[月別過去ログ] 2005年11月

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2005年11月29日

「行動の価値」を表す線条体ニューロン

Science 11/25 "Representation of Action-Specific Reward Values in the Striatum"

大脳基底核の線条体のニューロンが"action value"=「行動の価値」をコードしているのを見つけた、という論文です。ATRの銅谷研の鮫島さんが京都府立医科大学の木村實先生のところで行った仕事です。木村研はこのあいだのScienceと併せて一年間にScienceを二連発という快挙です。すくなくともnhp single unit studyでは世界初のはずです。

ざっくり説明しましょう。被検者がする課題はモニターの前でレバーを右にするか左にするか選ぶ、というものです。たとえば、左を選ぶと50%の確率でジュースが飲めて、右を選ぶと90%の確率でジュースが飲めるという条件になります。もちろん、右を選んだ方が得です。100試行ぐらいすると、この確率が変わります。たとえばこんどは左が90%で、右が50%です。このときは左を選んだ方が得です。このような課題をやっているあいだに線条体のニューロン活動を記録します。そうすると、左でジュースが出る確率が高いときに強く活動するニューロンが見つかりました。おなじ「左を選ぶ」という行動をしていても、その価値が高いとき(ジュースの出る確率が高いとき)に活動する、つまりこのニューロンは「行動の価値」をコードしている、というわけです。

いくつかの押さえが必要です:

  • (1) このニューロンは右のジュースの出る確率には影響されません。つまり、このニューロンは、左右の価値を比較した結果をコードしているのではなくて、「左を選ぶ」という行動の価値を表していることになります。
  • (2) また、左でジュースが出る確率が高いときには、左を選ぼうと、右を選ぼうとニューロンは強く活動します。つまり、このニューロンは「左を選ぶ」という「行動の価値」じたいを表しているのであって、「左を選ぶ」か「右を選ぶか」という「選択された行動」じたいを表しているわけでもありません。

以下また続きます。予告編:(a) この論文の意義。とくにNewsome、Glimcher、Leeなどの論文をふまえて。また、これまでの大脳基底核からの記録論文との突き合わせも必要でしょう。(b) さらに「強化学習」の理論をふまえて、Q-learningモデルとactor-criticモデルとどちらが大脳基底核で行われていることに合致しているか、といった議論。このへんは工学系の専門家に参入してもらった方がよいのですが。 (c) 結果から結論を導く過程の妥当性について。わたしがとくに問題だと思うのは、上記の押さえ(2)に関する点です。ともあれ、また明日。

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# 一般法則論

 ほめ言葉に反応する脳の部位があることを確かめたくて検索中にこのブログにたどり着きました。
 線条体がこれでしようか・・・。

 一般法則論
 http://blog.goo.ne.jp/i-will-get-you/


2005年11月26日

「行動の価値」を表す線条体ニューロン

鮫島さんのAction Value論文がScienceに掲載されました。"Representation of Action-Specific Reward Values in the Striatum" おめでとうございます。
おってレポートする予定です。とりあえず速報、ということで。

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# mmrl

mmrlです。早速のご紹介ありがとうございます。いままでここで散々他人の論文にケチつけてきたんで、今度は自分の番です。pooneilさんはじめ皆様のコメント、疑問点などwelcomeです(他人ん家でやるなってこともありますが).今後ともよろしくお願いします.

# pooneil

本当におめでとうございます。mmrlさんとはこのブログをきっかけにお知り合いになることが出来て、ネット上での議論だけでなく、いろいろ相談に乗っていただいたりとおつきあいができて感謝しております。そういう過程で、デカい仕事が出た場面に立ち会えた、ということがまたさらに感激です。いやあ、みんな活躍してます。わたしもがんばらなくては。
コメンテーターの皆様へ:さいきん停滞してましたが、今回はextensiveにいくつもりです。参入よろしくお願いします。


2005年11月22日

Washington DC関連のメモ

無事帰ってきました。
忘れないうちにメモメモ。あくまで自分のために。
行きのDetroitのcustom最悪。大行列に二人しか役人がいないからそこに並んでたら、だんだん役人が増えて行列が分かれてゆくのだけれども、だれも仕切らない。だから、行列の後ろの方にいる人間はそのままで後から来た人が短い列に並んでさっそと通り過ぎていったりとか、ひとことで言えば、"disorganized"。んなもん、passengerを全部一列に並べて、空いた窓口にどんどん割り振る人間が一人いればいいだけなのに。ダメすぎだが、ダメな状況にさっさと気づいて対処しないと問題が解決しない、このことを忘れない。
町中にスーパーが全然ない。CVS pharmacyしかなくて、21時には閉店する。朝飯食いっぱぐれないようにする。
SFNの会場内はなんでも高い。サンドイッチと飲み物買ってから行かないと金のムダ。
San DiegoだろうがNew Orleansだろうがどの会場でもそうだけれど、シャトルバスは混乱しまくりなので、初日とかは使わない。公共の交通機関利用した方が場合によってはよい。今回はメトロがけっこう使えた。2,3分おきくらいで頻繁にくるところがよい。メトロバスも活用できたら良かったのだけれど今回はそこまでは出来ず。
ホテルはエレベーターの運転手が居るというめちゃ渋いところだったけど、ビジネスマンには全く向かないところだった。やっぱこんどはSFN通さずに自分でネットで探した方がよいかも。
ガザニガのcognitive neuroscienceとか重い本買い込んでスーツケースに詰め込んだら、重くなりすぎてcheck inでよけいな金を取られた。だったら本屋に別に発送してもらえばよかった。
行きのcustomがたいへんだったので、帰りのDetroitで急いだら、なんにも必要なくて、緑の紙をはがされるだけだった。いつまでたってもこのへんわからないのであわてる。


2005年11月16日

16日の昼

Slide発表。ポスとback-to-backにて。プレゼン自体は神経科学学会の時よりはずいぶんマシに出来ました。ほぼ同じ内容だったし、やっぱり繰り返しは重要です。
Larry SnyderとTehovnikが質問してくれました。感謝です。留学中のIさんがセッション後に質問してくれました。ネタはいろいろあるだけに、どのへんに皆さんが興味持ってくれたかが、どのように仕事をまとめるかという点で本当に重要です。
残念ながら観客は激少なかった。ぶっちゃけ泡沫候補。最終日だったりとか、関連するポスターセッションがあってそっちに人が流れた、とかいろいろ言い訳は出来るけれど、まだまだ力不足だったし、宣伝不足だったし、どのセッションにネタを出すかなどに考慮が足りなかったし、と反省材料はいろいろ。メゲずにつぎ行くしかない。

15日の夜

大飲み会。ちょっと遅れて行ったら満席で椅子がありませんでした。参加者は30人越えるくらいでしたでしょうか。いろんな人におめでとうを言ったり、近況を聞いたり、わかった風を語ったりしつつ。
ご隠居に語ったことですが、わたしはconsciousnessの問題をnhpで扱うためにはattentionとdecisionを同時に扱わなければならない、と考えています。だからこのサイトはattentionネタやdecisionネタ(neuroeconomicsもあくまでこの範疇のものとしてわたしは興味を持っております)を扱ってるわけです。認知科学的枠組みの中で扱う限り、その種のreference workが必要だと思うし、まだまだ足んないと思うのです。
であとはオタクネタとかネットネタとか。なんでこんなところでサーク_ルクラッシ_ャーネタとか語ってるんだか。
7時から始まって帰ったら11時。けっこう長居しました。明日のslideの原稿はまだ暗記できてないし。


2005年11月15日

15日の昼

ryasudaさんにポスター会場で会って、takashiさんのポスターがあることを知ったのでそこで話し込んでたら、一緒にお昼を食べよう、ということになりました。ryasudaさんと話すのは今回がはじめてでしたが、ryasudaさんはいい感じに力の抜けた味わいのある方でした。
Ryasudaさんとantaresさんとの立ち話で、rodentでの実験ではなにをやるのが適切だろう、という話になったので、visualよりはolfactoryだろう、という話になって、そういえばEichenbaumのrecognition memory taskを使ったepisodic-like memoryの話とかもolfactoryを使ったものだったですね、とかそういう話をしました。あと、water mazeなりplace cellなりの話がおそらくはvisual inputを元にしているにもかかわらず、visual cortexからの入力で海馬の応答が形成される、という形になっていないことにnhpでの研究者としての違和感を表明したり。しかしながら一方で、rodentのV1の応答を記録してニューロンを分類しているBulkhalter(綴り自信なし)のような人もいるが、それはかなり道としては遠そうだなあとか。
takashiさんも相変わらず。今後どうやっていくつもりですか、という問いにその場ではきっちり答えることが出来なかったけれど、わたしはニューロンおよび局所回路のレベルに主に注目して、consciousnessの「現象」的側面から離れないようなかたちで明らかにしていく、というスタンスでそのつど出来るベストのことをやっていきたい、というかんじで考えてます。いや、こんなんでは足が地に着いてない感じがしてダサいのだけれど。

iRiverとわたし

なんか頭の中を"moon in June"が流れまくるので、iRiverで大きい音にして流しながら街を歩きました。あれはRobert Wyatt(イギリス人)がニューヨークでイギリスを懐かしむ、という歌であるということをかすかに思い出しつつ。
地下鉄ではいちばんミスマッチなものを、ということでなんか萌え系、みたいな。ゴツいおっさんらに囲まれて。
急に思い出したのが、松代に行くときの車での会話。これから日本で日本のとくいな点でやっていくとしたらなんだろうか、ということでロボティクスと萌えだ、と主張したのだけれどだれも食いついてくれない。しょうがなく後輩が、じゃあ、ネコミミなんかはどうでしょうか、とフォロー(?)してくれたので、よし、これからはネコミミをBMIで動かすnekomimi-prostheticsだ、と強引に主張したことを思い出します。(自分にはそういう属性はありません。)
明日は発表前日にして、大飲み会。参加者50人だって聞いたよ! つぼ八貸し切りかよ!ってかんじですが。
超つれづれと。


2005年11月14日

SFN報告11/14

やっとネットにつながりました。つーかワイヤレス設定をコンピュータ相互にするように、と書いてあったからそうしたのにそれが間違っていたようなのです。
ダライラマ講演は参加できず、ってかひと多すぎ。
チャイナタウン人多すぎ。メシ食えない。
とりあえずネット上関係者ではしげさんのポスターに行ってきました。Stateがdistinctでなくてcontinuousなものであるのにdistinctなものとして扱うようなモデル構成につっこみを。ほんとうはよくわからなかったのだけれど。


2005年11月12日

私信

Western Ontario University@London_Ontario, Queen's University@Kingston_Ontario経由で今日ぶじ、Washington DCに到着しました。みなさまにお会いできることを楽しみにしております……がそのまえにスライドの仕上げをまだまだやらなければならない私。
明日はダライラマの講演に行くかどうか思案中(警備が厳しそうだし、混みそうだしなあ)。
ネットにつなげられたのでこちらからも更新する予定です。


2005年11月11日

Science 11/4

Science 11/4はSFN配布用neuroscience特集です。昨年の特集(10/15)はPaul GlimcherやYasushi Miyashitaという感じでしたが、今年はSimon Baron-Cohen、 Mriganka Surときて、Kuniyoshi L. Sakaiが入ってます。

2005年11月10日

フールプルーフ

「フールプルーフ」って言葉ってバンド名にぜったい使えると思うんだけど。

ワンワードでシンプル。カタカナだと上から読んでも下から読んでも同じ。尊大かつ自虐的に使いうるヒネった概念で、人をくった感じがまたよい。ハッカー的なpolitically incorrectな表現。理系っぽさも漂う。なにより音づらがいいでしょう。

んでジャンルはメガネロック系。ギターはノイジーだけどすっとんきょうな打ち込み音が入ってるかんじ。ヘナチョコなようで、じつはボーカルの声は太い。

こんなかんじでどうでしょう(->誰に言ってんのよ!)。

logo.png

せっかくなのでフリーのフォントでロゴ作り(Gray GraphicsのNationalizeを使用)。なにやってんだか。


2005年11月08日

PubMed2.0

本読んでて思ったんだけど、Googleのpagerankみたいに、論文のcitationにかんしても論文単位で評価するのってないんですかね。もちろん、web of scienceみたいなやつはあって、referされた回数というやつが個々の論文で評価されるわけだけど、それだけでなく、referenceのグラフ構造みたいなものからデータマイニングの手法を使ってわかることがあるのではないかと。

たとえば、論文間の近接度からオリジナリティがどのくらいあるかを評価したり、新しい領域を作り出した論文による新しいクラスターの形成とかも見えるだろうし、この論文が引くべき論文を引いていないとか、個々の論文からではわからないことが見えてきそうだし。

もちろん、さいきん増えてきた、この論文はこれらの論文からreferされてます、というようなのは非常に有用ですが、このへんはもっと進歩するのではないかと思うのですね。

論文のreferenceにかんして、webでのページランクと違う点として、

  • 論文では新しい論文によるリンクの付加しかない。
  • author自体にも、overlapは離合集散があって、small world的構造がある
  • 全く同じ内容のものがあってはならない。オリジナリティがなければならない

というあたりがあるわけで、このへんを加味して考えると、pagerank的なものをたんに論文のreferenceにかんしても作ってみました、というのよりもおもしろくなりそうです。というかこういうことはどっかでやられているんでしょう。

全く同じ内容のものがあってはならない、という拘束条件によって類似度の高いものについては新しい方の重みを下げる、とかすると、オリジナルペーパーとレビューとをまとめて一つの仕事として捉えることに寄与しそうだし、二番煎じ的論文はその素性がばれやすくなるということでもあります。

そもそもpagerankからしてそうなんだけれど、「内容は全く問わずにリンクだけで評価できる」というところが重要なのであって、これらはすべて内容を読んで新しい論文を作成してゆく人たちによって補完され、データが付加されてゆくわけです。あとはこれにF1000やconnoteaでのタグ付けなど、論文の執筆者ではなくて読者によるデータが付加されて統合されることによって「PubMed2.0」とでもいえる状況になるといえるでしょう。やっぱり、webとちがって、読者によるデータの付加というところがむつかしい。

つれづれと。

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# tny

こんにちは。はじめまして。
最近、Web 2.0的論文査読システムのことを考えていました(http://d.hatena.ne.jp/tny/20051108/1131545621)。

こちらのエントリーを読んで、論文の評価システムも考えなくてはいけないのだな、と気がつきました。どうもありがとうございます。

#Google Scholarというのがあれば、はてなスカラーというのもあってもよいかな、と考えてみたりして(笑)


2005年11月03日

論文いろいろ

Nature neuroscience 11月号

  • "Neural basis and recovery of spatial attention deficits in spatial neglect" Corbetta@Washington University。急性期と慢性期の患者での注意課題でのactivationをfMRI。Hans-Otto Karnath論文でhemineglectの原因部位がSTGであったことをふまえて、著者らは原因部位を"perisylvian region"と呼んでSTG-IFGを含んだ領域に損傷があるときにIPSやTPJでの活動がどう変わるか、というようなモデルを作っているようです。これまでのTPJ損傷説からのつじつま合わせに苦労している様子。PosnerによるNVあり。
  • "Induction of sharp wave–ripple complexes in vitro and reorganization of hippocampal networks" これについてはしげ日記で扱ってくれるのではないでしょうか。ギューリー・ブジャーキがNVやってますし。と下書きを作って放置していたら予想通りでしたね。

Science

  • "Observing Others: Multiple Action Representation in the Frontal Lobe" RizzolattiとOrbanでaction observationでnhpでfMRI。って英語混じりすぎですねこりゃ。Observation of a hand grasping objectsでrostral F5 and areas 45B, 45A, and 46でactivation。Observation of shapesでarea 45がactivate。というかF5のrostral側のarcuate sulcusの中をふつうに45野と称しているけれど、それだけfineな議論に耐えうる解像度を彼らのデータが持っているかどうかが問題となることでしょう。ようするに、Fig.1見てその結論を信じられますか、ということです。
  • "Failure to Detect Mismatches Between Intention and Outcome in a Simple Decision Task" これ、疾病否認とかと関係あるんだと思うんで読んでみたいんだけれど、まだ。著者はこの現象を"choice blindness"と呼んでる。そのうちTrends in Cognitive Sciencesあたりにレビューが出るだろうからそのときでよいか。
  • "Breakdown of Cortical Effective Connectivity During Sleep" もともとのEdelman and Toniniあたりからずっとフォローしてないんだけれど(なんか怪しげで……)、検証しておかないとなあ、と思いつつ放置中。
  • "Direct Evidence for a Parietal-Frontal Pathway Subserving Spatial Awareness in Humans" 脳腫瘍の切除手術でintraoperative electrical stimulationして、bisection testをすることによって、その患者さんの注意に関連する領野を切除しないようにしました、というわけです。その結果、IPLおよびcaudal STGへの刺激で影響あり。しかし、Karnathが主張するrostral STGへの刺激では影響なし。さらにparietal-frontal pathwayへの刺激がいちばん影響あり。というわけで、Corbettaが書いているように原因部位としてIFGまたはIFG-TPJのconnectivityを考えるというのは理にかなっているのかもしれません。
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# Shige

こんにちは。予想、ありがとうございます(笑)。
sharp wave-ripple complex は海馬特有の脳波なので、いくぶんマニアックかもですね。ただ、ほんとに機能的な neural assembly の形成に関わっているとしたら面白いですが。
それでは。


2005年11月02日

世界の神経科学者の系統樹 Neurotree

20051101のコメントで「V1の人」さん(敬称付けにくいよ!)からNeuroTreeについての情報をいただきました。どうもありがとうございます。
んでさっそくやってみました。おもしろい。たしかにまだ抜けはいろいろあるけれど、この分野の人だったらいろいろ遊べます。試しにやってみましょう。"browse as guest"から入れます。
たとえば、Bob Wurtzの下にはDoug Munoz、Michael E Goldberg、Marc A Sommer、William T Newsome、Okihide Hikosakaなどなど。そこから二つさかのぼるとDonald Hebbになってその上にKarl LashleyとWilder Penfieldがあって、下にはMortimer Mishkin、Brenda Milnerとか。Larry Weiskrantzのところは上にKarl Lashley、Karl H Pribramがあって、その下にはCharles Gross、Alan Cowey、Mel Goodaleとか。Vernon MountcastleからMichael M Merzenich、Ranulfo Romo、Richard Andersen、Apostolos Georgopoulosとかかなり壮観。同じように強烈なのはPeter Schillerの下にMichael Stryker、Larry R Squire、John Maunsell、Nikos Logothetis、Victor Lamme、Jeffrey Schall、Edward Tehovnik、Carol Colby、Marc Sommer、Robert McPeekというやつですな。MITってすごいなあ。一方で、Evartsの下にJun TanjiとPeter Strickというのは少なすぎるような。Wurtz門下の日本人も彦坂先生しか入ってないし。
じつは以前、こういうファミリーツリーを作ったらどうだろう、なんてことを言ったことがあったんだけれど、すでにこんなものが出来ているとはおどろき。じつのところ、こういうのってのは諸先輩方と酒を飲みながら昔話とともに伝えられていく性質のものだったりするのだけれど、こういうのまでネットにあるというのはすごいことになってる。それから、オタク的にもこういうのに単純に心が躍るのですな。60-70年代英米ロックの世界では、バンドのメンバーがどう行き来したかを独特の字体でチャート化したPete Frameのfamily treesというやつがありまして(ネットで見ることの出来るものとしては、たとえばdebris.com、ここから行けるJethlo Tullのfamily treeとか)、なんかそれに似通ったものを感じるのですな。ついででなんですが、カンタベリーミュージックシーンにかんしては、Collapsoでこのようなツリーが作られております。

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# tny

yama_tah blogさんのところからやってきました。はじめまして。
これは研究者の家系図なのですね?すばらしい!

私の分野は(といっても修士なのですが)タンパク質科学なのですが、
こちらでもぜひやってみたいです。いや、本当におどろきました。

# pooneil

どうもはじめまして。わたしも教わって見に行ったぐらいなのですが、なかなかおもしろいですよね。また、情報の入力はボランティアに依存している様子で、ムラはあるけれど、だんだん充実してくるというweb2.0的アプローチなので、これからどのくらい充実してゆくか見るのも楽しみです。


2005年11月01日

Pursuitのエラーは視覚由来

Nature 9/15。"A sensory source for motor variation" Osborne, Lisberger and Bialek。F1000で挙げられていたのですこし読んでみました。

Pursuit=追従眼球運動、では動いている視覚刺激を追いかけて目を動かすのですが、この運動を正確に行うには目からの入力でたえずフィードバックをかけながら眼球運動の軌道を修正してゆく必要があります。そういうわけで、sensorimotor coordinationを研究するには良い系なわけです。んでもって、それでもこういう運動をするときには視覚刺激の位置と実際の目の位置とにはズレが起こります。このズレがなにに起因するかをモデルを作って計算した、というのがこの論文。視覚刺激自体の位置の推定によるズレと眼球運動のプログラムの段階でのノイズに起因するズレとがあるわけですが、ほとんどのズレは視覚刺激自体の位置の推定によるズレであったと。

F1000ではWilliam Kristanがコメント付けていて、ほかの課題でも応用可能であろうと。というわけでもうすこし詳しいことを読んでみる必要あり。Carpernterの仕事関連とか、さいきんのJNS 10/26 "The temporal impulse response underlying saccadic decisions"とかとも併せて。

Lisbergerはpursuit関連の仕事をやり続けてきた人。PubMedでさかのぼってみると、どうやらFuchs AFの弟子らしい。Bialekは"Spike"の著者。同じ著者グループでJNSにMTニューロンの記録も出してる。今回の論文は、そのついででこれまでのpursuitの行動データを解析してみたらこんなことがわかりました、ということなのでしょう。きっと次は同じメンツでMSTニューロンの記録で今回の解析を適応、ということでしょう。

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# V1の人

ごぶさたしております。

> PubMedでさかのぼってみると、どうやらFuchs AFの弟子らしい。

こんなのご存じですか?↓
http://neurotree.org/neurotree/

Lisbergerだったら
http://neurotree.org/neurotree/tree.php3?userid=guest&sessionid=my78IKkmW1ix6&pid=93

まだまだデータベースに偏りがありますが、「AさんとBさんは何親等(?)なのだろうか」とかいうのも調べられてなかなか面白いです。

# pooneil

どうもお久しぶりです。neurotree見ました。おもしろいですね。思わずうちのボスにも教えてしまったり。これをネタにエントリを作ってみようと思います。
それから、所属変わったようですね。スケジュールがあえば、Washinton DCで会いましょう。ではまた。


お勧めエントリ

  • 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
  • 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
  • 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
  • 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
  • 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
  • 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
  • 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
  • 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
  • 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
  • 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
  • DKL色空間についてまとめ 20090113
  • 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
  • ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
  • Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
  • 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
  • MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213

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