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■ 駒場講義レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意
東大駒場の池上さんに誘われて、6月20日に教養学部広域科学科の学部講義で90分*2喋ってきました。(教養学部広域科学科、生命・認知科学科「システム科学特別講義II」)
これはいろんな人が毎週喋るオムニバス講義というもので、こんなリスト:
- 5月9日 藤井 直敬 社会的脳機能を考える
- 5月16日 茂木 健一郎 システム認知脳科学
- 5月30日 國吉 康夫 身体性に基づく認知の創発と発達
- 6月6日 多賀 厳太郎 発達脳科学
- 6月13日 三輪 敬之 コミュニカビリティと共創表現
- 6月20日 吉田 正俊 意識と注意の脳内メカニズム
ちょっと私が出てって大丈夫だろうかとビビりつつ、受講生の数は25人くらいということで聞いていたのでまあ気楽に、と行ってみた。そしたら、満員になって40人くらい(<-数えてやがる)となっていて、「意識研究」への興味が高いことをひしひしと感じました。
学部外から潜っている人がけっこういて、薬学部の後輩とか、あとなぜか藤井さんとかいたりして、なにやってんのと思いつつ悪い気はしない。
レジメを使ってブログのエントリを作ろうと思いつつずっと放置していたので、ここで思い立って作成してみました。これだけ読んでもあまり役に立たないかんじだけど、スライドを載せようとするといろんな図を使っているので許可取るのが手間なんでこのへんが労力的に最大限、ということで。まずは前半部から。
意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意
[意識と注意ってなんだろう?]
実例から始めてみよう。
- Motion-induced blindness
- Change blindness
非常に目立つ(salient)ものが消える。=> ちょっと見逃した、とかそういうレベルではない
- 網膜に映っているものすべてを私たちは「見て」いるわけではない。
- それにもかかわらず、私たちの視野には「穴」が開かない。
- Attentionとconsciousnessとは密接に関係している。
[What is attention?]
William Jamesによる定義 (Principles of Psychology (1890))
It is the taking possession by the mind in clear and vivid form, of one out of what seem several simultaneously possible objects... It implies withdrawal from some things in order to deal effectively with others...
[注意の分類]
- Selective attention: ability to focus on positions or objects (空間的)
- Sustained attention: alertness, ability to concentrate (時間的)
- Bottom-up: stimulus-driven (pre-attentive, pop-out)
- Top-down: goal-directed
[Bottom-up vs. top-down attention]
ポズナー課題中の脳活動 (Corbetta)
- Cueによってトップダウン注意を操作すると、視覚背側経路、視覚腹側経路の両方が活動する。
- 脳の機能を理解するためには脳をネットワークとして捉えることが重要。
[半側空間無視]
半側空間無視とは?
- 脳損傷と反対側の空間の感覚刺激(視覚、聴覚、触覚など) に対する反応が欠如・低下。
- 感覚障害 (同名半盲)や運動障害 (片麻痺)によっては説明できない認知的障害。
- 「自分の体とその周りの世界が半分なくなる。」
- 「環境世界の中に位置する自己」の認知の障害。
原因部位はどこ?
- 歴史的経緯: TPJ -> STG -> SLFII
- 半側空間無視は脳内ネットワークの障害
半側空間無視の動物モデル
- どうして動物モデルの作成が必要か?
- SLFIIの損傷によって半側空間無視の症状を再現することができる。
[注意の計算論モデル]
Feature Integration Theory (Ann Triesman)から始まる
What is saliency map?
- An explicit two-dimensional map that encodes the saliency or conspicuity of objects in the visual environment.
- A purely computational hypothesis
サリエンシーマップの活用法
- 視覚探索の成績を再現
- MIBを評価する
- ヒートマップの代替
- サルの眼の動きを予測する
トップダウン注意はどうモデル化する?
[Bayesian surprise]
「サリエンシー」は二次元画像の中でどこが「目立つか」を「空間的配置」の中で評価する。
では、「時間的変動」の中でどこが「目立つか」を評価するにはどうすればよいだろう? => 「サプライズ」
(Itti and Baldiの説明。レジメでは省略。)
[Bayesian surprise and predictive coding]
ニューロンは特徴検出器(フィルタ,template)であるという考え (H. Barlow / Lettvin / Hubel and Wiesel)
でもニューロンの応答はすぐadaptする。=> サプライズ検出器なんじゃないか?
V1 response can be modeled by surprise (Itti and Baldi)
「予想脳」仮説
- ヘルムホルツ的視覚観
- サプライズ = ボトムアップ注意
- 脳内のモデル = Conscious perception
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- / 投稿日: 2012年10月10日
- / カテゴリー: [Saliencyと眼球運動] [半側空間無視(Spatial hemineglect)] [大学院講義「意識の神経科学」] [視覚的意識 (visual awareness)]
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