[月別過去ログ] 2014年06月
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■ Resting-state fMRIでマカクにもVANが見つかった
こんどの日本神経科学大会では「注意の脳内ネットワーク」と題してシンポジウムを開催することになってる(9/13(土曜)午後5時-7時)。これはわたし吉田とチュービンゲン大学のZiad Hafed博士とで行っている国際研究協力の一環となるものだ。(JST 戦略的国際科学技術協力推進事業 「日本-ドイツ研究交流」 )
このシンポジウムの講演者は四人で、吉田、Ziad Hafed、東大の坂井克之さん、ベルギーのWim Vanduffelというメンバーとなった。そういうわけでWim Vanduffelには今度の9月に日本に来てもらうので、それの予習を兼ねてジャーナルクラブで論文を読んでみた。
JNS2013 "Evolutionarily Novel Functional Networks in the Human Brain?"
Resting state (というかfixation task)でもfMRIにICAをかけてるとBOLD活動がいくつかのクラスターに分かれて、それをヒトとマカクで対応づける。V1, M1などはよく対応するとして、dorsal attention network (DAN)も対応がつく。DANはヒトでもマカクでも両側にある。
マカクでもventral attention network (VAN)に対応したものが見つかって、posterior STSのあたりとmedial prefrontalのネットワークが見つかる。IFGに対応したものは無いけど。面白いのはこれがlateralizeしていることで、VANは右にしか見つからない。いっぽうで、左側にlateralizeしたネットワークも同定されて、これはヒトでのlanguage networkに対応していて、しかもposterior STGとA44-45あたりが出てくる。
マカクでVANが右にしかなくて、左には言語ネットワークがあるというのは、HO KarnathのperiSylvian networkが左右でVANと言語をやっているというのによく合致していて、とても面白い。
あと面白いなと思ったのは、ヒト-マカクの対応がついていない、ヒトだけのネットワーク、マカクだけのネットワークが見つかるのだけれども、ヒトだけのネットワークはVANでもなければ言語でもなくて、insula-ACC、つまりサリエンシー・ネットワークだった!
これをみたとき、やっぱりマカクでの統合失調症動物モデルは無理、とまでは言わないまでもサリエンシー・ネットワークの結合は強くはなくって、なんらか原始的な対応物を見つける、という方向で考えたほうが良いのなかなと思った。
解析方法にはいくつか恣意的なところが見つかるのでそのまま信じるのはよろしくないが、これを元にしてどんどん「直接的な」検証をしていけばよいのだから、そのためにはかなり使えると思う。
「解析方法にはいくつか恣意的なところ」というのは、ヒト-マカクでの対応を付けるためにfMRIシグナルの時間相関を計算してdendrogramを作るのだけれども、どこで閾値を設定するかが「ヒト-マカクの対が最大になるように」決めてた。というわけでここはデータ駆動型になってない。
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2014年06月11日
■ 駒場講義2014「意識の神経科学を目指して」配付資料
駒場学部講義2014 総合情報学特論III 「意識の神経科学を目指して」配付資料をアップロードしておきました。
2012年、2013年にひきつづき、三年目となった池上高志さんの総合情報学特論IIIでの駒場学部オムニバス講義 90min * 2です。Part 1では両眼視野闘争、二つの視覚経路、盲視と神経科学の知見について話をします。
Part 2では昨年しゃべったフリストン自由エネルギー、デネットのヘテロ現象学、ヴァレラの神経現象学、という話の流れに、科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップでトークをした「神経現象学と当事者研究」をさらに盛り込んでみました。さてうまくいくかどうか。
昨年までの講義と内容は重複していますが、それでもpart 2の後半あたりはかなり変わっていて、その分が昨年まで考えていたことから考えが進んだ分というわけです。いま見直してみると、もっと意識における「自己」の問題が自分にとって大きくなっていて、そのへんを盛り込んでいく必要があるなあと思う。たぶんそのへんで統合情報理論(IIT)および統合失調症についてこの一年間考えて来たことが繋がるはず。まあそのへんについては、もしべつの機会があればということで。
というわけで乞うご期待。
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2014年06月06日
■ 「自閉症の現象学」
身体論研究会のページを見て「自閉症の現象学」を読むべきだなと思った。岡崎図書館には入ってなかったけど「治癒の現象学」のほうは入ってる。
エヌ氏の成長・円錐この記事を見ていても、社会性がどうのこうのという話よりも感覚・知覚の統合能力という議論になっていて、この方が自分的には納得がいくし、自分にもできることがあるように思う。そしてこれは意識の研究になると思う。
「治癒の現象学」借りてきた。「結語」の部分の「現象学者は…対象に巻き込まれる。彼は客観的な視点を取らない。それゆえに自然科学的なエビデンスは持たないが、巻き込みの中での追体験が別種の確かさを生み出す。これをフッサールは明証性と呼んだ」とかこのへんにピンときた。
「現象学者が行うのは、経験そのものの追体験ではなく、経験を「創りだす構造」の再作動である。」こことかもすごく合点がいった。いわゆる現象学的な心理学とか精神分析とかって精緻化された内観報告にしか思えなかったのだけど、もし構造を取り出すのならそれは現象学的だろう。
でもって本文を読み進めてみたけど、これはあまりに現代哲学的で読み進められなかった。「生身の身体のもつ運動感覚とはフッサールが考えていたような単一の純粋な現象ではなく空想身体と生理学的な身体との複合現象、交差する地点のことなのかもしれない」とかすごく興味あるけど進行が速すぎる。
「幸いなことに現象学は一種の数学を使わない「科学」である…たえず間違いは訂正され、知が伝承される可能性を持つ。たとえ新しい概念を創りだしたとしても、それは分析者の個性の発露ではなくて、新しく発見された現象や構造への目印である」とか惹かれるけど、事実というよりは目標では?と思う。
「行為の方は空想身体に埋め込まれる」「触発する出来事や人間関係は、それ自体は目に見えない。現実と近くの背後から空想身体を触発する。そしてその触発において空想身体は「意味」を産出する」こういう部分はすごく惹かれる。惹かれるんだけど、そういうところで断定的に進むのには着いてゆけない。
ここで書かれているような「科学とは違った意味での明証性evidenz」が本当に確立していて、現象学による経験の構造についての研究プログラムというものが概念の拡散をせずに意見の一致を見る形で深化していけるのだとしたら、現象学の自然化なんてものはそもそも必要ないのではないだろうか。
現代思想-2013年8月号-看護のチカラ-“未来-にかかわるケアのかたち これに惹かれたが、岡崎市立中央図書館では「現代思想」をとってない。ありえないことだが、とってない。
現象学的心理学、みたいな方向を調べていくと「質的研究法」についてちゃんと理解しなければならないことがわかる。うーむ、そこまではまだ(私の中で)時が熟していない感じ。
Dan Zahavi: "Empathy and mirroring: Husserl and Gallese"(pdf)ってのを見つけた。フッサール現象学でのempathyとか間主観性とミラーニューロンの話。
「自閉症の現象学」取り寄せてぴらぴらめくってる。とても面白いし、書いてあることがすごく納得がいくのだけど、話の展開の仕方が決めつけ的なのが非常に気になる。
「感覚刺激に没頭する自閉症児の世界は、このような感性野がひとりでに組織化する現象が、純粋な姿で実現している状態である」(p.11)ということでフッサールの「受動的綜合」のより純粋なものが自閉症児の世界にあるのだという話で、すごく魅力的なのだけど、こんな言い方でよいのだろうか?
「受動的綜合が見られるのではないだろうか? その論拠を示す。」みたいな議論でないのがすごく気になる。読み続けていけば違うのかもしれないけど。
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- / 投稿日: 2014年06月06日
- / カテゴリー: [オートポイエーシスと神経現象学] [脳科学メモ]
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