[月別過去ログ] 2024年09月

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2024年09月11日

XTCについて + Zappaについて

XTCについて

(20240216) XTCのAndy Partridgeがこれまでの曲についてギターを弾きながら解説してくれるインタビュー動画。なにもかもすごいけど、その4にわかりやすいところがあったので紹介。

(いくつか観たカバーバンドが)みんな間違えてるって言って紹介したのが、"The Ballad of Peter Pumpkinhead"のヴァースのコード。ここはD-Gだと思われているけど、じつはGではなくてG69 (32223X)だと。(Andyは自分で発明したつもりだったけど、後日ブラジル音楽でよく使われるコードであることを知ったという。

Respectable Streetのヴァースの2つのコードも解説されてる。これもB-C#7と解釈されているかと思うが、実際に弾いているのは

79987X- 98907X
B - C?(1-3-b5-b7-11)

という謎コードだそうな。

そういうわけで急にXTC熱が復活したので、"Complicated Game"のコードを拾ってみた。

XX5033 G(-3)
XX4032 GM7/F#(-3)
XX4532 D7
XX445X Bsus4(-3)
XX444X B
XX555X C
XX777X D
XX4032 GM7/F#(-3)
XX5033 G(-3)

Andyは3弦の開放弦gを鳴らすのが好き、3度を削って調性を曖昧にしてる、から推定するとたぶんこんな感じ。C-Dのところでは(曲の全体通して)意図的にベースが鳴ってないので、C/B-D/Bと解釈するのがよさそう。

"Complicated Game"はアルバム"Drums And Wires"の最後の曲。はじめはギター一本と病んでるボソボソ声でスタートするのだけど、最後のヴァースでは絶叫するボーカルにディレイを掛けてぐちゃぐちゃになってフェードアウトする。どうするんだこれって雰囲気で終わるので、この曲をアルバムに配置するならたしかに最後に置くしかない。

世界は複雑系であり、自分の意志でなんとかしようとしても世界の構造の中で毎度の結末へと引きずり込まれる、という正しくも悲しい歌詞に打たれる。

この曲を歌いたいんだけど、ギター弾き語りにはまったく向いてない。スマホ持ち込みでカラオケルームで絶叫するか。

アンディ・パートリッジのインタビューを読むと、彼が音-視覚の共感覚を持っているという話が出てくる。

(作曲で歌詞と曲どっちが先かと聞かれて)「いや、パターンはない(略) ただコードをいじっているだけで、海とか雲とか箱とか、何かを暗示することもある。その点に関しては、私はちょっと共感覚的なんだ。音を聞いて、"おお、これは霧のようだ "とか、"11月の雨の日のようだ "とか思うことがある。多くの場合、歌詞が生まれるのは、そのコードや和音の共感覚的な性質、つまりそのコードが描いている絵を説明しようとしているからなんだ。
「イースター・シアター」がそうだった。土のようなコード、茶色く濁った、上昇するようなコードが、「これは何かが地面を突き上げるような音だ。
楽器の音色が何かを暗示することもある。"Chalkhills and Children "のオルガンの音色のように。冒頭の小さな鍵盤の音は中世的で土俗的な響きだと思ったが、その前の穏やかな高音の和音はまるで浮遊しているような響きで、大地の上を漂っているようだった。いつの間にか、この曲が何について歌っているのかを推論しようとする私の精神的な把握が、歌詞になっていたのだ。」

Zappaについて

上記のAndy Partridgeインタビュー動画の聞き手のChanan Hanspalさん。この人のYoutubeチャンネルには膨大な動画があって、とくにザッパへの言及がすごい。

でもその内容が現代音楽的な話なので、ぜんぜんついていけない。(「ピッチクラス・セット理論」というのに言及していて、このへんから調べるとよさそうだが。)

いくつか観てたら、ザッパの音楽の分析で博士論文を書いたって言ってた。

別の人によるこの動画は私にも分かる内容だった: "Frank Zappa's Favorite Chord Progression"

ザッパの典型的コード進行として、Black Napkins進行というのがあると。

C#m7 (C# dorian) - DM7 (D lydian)

これはなるほどと思った。ザッパのギターソロとかメロディーは、あるときはドリアンで、あるときはリディアンだったりするのは別資料で読んでた。コード進行でスイッチしてたのか。動画では"modal center switching"と表現している。


2024年09月01日

「スカスカおせち、若者のすべて、Ulrich Schnauss」(さうして、このごろ2024年1月)

(2024/1/3) 「冷凍ケーキ崩壊とかで騒いでいたのが昔のことのようだ」みたいな表現を見て、なんかこれと似た感慨を覚えたことがあるぞと記憶を辿った。そしたらあれだ、「スカスカおせち事件」だ。

あれは2011年の正月用のおせちの話で、始まったばかりのフラッシュマーケティングへの疑念までつながってどえらく炎上していたものだった。でもそのあとの東日本大震災がやってきた。あのときに、似たような感慨をTwitterに書き連ねた、もしくはだれかが書いたのを見た記憶がある。


「合唱曲「COSMOS」をシューゲイザーにしてみた」 これ完璧なバランス、完璧なブレンドで成立している。革命的だわ。コメント欄にあること以上のことは言えないが、先日見つけてからちょくちょく聴いてる。


Allen Instituteのマウス脳論文がNature Articleで9連報。なんか感慨深いな。いまから脳の研究をしたいという人の多くはまずこのデータを弄るという発想になるだろう。

「理系の人がよく言う「何が嬉しいかというと」」 自分はこの節回しまったく使ったことがない。「理系」というよりは数学を(モデリングなどで)ヘビーに使う人、「数物系、情報系、工学系の人」が使うイメージかな。


「若者のすべて」を歌っていて気づいたのだけど、「夕方5時のチャイムが〜」の部分のメロディーって、歌詞に合わせて夕方っぽい感じがする。もっと具体的に言えば、小学校で放課後に「下校の時間になりました。」って放送されるときに流れる「遠き山に日は落ちて」のメロディーっぽいというか。

ここまで書いてから、検算というか、ググってみた。そしたら、もっと深い考察を見つけた。すべての人の心に響く「志村正彦」が残した音色~思い出と共鳴し日常に溶け込む「チャイム音」~


「「ポランニーのパラドックス」という有名な説があります。これは哲学者マイケル・ポランニーの言葉をもとに提唱されたもの」

ポラニーは「パラドックス」みたいな言い方はしてなかったのでは?と調べてみたら、経済学者デヴィッド・オーターが2014年の論文で使って定着した模様 。

  • 京大総長卒業式 式辞 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/president/speech/2021/20220324-1
  • Itmediaブログ https://blogs.itmedia.co.jp/borg7of9/2015/09/ai.html

糸井重里氏の昔のツイートが上がってきている。学生運動から転向して80年代にスターになった人の言葉と考えると、よく理解できる。そういう文脈において、自分はこれに心情的に同調できる。

とはいえ、こういう考え方は、現実の変革への抵抗勢力になるのでは、という懸念もわかる。

だからもし自分用に書き換えるなら、人様にもの申す形にならないようにするだろう。「自分が発言するときは、スキャンダラスでないように、より脅かしてないように、より正義を語らないように、より失礼でないように、と表現を選びます」ってかんじで。


ヴィレヴァンが知らぬ間にマズいことになってた

ヴィレッジヴァンガードは岡崎に路面店があって、90年代にはよく夜に車で行ったものだった。「クール・クールLSD交感テスト」(トム・ウルフ著)とかを立ち読みしていたはずだ。イオンモールとかに出店しはじめたあたりから行かなくなった。

昔の自分のツイートを漁ってみたら、10年以上前に言及していた。書籍の顔ぶれが変わらないのが、自分にとっては致命的だった。これ以降ヴィレヴァンには入店したことがないので、最近の状況はわからないけど。


Ulrich Schnauss、いいなあ。"Goodbye"のPVを見てハマった。Youtube Musicに入っているので全アルバム聴いてるところ。

「シューゲイズ/エレクトロニカ」とか書かれてるけど、あまりシューゲは感じない。まあそういう分類は置いたうえで、これはいい。発見するのが15年遅れたけど。


ザ・キンクス 榎本俊二 第10話が「ABCの歌を歌わずに済ます」という回だった。

自分の場合はそこは「ABCの歌」ではなくて、Soft Machineの"A Concise British Alphabet part 1"が頭の中に流れる。そしてそのまま"Hibou, Anemone and Bear"の7拍子になだれ込む。(7拍子、はより正確には(3+3+3+5)/8の14/8拍子)


ナゾロジーの「私の赤とあなたの赤は違う色?」の記事はよくない(のでリンクも貼らない)。

元論文は、レチノイン酸によってL錐体とM錐体の分化が起こることをオルガノイドで明らかにした(図3)、そしてレチノイン酸シグナル系の多様性がL錐体/M錐体比率の多様性と相関していることを示した(図4)、というもの。

L錐体/M錐体比率に多様性があるというのは以前の報告にある。(JNS2005の図4) この図は印象深いので、わたしも自分の講義「意識の科学入門」で使ってる。


もし「スキップとローファー」が実写ドラマ化されて、あの話のキモである繊細な描写がすっかり削られて、「地味な私がイケメンに気に入られてドッキドキ」みたいな話に改変されたら?、とか要らん想像をした。


お勧めエントリ

  • 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
  • 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
  • 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
  • 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
  • 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
  • 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
  • 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
  • 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
  • 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
  • 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
  • DKL色空間についてまとめ 20090113
  • 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
  • ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
  • Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
  • 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
  • MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213

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