[月別過去ログ] 2001年04月

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2001年04月20日

たまにつづるメモ

チーズはどこへ消えた?にだんだん本気でむかついてきたので、原書を買って読む。Amazon.comの書評をかいつまんで読む。この本の問題点を指摘した文章を作ることにした。


2001年04月16日

たまにつづるメモ

サイコドクターあばれ旅に行く。 チーズはどこへ消えた? 完結編 面白い。迷路の中のチーズなんて枠より、その枠に気付く方がよっぽど大切だ。それではオレもひとつ。

  1. おそれずに新しい行動を起こそう。
  2. でも、新しい行動を選ぼうとするもの一人一人には必ずしも幸運は得られない。
  3. しかし集団としては、その中から適者生存的に選ばれた行動が選ばれることで、成功例が生まれる。
  4. つまり、進化に必要な突然変異と並べて考えてみればよい。突然変異への対応物である、[行動のばらつき]を持たせよう、というのが「チーズはどこへ消えた?」のメッセージなのだ。そしてこれはサラリーマンへのメッセージではなくて、サラリーマンを使う側に都合の良い論理を植え付けるのが狙いなのだ。
  5. こう考えると、会社が読ませたがるのは確かに狙いと合っている。でもさ、これをサラリーマンが一生懸命読んでどうするよ?

なーんてあたりまえすぎてつまらなかった?

でも、およそすべてのサクセスストーリーにこの種のトリックがあるのは強調しておきたかったもんで。


2001年04月15日

たまにつづるメモ

結局bk1書評掲載されず。掲載拒否されるようなことなんて書いてないぞ。投稿し直すのもアホみたいなのでもう考えるのを止める。


2001年04月08日

Science論文「霊長類側頭葉における記憶想起信号の逆行性伝播」

Scienceに論文が載る。Bossがcorresponding author、はじめの二人がequal contributionのfirst authorという形。精細はPubMedまたはScience magazineへ。

Science 2001 Jan 26;291(5504):661-664
Backward Spreading of Memory-Retrieval Signal in the Primate Temporal Cortex.
Naya Y,1* Yoshida M,2* Miyashita Y1,2,3†
1Laboratory of Cognitive Neuroscience, National Institute for Physiological Sciences, Okazaki, Aichi 444-8585, Japan., 2Mind Articulation Project, International Cooperative Research Project (ICORP), Japan Science and Technology Corporation, Yushima, Tokyo 113-0034, Japan., 3University of Tokyo School of Medicine, Hongo, Tokyo 113-0033, Japan.
* These authors contributed equally to this report.
† To whom correspondence should be addressed.
Bidirectional signaling between neocortex and limbic cortex has been hypothesized to contribute to the retrieval of long-term memory. We tested this hypothesis by comparing the time courses of perceptual and memory-retrieval signals in two neighboring areas in temporal cortex, area TE (TE) and perirhinal cortex (PRh), while monkeys were performing a visual pair-association task. Perceptual signal reached TE before PRh, confirming its forward propagation. In contrast, memory-retrieval signal appeared earlier in PRh, and TE neurons were then gradually recruited to represent the sought target. A reasonable interpretation of this finding is that the rich backward fiber projections from PRh to TE may underlie the activation of TE neurons that represent a visual object retrieved from long-term memory. 私による少し砕いた訳:長期記憶を想起するときには、大脳新皮質と大脳辺縁系との間での双方向の信号伝達が寄与している、と考えられてきた。我々はこの仮説を検証するために、視覚性対連合課題を解くサルの神経活動を記録して、側頭葉の隣接する脳部位であるTE野(新皮質)と傍嗅皮質(辺縁系)とでの知覚信号及び記憶想起信号の時間経過を比べた。図形を見たときに伝わる知覚信号は、まずTE野、それから傍嗅皮質へと順方向性に伝わっていた。一方、図形を思い出すときに伝わる記憶想起信号は、まず傍嗅皮質に先に現れ、それからTE野にだんだんと現れていった。以上の発見は、TE野のニューロンが長期記憶から想起した物体を表象するように活性化する際に、傍嗅皮質からTE野へと逆行性に投射する神経線維が関わっている、と解釈することができる。
私が別のところで書いた考察:
対想起指数(pair-recall index)は傍嗅皮質の方がTE野と比べてより早く対連合図形がコードされ始めていた。このことは、視覚情報の流れとは逆に、長期記憶から取り出された想起された図形の情報は傍嗅皮質からTE野へと伝播していることを示唆している。また、順方向の視覚情報の伝達にかかる時間が10ms程度であるのに対して、逆方向の記憶情報の伝播には350msの時間がかかっていることは注目に値する。順方向の視覚情報の伝達はフィードフォワード的な伝達の連鎖と考えられるのに対して、逆方向の記憶情報の伝播はその様式が別のものであると考えられる。おそらくここで起こっていることは、単なるフィードフォワード的な伝達の連鎖ではなくて、傍嗅皮質とTE野を含むニューラルネットワークの中で決定付けられる状態遷移のようなものであるのであろう。このような考え方は、ニューラルネットワークのモデルの研究でも、非線形的なシステムに見られるアトラクター的ダイナミクスとして扱われている。 ところで、このような逆方向性の情報の伝達の生理的意義とは何であるだろうか。Logothetisら(Sheinberg and Logothetis 1997)はマカクサルに両眼視野闘争の課題を行わせた実験によって、TE野の活動が[視覚入力そのもの]ではなく、[何が見えたか(visual awareness)]に関わっているものであることを示唆している。もし我々の実験で見られたTE野の想起過程の活動も同様にして、[これから現れる図形を思い描くこと(visual imagery)]に対応しているのであるとするならば、一方で傍嗅皮質の活動は無意識の/自動的な連想過程を表現している、というようにTE野とは役割が分かれているのかもしれない。これは記憶、表象が明示的/暗示的(意識に上るか否か)であるとはどういうことかを明らかにするのに重要な鍵となるかもしれない。 考察すべきもう一点は、今回の発見でわかったことと前頭葉の活動との関連である。記憶/想起のシステムを考えると、さらに第3のプレーヤーとして前頭葉を置いて考えることが有意義だ。以前我々グループは前頭葉から下部側頭葉へとvoluntary recallに関わるトップダウンシグナルが流れていることを報告している(Hasegawa et.al.1998及びTomita et.al. 1999)。すると、傍嗅皮質からTE野への想起信号の自動的な伝播過程は前頭葉からの自発的な想起のシグナルによってトリガーされている、という図式が考えられる。
新聞記者を前に記者会見をするという経験を生まれてはじめてした(教授の横に座っていただけだけど)。5年かかってやっとプロジェクトの成果が一つ出たといったところ。この論文の内容についてもっとわかりやすく説明した文章を書こうと思うのだが、いつのことになるやら。なお、生理研のホームページにこの論文のまとめ(日本語)があり。


2001年04月07日

たまにつづるメモ

ブルーバックス書評、amazon.co.jpは即掲載されるが、bk1はまだ。遅い。審査に時間がかかっているというより、どっかで溜まっているだけと邪推する。600ポイントサービスの締め切りと関係あるかも。ホームページへのリンクを貼ったらエラー出るし。こういうのは信用落とすな。


2001年04月02日

「記憶力を強くする」書評

池谷裕二君のブルーバックスの書評をbk1amazon.co.jpに書く。正直なところ面白く書けているので熱烈に誉め、少し批判する。「脳と記憶の謎 遺伝子は何を明かしたか」山元 大輔著や「学習する脳・記憶する脳 メカニズムを探る」磯 博行著と比べて書くという計画は頓挫。1600文字では無理だ。



書評タイトル:記憶の脳内メカニズム研究の最新の知見を含んだ入門書。おすすめ。
書評:★★★★★
池谷裕二さんとは大学、大学院を通じての同僚なので、その分差し引いて読んでほしいが、この本は記憶に関する神経科学の最新の知見を興味深く読ませてくれる良い本だ。
まず、構成がよい。海馬が記憶に重要であることから始まって、最新の知見を散りばめ、スクワイアやタルビングの心理学的枠組みへとつなげる。エピソード記憶と意味記憶の関係とかは本当はいろいろややこしいのだけど、うまいことストーリーが流れている。教科書丸写しではなくて、よく消化してから書いている証拠だ。このあとに神経細胞、シナプスについての記述があって、LTPとは何かが説明される。いきなり本の最初から神経細胞の説明に入ったらうんざりだから適切な構成だ。そして6章の「科学的に記憶力を鍛えよう」に入っていく。
そしてこの6章が面白い。実際のところ、ここで書かれていることは先述のエピソード記憶、意味記憶、手続き記憶などの枠組みを使った話であって、「最新脳科学が語る」というほどのことではない。けれども池谷さんの経験と信念がにじみ出た人間味あふれる文章になっていて魅力的だ。たとえば、「どの科目でも優秀な成績をとることができる学業の優れた人は、一つの科目すらもマスターしていない人から見ると超人的な天才に見えますが、しかし、それは生まれつき頭がよいというよりも、むしろ、いろいろな科目の学習能力が相乗しあった結果なのです。(216、7ページ)」なんてのは家庭教師をしていた学生に教えてあげたいセリフだ。
ツッコミどころを探してみた。ベートーベンの「運命」とシータ波の関係にはヲイヲイって感じだし、ヴィトゲンシュタインの「語りえぬものについては沈黙しなければならない」という言葉の捉え方はおかしいぞと思ったし、記憶力の累積の効果はいいけど生物にはS字カーブもあるぞ、とも思ったけど、この本の良さを損なうものではない。
もう一点コメントしておくならば、7章の「天才ネズミ「や「記憶力を増強する薬」の可能性については私は懐疑的だ。老化などによる機能低下を抑えるようなものはありうるだろう。けれども正常な海馬全体に対する操作でできることは限られていると思う。神経細胞一つ一つがそれぞれに別の情報をもっていて、それが集団として働いているのが脳システムだ。これに作用を及ぼすためには、脳がどういう情報を扱い、操作しているかが明らかにならないとわからないのではないか、これが私の考えであり、私がいま生理学をやっている理由の一つでもある(ちなみに私は記憶の「再生」に関する研究をしているラボ(259ページ)に所属している)。まあ、とはいえ、歴史からすれば、メカニズムより先に薬が見つかるのなんてのはあたりまえだし(精神分裂症とレセルピンとか、他のほとんど全てについても)、面白いニュースを待ってます、というのがフェアな態度か。(それでも正常からの増強ってのはね、、、アンフェタミンやプロザックをその例としてよいだろうか。)
この本の重要さを一つ指摘しておかなければ。この本には2000年あたりの国際科学雑誌の報告がてんこもりだが、これらが日本語で紹介されている一般向けの本は私が知るかぎりこの本だけだ。しかも羅列的でない。題材の取捨選択と配置がうまいのだと思う。人やサルの研究に関する言及が少ないのは専門家としては不満だが、1冊の本に全てを詰め込むことはできないからちょうどいい線だと思う。
この本は、新しい報告がどんどん出る分野を扱っているがゆえにそのうち古くなってゆくだろう。だから池谷さんにはあと5年たったらまたアップデートした本を書いていただけたらよいと思う。この本を記憶の脳内メカニズム研究の現状に興味のある全ての人に薦めます。


お勧めエントリ

  • 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
  • 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
  • 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
  • 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
  • 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
  • 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
  • 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
  • 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
  • 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
  • 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
  • DKL色空間についてまとめ 20090113
  • 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
  • ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
  • Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
  • 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
  • MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213

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