[月別過去ログ] 2022年02月
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■ DKL色空間の図
必要になったので、ひさびさにDKL空間の図を作ってみた。RGB 8ビット*3の立方体からの変換なので平行六面体になる。それは3Dプロットしてみるとよくわかる。
といいつつ計算にハマった。あーわかった、rgbの立方体の12辺上の点だけぜんぶ3Dプロットして、ぐるぐる回してやればいいのか。明日やる。
さっそくやってみた。ちゃんと平行六面体になった(図1)。図2はS-Lumを潰した射影、図3はL-Mを潰した射影、図4はL+Mを潰した射影。図4が正6角形になったのはそれぞれの軸を-1~1に収めるように標準化したから。Red-CyanやBlue-YellowがDKL空間の軸からずれているのが確認できて納得いった。
図1
図2
図3
図4
2022年02月18日
■ クライ quray を吹く練習
ロシア土産にクライqurayをもらった。吹口が単純な筒のタイプの笛で、世界中に似たものがあるらしい(参考: 世界の斜め笛について)。さっそく吹いてみたが全然鳴らない。まず吹き方から調べた。たとえばこの映像だと、斜めに構えて、上の歯に当てて吹いてる。合間を見て練習してみよう。
演奏法の参考になるサイトとしてこちら: Видеоурок “Игра на курае” / Начальный уровень (ビデオレッスン「クライを弾く」/初級レベル)を教わった。別の演奏例でも見たけど、クライを演奏しながらホーミーみたいに喉歌も歌ってる。そんなドハマリするつもりもないが、とりあえず音が鳴るようにしてサンプリングしてDTMに組み込んでみたい。
そもそも自分は笛の前に口笛吹けないので、ネットで「口笛の吹き方」みたいなの探して練習してみた。舌を下の歯と歯茎の間に置いて、無声音で「ひーゆーうー」って言いながらちょうどいいポジションを見つける、っていうのをやったら1時間で音が出るようになってきた。口腔内身体性の獲得を実感。
まだ練習始めて二日目だけど、今はとにかく、いちばん良く音が出るポイントにいかにすぐにたどり着くか、そしてそのポイントを維持し続けられるかを試してる。座ってるときより歩いているときのほうがよく音が響くことにも気づいた。姿勢と腹式呼吸がだいじというのを実感した。
口笛は2音程出せるようになった。つまりキンクリの“Fallen Angel”のサビが吹ける(?)。頭の中であのリフを流しながら。ところで「口笛の出ない音のため」って誰の曲の歌詞だっけ? ググってみても見つからないので諦めていたが、急にメロディーが浮かんできて、井上陽水の「ロンドン急行」だと判明した。
夜中の口笛吹き、だいぶ大きい音が出せるようになってきたので、そろそろ音程を考慮することにした。出せる音程が限られているし、しかも安定しない。スマホのチューナーアプリで調べてみたらC6-D6の範囲の音は出せるらしい。チューナー見ながら±10cent以内に収める練習。難しい。
クライqurayの音出しは気分転換にちょくちょくつづけてる。前よりは音が出るようになってきた。管が響いているのを実感するときもあるが、動画で見たのとなんか違う。摩耗防止にホームセンターでアクリルのパイプ(ちょうど同じくらいの太さ外形21mmで内径18mm)を買ってきて音出し練習に使ってる。
クライqurayの練習をしていたら口腔内身体性を獲得できてきて、口笛も音量が大きくなってきた。いまは音域を広げる作業をしている。Bb5-F#6まで出せるようになった。安定性はゼロだけど。
2022年02月08日
■ 2021年度 北大大学院講義「意識の科学入門」いろいろメモ
(2022/2/8) 2022年度も4月から北大で大学院共通授業科目「意識の科学入門」を開講します。2021年度に講義をやってみて、いろいろフィードバックをかけて、図にあるような構成に変えてみました。2022年度の講義に関する補足情報はCHAINのサイトにあります。乞うご期待。
「意識の科学入門」は昨年2021年4月にはじめて開講した。その準備とかでいろいろツイートしたことを以下にまとめてみた。ここから1年前にさかのぼります。
(2021/2/15) (北大生宛てです) 4月から大学院共通授業科目「意識の科学入門」を開講します。シラバスに掲載した事項を補足する情報を吉田の北大サイトに掲載しました。私吉田と鈴木啓介さん@ksk_S と宮原克典さん@kmiyahara2013 が担当します。初年度で模索中ですが乞うご期待。
私の担当部分について言えば、「心理物理的アプローチ」や「神経科学的アプローチ」を1回ずつで終わらせるのは無茶だが、あくまで入門的に扱う予定。代わりに「進化生物学的アプローチ」を入れた。昨年の鈴木大地さん@suz_dg のCHAINセミナーで学んだことを私なりに再構成する予定。
(2021/4/4) 北大の方へ: 大学院共通授業科目「意識の科学入門」ですが、zoomでのリアルタイム授業として実施します。履修生は録画した講義をELMS上から観ることもできます。zoomの接続情報をELMSに掲載しました。講義内容や参考文献についてはこちら:北海道大学 大学院共通授業科目「意識の科学入門2021」補足資料
(2021/4/18) 今度の木曜に開催予定の「意識の科学入門」第2回講義「知覚的気づき」のスライドを完成させてアップロードした。第1回の講義ではハードプロブレムの話をして、phenomenalとaccessのあたりでかなりモヤってくれたようなので、第2回も神経相関一般=>意識の神経相関NCCの話だけで終わらせずに、コッホのインタビューとか、デネットのヘテロ現象学とかを入れて、さらにモヤってもらえるように構成した。
(2021/4/23) 「意識の科学入門」のリアペにぜんぶ返事書いた。これはたいへんだ。
(2021/4/27) 「意識の科学入門」ではサールを引いて「意識の探求は分析的定義ではなくて常識的定義があれば始められる」と話したけど、飯島さんのスライドで「認知科学も厳密な定義をしない」と、デルブリュックやクリストフ・コッホの発言が採りあげられてた。これは活用できそう。
(2021/5/6) 今日の講義「注意と意識」無事終了。次回の「脳損傷による意識経験の変容」の準備を昨日からしてたんだけど、次回は意識レベルの変容(VS, MCS)、分離脳、visual agnosia、blindsightと盛りだくさんなので、半側空間無視USNをやる時間がない。急遽今日の「注意と意識」の最後にUSNを移した。
これまで採りあげたトピックについては、だいたいJCか独学で原著に当たる機会があったのだけど、分離脳については全くノータッチなので今から勉強する。ガザニガらの"Cognitive neuroscience"で行けるかと思ったが、Pinto et al 2017の話をフォローする必要がある。
Brain 2017とTICS 2017をざっと眺めた(読んだとは言わない)。なるほどこれは分離脳の研究での意識の統一性の議論がぜんぶひっくり返ったというべきだな。「古典的解釈を説明してから新しい実験による解釈を紹介する」のがフェアだが、端的に混乱させるだけになるようにも思える。どうしたものか。
「生存する意識」(オーウェン)も図書館で借りてちょっと読んだ。倫理的な問題に触れているところがあった。テニスのimageryの実験、倫理審査は通ってるけど、意識がある証拠が見つかった際に家族に伝えるかどうかについては取り決めがなかったらしく、伝えることもできず、患者は後に亡くなっていた。
(p.119-121) 被検者ジョンに実験中した質問:「「死にたいかどうか、訊きなさい」スティーブン(・ローリーズ)は言った。」(p.153) 別のところでローリーズが閉じ込め症候群の人に安楽死を望むか聞いた記述もある(p.204)。赤裸々すぎてびっくりした。これは切り取らずにちゃんと読んだほうがよさそうだ。
(2021/5/13) 「意識の科学入門」第4回「脳損傷による意識経験の変容」も終了。第3回と第4回のリアクションペーパーに全部返事を書いた。効率的に済ませたいのだけど、面白い質問があるとつい調べ物をして長文の返事を書いてしまうので、時間がどんどん過ぎてゆく。
やってることは「認知神経科学入門」の一部とも言えるけど、意識経験の変容に重心を置いている。Blindsightでの「なにかある感じ」、USNでの「左があることを事後的に構成する」とか、akinetopsiaで「コーヒー注ぐと液体が凍りついて見える」とかを強調。脳の説明はもっと減らしてもいいのかも。
(2021/7/5) 「意識の科学入門」は今日が第12回の講義が無事終了。残り3回は@kmiyahara2013 さん、@ksk_S さん、総合討論を残すだけ。吉田の担当分は今日で終了。担当部分の第1-4回はこれまでのストックで準備できたけど、第8-11回はほぼゼロからの構成でしんどかった。
出来上がったものを見直してみれば、第8-11回の講義は、ここ20年の意識研究(私はASSCパラダイムと呼んでる)を羅列的でなく構成して説明したものになった。ここは自信作。木曜の授業のために日曜までにスライドを完成させてアップロードするのは大変だったが、これは無駄にはならないはず。
(2021/7/31) 大学院で「意識の科学入門」と題した講義を14回やって、あとは最終討論を残すだけとなった。それで@ksk_S さんと振り返りをやっていたのだけど、私の部分はperceptionメインで、@ksk_S さんのところはselfメインで、feelingとしての意識のところが比較的薄いなと思った。ダマジオ含めてこのあたりを(とリサ・フェルドマン・バレット含めて)補強しておかないとと思っていた。ついでながら今度の応用脳科学アカデミーでは私のFEP講義のあとが岡ノ谷先生の講義なので、FEPが情動をどう扱っているかを私の講義のところに含めておきたい、という動機もある。
あと石津先生の講義もあるので、artとFEPの話を探してみたら、これらを見つけた。
どうやら"Affective Predictions"がキーワードになりそう。
(2021/8/5) 明日が「意識の科学入門」の最終回。これまでの講義をまとめて、全体の流れの図を作ってみた。これまでの意識研究(ASSCパラダイム)は知覚(青)中心だったけど、意識は知覚、自己、情動、生命の点から俯瞰することができる。もちろんみんな繋がってるけど、情動がまだ充分にリンクできてない。
別案として、外受容感覚、運動固有感覚、内受容感覚からスタートして、そこから立ち上がってくるものとして知覚、自己、情動を置き、生命はそれの上階層にする、とかも考えた。あと知覚があるのに思考を置かないのは異論あるかもしれない。もちろん講義の中ではメタ認知や作業記憶にも触れている。
これの別案として、左側にさまざまな意識に関わる事象(NCC,閾下知覚,盲視,分離脳,共感覚,…)を配置して、右側にさまざまな意識の理論(GNWT, IIT, 社会脳理論,…)を配置して、どの事象からどの理論がインスパイアされたのはを右矢印で、そしてどの理論がどの事象を説明するかを左矢印で書く、とか。
こうすると、「知覚」とか「自己」とか「情動」といった多分に重なり合っている概念を無理に分けて表現せずに、あくまでも(操作的に記述された)事象とその説明モデルとしての理論の関係だけを表現することができるかも。
自律性の概念の先駆ということでロス・アシュビーのホメオスタットについて調べてた。北大図書館に「Design for a Brain」の訳書(1967年)があることを知って借りてきた。けっきょくのところ、入出力のないRNNとでも呼べばよいか。超安定性ultrastabilityとはアトラクターと同一視してよさそう。
面白いのは、重みをいじるだけでなく、適正な状態から外れると(=生存の危機)、「セレクター」が働いて、強制的に重みをランダマイズする。これでふたたび超安定に戻れば良し、そうでないときは再びセレクターが働く。
ネタ本はトーマス・リッドの『サイバネティクス全史』なのだけど、そこで引用されてたメイシー会議録(第9回1952年)も借りてきた。そこでのアシュビーの発表については、サイバネティクスのうち制御の人たちは懐疑的で、ベイトソンとかは興味を持ったらしい。私は後者に肩入れしている。
説明を補足すると、「ホメオスタット」というとたいがいこの4つのゴツい機械の写真が貼ってあっておしまいなのだけど、全体的な動作についての図がないなと思って、自作してみたという話。
今年度は大学院講義「意識の科学入門」を開講してなんとかやりきった。来年度にさらにこれを磨いてゆくけど、そちらが軌道に乗ったら次は「精神の生態学概論」を開講してみたい。要は19年夏にHSIでやった「エナクティヴィズム入門」の発展形で、アシュビー、ベイトソン、ヴァレラから現在へ繋げる。
(2021/10/2) シンギュラリティサロンでオンライン講演会を行います。吉田と田口さん @ShigeruTaguchi というCHAINメンバー二人で「意識の考え方」を考える──北大CHAINの挑戦」というテーマです。吉田は今年度開講した「意識の科学入門」での実践について話します。
(2021/10/30) シンギュラリティサロン「「意識の考え方」を考える──北大CHAINの挑戦」は明日13:30からyoutubeでライブ配信です。(録画を視聴できます: Youtube)
私のスライドもほぼ完成。講義「意識の科学入門」の内容に忠実に図を作っていたのだけど、けっきょく話す内容に合わせてこの図に差し替えた。
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- / 投稿日: 2022年02月08日
- / カテゴリー: [北大CHAIN大学院講義]
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2022年02月02日
■ 「ピペットマン、パラフィルム、ドムドムバーガー」(さうして、このごろ2021年7-8月版)
「ロビンソン」と「クルーソー」でコール・アンド・レスポンスしてみたい。アリーナ席を左右半分に分けて。
今日は電子秤やピペットマンの選定をしていた。実験で必要なサイズを確認とか、GILSONのやつでもGとLとPでなにが違うかとか、いろいろ調べていたら3時間くらい飛んでた。
パラフィルムを注文しようと思ったのだけど、パラフィルムという言葉が出てこなくて、「3Mの…シリコンの…」(どちらも間違い)とググってみてもさっぱり見つからず、諦めてべつの仕事していたら突然「パラフィルム」の語が降りてきた。私の中に、パラフィルムの概念は、たしかに存在していた。
時計台、とは名ばかりの錆びた鉄骨と古びたコンクリートの塊でできた階段を登り、見下ろしてもだだっぴろい駐車場にただ一つの車と、それを照らす街灯しか見えない。逃げて逃げてここまで来たのだけど、ここにもなにもなかったし、階段は低く共鳴しているし、天井の闇は不吉にうごめいている。
ホメオスタティシャンhomeostaticianという職名を考案した。生体恒常性を整えてくれる。(<-「整える」を定義しろ)
久しぶりに夢らしい夢を見た。いつもの「ほとんど考え事」ではなくて、視覚経験を伴い、他者がいて私は行動していた。私は車の中にいて、次の場面で私は自転車を停める場所を探していた。内容はひどく自罰的なものだった。今日はいつもより早く目が覚めてしまったので、夢を覚えていたのかもしれない。
ここ数年、少なくとも札幌に来てからは夢らしい夢を見た記憶がないので、これが初めての経験だ。もしかしたら普段から夢は見ていたのだけど忘却されていて、今朝はたまたま早く目が覚めてしまったから記憶に残っている、ということなのかもしれない。
USCにいたときに地震があったな、と急に思い出したので調べてみたら、どうやらこれ: "2010 Baja California earthquake"らしい。LAはせいぜい震度3か。それでも到着直後だったので、すげー不安になったのを覚えている。とりあえず向かった建物の裏口の階段の踊り場の光景を覚えている。
"Dangerous Giant Heavy Duty Hammer Forging Process, Excellent Workers’ Skill In Steel Forging” 映像もいいが、音もいい。もっと良い機材で録音してほしい。
ドムドムバーガーの「ドムドム」部分にはシンセベースっぽさを感じる。(<-不要不急なツイート)
タフであるけど弱いままでありたい、強者の論理を振り回さずにいたい、と心密かに願いつづけている。でもそのためには、卑下せず自己憐憫せず、おのれのダメさに言い訳せず、恥をかくことにオープンである必要があるだろう。そんなの不可能だなと思いつつ、ただ命の炎を、消えるまで燃やし続ける。
お勧めエントリ
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- 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
- 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
- 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
- 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
- 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
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- 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
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- ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
- Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
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- MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213