[月別過去ログ] 2016年09月
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■ 「公正なる世界戦線」(さうして、このごろ2015年6月版)
さっき新横浜駅で「いま有楽町なんで、いまから東京駅に向かいます」って携帯で電話しているおっさんを見かけた。いったいどんな大冒険がこれから君を待っているんだい?
「ライク・ア・ローリング・ストーン」の歌詞で「彼(ナポレオン)のところに行けよ、呼んでるぞ、拒めないだろ」って畳み掛けるところが好き。”Go to him now, he calls you, you can’t refuse”
しかもよく見ると、heとyouの順序がライティング的によくできていることに気がつく。「ディランに学ぶ英語ライティング」って企画を思いついた。
「人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある」 知ってた。ビートルズとソフト・マシーンが好きです。あとの音楽は全部クソです。こうですか?
でも実際問題として、いまDeerhunterとかTychoとかYndi HaldaとかWashed Outとかを聴いていても、それは私にとっては、カンタベリーとシューゲイザーとクラウトロックからの発展形として聞いているだけで、私がなにを美しいと思うかの感受性はちっとも拡張していないんではないかと思う。
「今いくよ」というけれども、已にいったものはいっていないし、未だいってないものはいってないし、今いきつつあるものもいかない。いきつつある者はいかないし、いきつつある者ではない者もいかない。「今くるよ」というけれども、(略) (ナーガルジュナ「中論 今いくよくるよの考察」より)
「ミルウォーキー・カード・ソーティング・タスク」ってフレーズが降りてきた。だったら「タラハシー・カード・ソーティング・タスク」とかどうよ、とか考えてみた。「ツーソン・カード・ソーティング・タスク」とかは普通にありそうで怖い。結論としては、「どうでもよい」
西友で3割引きになっていたお弁当を買ってガチャガチャが並ぶベンチで遅い夕食をしていたら、おじいさんが所在なさそうにじっと座っていて、徘徊老人だろうかと思ってこっそり見てみたら、案外若い人だった。マクドナルドはすでに閉店し、消灯し、アイカツの筐体からむなしく音声が流れた。
世界は俺を追い立て、追い越し、追い抜き、トンネルの先の方にぶつかって詰まってしまった。俺はトンネルの壁を手で伝いながら、夜露に濡れた壁を伝いながら、その部分に探るように前へ進むのだけれども、いつのまにかトンネルは闇に溶けてしまって、世界もそのうちどっかへ行ってしまった。
俺は自分で自分に賞状を書く。夜道の畑のスイカの甘い匂いとか、山道で不格好に大きくなっているタケノコとか、稲刈りで大量に見つかった小さなカエルとか、降りだした雨で立ち昇るジオスミンの香りとか、そういったものをかき集めて、承認欲求を満たしていこうと思う。
Grateful Deadの"Morning Dew"で一番好きなバージョンは Europe '72 に入っているやつだけど、もっといいのがあるかもしれない。俺は無限の図書館を、オイルで磨かれた板張りの廊下を、欧州の城を模した廊下の壁画を眺めながら歩いてゆく。
「公正世界仮説(just-world hypothesis)」という言葉を知った。つか「公正世界」って言葉の響きがカッコええ。「公正なる世界戦線」(just-world front)とか作って戦いぬきたい。いや、べつに戦いたくない。
「もぐ♥ワイ!」ってのを考えついたんだけど、誰にこの気持ちを伝えたらよいのかわからない。
海外からの客人を迎えてひさびさにビール3パイントも飲んで酔っ払った。夜の奈良井公園の気持ちいい空気の街灯の下で本を読みながら酔い覚ましをして、それだけでもう幸せだった。この瞬間の気持ちをwebに書き留めて、永遠の記録とする。
2016年09月22日
■ 研究メモ: 主にサリエンシー関連 (20150429まで)
MMNというのは本質的にはoutlier detectionであって、視覚でいうサリエンシーと同様注意に関わる現象である、という言い方をすると誤解が生じることがわかった。事象関連電位の人にとってはMMNはpreattentiveで、P300がattentiveだから。
つまりこれは注意の研究の二つの流れの話(トリーズマン方式のpre-attentive vs. attentiveとポスナー方式のbottom-up attentionとtop-down attention)を混同しないようにする、というのがポイントだったのだ。
より正確に言うならば、視覚にも聴覚にもサリエンシーはあって、視覚での空間的なサリエンシー(サリエンシー・マップ)+時間的なサプライズ(ベイジアンサプライズ)、聴覚での空間的なサリエンシー(まだ充分モデル化されてない)と時間的なサプライズ(time-freqで計算される)とがある。
それぞれの時間、空間特性の違いがあるということ。そしてMMNに記憶の要素があるというのは、あくまで自動的な過程であって、そういう意味では視覚でのIORに記憶の要素があるのと対応している。
あとは視覚だと目が動いてその履歴に依ってmotorのIORが出てくるわけだけど、P300でやっているようなselectionのときにはselectionの行動自体が顕在化しているわけではないので、sensoryなIORに対応したものがあるはず。このへんまで考えてみると、視覚でいうovertなIORとcovertなIORの関係が聴覚ではどうなっているんだろうか、とかその辺に興味がわく。
いやいや、IORとtemporal surpriseはべつものなのでそれを混ぜるとわけわからなくなる。そこは取り消し。以前やったシミュレーションの結果を使って、聴覚oddball課題の視覚アナログ(赤丸->ブランク->赤丸->ブランク->青丸)とかを計算してみればよいのだな。
以前の@ksk_S さんとのやりとりを見なおして"The entropic brain"を読んでたら、ここでもサリエンシーネットワークが出てきて、SOCとE-I balanceとネットワークのカオスとサリエンスネットワークとフリストンとオートポイエーシスと解離症状と精神症状のサリエンシー仮説とベイジアンサプライズとIIT ver.3が全部つながって、居てもたっても居られなくなってきた。
今年の駒場講義(6/10 「意識の神経科学:「気づき」と「サリエンシー」を手がかりに」)で部分的にでも盛り込んでみたいけど、自分で手を動かしてシミュレーションするか、相当深く論文読んでから出さないと迫力出ないので、もう少し練っておく。
去年も同じようなこと言ってたけど、けっきょくactive inferenceの図を作るところまでだった。自分のブログ記事見なおして思ったけど、IITの勉強はぜんぜん進んでないな。
Change deafnessという現象があることを知った。Change blindnessの聴覚バージョンということだな。ふつうに考えたらサッカードによるchange blindnessはvisionのstabilityを作るために貢献しているものだろうから、change deafnessにおいてはサッカードは寄与しないように思える。auditoryでは関係なさそうだ。いっぽうでもしchange blindnessとchange deafnessの両者に上丘が関わっているのなら、change deafnessにおいてはッカードが寄与するということがあってもよい。
さらに説明文を読んでみると、“Conscious change detection was correlated with increased coupled responses in the ACC and the right insula”とある。おー、ここでサリエンスネットワークとつながった!イイね!
会議だとポンチ絵をそのまんま貼り付けたようなスライドが出てきて、手抜きで悪だなと思うけど、あれはあれで意図がある。ああいうのは説明者は全部説明しないし、オーディエンスは話半分で聞きつつスライドと手元の資料をざっと見して自分に関連する部分に質問するとかそうやって使うもんなんだろう。
分野間連携的な場面で発表するとどうしても「このようなことを言うのは釈迦に説法ではございますが」と言いたくなるが、本当に釈迦に説法だったらそもそもそんな説明入れないし、「いましゃべっている文脈でこれまでによく知られていることを捉え直します」という意味なら言い訳せずに説明したい。ほんとうにできているかと言われると自信はないけど。
最近だんだんその種の会議に参加するようことが増えてきて、忙しい先生方が手抜きしつつもツボははずさないで説明する場面を見ることが増えてきたので、自分自身のプレゼンの作成方針や指導方針などとのすり合わせを意識しながら考えたことをちょっと文章化してみた。
EnChromaがどうやってprotanopiaを補助しているかというと、この会社のサイトに詳しく説明が書いてあるけど、L錐体とM錐体との感度の差が大きい波長だけを通すフィルターを使っている。
だからL錐体とM錐体の感度が完全に重なっている人だとこのメガネは効果がないが、そういう人はprotanopiaのうちの20%以下だとしている。あくまでフィルターだから、短波長の色を提示したときの経験を超えることはないわけで、たとえば私がこれをかけてLCDモニターを見ればCIE空間上の三角形よりも広い(でもCIEの閉曲線のなかを超えない)ところの色を経験することができるはず。
以前DKL空間とかで計算したときの方法を使えばDKL座標での値を計算することができるだろう。ここで議論されてる。
2016年09月15日
■ 研究関連メモ(20150225-20150409)
ウィキペの「平沢貞通」の項目を読んでいたら、平沢貞通が狂犬病予防接種の副作用によるコルサコフ症候群に罹患していて、それによる作話と逮捕の関連についての記載が出てきた。コルサコフ症候群の説明のためのエピソードとしてストック。
ずいぶん前にブログで大学院講義のために記憶障害についてまとめたことがあって、単純ヘルペス脳炎とかウェルニッケ―コルサコフ症候群といった、宣言記憶に特異的な障害(手続き記憶は保持される)とかの例を書きだしたことがある。
どうやらウィキペの記述の元ネタは「小説 帝銀事件」松本清張著(角川文庫)らしい。「小説 帝銀事件」・松本清張著(角川文庫) もう少し直接的な資料に当たりたいが、今日はここまで。
研究についての批判の話だけど、これは文系ゼミで著書への批判をする場面だということに注意するべき。学会での質問とかラボセミナーでの質問とかで学生に向けてこういう言い方をして詰まらない質問ができなくするのは正しくないわけで。
理系のJC発表の指導の場面においては、私なら段階を踏んで説明するだろうか。はじめは発表者は論文の隅々まで(設定したパラメーターひとつひとつまで)徹底的に読んで理解することが大事なので、そのためには重箱の隅でもいいから批判ができるようにencourageする。
引用したブログ記事に書かれていることは次の段階の話であって、そのようにしてブレインストーミング的に思いつくだけ挙げた批判が、その論文の主な主張に影響をあたえるような致命なものであるか評価をした上で、論文の主な主張が充分受け入れられるものなのか、どういう保留事項をつけるべきなのか、
というふうに自分がこれまで読んできた論文や研究を体系化した枠組みの中でいま読んでいる論文の位置づけをフェアに行う。ここで建設的だか破壊的だか、本質的なことが言えるようになるといい読みができているといえるわけで、ってJC指導と論文査読って地続きだなと改めて感じる。
論争的なトピックでどちらかの側に属する立場にいる場合には、認知的歪みでこの位置づけが(ラボ全体ですら)ずれているということはおおいにありうる。
「HMMとspike sorting」みたいな論文を漁りながら、でも究極には、「スパイクソーティングしないで波形データのすべての情報を使って電極近辺で起こっている事象を推定する」のがいちばんいいんではないかと考えた。この論文はデコーディング。
つまり、single-unitへのこだわりを一旦外して考えると、知りたいのはそこにあるニューロンへの入力様式と出力様式とその変換ルールで、記録部位周りにあるニューロンをスパイキングネットワークでモデル化した上で、それぞれのパラメータを推定するのが、ほんとうにしたいことのはず。
芥川龍之介の歯車は閃輝暗点だと思うけど、よく読むと片眼でのみ起こるって書いてる。「僕は又はじまつたなと思ひ、左の目の視力をためす為に片手に右の目を塞いで見た。左の目は果して何ともなかつた。しかし右の目の瞼まぶたの裏には歯車が幾つもまはつてゐた。」網膜片頭痛ってのもあるらしいが。
麻痺する片頭痛 「網膜片頭痛とは突然視界が狭くなったり片方の目が見えなくなったりする片頭痛のこと。目の前にキラキラしたものが見える片頭痛特有の閃輝暗点(せんきあんてん)とは違いますので区別してください。」これ見るとなんかやっぱ違ってそうなかんじ。
閃輝暗点がだんだんfoveaから周辺視野に広がってゆくのと対応して、cortical spreading depressionも後頭葉の最後端から広がってゆくわけだけど、それは一番後ろが血管支配的にいちばん虚血になりやすいからということだろうか。
EyeTribeについてひさびさに調べてみたら、PyGazeのなかにimplementされてる!これでPsychoPyで使えるようになりそう。以前Processing + SuperCollider (youtube)というのを作ったことがあるけど、いまならEyeTribe (-> json) -> Python (-> osc) -> Supercollider でいけそう。ただ、マウスでクリックするのと違って、眼球運動は一秒に数回のサッカードとそのあいだの注視の繰り返しだから、その時間特性に合った音と構成にするべき。
そうやってつらつら考えていたら、そもそもEyeTribeではそんなによい精度が出ないのだから(tobii X2-60でもそれなりに大変だった: Eye-tracking for dial tones (youtube))、キャリブレーションが正確でなくてもよいようなものの方がよい。
そこまで考えると、saccadeやblinkだけ検出すれば良いんじゃ? -> だったらそのときにchange blindnessだ! -> つかそれだったらアイトラッカーである必要すらなくって、EOG(眼電位)で充分だなとか、サッカード時のCBって音にも起こるんだろうか?とかだんだん拡散していったら、ウォーリーを探せ課題でサッカードを検出してターゲットを出したり消したりするような実験パラダイムを思いついたので、前例があるか調べているところ。(<-もはやsupercollider関係なし)
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