[月別過去ログ] 2021年06月
« 2021年05月 | 最新のページに戻る | 2021年07月 »2021年06月19日
■ 研究関連ツイートまとめ(2020年後半)
受動的綜合についてZahaviが何を言ってるか調べてた。「現象学的な心」3章p.148では、ものの動きとか雑音とか、知覚的にsalientなものが触発affectionして、そのような先行的な触発に受動的に応答するreceptivityという言い方をしている。ここで引いているのはZahaviの「自己意識と他性」で
6章で「もしわれわれにそれを気に留めるように強いるならば、何らかの仕方で、対象、異質性、差異を通して目立っているにちがいない」「触発は布置の一部である何かによってつねになされ、つねに受動的に組織化され構造化された領野の内部からの触発なのである」p.187 これはサリエンシーだ。
「ベイトソンが書いているように、情報は、差異を生む差異である。そして、何かが差異を生むかどうかは、単純にそれ自体の本有的特性の事項ではなく、われわれの現行の関心—大体がわれわれの以前の経験によって影響される関心—との関係の事項である。」p.188 サリエンスも生成モデルの関数で経験依存。
じつは、本当にやりたかったのは、「感覚的なサリエンスと情動的、動機的サリエンスが、同根であるもしくは相互に強化するような関係にある」という私の主張を補強できるような議論がないか探していたのだけど、だいたいが感覚的(視覚または触覚)の例に終始している模様。
nautil.usのウォルター・ピッツに関する記事を再読してた。McCulloch and Pitts 1943での万能チューリングマシンとしての脳モデルから、Lettvin et al 1959での検証でカエルの眼が脳に伝えるのはアナログな生態学的情報だった、と夢が敗れるという書き方。
この夢が破れるシーンは「栄光なき天才たち」でコミック化してほしい。ドラマチックにしすぎだけど、脳を入出力機械として描写すれば事足りるという考えが今でも残っているとしたら、それはウォルター・ピッツの絶望を十分理解できてないからかもしれない。(<-あ、自分で書いてて書き方が気に食わない)
ところでそのような絶望が本当にあったのだろうか? 事実として残っているのは、1959論文でのWalter Pittsによると思しきパラグラフでこういうところがある。
“In short, every point is seen in definite contexts. The character of these contexts, genetically built in, is the physiological synthetic a priori. The operations found in the frog make unlikely later processes in his system of the sort described by two of us earlier…but those were adduced for the sort of form recognition which the frog does not have. This work is an outgrowth of that earlier study which set the question.”
と、カエルはform recognitionの機能を持っていないので、もともと考えていた、低レベル特徴の組み合わせによるform recognitionという考えはrejectされていない、という立場にあるように思える。
「細胞の生物物理学」7章を読んだ。 系と環境の間で熱と粒子の両方とも行き来する状況(例: 蓋のないビーカーでの化学反応)がグランドカノニカル分布(ギブス分布)で、系と環境の間で熱だけが行き来する状況のカノニカル分布(ボルツマン分布)で、両者はルジャンドル変換で繋がっている。
- グランドカノニカル分布は $p(E,N) = exp(-\beta(E-\mu N)) / 大分配関数\Xi$
- カノニカル分布は $p(E) = exp(-\beta(E)) / 分配関数Z$
分配関数 $Z$ から自由エネルギー $F$ が計算できるけど、大分配関数 $\Xi$ からグランドポテンシャル $J$ を計算してルジャンドル変換でも $F$ が計算できる。「グランドカノニカル分布とその意味」
両者がexpの中身が $-\beta(E-\mu N)$ か $-\beta(E)$ かの違いだけど、それは「微視的状態の観点からすると、熱・粒子浴の明示的な扱いを省略して化学ポテンシャル $\mu$ にその役割を負わせているということ」(「細胞の生物物理学」p.309) なんかちょっとわかってきたかも。
新型コロナにしろインフルにしろ、ウイルス感染が「見えない」「感知できない」ということが問題なので、いい加減そろそろ人間も進化して、ウイルスを感知できる表現型が現れてきたりしないもんかね?
人間に限定して考えるのは違うか。カンブリア爆発で眼が急速に進化した話を念頭に置いているのだから、ウイルスと免疫系のイタチごっこの現状において、ウイルスの方策を無効化する方法を見つけた生き物が反映して、ウイルスは使いこなせる生物にとっては有用な武器となるとかそういうかんじ。
「ウォンバットよ、お前もか! 体が光る有袋類はまだまだたくさんいることが判明」 蛍光を使って我々の知らない視覚世界を生きているのか。やっぱコロナが見えるように俺らも進化すべきだな。(<-まだ言ってる)
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- 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
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