[月別過去ログ] 2006年06月
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■ マッカロー効果
Nature Neuroscience 7月号 "Contingent aftereffects distinguish conscious and preconscious color processing" Edward Vul and Donald I A MacLeod
マッカロー効果を使った話です。マッカロー効果じたいについてはマッカロー効果やThe McCollough Effect - An On-line Science Exhibitなどで体験することができます(注意事項有り。後述)。緑の縦縞とマゼンタの横縞をしばらく見といてから白黒の縞を見ると補色が色残効(after effect)として見える、というやつなのですが、おもしろいのは色残像などと比べて、効果がかなりあとまで残ることです。だから、気になる人はデモは避けた方がよいかもしれません。Wikipediaでみると、10分かけて効果を誘導してやると24時間持続するとのことです。
(色残像:after imageのほうは、たとえばOptical Illusions etcで経験できます。補色の画像を見つづけてから同じ画像の白黒版を見ると、色が付いて見える。同じ原理のやつが最近はてブでホッテントリ化していたのだけれどURL忘れた。)
んでもって、論文の方はというと、このような色残効を誘導するのに緑の縦縞とマゼンタの横縞を交互に見せるわけだけども、この二つの像の切り替えをものすごく速くしてやると(15Hz以上)、色の切り替えは見えなくなります。意識には上らなくなるわけです。それにもかかわらず、マッカロー効果は(弱いながらも)残る、これがnew findingです。マッカロー効果は網膜のレベルではなくてもっと先、LGNか大脳皮質かでのことと考えられていますので、一種のimplicit perceptionの例と考えることが出来るでしょう。
2006年06月19日
■ 論文いろいろ
PNAS "Item memory, source memory, and the medial temporal lobe: Concordant findings from fMRI and memory-impaired patients" Larry R. Squire。これまでと結論は変わらず。Item memoryとsource memoryとが関わる場所はsegregateしていない。Item memoryでsemantic memory的な成分を見て、source memoryでepisodic memory的な成分を見て、両者はdeclarative memoryで合って、medial temporal lobe memory systemによって担われている、みたいな話。
Science "Cortex Is Driven by Weak but Synchronously Active Thalamocortical Synapses" Randy M. Bruno and Bert Sakmann。結論自体よりもin vivo patchやったことのインパクトのほうが大きいかんじ。Jose-Manuel AlonsoによるPerspectives "Neurons Find Strength Through Synchrony in the Brain"があります。
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2006年06月18日
■ Firefoxでもtextareaをエディタで開けるんだ
以前Slepnirを使っていたときはInternet Exploerer用でtextareaをエディタで開けるようにするソフトがあって重宝していたのですが、Firefoxに移ったらそれがなくて不便でした。
でもじつはFirefoxのプラグインの中にそういうものが前から存在しているのを発見。
mozex 1.93
via Going My Way: Hotkeyを利用してTextareaを外部エディターで開くFirefox用エクステンション Mozex 1.93
エントリ作ったり、コメント書いたりするときにこれさえあれば忘れずにローカルに原稿を保存できるので超重要。
設定画面がなんかへんだったりするのだけれど、とりあえず使いはじめてます。
2006年06月16日
■ Connoteaひさびさにいじってみる
学術論文のブックマークに特化したConnotea。以前試用してたころのエントリはこのへんに。そのあと放置していたのですが、ひさびさにいじってます。
DOIが使えるようになりました。ScienceDirectに入ってる雑誌はみんな、登録するときにDOIを指定して"lookup"を押してやれば、書誌情報を取り込んでくれます。Wileyの雑誌(J Comp NeurolやHippocampusやNeuroImage)やBlackwell Synergyの雑誌(EJN, J Physiolあたり)はみんなabstやfulltextのURLを指定してやればDOIや書誌情報を取り込んでくれます。PLoS BiologyやJNPもOK。JNSやCerebral CortexやScienceやPNASやBrainはabstやfulltextのURLを指定してやればタイトルと著者は取り込んでくれるけど、DOIは取り込んでくれません。サイトのテキスト中にあるDOIをコピペすればいいのだけれど、lookupしてもエラーが出たり出なかったりする。私が読んでる雑誌をカバーするにはもうひといきという感じ。
以前登録したScienceDirectの雑誌のURLを直したいのだけれど、できない。あとからDOIやPMIDとかを付加できたらいいのに。しょうがないからブックマーク消して新しくDOIで登録し直したり。
Tag Suggestionsの機能は便利。タグを全部タイプしなくても、suggestしてくれる。おかげで、"c"とタイプすれば"consciousness"タグを入れられます。
Connotea Web APIをリリースしたと書いてあります。これ使って、このサイトからいろいろいじったり、このサイトに取り込んだりという連携が出来そう。PubMed RSS feed取り込むみたいに、なんか使えるはず。
あと、blogをcitationとしてブックマークできるようになった、と言ってる。このへん、論文コメントサイトをどうbookmarkしてorganizeするかという視点でここさいきん考えているところなのだけれど、そういう視点は持ってない様子。構想がある程度明確になってきたので、Connoteaでどの部分ができるか、とかそんなこと考えてます。このへんについてはそのうち書きます。
ま、もうちょっと使ってみます。
2006年06月14日
■ JNP 6月号
メモだけ。
"Symbolic Cue-Driven Activity in Superior Colliculus Neurons in a Peripheral Visual Choice Task" Kyoung-Min Lee and Edward L. Keller
"Effects of Noise Correlations on Information Encoding and Decoding" Bruno B. Averbeck and Daeyeol Lee
"Selection and Maintenance of Saccade Goals in the Human Frontal Eye Fields" Clayton E. Curtis and Mark D'Esposito。Vincent P. FerreraによるEDITORIAL FOCUSあり。
"Differential Involvement of Neurons in the Dorsal and Ventral Premotor Cortex During Processing of Visual Signals for Action Planning" Eiji Hoshi and Jun Tanji。Nature 2000 "Integration of target and body-part information in the premotor cortex when planning action"はPMdの報告だったけど、同じタスクでPMvからの記録したものと比較してます。
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2006年06月11日
■ Alva NoëとかEvan Thompsonとか。ここまで。
2月に書いたまま放置してたやつを貼ります。もともと060220のつづきのつもりで書いていた(だからタイトルがそんな感じ)のだけれど、なんだかわからなくなってきてます。
そろそろとりとめなくなってきたので、このへんでいったん締めます。
本棚を整理していたら入不二基義氏の「qualiaの不在」を印刷して真っ黒に書き込みを入れたやつが出てきました。これをまとめておくのもそのうちやらなくては。(なお、この論文は以前は山口大学のサイトにありましたが、現在は心脳問題rfcからのみオンラインでアクセス可能です。) 話のもっていき方(あるアポリアを持ってきて、それの解決しようとする二つのやり方がじつはお互いを前提としていることを明らかにして、問題の捉え直しをする)は「相対主義の極北」と共通しているようなので読んでおきたいのだけれど、ま、ちとこれは10年たってもむりか。
現象学はわかるようになりたいなあ。これはかなり優先度が高いです。でも、フッサールを読まずにメロポンだけ読もうなんてバカにされるだけなんだろうなあ。途中で止まってる「行動の構造」。
大森荘蔵も腰を据えて読んでられないから、「流れとよどみ――哲学断章」で「心身問題、その一答案」だけ読んでみたりとか。Causal relation (「脳が心を生み出す」や「脳が外界を投射する」)ではなくて、重ね合わせ、「即ち」の関係 (リンゴが見える、即ち脳と環境とがある記述可能な関係にある、とか)なんだと、たしかにそうだ。しかしなあ: 前にトレーニングコースに来てた学生さんたちと飲んで話したときに、心身問題はWittgensteinで終わっているんだ(疑似問題なのだ)というふうに主張してた哲学科出身の方がいたんだけれど、そういう意味では心身問題はカントの第三アンチノミーで疑似問題であることがわかっているということなのでしょう(元ネタ: 「心脳問題 - 「脳の世紀」を生き抜く」 山本貴光、吉川浩満)。でも、「心脳問題 - 「脳の世紀」を生き抜く」 のいいところはそのような疑似問題が繰り返し問題として捉え直されつづける、「回帰する」点に注目してるところです。重ね合わせ、による解消法もそのときには納得はいくんだけれども、問題は回帰する。これってなんなんだろう、と思います。しかしそれにしても、わたしはカントを読むところまでは一生たどり着けないだろうなあ。
「身心問題」廣松 渉を読んでたときも似たようなことがありました。ライルによる「カテゴリミステイク」の議論を持ってきて、いっぽうで現在の心の哲学者たちはその辺がわかってないのではないか、とデネットの文章を引いて、「議論のレベルはこれでだいたいわかるであろう」なんて書いてます。ですけどね、デネットはライルの弟子ですよ! そんなことわかってないわけないじゃん、……たぶん。
ともあれ、現代の意識論をやってる人は、そういうところからふたたび議論を起こそうとする、「回帰する問題」をやってる人たちなんだと思う。だからこそ、arational agentさんの文章にもあったように、分析哲学者が扱うのは「意識を現在手持ちの自然科学的手法や理論装置で説明できる見込みがあるかというメタ的なテーマ」だったりするわけで。……ま、だからといって、カントやウィトゲンシュタインやライルを読まなくっていいって話じゃないわけだけど、すべてをやることは無理だ。
こっち系の話はやりたいことも書きたいこともいろいろあるのだけれど、と に か く じ か ん がー た り な い(「すばらしい日々」のメロディーで)。論文書きしながらrecordingの準備してるところですよ、これで。
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2006年06月09日
■ そうして、このごろ0609
研究会の発表が済みました。たくさん質問してもらえたので興味を持っていただけた様子。つっこみどころもいろいろあるわけだけど。予告編と称して、電気生理のデータ無理矢理つっこんでみたり。来月の神経科学学会で電気生理データ追加します宣言をして退路を断ってみたり。
んで、ほっと一息。
ビール飲んで、J-Total Musicとか見ながらギター弾いていろいろ歌いました。赤ん坊がギターにさわろうとするのを足でガードしながら。にこにこしてるけど。
山_崎ま_さよしが紅白で歌ったらしいやつとかやってみて、泣きのツボが刺激された。なんつうか、鍵っぽい、っていうかONEっぽいですよ、あれ。しかもあの、もしも奇跡が起こるなら、君に会いたい、ではなくて、いますぐ(奇跡を)君に見せたい、なのな。大泣き。横で息子が宿題やってるけど。(酔っぱらってます。)
2006年06月05日
■ Alva Noë講演行ってきました
おもしろかったです。内容には立ち寄らずに手短かにレポート。時系列的に整理されてないけど。
Alva Noëはサイトの写真よりはもっと老けた感じ。人の質問を受けるときにものすごい険しい顔をするのですが、答えるときには笑顔を絶やさない。険しい顔は真剣に人の話を聞いているからだということがわかって安心しました。真摯に質問に答えていたと思います。
セミナーの様子がわからなかったんで、その場での質問は止めておきました。あとで考えれば、その場で質問しといても外していなかったようですが。Arational Agentさんの力添えでセミナー後にAlva Noëとサシで質問させていただける時間を作っていただいて、10分くらい歩きながらいろいろ質問したり、わたしの仕事をすこし説明したりさせていただきました。だいたいこちらの目的は果たせたのではないかと。あとは、めざせ来年のASSCということで。
セミナーでは信原幸弘先生が質問してましたが、sensorimotor contingencyの概念をかなりよく了解している様子でした。(わたしは『心の現代哲学』(勁草書房)は読んだことがあるのですが、Churchland以降の、connectionistを導入して認知主義の命題的取り扱いを乗り越えて表象主義に至る、という道筋にいる方と理解していたので、この種のembodiment的なviewについてどう考えているのかに興味があります。岩波の「思想」に出た「クオリアとアフォーダンス」読んでないのだけれど、たぶん関係するはず。) 休み時間にArational Agentさんに信原先生を紹介していただきました。このサイトのことをご存じだったようです。
050211でコメントしてくださったiiさんにも遭遇(今回が二度目)。セミナー後にNoëの発表について、あれって実験結果の理解としてどうなのよ、みたいな話をしたり。
Arational Agentさんとは今回初めてお会いしました。お茶か食事でもしながらお話ししましょう、ということで、渋谷原宿あたり歩きながら終電までけっきょく延々7時間語りまくり。楽しかったです。
Arational Agentさんは疑問点に頭が到達するといきなりその場で考え込みはじめたりして、まさに哲学者、というかんじでした。わたしの実験に関してもよく話を聞いてくださって、いいヒントをもらいました。感謝しております。もう少し考えてみます。
セミナーの内容などについてはまた後日。
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- / 投稿日: 2006年06月05日
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# Arational Agent
ご研究に関わる興味深いお話をたくさんお聞かせくださって、私も楽しかったですし、啓蒙されました。どうもありがとうございました。残りのNoeセミナーの内容や様子については、後日ご報告申し上げますので、期待して待っていてください。
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