[月別過去ログ] 2011年07月
« 2011年06月 | 最新のページに戻る | 2011年08月 »2011年07月27日
■ MacBook Pro 2011で120Hzできた
神経心理の実験の準備のために、刺激提示について検討してた。いろいろ道具を持って出張するということになるので、CRTではなくてLCDで刺激提示をすることにする。
刺激提示装置の選択は視覚科学の分野ではいつでも問題で、CRTモニタが年々入手が難しくなってゆくところでどうやって心理物理的実験を行うかというのはしばしばMLにもポストされる。
つまり、CRTでの時間応答と比べて、LCDでの時間応答は遅い。年々スペック表に出ている「応答速度」は速くなってゆくが、これは白->黒での値だったりして、中間色のあいだでの時間はもっとかかる。
そういうわけで、motion刺激を出すような場合にヘンに残像とか出たりすると困ったことになる。(静的な刺激に関しては事情は違っていて、液晶のIPS方式だと色再現や視角がよかったりして、医療での画像診断用のモニタは液晶だったりする。)
とはいえ、LCDでランダムドット刺激使って心理物理やった論文とかも出てはいる。"Speed and Eccentricity Tuning Reveal a Central Role for the Velocity-Based Cue to 3D Visual Motion" (JNP 2010) LCDを使うに当たってはMethodsのなかでそれなりに確認したことが書かれている。あと、続編では120HzのDLP projectorも使っている。"Motion processing with two eyes in three dimensions" JoV
そんなこんなで気にはなっていたのだけれど、今年のvisionlistのポストでLCDでもけっこう大丈夫ですよ、という論文の原稿が公開されてた("An LCD monitor with sufficiently precise timing for research in vision" (pdf))。この論文ではネイティブ120HzのSAMSUNG 2233RZとNVIDIA Quadro FX580の組み合わせを使っていた。
なるほど、たしかにだんだん120Hzのものが増えてきているようだし、これを使うことを検討してみた。
グラフィックボードに関してはNVIDIAはGeForceがDirectX特化(ゲーム用)で、QuadroがOpenGL特化(科学計算用)ということらしい。私が使うとしたらPsychPyにしろPTB3にしろOpenGLベースとなるのでやはりQuadroか。
液晶ディスプレーの方はネイティブで120Hz出るもので今いちばんよいのはBenQ XL2410Tか。これはTN方式なので欠点はあるが、応答速度も速い。(比較記事) 三菱とかはIPS方式で色再現や視野角はよいけど、これはネイティブ120Hzではないので私の用途には向かない。
ほかにもいろいろと調べていたのだが、この世界はFPSゲーマー向けがいちばん進んでいることがよくわかった。LCDはだめでCRTがいちばん、とか視覚科学者と同じこと言ってて親近感がわく。
たとえば、120Hzにしても人間の目が追いつくのか?なんて議論をしていて、ソニーの人の論文 とかに言及していて、240fpsあたりが限界だって話をしている。ちなみにこちらはpdfが取れる: Development of the High Frame Rate 3D System
平行して、macのラップトップでも刺激出せないかどうか検討した。MacBook Pro 2011にはMini DisplayPortからDual-Link DVIに信号を送ることができるようになっているのだけれど、外付けモニタで120Hzは出せないのだろうか? webのサポートページとかではシネマディスプレーとか大画面用には出せるようだが、リフレッシュレートについては記載がなかった。
もうちょっと古い型ではうまくいかなかったと書いてあった:120Hz monitor usage ただし、グラボの性能としては120Hz出るようだし、switchresxを使って120Hzが出せるという情報もあった。
以前書いた120Hzモニタの件。BenQ XL2401TをMacbook Pro (2011 Spring)とDual-Link DVIで繋いでみたら、ちゃんと120Hz出せることが確認できた。PsychoPyでtime by frameを計算すると、平均8.3ms (= 1000ms/120frames)。
ただし、スクリプトの立ち上がり(<100ms)のところで盛大にフレーム落ちすることがある。
Macbook ProはふたつのGPUを切り替えているので、それのせいかなと踏んで、「省エネルギー」のところで 「グラフィックの自動切り替え」をオフにする。これで常に高性能グラフィックの方が使われるようになる。これでうまくいったかなと思ったらまだframe落ちすることがある。
よくわからん。ただし、frame落ちするのは初めの方だけなので、どっちにしろ刺激を出す前に待ち時間をおくことになるし、私の用途ではとりあえずはよしとする。
参考までにLCDの応答特性とかを評価した論文いくつか:
お勧めエントリ
- 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
- 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
- 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
- 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
- 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
- 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
- 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
- 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
- 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
- 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
- DKL色空間についてまとめ 20090113
- 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
- ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
- Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
- 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
- MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213