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■ 生理研研究会「知覚学習と運動学習」提案代表者の柴田和久さんからコメント
生理研研究会「知覚学習と運動学習」のほうは参加申込受付中。ポスター発表もぎりぎり前日まで受け付けてます。ぜひいますぐ。
昨日のブログ記事を受けて、提案代表者の柴田和久さんからもTwitterで研究会についてコメントしていただきました。許可を得たので以下に転載します。(リンク情報などに編集あり)
@kazuhi_s_ 吉田さんのブログに乗っかって、僕も研究会についての個人的ないきさつとか考えを書いてみる。すでに参加予定の方、参加を検討してくださっている方への参考になれば。(以下連投)
@pooneil ブログ更新しました。「生理研研究会2018 「認知神経科学の先端 知覚学習と運動学習」要旨集アップロードしました」 研究会のテーマについての思いとか、講演者の方にお願いするまでのいきさつとかそういうことを書いてみました。
@kazuhi_s_ ここ数年ずっと頭にあったのがこの論文
- “Common mechanisms of human perceptual and motor learning” Nature Reviews Neuroscience volume 13, pages 658–664 (2012)
知覚学習と運動学習の共通点を議論した論文で、知覚学習のSagi、そして運動学習のLeo Cohen、両者をつなぐCensorによるもの。Fig 1がよくまとまってる。
@kazuhi_s_ 知覚学習も運動学習もダイナミックな過程で、訓練、固定、再活性、再固定というステージを経る。従って、知覚学習も運動学習も干渉 interference が起こったり、固定までに時間を要したりする。睡眠も重要な役割を果たす。
@kazuhi_s_ MC研究会に参加したりすると、さらに記憶研究ともつながりがあることがわかる。個人的な印象では、記憶研究がもっとも歴史が古く知識の蓄積も多い。記憶に運動学習が続き、そのあとにさらに知覚学習が続く。
@kazuhi_s_ たとえば干渉は記憶の場合古い研究がたくさんあり、運動学習の干渉は90年代に隆盛を迎え、知覚学習で干渉研究が増えたのは2000年代以降。でも、記憶と運動学習と知覚学習では実験的にできることが違うからか、互いに局地的に進んでいるトピックもあったりする。
@kazuhi_s_ 互いに似ている部分はあるけど、運動学習と知覚学習の研究は結構独立している。だからそれぞれの分野の人から話を聞いて議論したら、互いに得るものが大きいのではないかと思った。
@kazuhi_s_ 共通性とは別に、最近脳の興奮抑制のバランスと可塑性の関係が気になっている。講演者のひとりであるHenschさんは、90年代の終わりから、臨界期のげっ歯類の視覚野などで興奮抑制バランスと可塑性の関係を示してきた。
- “Critical period plasticity in local cortical circuits” Nature Reviews Neuroscience volume 6, pages 877–888 (2005)
@kazuhi_s_ 興奮抑制バランスが重要なのは臨界期だけではないようで、最近は成体でも興奮抑制バランスと可塑性/学習が関係しているという仕事が結構出てきた。僕が渡邉武郎さんのところでやっていた仕事もその流れの一部と考えることができる。
- “Overlearning hyperstabilizes a skill by rapidly making neurochemical processing inhibitory-dominant” Nature Neuroscience volume 20, pages 470–475 (2017)
- “Consolidation and reconsolidation share behavioural and neurochemical mechanisms” Nature Human Behaviour volume 2, pages507–513 (2018)
@kazuhi_s_ ということで、干渉、固定、再活性といった学習プロセスが記憶、運動、知覚で共通していそうなこと、そして可塑性や安定性の調整は興奮抑制バランスが担っているんじゃないかという枠組みがおぼろげながら見えているのが現状だと思う。
@kazuhi_s_ 個人的には、共通性や興奮抑制バランスをキーワードに研究会を楽しめればいいなと。
柴田さん、ありがとうございます。
柴田さん@kazuhi_s_ も書いていたE-Iバランスの話はわたしも非常に興味があります。脳が「刺激に対する応答」ではないこと、脳でのコーディングを理解するための本質だと思うので。偶然だけど、ちょうど昨日のエントリの前にRenart et alのScience 2010 Asynchronous State論文をJCでやったときのメモを書いてた。「Asynchronous State」
van Vreeswijk and SompolinskyのScience 1996にあるみたいなカオスとか、neuronal avalanchesでself-organized criticality出てくる話 (J Neurosci. 2009 Dec 9; 29(49): 15595–15600)とか、このあたりにはいろいろあるけれど、とにかくE-Iバランスを保った状態にあることが脳の正常な機能には必須で、だから可能な脳状態というのはおそらくずっと少ないだろう(ref忘れた)とかそういう話に興味がある。
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2018年09月09日
■ 生理研研究会2018 「認知神経科学の先端 知覚学習と運動学習」要旨集アップロードしました
恒例の生理研研究会 「認知神経科学の先端」ですが、2007年からスタートして今年は第9回目となりました。今年のテーマは「知覚学習と運動学習」ということで名古屋大学の柴田和久さんといっしょに準備してきました。とりあえず基本的な情報は以下の通り:
- 生理学研究所研究会 「認知神経科学の先端 知覚学習と運動学習」
- 日 程:2018年9月21日(金)~22日(土)
- 会 場: 自然科学研究機構 生理学研究所 大会議室
- 提案代表者 柴田 和久 (名古屋大学・大学院環境学研究科)
- 世話人 吉田 正俊 (生理学研究所 システム神経科学研究領域 認知行動発達研究部門)
- 所内対応教官 磯田 昌岐 (生理学研究所 システム神経科学研究領域 認知行動発達研究部門)
講演者 (アルファベット順、敬称略):
- 古屋 晋一 (Sony CSL)
- Takao Hensch (Harvard University)
- 牧野 浩史 (シンガポール南洋理工大学)
- Ben Seymour (NICT)
- 柴田 和久 (名古屋大学)
- 岡本 仁 (理研CBS)
- 牛場 潤一 (慶應義塾大学)
参加費無料。ポスターセッションあります。 参加申し込みは研究会webサイトから: http://www.nips.ac.jp/%7Emyoshi/workshop2018/
問合せ先:吉田 正俊(生理学研究所)
これまで生理研研究会「認知神経科学の先端」では、認知神経科学の重要なトピックについて学際的に講演者を選び、参加者が異分野交流と活発な議論が出来ることを狙いとして開催してきたわけですが、さまざまなテーマに通底するのは「意識」でありまして、意識を研究するにあたって必要なテーマ全てに手を伸ばしていこうというのが私自身の個人的な狙いです。 この点について2015年の生理研研究会の記事で書いたことがあります。
今年「知覚学習と運動学習」をテーマに選んだのは、意識経験の変容を伴う可塑的変化に興味があったというのがひとつです。テーマを「可塑性」とするのもありだったわけですが、シナプス可塑性のようなミクロなレベルよりも個体のレベルでの変化に関わるものに絞りたい、そして、認知的な学習や記憶に関わる部分とはべつの現象として「知覚学習と運動学習」を強調したいということでこのようなテーマになりました。
このような興味を元に講演していただける方を探しました。まず運動学習ということでBMIを通して基礎から応用までをつなげようとしている牛場 潤一さんと音楽訓練という感覚運動統合の長期的可塑性を研究している古屋 晋一さんにご講演をお願いしたい、というのはかなり早い時期に考えていました。
知覚学習側としてはperceptual learningの脳内メカニズムをやってきた柴田 和久さん御本人に講演していただくところまでは考えていたのですが、 知覚学習として視覚以外のことをやっておられるのは誰だろうと考えて、painをやっているBen Seymourさんにお願いした次第です。それから知覚学習ということでは発達での可塑的変化が重要トピックだろうと考えたわけですが、Takao Henschさんに来ていただけることになって非常にラッキーでした。
これでだいたい研究会の骨格ができたので、あとは分野の多様性を上げたいと考えて、たとえば計算論の人に入ってもらうかと考えていたのですが、そのときに牧野 浩史さんが知覚学習と運動学習の両方について2光子Caイメージング法を使って共通原理を探そうとしているのを知って、これはぜひお願いしたいということになりました。牧野さんは今年日本神経科学学会奨励賞を受賞されております。おめでとうございます。そして最後に公募講演枠を募集したところ、zebrafishで感覚運動変換について計算論を組み合わせた仕事を岡本 仁さんにお話いただけることになりました。そういうわけで計算論についても充実してきました。
第9回目となる生理研研究会ですが、これほどのメンバーにご講演いただけるという意味で今回はかなり特別な会となるのではないかと思います。開催まで2週間をきりました。ポスターでの参加もぎりぎり前日まで受け付けてます。ぜひ参加してください。
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