[月別過去ログ] 2014年05月
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■ Corbetta and Shulmanの「空間無視と注意ネットワーク」
Corbetta and ShulmanのAnnual Review of Neuroscience 2011 "Spatial Neglect and Attention Networks"は半側空間無視の脳内メカニズムについて注意の背側経路、腹側経路という面から、症状発現や機能イメージングなどの知見について整合的に説明しようとした最新の総説だ。そういうわけでとても重要なのだけど、これまでの論文からの差分で読んでたので、改めて精読していた。
Corbetta & Shulmanによる半側空間無視のメカニズムの説をまとめると「右の腹側注意システム(TPJ-STG-VFG)が損傷 -> non-spatialな要素(arousal)が右半球で落ちる -> 右の背側注意システム(IPS-FEF)の活動が低下 -> 左右の背側注意システムのバランス悪化 -> spatialな要素(眼球運動、注意、サリエンス)が右に偏る -> これが半側空間無視のコアの症状」という話だった。これによってなんで損傷部位は腹側システムなのに出てくる症状は背側システム的なのかということを説明している。
左に腹側システムはなくてそこは言語システムになっているという考え方。しかしKarnathのBrain 2011だと、左の腹側システム(STG)の損傷で失語症も半側空間無視も出る、というのを例の損傷の密度マップで出している。
このあいだから考えている、視覚、注意、言語の背側(action)・腹側(perception)経路説(ブログ20140119)について考えながら読んでいたのだけれど、視覚も言語もactionの要素とpereptionの要素がある。(言語だったら復唱と意味理解で分ける。) では注意にその二つはあるだろうか?
たぶん注意を半側空間無視だけで考えるのが正しくないのだろう。半側空間無視で出てくる抹消課題的なエゴセントリックなバイアスはアクションの側面を見ていると思うのだけれども、もっとパーセプションの側面(awarenessとして世界が半分ない、representationalな無視)とかを考えるだけでなくって、線分抹消課題が検出能は高くて良いのだけれどもperception的な部分とaction的な部分を独立して評価できていないのではないか。
独立して評価できるようなことを考える、までもなくてそういうことをしている人はたくさんいるだろうから、そのあたりをみたうえで、optic ataxiaとかあのへんと並べたうえで注意の背側、腹側とaction/perception説についてうまくつながらないか考えてみたらいいんではないだろうか。
このような議論の中で、脳の左右差はnonhuman animalのarousal系の左右差から始まっているかも、って話が出てきて、これは面白いと思った。ラットのノルアドレナリン系とか、チックでのemotional arousalとか。調べてみるか。
とりあえずマカクでVBMでasymmetry検出したものがないか調べてみたけど、見つからなかった。以前マカクの利き腕のことを調べたことを思い出した。「サルには利き腕ってあるの?」
この話が面白いと思ったのは、よく言われる「言語野の発達によって右が空間優位になって半側空間無視は右損傷によるものが多い」という説に対してもしかしたらもっと古いところから左右差が出てきているかもよ、ってことになるから。(収斂進化の可能性もと明記されている)
Cereb Cortex. 2011 Brain hemispheric structural efficiency and interconnectivity rightward asymmetry in human and nonhuman primates
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2014年05月11日
■ 日本視覚学会2014年冬季大会でトークしました
1/23に日本視覚学会2014年冬季大会でトークしました。そのときの準備とかでいろいろメモったことをまとめておきます。
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そろそろ日本視覚学会2014年冬季大会の準備をする。プログラムの暫定版が公開されてる。 わたしの発表は二日目 1/23の13:30から。そんなに大きく変えようはないが、視覚科学者の前だからSDTとかサリエンシーとかの話はしやすいか。
日本語での講演ということになっているけど、せっかくJohn L. Barbur (有名な盲視症例GY氏の論文を最初に出した人)のトークの前なのだし、スライドは英語で作って、Barbur氏にも理解してもらえるようにしておく。あと、ヒトデータをもう少しexpandしておきたい。
色弁別課題に関しては動物実験としてはDKLとか使ってかなり気を使った実験をしてきたが、それでも視覚科学者には粗が見えるだろう。DKLをちゃんとやるためにPR650による測定はやってあるけど、錐体の比率、分布は個体差が大きく、V1損傷によってどう影響しているかも自明ではない。
マカクのL-cone, M-cone, S-coneの吸光特性のデータというものはないので、Stockman, A., and Sharpe, L. T. (2000)を使ってる(いわゆるスミポコではなくて)。DKL色空間についてまとめ
何人かには指摘されたが等輝度を決めるためにHeterochromatic Fusion Nystagmusを使うことは検討したことがあるのだが、TEMPOはmotion刺激を出すのが不得意だったのでやらなかった。
いまにして思えばPTB3だろうとPsychoPyだろうと使ってやってみればよいだけの話だったのだけど、そのときはmatlabで自力で計算したDKL-RGB変換関数を作ってそれをTEMPOで呈示するのでいっぱいいっぱいだった。
せっかく講演の準備をするんだったらそれを動力にして解析を進めてしまうのがよいだろうと考えていたが、サリエンシー総説を書く動力にするという説もある。どっちが効率よいか。どっちが講演として面白くなるか。やっぱヒト盲視データのほうがよいか。
Carol Colbyによる、上丘がS-cone isolating stimulusに応ずるよ、というJCN2014論文が出た。以前のSFNで会ったときにこの話をしていて待ち臨んでいた。この論文の中でも私のカラバイ論文を引いて議論してくれている。
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視覚学会用のスライドを見直していたが、生理学っぽいの全部抜いて、SDTとサリエンシーと色とhumanにしても25分では厳しい。回路の図は質問されたら出すことにして、以前作ったものをColby論文の分だけアップデートして使う。
John Barburの仕事はGY氏の最初の報告(Brain 1980)から、サッカードについて調べたBrain 1988、空間、時間周波数 Brain. 1991、最初の機能イメージング(+なにかあるかんじ) Brain 1993、瞳孔反射 Brain 1999、とさらにはじめてではないけれども、色弁別、optic tractのdegeneration、とGY氏についてのほぼすべての知見に関わってくるので、なにを選んで自分のトークの中に入れるか、自由度は高いが、ひとつに決めるのは難しい。
とくに色についてはいろいろやっておられるので、モザイク刺激の結果とか出したらきっと喜んでくれるだろう。でも時間が足りない。
分かった、この機会にBrain 1980とBrain 1993を元にしてGY氏のデータで盲視を説明して、私のデータを出して、だいたい同じだが、方向弁別の結果が違うことを示して、そのあとでmacaqueに移る。そうすれば色の話と回路の話は時間次第で端折りつつも入れることは可能。
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講演ぶじ終了。時間もほぼぴったしで、いろいろ調整したのが功を奏したのではないかと。プレゼン内容どうだったかフィードバックをもらうつもりだったが、そのまえにいろいろ議論しててすっ飛んでしまった。
John Barburはとても楽しい方で、シンポジスト一同で行った食事の間もしゃべりまくりだった。あとはGYさん四方山話が増えた。GYさんについてはハクワンとかバハドーとかからいろいろ聞いてきたが、Barburからもゲット。
夕食でBauburとの話が盛り上がりすぎて、岡崎行きの終電(東京駅発21:30の新幹線)を逃したので実家に泊まることに。帰り道は思ったほど寒くなくてよかった。疲れたが収穫はあった。メモるだけメモったら、さっくり切り替えて来週のために頑張ろう。
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- / 投稿日: 2014年05月11日
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2014年05月05日
■ さうして、このごろ 20131131
起きたが眠い。昨晩は近くで酔っぱらいの若者がなんかによじ登ったかなんかで警察に「危ないから降りなさい」とかマイクで注意されてた。サンセットブルヴァードかっていう。
長女が「薔薇がいっぱい入った風呂に入りたい」とか言ってたので「セレブか!」と突っ込んでおいた。
「よし!ロペス!」野球見てる次男の反応と@ichipoohmtさんのツイートがシンクロしてる。
子供の頃は私は父親のことを「とーちゃん」と呼んでいた。大人になったどっかのタイミングで「おやじ」と呼ぶようにクラスチェンジするというのが正しいあり方だったと思うのだけれども、大学院生活、ポスドク生活が続いてタイミングを逸してしまった。一方で弟は大学に入ったあたりで「おやじ」と呼ぶようになった。
ともあれ自分の方はタイミングを逸していたのだけれども、私の子どもが生まれ、彼らが父親のことを「じーちゃん」と呼ぶようになってからは自然と私も父親のことを「じーちゃん」と呼ぶようになった。たとえ孫がいなくても。
私にとっての父親は、子どもたちにとってのじーちゃんなんだなとなんか合点がいった感じがした。そんなわけでなんだか変な方法で、この問題は解決した。
朝から機構のソフトボール大会だった。結果は準優勝。とはいっても全部で6チームだが。以前は16チームくらいあったものだが。
ともあれ、私は2試合分くらい出場して、4打数3安打。レフト越え三塁打、レフト越え二塁打、三塁強襲ヒット。スイートスポットはひとつしかないが当たればよく飛ぶ。
そんなわけで個人成績としてはこれまで最高ではなかろうか。満足した。
打ち上げには不参加。そのあと長女をミュージカル教室に迎えに行って、長女を新体操に送って、渋滞に超ハマって、長女を迎えに行って、長男を図書館に迎えに行って、車のガソリン入れて、次男を野外教室からのバスの迎えに行って、それでやっと帰ってきた。長い一日だった。まだ終わってないけど。
次男を空手に迎えに行って、上機嫌で「家に帰ったら何が起こっているかな? カニが千匹生まれてるかな? カニが百匹生まれてるかな? カニが千匹? カニが百匹? カニが千匹? カニが百匹?」と歌っていたらいつの間にかメロディーがユニコーンの「大迷惑」になっていたという驚きを伝えたくて。
僕らは砂であり、山であるけれども、砂山ではない。僕らはロバであり、藁であるけれども、その境界に背骨はない。僕らの上空には今にも零れ落ちそうな蜜があり、森であるけれども、木箱には仕掛けもなく、運転手もいない。地層が割れて現れた眼が、全てを一つの光景にまとめ、丸呑みする。
今日はラボからの帰りの車の中で歌い出してみたら、それは「およげたいやきくん」だった。これあらためていい曲だな。こう、横ノリでシンプルなリズム隊をイメージしつつ、ちょっと裏に食い気味な感じでソウルフルに歌うの。あと、子門真人の声が太いから気づかなかったけど、けっこう音が高い。
しばらくカラオケ行ってないので行こうと思う。ひとりカラオケ、以前はよく行ってた。上地(うえぢ)のシダックス。ラボでのひとりすき焼きも済ませたし、三八でひとり焼き肉は当たり前だし、サンディエゴではひとり動物園も済ませた。残るはひとりディズニーランドくらいではないだろうか。
ウインドブレーカーのポケットに豆腐入れたままロッカーに放置してしまった! (<-ブルースマンの歌う素朴な歌詞風)
ふと気づいたが、明日(2013年11月29日)でブログ書き出してから10年目だ。niftyでやってたホームページから、はてなダイアリーへと移ったのが2003年11月29日だった。10周年だからと特になにかするつもりもないが、とにかく思い出せてよかった。
はじめて書いたエントリがこれ:「Eight miles highのイントロではベースの音でドラムがビリついているのが聞こえる。それだけ。」なんか今書いてるツイートと変わってネーわ!
お勧めエントリ
- 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
- 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
- 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
- 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
- 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
- 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
- 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
- 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
- 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
- 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
- DKL色空間についてまとめ 20090113
- 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
- ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
- Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
- 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
- MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213