば、ガヤは正しい道を行ってると思った。
あと二日分くらいつづく。


*1:私は"Lucy in the sky with diamond"みたいな言葉遊びをやってみたいと思うことがある。


2004年04月22日


2004年04月21日

ガヤScience article論文

がそろそろ出るようなので、Abelesの"Corticonics" '91を見直して、synfire chainの定義について確認してみることにする。以下、だいたいのまとめ。

multipliity (p.212)
あるニューロンaからm個のニューロンへ投射しているとき、aはmultiplicity = mであるという。あるニューロンbへm個のニューロンからの投射があるとき、bはmultiplicity = mであるという。
定義 6.4.3: a diverging / converging link (p.226)
二つのセットW1,W2(それぞれが複数のニューロンを含む)があって、W1からmultiplicity mでW2へ投射しており、W2がmultiplicity mでその入力を受けるとき、W1とW2はdiverging / converging linkと呼ばれる。W1の方をsending node、W2の方をreceiving nodeと呼ぶ。
定義 7.2.1: Synfire link (p.235)
あるdiverging / converging linkは以下のような条件を満たすnを持つときのみ、synfire linkと呼ばれる。すなわち、(1)sending nodeのn個の細胞が同期して活動するときには必ず、少なくともk個のreceiving nodeの細胞が同期して活動することが見込める。(2)kがnより小さくなることがない。
定義 7.2.2: Synfire chain (p.235)
Synfire linkのreceiving nodeが別のsynfire linkのsending nodeにもなっているとき、それら一連のsynfire linkのことをsynfire chainと呼ぶ。
というわけで、オリジナルのsynfire chainは、feedforwardの信号を減衰させずに伝えることが出来るニューラルネットのことであり、そのためにも同時に発火することが要請されていたのだが、'93 JNP "Spatiotemporal firing patterns in the frontal cortex of behaving monkeys."でAbelesは、非同期的だが繰り返し同じ順番で発火するパターンを見い出した。そこでAbelesは、これが単純なfeedforwardモードのsynfire chainではなくて、synfire reverbarationである、というようなことをJNPで言っていて、synfire chainの概念を拡張している。


2004年04月20日

Current biology

がオンラインで読めるようになったのでdispatchを読む。2002年1月までさかのぼってみる。見たことあるのもいろいろあるが、漏れてたのをチェックということで。


2004年04月19日


2004年04月18日

来訪者プロット

pooneil2004-04-18 来訪者数のプロットを作って、RのGAM(general additive model)でfittingしてみた。横軸が日を、縦軸が来訪者数を示す。クロスが各時点での値。Fittingした値とプラスマイナスseを曲線で表示。GAMでの計算は以下のとおり。

# diary.txtとして一列目に日記開始からの日数を、二列目に各日の来訪者数のファイルを作成しとく。
library(mgcv)
DIARY<-read.table("diary.txt",header=FALSE)
x<-DIARY[,1];
y<-DIARY[,2];
b3=gam(y~s(x),family=poisson)
pred3<-predict.gam(b3,se.fit=TRUE)
se3a<-exp(pred3$fit+pred3$se.fit)
se3b<-exp(pred3$fit-pred3$se.fit)
write.table(cbind(x,se3a,b3$fitted.value,se3b),file="diary3.txt", quote = FALSE, sep = " ")

めちゃシンプル。ほとんどデフォルトの設定のままだが、縦軸は0以上しかないので、Poissonモデルを使用した。GAMはあまり細かい変動には影響されずにfittingしてくれるので都合がよい。データからは、いくつか山があって、いまは多少停滞しているということがわかる。


2004年04月17日

PNAS


2004年04月16日

Sommer and Wurtz関連

このあいだのセミナーで関連論文が採り上げられてたので整理しておく。
Science '02 "A Pathway in Primate Brain for Internal Monitoring of Movements."で、上丘から視床のMDを通ってFEFへとcorollary dischargeが帰ってきていることを示唆した。何よりよいのはFEF->SCの向きはintactなままでSC->FEFの向きだけMDへmuscimolを注入することで止めることができるために、主張が強くできるところだ。SCやFEFへの注入ではそうはいかない。これが以前さかんに調べた内部モデル関連の話のサッケード系のアナログだといえる。これがsequentialな運動のplannningに使われていることは示されたわけだが、これが視覚像自体をmodifyしている可能性は残る(presaccadic remapping的なことが起こっているかどうか)、とScience論文の最後に書かれている。で、これの続報というかfull paper化したものがJNP '04の連報の
"What the Brain Stem Tells the Frontal Cortex. I. Oculomotor Signals Sent From Superior Colliculus to Frontal Eye Field Via Mediodorsal Thalamus."
"What the Brain Stem Tells the Frontal Cortex. II. Role of the SC-MD-FEF Pathway in Corollary Discharge."
として出てきた。
連報IでMDから記録して、上丘からorthdromicに刺激され、FEFからantidromicに刺激されるところを同定。
連報IIで同定したMDにムシモルを入れて、double step taskがどう影響を受けるかを調べた。
このネタで書いたレビューが
Current Opinion in Neurobiology '03 "The role of the thalamus in motor control."
および
"Identifying corollary discharges for movement in the primate brain."
前者では視床を通ってmotor関連領域からcortexへ帰る三種類の経路について議論している。(1) 小脳 -> VPL/VL ->M1/PM (2) globus pallidum/SNr -> VL/VA -> SMA (3) 上丘 -> MDmf -> FEF。で、彼らの実験では(3)の経路について検討した。
で、上丘からFEFへ帰ってゆくのが順キネマティクスで小脳からFEF(?)または上丘へ帰ってくるのが順ダイナミクスであるとすると尤もらしい。これこそCOEシンポで川人先生と話をしたときに出てきた、眼球運動系でのダイナミクス系の回路への解答なんだと思う。また、逆モデルと順モデルとがカップルせずにそれぞれが別経路を通ってるかもしれない、という意味で重要と思われる。
Sommer自身は前者の論文のConclusionで、(1)がvisually-guided eye movementに、(2)がinternally generated eye movementに関わっているかどうか(arm movementで示されているように)検討すべきであるとしてまとめている。
WolpertはCurrent biology '02 "Cerebral Carbon Copies."でScienceについてコメントし、(3)の経路について、サッケード中の眼球運動の位置を予測するのに使われている、としている。
後者は入手できなかったので読んでない。
ほかにこの著者の論文へのコメンタリとして、
"Seeing and Acting at the Same Time: Challenges for Brain (and) Research."
"Neurophysiology: Cerebral Carbon Copies."
がある。


2004年04月15日


2004年04月14日

The Journal of Comparative Neurology

"Perirhinal and parahippocampal cortices of the macaque monkey: Intrinsic projections and interconnections."
Pierre Lavenex and David Amaral @ UC DavisとWendy Suzuki@NYU。
以前LavenexとSFNで話をしたときに言ってた論文が出たようだ。Perirhinal,parahippocampalのintrinsic connectionについてだが、投射パターンはそれぞれ近くに投射しているというだけで、いまいちspecificityがない。


2004年04月13日

ツーソン

ツーソン、来年こそは行きたいなあ。

ムーディー・ブルース

ムーディー・ブルース
がローソンでかかってた。聞いたことない曲だけど、あの声とどんどん違う曲につながってくあの構成からして間違いない。再結成でもしたのだろうかと思って調べたらまだ現役でやってるのか!おどろき。私の一押しはジャケットがサイケな"In Search of the Lost Chord"。5曲目の"Legend Of A Mind"はティモシー・リアリーについての曲。- Timothy Leary's dead - no, no, no, he's outside looking in. - 最高です。"The Best Way To Travel"はアコースティックな小品(verseが八小節)ながら浮遊感で聴かせる名曲。ジャケットはおどろおどろしいし、いちおうプログレに分類されると思うのだけれど、メロトロンを多用したアレンジと優しい曲調が彼らの特徴。
ここのボーカルもそうだけど、優しい声の系譜というのが私にはあることに気付いた。すなわち、Donovan - Ray Thomas - Robert Wyatt - Lou Barlow。うーむ、80年代が抜けている。

amazon.co.jp

からamazon.comへ行きたくなることがある。
レビューを読みたいんだけれど、日本語では全然ないから自然と.comのほうに行きたくなる。でもひとっ飛びで行けない。不便。co.jpと.comでちゃんと提携してカスタマーレビューの情報とかを提供できるようにしておけばよいのに。
今回もムーディー・ブルース調べてみたら、co.jpではカスタマーレビューが一個もない。.comのほうには44個あるのに。


2004年04月12日

Waler Pitts

『サイバネティクス学者たち---アメリカ戦後科学の出発』スティーヴ・J・ハイムズ著を読んでいるとかなり興味を引く人物だ。大学に行かず、独学で哲学や論理学を学び、マカロウに認められて二人で"A logical calculus of the ideas immanent in nervous activity"を出版する。ニューラルネットで使われるマカロウーピッツ型ニューロン(入力の線形和が閾値を超えるかどうかで発火が決まる神経素子の一番基本的なモデル)を考えた人として有名だろうが、重要なのはそれを使って「論理演算」ができるとしたことであろう。*1マカロウやウィーナーが尽力して彼に学位を取らせようとしたけれど、彼はそれを拒否した。そして60年代に失踪し、若くしてどこかで亡くなったらしい。


*1:私はここまで戻って、ヘッブと併せてサイバネティクスから見直すとよいのではないだろうかと考えて少し勉強している。ヘッブのcell assemblyからAblesのsynfire chainへの道。


2004年04月11日

HUMBERTO R. MATURANA

はオートポイエーシスの概念を作り出した人だが、もともとは神経生理及び解剖の学者で、McCulloch and Pittsとともに1959年に"What the frog's eyes tells the frog's brain?"(1st authorはLettvin)を出した人で、言わばサイバネティクスの発達の一番最後あたり(メイシー会議が終わって数年後)の人だった。で、チリに帰ってからも主にハトのretinal ganglion cellからの電気生理と解剖学とでNature, Scienceを連発した。

  • Maturana, H. R. Number of fibres in the optic nerve and the number of ganglion cells in the retina of Anurans. Nature 138: 1406- 1407, 1959.
  • Maturana, H. R. , Lettvin, J. T., McCulloch, W. S., Pitts, W. H. Evidence that cut optic nerves fibres in a frog regenerate to their proper places in the tectum. Science 130: 1709. 1959.
  • Maturana, H. R. and Sperling, S. Unidirectional response to angular acceleration recorded from the middle cristal nerve in the statocyst of Octopus vulgaris. Nature 197-816, 1963.
  • Maturana, H. R. and Frenk, S. Unidirectional movement and horizontal edge detectors in pigeon retina. Science 142: 977-979, 1963.
  • Maturana, H. R., Frenk, S. Sinaptic connection of the centrifugal fibre in pigeon retina. Science 150: 359-361, 1965.
で、そこから"Biology of cognition"(1970年)を出した後に、それをVarelaによって位相空間の概念を導入することで定式化しようとしたのが"autopoiesis: the organization fo the living"(1973年)だった(そのときVarelaはまだ20代前半だった)。そこからMaturanaはちょびちょび生理学の論文を出しつつもautopoiesisとしての言語とかコミュニケーションとかそういうことを語るようになるのであった。(つづくかも。)

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# Keith

はじめまして。
MaturanaにとってAutopoiesisのコンセプトはは"Biology of Cognition"のほんの一部をなすものであって、Maturana = Autopoieisis と受け取られていることには、本人も慨嘆しておりました(数年前、サンチャゴ(チリ)で本人に会い、いろいろ話を聞いた折のことです。)。
1973年の論文(Autopoiesis)は、彼の論文というより、むしろVarelaが執筆したものであり、Maturanaとしては、”Tree of Knowledge"もそうですが、Varelaと共著者になっている著作には、今となっては苦い思いを抱いているようです。

[Alva Noe についてGoogle検索していましたら、Pooneilさんのサイトに出会い、オートポイエシスについての記事があることにびっくりしました。BCI(BMI)についても関心を持っていますので、読ませてもらうつもりです。とりあえず、上記のようなコメントをさせていただきましたが、メールできちんと自己紹介もしたいと考えております。よろしくお願いします。]

# pooneil

どうもはじめまして。かなり興味の方向が重なってますね。Maturanaの話、興味深いです。Maturanaのサイトhttp://www.inteco.cl/biology/はあまり更新されていないのでMaturanaはもう活動してないのかなと思ってました。
以前どこかに書いたかもしれないのですが、Autopoiesis論が始まる段階に立ち返って、現象学/存在論的側面と自己組織化的な話とを切り分けたうえでこの概念について捉え直したらよいのではないか、というようなことを考えています。そういうわけで、"Biology of Cognition" 1970を読み直してみよう、というのがわたしの宿題のひとつでした。なかなか果たせずにいるのですが。
ともあれ、これからもぜひよろしくお願いします。

# pooneil

メールの方もぜひぜひ。お待ち申し上げております。

# Keith

昨日(1月10日)、メールさせていただきました。
拙い論文なども添付しました。
きちんと届きましたでしょうか?
(使用したメールアドレスがあれでよかったのかどうか、ちょっと不安でしたので、うまく届いてくれてれば良いのですが、、、。)


2004年04月10日

Neuron 4/8

が来た。ぼちぼち読んでく。

Cerebral cortex 五月号

"Neural Correlates of Change Detection and Change Blindness in a Working Memory Task."
Luiz Pessoa and Leslie G. UngerleiderってBBSの"Finding Out About Filling In"のfirst authorにしてenactionとしての認知について書いていたあのLuiz Pessoaか? 写真がないのでわからんのだが。かなり驚き。Working MemoryのfMRIでNeuronとかいろいろ出てる。
と思ったら写真入りのページ発見。別人らしい。なーんだ。


2004年04月09日

JNS 4/7

JNS 4/7

JNS 2/25

"Impaired Recency Judgments and Intact Novelty Judgments after Fornix Transection in Monkeys." David Gaffan @ Oxford。
3/4に貼っといただけのやつだが、これは重要だった。Gaffanはずっと海馬周りのlesion studyをやってきた。再認記憶にはいろんなコンポーネントがあるわけだが、この論文で彼らはRecency(最近見たことがあるか前に見たことがあるか)とNovelty(見たことがあるかないか)とが機能的に分離できることを示している。Fornix lesionではnoveltyだけ落ちてrecencyは落ちないそうだ。


2004年04月08日


2004年04月07日

JNS

"Climbing Neuronal Activity as an Event-Based Cortical Representation of Time."
Yakovlevらのイスラエルグループ。代表作はNature Neuroscienceの電気生理、Natureの行動実験だろう。
ITニューロンのdelayが上がってくるのがdelayの時間を変えるとslopeを変えてadjustするというもの。で、最も関連があると思われるわれわれの2001年の論文をreferしてない。われわれの論文ではclimbing activityは2secのうちにピークに達する。これが彼らのslopeの概念とのconsistencyが取れなかったが故だろうが、ああ、(省略)。

Nature NeuroscienceとかNature Medicineとか

のwebサイトで論文がテキストだけで図はリンクになってる(サムネールが埋め込まれてない)のってムカつかない? Abstじゃなくてtextを読む意味がないじゃん。こっちはabst読んで図をざっと見してから読むべき論文かどうか見極めたいわけだ。一般論にしたって、webサイトってのは熟読するためのものではなくて、ざっと見するためのものなわけで(参考:"Reading on the Web"内の"Why Web Users Scan Instead of Read")、その辺わかってないのではないか。サイトの負荷を下げたい? Nature本誌はやってるじゃん。サーバが別? しるか。


2004年04月06日

Trends in Neurosciences

"Interneuron Diversity series: Circuit complexity and axon wiring economy of cortical interneurons."
György Buzsáki @ The State University of New Jersey。
shima’sLog 4/5より。
ちょうどSmall-world and scale-free networkについてメモしてたらGyörgy Buzsákiだ。運命かも(ちがう(<-それもう使った))。
Buzsákiのinterneuronがoscillaitionを作っているという話はこれまでも言われているもののはず。要はそれがSmall-worldであることの特性によってより経済的に実現されていることにあるらしい。話はInterneuronについてに絞られてるようだ。Small-worldとしての脳の私のイメージはarea内でのintrinsicなconnection(interneuronによるもの及びhorizontal connectionによるもの)がネットワーク内でclusterしているのをprojecting neuronによるarea間pronjectionがshort cutしている、というものなのだけれど、どうだろう?


2004年04月05日


2004年04月04日

佐藤友哉「鏡姉妹の飛ぶ教室」

読了。Pdfファイルは読みにくい。*1 「本気の本気」という言葉が出てくることに驚くが、ある意味いままでとつながってるようにも思う。オチはいつもながらデタラメなようだが最高。フリッカー式と比較することで佐奈の鏡一家らしい能力とは何かわかった気がする。


*1:縦書き文章のときは「印字領域の縦の大きさに合わせる」とかいうのが表示メニューにあればよいと思うのだが。ま、日本語のことなど考えてないんだろう。


2004年04月03日

エイプリルフール乗り遅れた。

今回見たので一番すきなのは「萌えるJAMBO「もえじゃん」創刊」。脳科学でやるとしたらなんだろう、もえかんでるしゅばるつ?(<-ながすぎ)


2004年04月02日

予測可能性

ガヤ日記3/30 「あまりに“昔”を参考しすぎると予測精度がひどく落ちる」おもしろい。どういうことだろう。統計的な性質を使ってるのではなくて、「「決定論的カオス」みたいなもの」でやってるからだろうな。
ところで前から思ってたんだけど、時間ドメインではなくて空間ドメインのほうはどうなんだろう。スライス上の細胞という限られたpopulationしか見ていないわけで、もしもっと多くのニューロンから(究極にはすべての脳細胞から)記録すれば予測可能性は上がるはず*1 だが、そうでないということだろうか。逆に、スライス上のデータの一部をランダムに取り除くとどのくらい予測可能性は落ちるか。Populationから一個のニューロンのデータを除いても予測はrobustなんだろうか*2、カオスってそういうの弱そうに思うのだけれど。そしてまたまたspontaとevokedとの問題。Spontaでは近くのニューロンの活動によって記述できるだろうが、evokedでは別の領野からの入力がcriticalに効いてくるであろう。そしてそもそもの予測可能性とcausal relationとの問題もあるしなあ。興味は尽きない。


*1:カオスだとどうなんだろう。統計的性質を使っているならば、どんなゴミの変数を加えても、データが有限回であるかぎりmultiple regressionのR2は上がってゆく。そこで変数を加える分ペナルティを与えたりする。そういえば有限回のデータからmutual informationを計算すると多めに計算されるバイアスがあるわけだが、このことと変数の数決定の話は等価なのだろうか。
*2:さっそくcross validationを思い出しつつ。


2004年04月01日

名鉄三河線が一部廃止

名鉄三河線が一部廃止になるので日曜日に子供を連れて乗りにいった。私は中一まではテッちゃんで、ブルートレインを撮影しにカメラもって東京駅まで行ったものだが、すごいことになってます。超満員。超テッちゃんだらけ。我が子を押しのけて最前部へと向かう大きなお兄さん、ヤメレ。
車両はディーゼルカー一両で単線を走る。最大の見所の一色あたりでの海の上を高架線で走るところは省略。車から見たことあるし。というわけで米津から碧南まで乗った。米津や三河平坂のあたりは町の中を縫って走る。故郷の東武亀戸線を髣髴とさせる。矢作川を渡るぼろい橋(これがまたいい感じ)では堤防にカメラの列。川の浅瀬に足突っ込んで撮ってる人もいた。次の見所は碧南に入ってからのヘアピン状の急カーブ。2-3kmぐらいの範囲の中で左に120度、右に90度、もう一回右に90度曲がる。終点の碧南駅の周りは完全に寂れていた。町の中心は碧南中央駅の方だし。で、「シリーズ・哲学のエッセンス ベルクソン〜人は過去の奴隷なのだろうか」を読んで車で帰った。

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# U.T.

ベイトソンの新刊が出てたのですね。けど、訳が金森修というのが好かん。この人は、一体なにを言いたいのだろうか?

# pooneil

いやいや、二つ違ってますよ。ベイトソンじゃなくてベルクソンです。金森修氏が訳したのではなくて氏による初心者向けへ解説書です。
この本はわかりやすくてよかったです。ただ、ベルクソンがした100年前の科学的知見からの議論をそのまま持ってこられても困るとは思いましたが。金森修氏の「サイエンス・ウォーズ」は読んでません。


お勧めエントリ

  • 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
  • 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
  • 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
  • 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
  • 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
  • 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
  • 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
  • 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
  • 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
  • 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
  • DKL色空間についてまとめ 20090113
  • 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
  • ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
  • Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
  • 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
  • MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213

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