[月別過去ログ] 2007年04月
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■ 夜の町を疾走する列車
夜中のこの時間にはいつも、遠くで列車が猛スピードで通り過ぎてゆくのが聞こえる。1:13AMと1:38AMと1:55AMと2:04AMと2:07AMと2:31AM(おもわずメモっちゃったよ)。そんな音が聞こえるくらいに町が静かなんだ。窓を開けると、国道をまばらに車が走るのが聞こえる。地方小都市では夜が早い。暴走族の音も最近聞かない。
たぶんあの音は東海道本線を走る寝台特急なんだろうなあ(元鉄ちゃん)、と思ってネットで調べてみたらすでにけっこういろいろ廃止されていることを知って驚く。そもそも、九州まで行くようなやつはうちのあたりは24時よりずっと前に通り過ぎてくし、ムーンライトながら(昔の大垣夜行)は5時くらいにならないと通らない。浜松を1時過ぎに通るサンライズ瀬戸/出雲というのを発見。でもこれ一本しかそれっぽいのがない。
けっきょくわからずじまい。たぶん貨物列車なんだろう。この地に10年住んで来て、あの列車の音を何度も聞いてきて、それでもわからずじまい。それもまたよし。おやすみなさい。
って1:38AMの音を聞いてから文章書いておいたら、次々に列車が来るのでどんどん文章が長くなる。
The WhoのSell Outのボーナス曲で"Early morning, cold taxi"ってのがあって、あれは3:36AMなんだけど、これいいタイトルだなあ(鼻提灯をぶら下げながら)。
2007年04月23日
■ Perirhinal cortex(嗅周皮質)の構造と機能つづき
さてさて、つづきで機能についてですが、non-human primatesとrodentsとでのperirhinal cortexのfunctionを比較して議論するレビューというのはなかったような。だいたい、rodentsでは海馬至上主義が蔓延していて、海馬内でDG-CA3-CA1で分担してencodingからrecallまでやってしまうようなストーリーになってたりするのであれでいいのだろうか、と思うことがあるのですが。ま、このへんは種差の問題もあって簡単ではない。Non-human primatesでは伝統的に視覚経路についての研究が進んでいるので、視覚入力がどのように処理されて、内側側頭葉記憶システムに入力してくるか、というような視点を持っているのが強みです。Rodentsだったらたぶん、視覚入力よりは違うものを使った方がよいのかもしれない。最近のRGM Morrisの話とか、Eichenbaumの話とかはだいたいolfactory系の刺激で砂を掘らせるとかそういう方向に行ってる。あのラインで感覚処理系と記憶系とを繋げてゆくというのがいちばん将来性があるのではないか、というのが私の持論です。うお、脱線。でも脱線が面白いもので。(このフレーズ使うのは何回目だろう。)
なんてエラソーなこと書いてて久しぶりにPubmed検索してみたら、MurrayのAnnual Reviewというのが出てますね。これが「non-human primatesとrodentsとでのperirhinal cortexのfunctionを比較して議論するレビュー」というのではいちばん良さそうです。
- Annual Review of Neuroscience Vol. 30 (Volume publication date July 2007) "Visual Perception and Memory: A New View of Medial Temporal Lobe Function in Primates and Rodents" Elisabeth A. Murray, Timothy J. Bussey and Lisa M. Saksida
ただ、このレビューはMurrayが近年主張している、perirhinal cortexはmemoryだけでなく、percetual aspectにも関わっているのだという話に偏っている傾向があります。そういう意味ではnon-human primatesだけになりますが、
- Trends in Cognitive Sciences Volume 3, Issue 4 , 1 April 1999, Pages 142-151 "Perceptual-mnemonic functions of the perirhinal cortex" Elisabeth A. Murray and Timothy J. Bussey
こちらの論文のほうがperirhinal cortexのmemoryに関する機能についてレビューするという機能をよく果たしていると思います。(上記の論文を間違えていたので訂正しました。ご指摘ありがとうございます。)
なお、Elisabeth A. MurrayはMishkinの弟子です。その昔、海馬のlesionよりも扁桃体のlesionのほうがrecognition memory testの成績が落ちるなんて話があったのですが、けっきょくそれは扁桃体のlesionでは扁桃体にアプローチするときにperirhinal cortexを損傷させていたからだなんてオチがあったわけです。そのへんの仕事をしてたのがMurray EA and Mishkin Mでした。
このへんで力尽きました。
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- / 投稿日: 2007年04月23日
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# NORI
pooneilさん、こんにちは。私もperirhinal cortexに興味を持っているので、とても楽しく読ませてもらっています。ところで、ここで紹介しているMurrayたちの論文は同じ物なのですが、それでいいのでしょうか?
# pooneilご指摘どうもありがとうございます。間違えてたので直しました。
ところで、ratとmonkeyとでのperirhinalの相同性ってどのくらい明らかになっているのでしょうか。言及したBurwell 1995とかだとニッスル、Timm's stain、AChEを並べて議論しているようですが、いまだったらSMI-32とかもっといろんなマーカーでのimmunohistochemistryを頼りに出来そうです。Richmondの話であった、dopamine系の投射も重要ですし、いろんなものの発現プロファイルがこの問題に大きく貢献できるのではないかと思ってます。
また、私はどうしてもventral visual pathwayからの入力に注目しがちですが、rodentの海馬がspatial mappingに大きく関わっているという点で、dorsal pathwayからの入力がどういう経路を介しているかにも興味があります。Non-human primatesだったら、parietal-retrosplenial-parahippocampal-hippocampusという流れが確立しているように思えますが、rodentsだったらより入力が強烈なのではないか、とか考えたり。
それではまた。
2007年04月21日
■ Perirhinal cortex(嗅周皮質)の構造と機能
とおおげさなタイトルで始めてしまいましたが、non-human primatesとrodentsとでのperirhinal cortexのanatomyとfunctionについてということで関連するレビューをまとめてみました。しばらくこの分野はご無沙汰なので情報が古いかも知れません。お気づきの方はご指摘を。
まずは解剖学ということで。Perirhinal cortexは側頭皮質と隣接したarea 36と、より内側でentorhinal cortexと隣接したarea 35とからなっています。Area 36はlayer 4があるけど、area 35はlayer 4がないなどいくつかの点で構造が異なっています。しかし、どちらも側頭皮質からの視覚入力やその他のmodalityの感覚入力を受け、entorhinal cortexへ投射しているという点では共通しています。
Cytoarchitectureの違いに基づいた領野の区分についてのレビュー。
- Hippocampus (1995) Volume 5, Issue 5 , Pages 390 - 408 "Perirhinal and postrhinal cortices of the rat: A review of the neuroanatomical literature and comparison with findings from the monkey brain" Rebecca D. Burwell, Menno P. Witter, David G. Amaral
1995年とやや古くなっていますが、領野の区分および他領野との結合に関してratを中心にして、macaque monkeyと比較してあります。なお、perirhinal cortexのanatomyに関してはmonkeyもratも、UC DavisのDavid G. Amaral(Squire系列)のところで出しているものが現在のスタンダードになっていると言えます。
Monkeyに関してはさらに細かいsubdivisionが提唱されているのですが、
- The Journal of Comparative Neurology (2003) Volume 463, Issue 1, Pages 67-91 "Perirhinal and parahippocampal cortices of the macaque monkey: Cytoarchitectonic and chemoarchitectonic organization" Wendy A. Suzuki, David G. Amaral
ちょっとこれは話が細かすぎるかもしれないので、
- Neuroscience Volume 120, Issue 4 , 15 September 2003, Pages 893-906 "Where are the perirhinal and parahippocampal cortices? a historical overview of the nomenclature and boundaries applied to the primate medial temporal lobe" W. A. Suzuki and D. G. Amaral
こちらの方が領野の区分については歴史的経緯を追っていてわかりやすいかもしれません。時代ごとにみんな違った名称を使っていて、古い論文を読むとTE1/2/3(Pandyaによる分類)とか出てきて面食らうのですが、そういうときに便利。Humanとmonkeyの比較の資料としても役に立ちます。そっちはそっちで重要なポイントですが、以前の大学院講義スレで多少触れてます。(Humanでのsemantic dementiaが起こるところがperirhinal cortexに相当するのでは、とかそういう話。)
解剖学のつづきで他の領野とのconnectivityについて。大脳皮質連合野との相互結合、海馬やentorhinal cortexなどの内側側頭葉記憶システムとの相互結合それぞれを押さえる必要があります。だいたい双方向性なのですが、細かいことを言うといろいろある。んでもって、解剖学者は話が細かい。わたしを含めてのことだけど。Rodentsでのconnectivityに関しては、
- The Journal of Comparative Neurology (1998) Volume 398, Issue 2 , Pages 179 - 205 "Cortical afferents of the perirhinal, postrhinal, and entorhinal cortices of the rat" Rebecca D. Burwell, David G. Amaral
この論文のfig.14がいちばんよいまとめではないでしょうか。これをみると、area 36とarea 35とでやや違いがあるような書き方をしてます。Area 36のほうが側頭皮質との結合が強くて、area 35のほうがentorhinal cortexとの結合が強いとのこと。
Monkeyでのconnectivityに関しては、
- J Comp Neurol. 1994 Dec 22;350(4):497-533. "Perirhinal and parahippocampal cortices of the macaque monkey: cortical afferents." Suzuki WA, Amaral DG.
これの最後の図がいちばん良いまとめだと思います。かつてわたしはこの図を机の前に貼ってました。(と言っても私の机は荷物置き場になっていて機能してなかったのだけれど。)
うお、構造の方だけでいっぱいいっぱいなので、機能については次回。
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- / 投稿日: 2007年04月21日
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2007年04月19日
■ 子育てよもやま話みたいな
一番下の子はカタコトで少ししゃべられるようになってきたところなのですが、この時期は発達過程がいろいろ面白い。さいきんは、自分がなにかを手渡すときも、自分になにかを手渡してほしいときも、「ハイッ、ドージョッ」と言います。なるほど、自他の区別がないのかー、とか納得してみたり。
そしたら、愛する妻の報告によると、今日は動かなくなったおもちゃに、単3の乾電池を持ってきて入れようとしたそうな。じつはそのおもちゃはボタン電池で動くやつなんで、ボタン電池を持ってくるのだったらわかる。見覚えがある(familiarityレベルでのobject間の連合の記憶がある)とかで出来そうな気はする。でも、単3の乾電池を持ってきたということはもう少し高度なことをやっていると考えることが出来るというわけです。どんな勘違いをするかで、どんな概念を持っているかがわかる。以前紹介したことがあるScience論文(20040515)での、ミニチュアの椅子にむりやり座ろうとする子どもの話とかもそういう話でした。
2007年04月04日
■ ポスター見に来てくれた人
無事Annual Meeting of the Society for the Neural Control of Movement(NCM)から帰ってきました。
学会としてはoculomotorよりはlimb movement系のほうが多い感じ。参加者は全体で300人程度。常時ひとつのシンポジウムかポスターセッションというかんじで、一体感があってよいです。以前の生理研COEシンポジウムとかがイメージとしては近いです。
わたしのポスターの方はほぼ常時だれかと話しているというかんじで、皆さんおもしろがってくれて、なかなか手応えを感じました。来てくれた人でバックグラウンドのわかる人をメモっておきました。日本人の方は割愛ということで。
- Brian D. Corneil@University of Western OntarioはDoug Munoz familyのひとり。R. A. Andersenのところでparietalのシグナルを使ったBMIの仕事(Science 2004 "Cognitive Control Signals for Neural Prosthetics")に加わった後でカナダに戻ってきた。以前からeye-head coordinationの仕事をしていて(Neuron 2004 "Visual Responses on Neck Muscles Reveal Selective Gating that Prevents Express Saccades")を出してる。
- Kevin JohnstonはStefan Everling@University of Western Ontario(こちらもDoug Munoz family)のところの人。最近Neuronを出したけど("Top-Down Control-Signal Dynamics in Anterior Cingulate and Prefrontal Cortex Neurons following Task Switching")、今回のポスターはJNS 2006 "Monkey Dorsolateral Prefrontal Cortex Sends Task-Selective Signals Directly to the Superior Colliculus"がpro- anti-saccadeだったのをmemory-guided saccadeにしたものを出してました。
- Neeraj J. Gandhi @University of Pittsburghは以前はDL Sparksのところにいた人。今回はeye-head coordinationのシンポジウムで、Vision Research 2001 "Experimental control of eye and head positions prior to head-unrestrained gaze shifts in monkey"の延長上の仕事として、上丘からの記録やOPNの刺激の話をしてました。この人は回路の人なので、私の話でどのくらい厳密に回路の議論ができているのか、というような質問が来た。
- H.H.L.M. GoossensはVan Opstal@Netherlandsのところのひとで、上丘のニューロン記録の論文あり:"Dynamic Ensemble Coding of Saccades in the Monkey Superior Colliculus"。
- Peter Bremenも同じラボで、外部への出力が不要な眼球運動測定法をポスターで出してました。Journal of Neuroscience Methods 2007 "Using double-magnetic induction to measure head-unrestrained gaze shifts. I. Theory and validation"。Van Opstal自身は来訪せず。いろいろ聞いてみたいことはあったのだけれど。
- Thomas Schenk@DurhamはもともとZihlのところでV5(=MT)損傷の神経心理をやってた人(Neuropsychologia 1997 "Visual motion perception after brain damage: I. Deficits in global motion perception")。今回は患者DFさんの話(Nature Neuroscience 2006 "An allocentric rather than perceptual deficit in patient D.F.")をポスターに出してたけど見逃しました。
- Pierre Baraduc@CNRSはWolpertのところにいた人で、reachingで内部モデル関連。Current Biology 2004 "Consolidation of Dynamic Motor Learning Is Not Disrupted by rTMS of Primary Motor Cortex"とか。この人はすごくこちらの話がよくわかってて、根掘り葉掘り質問されたけど、なんとか最終的には納得してもらえたと思います。
こう並べてみると、どういう人が客層なのかということがわかって収穫。場所柄か、比較的ヨーロッパの人が多い印象。なお、今回の学会はoculomotorに関しては上丘かその下流(OPNとかEBNとか)の人が中心で、FEF,LIPとかのひとはほとんどいませんでした。そのへんはたぶん7/8-13に行われるGordon Research Conferenceのoculomotor system biologyの方に流れてるのでしょう。こちらも参加したかったけどさすがにちょっと無理。
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