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1999年06月30日

■ 視覚連合記憶の機構

(単行本の一部として書かれた。図と図の説明は省略されている。)

1. はじめに

記憶は脳のどこに貯えられているのであろうか。 この疑問に対する答えとしては全体論と局在論との二つの立場がある。 全体論の代表としてはLashleyが挙げられる。 1950年代までにLashleyは記憶の痕跡(エングラム)を捜し求めて、 ラット、サルなどさまざまの動物で脳の一部を切除して記憶試験を行った。 彼の結論は、記憶阻害に影響するのは切除された場所よりは切除部位の大きさであり、 記憶の機能は脳の広い領域で担われている、というものだった。

しかし当時から現在までのあいだに、切除手術の技術の向上、 解剖学的手法による大脳皮質の領域の確定および領域間での結合関係の解明、 より目的に即した記憶課題の作成などによって、 記憶課題を解くのに不可欠な脳の部位が明らかになってきた。 単一ニューロン活動記録などの結果ともあわせると、 図形の形状や図形ー図形連合関係などの視覚的記憶は下部側頭葉に貯蔵され、 これらの想起には前頭前野も関わっているというのが現在での知見である。 ここではこのような局在論的立場から、現在にいたるまでの研究の進展について 私たちのグループでの成果を中心に説明することにする。

2. ヒト、サルでの先行研究

ヒトでの記憶障害の有名な例として内側側頭葉を切除されたH.M.氏の症例がある。 これは、てんかん治療のため両側の海馬とその周辺領域の切除手術が行われたもので、 手術以前の事項に関する記憶は保たれているのに、 新しく起きた事項の記憶が傷害されているという前行性健忘が起こっており、逆行性健忘は比較的軽かった。 この症例から考えると、海馬を含む内側側頭葉は記憶の形成又は固定の過程に関与していて、 記憶の貯蔵、読み出しへの寄与はそれと比べると弱いのではないかと考えられる。

それでは、長期記憶を貯蔵している部位とはどこなのであろうか。 それが側頭葉皮質であるとする説に、ペンフィールドによる報告がある。 ペンフィールドはてんかん患者の脳外科手術において、てんかんの焦点を決めるため、 局所麻酔下で大脳皮質へ電気刺激を行い、患者に意識に上ったものについて報告してもらった。 すると、患者の中には電気刺激のあいだに視覚経験として、 ある人物やある状況などが浮かんだ者、聴覚経験として、話し声や音楽が聞こえた者がいた。 電気刺激によってこのようなイメージが生じたのは側頭葉刺激の場合だけ(520回の刺激中40回)で、 脳内の他のさまざまな領野への刺激ではこのような現象はまったく観察されなかった(612回の刺激中0回)。 現在では、この報告での側頭葉皮質への電気刺激で活性化された部位は 刺激電極付近に必ずしも限局していなかったと考えられている。 よって、ペンフィールドの報告は記憶の貯蔵場所が側頭葉皮質であることを示唆するが充分ではない。 しかし、現在までにこれを補うような、サルを実験モデルとした研究が行われてきた。

サルの大脳皮質での形態認識の視覚経路は解剖学的によく分かっている。 網膜から入力した視覚形態情報はV1、V2、V4、TEO、TEと伝わり、 さらに嗅周皮質(36野と35野からなる)、嗅内皮質、海馬を含んだループとつながっている。 サルの脳切除実験で側頭葉が記憶に関わっているという報告が数多くある。 その中で、Iwai and Mishkinの報告を紹介する。 彼らはTE野またはTEO野の両側性の切除手術を受けた2グループのサルを作り、同時的複式物体弁別学習を行わせた。 この課題では、12対の物体課題について各々の対ごとに1回ずつ、それぞれ正解となる物体を選ぶ。 これを各物体対の順序はランダムにしておいて繰り返してゆく。 この課題を解くためには記憶能力が要求されるが、TE野切除群ではこの課題の遂行がTEO野切除群と比べて顕著に障害されていた。 このことは側頭葉皮質の中でもTE野が視覚記憶に深く関与していることを示している。

3. 図形対連合課題を使った研究

側頭葉に視覚性の記憶が保持されている可能性が示された。 次なる課題はこのような視覚性記憶を実現しているニューロン機構を解明することだといえよう。 ニューロン機構を解明する方法の中で、最も一般的な方法が、微小電極によって神経細胞の活動電位を捉える方法である。 我々グループでは記憶課題として図形対連合記憶課題を課しつつ、サル下部側頭葉で単一ニューロン活動記録を行った。 さらに、分子生物学的手法、解剖学的手法、行動学的手法を用いてこの記憶システムの解明を進めているので、以下に紹介する。

3.1. 連合記憶の符号化、貯蔵の過程に関する研究

我々グループが用いた図形対連合記憶課題とは、2枚1組の図形対の一方を提示し、 もう一方の図形がなんであったかを答えさせる課題である。 百人一首をやるときに上の句と下の句の組み合わせを憶えるのと基本的に同じ頭の使い方をすることになる。 実験では12組の図形を用いた。 これらの図形はコンピューターで生成され、組み合わせはランダムに決められている。 まずサルがレバーを押し、1秒間の待ち時間(warning)の後、 12対の図形のうちから1枚が手がかり図形(cue)としてモニター画面上に1秒間示される。 4秒間の遅延時間(delay)の後、手がかり図形と対になっている図形と、 別の組み合わせに属する図形とが選択図形(choice)として示される。 手がかり図形の対となる図形(対連合図形)を選択図形から選び、 1.2秒以内にモニター画面上でその絵を叩くと正解としてジュースが与えられる。 この課題を解くには図形と図形の連合関係を長期記憶として保持していなければならないので、 連合記憶に特徴的なニューロン表現を発見するには有利な課題であるといえる。 このような課題を課しつつ単一ニューロン記録を行うことにより、 TE野および嗅周皮質の36野において記憶課題に関連した応答を示す2種類のニューロンが発見された(Sakai and Miyashita, 1991)。

その1つめが対符号化ニューロン(pair-coding neuron)である。 これは、ある特定の図形対にのみ強く発火するタイプのニューロンで、 典型例として右に1つのニューロンでのラスターとPSTH (peristimulus time histogram)を示している。 上下はそれぞれ図形6'、図形6が手がかり図形として示されたときのデータである。 このニューロンは手がかり図形の提示時に図形6'と図形6に対してのみ強く発火する。 よってこのニューロンは図形6'と図形6の連合関係を符号化していると考えられる。 図形対連合記憶課題時に記録されたもう1種類のニューロン(対想起ニューロン)については後ほど紹介する(3.2.)。

3.1.a. 連合記憶形成時の神経ネットワークの再構築

このような連合関係が長期記憶として下部側頭葉のニューロンでにコードされていることが分かった。 記憶が形成する過程では神経ネットワーク内のシナプスの伝達効率が変わるという いわゆるシナプスの可塑性が起こっていると考えられている。 ではこのような連合記憶の形成時にどこで、どのような変化が起こっているのであろうか。 長期記憶の形成に対応して起こる分子生物学的現象としてmRNAやタンパクの合成などの遺伝子レベルの活性化がすでに報告されている。

そこで我々のグループで次のような実験が行われた(Okuno and Miyashita, 1996)。 サルを2グループに分け、片方のグループには前出の図形対連合課題を行わせる。 もう片方のグループには図形弁別課題を行わせる。 図形弁別課題ではサルは二つ提示される図形から報酬のもらえる図形(あらかじめ決められている)を選ぶ。 この二つの課題は同じ種類の図形を使って弁別をさせるという点では同じであるが、大きな違いとして、 対図形連合課題では図形と図形との連合関係を記憶しなければならないのに対して、図形弁別課題では必要がない。 よってこの両者の課題遂行時の遺伝子の活性化を比べることで、 図形と図形との連合関係を記憶するときに活性化している遺伝子、およびその領域を見つけることができる。 このようにして現在までに転写制御因子のひとつであるZif268タンパクが 嗅脳溝と前中側頭溝との間に挟まれた嗅周皮質の36野に特異的に発現しているのが見出されている。 これは図形弁別学習をしたグループでは発現していない。 Zif268はシナプスの活動に依存して発現誘導されることが知られており、 成長因子やシナプス構造タンパクなどの発現を制御している。 このことは、連合記憶の形成過程において転写制御因子による遺伝子発現の活性化が起こり、 36野内で神経ネットワークの再構築が起こっていることを示唆している。

3.1.b. 連合記憶ニューロン形成におけるTE野-嗅周皮質、嗅内皮質の相互作用の寄与

先程の図1でも示した通り、TE野は嗅周皮質、嗅内皮質を通じて海馬に至るループ状の構造の一部であり、 この内側側頭葉領域は記憶の固定の過程に重要であると考えられている。 イボテン酸を使用した破壊実験により、嗅周皮質、嗅内皮質とTE野との相互連絡の機能的役割が示された(Higuchi and Miyashita, 1996)。

TE野で単一ニューロン活動の記録を行いながら、 前記の実験と同様に12対の図形で図形対連合課題を行わせた。 続いて嗅周皮質、嗅内皮質にイボテン酸を注入し、破壊した。 その後、新たに同様な図形12対を加え、同様に訓練し、単一ニューロン記録をした。 図形対の連合関係をコードしたpair-coding neuronが形成されているかどうか調べるため、 個々の細胞の図形対ごとの発火頻度の相関をとった相関係数(cc)を計算した。 この値は記録されたニューロンが、どれか1つの図形ペアの両方の図形に特異的に反応する(pair-coding neuronである)なら1になり、図形ペアの組み合わせと全く相関がないなら0となる数値である。 破壊前から記録時に使用していた図形のペアをsetA、破壊後に加えたペアをsetBとすると、 破壊前のsetAではccは92個のニューロンの結果で有意に0以上となったが、 破壊後の記録においてはsetA、setBともに0と異ならなかった。 この事実はpair-coding neuronの生成と維持の両方に、 嗅周皮質、嗅内皮質とTE野との相互連絡が重要な役割を果たしていることを示唆している。

3.1.c. TE野から36野への投射経路の特性

TE野と嗅周皮質との相互結合がpair-coding neuronの形成、維持に重要な役割を果たしているらしいことが前述の実験でわかった。 解剖学的にもこの二つの領野は双方向に投射があることがわかっている。 この結果と先程のZif268タンパクの発現の結果とをあわせて考えると、 視覚連合学習の結果可塑性が起こっている場所の候補として、TE野から嗅周皮質の36野へ入力する線維が挙げられる。

そこで我々は逆行性標識色素を用いた解剖学的手法を用いてこの入力系の性質を調べた(Yoshida et.al., 1999)。 逆行性標識色素は脳内に注入された部位にある神経終末から取り込まれ、その線維を送っている神経細胞の細胞体を標識する。 我々はサルの36野内に間隔を開けて3種類の標識色素を注入して、TE野内で標識された細胞の位置関係を調べた。 するとTE野内に標識細胞が密集したクラスター構造がいくつか見られた。 また、このようなクラスターは色素の違い、つまり、注入部位の違いによらず見られた。 また、違う色素によるクラスターが重なっている領域が見られた。 以上のことからTE野から36野への投射経路の特性として2つのことを示していると考えられる。 まず、TE野のいくつかの小領域から36野へ収束するように入力している。 また、36野内の違う色素のクラスターが重なっている部位からは36野へ発散するように投射している。 このような投射の性質は視覚野の上流とは異なったものであり、 この特異性は視覚連合学習形成時の可塑性の発現と密接な関係があるのではないかと考えられる。

3.2. 連合記憶の想起の機構に関わる研究

図形対連合課題遂行時にTE野、36野で神経活動を記録したところ、pair-coding neuronに加えて、 連合記憶課題での操作を反映していると思われる別のタイプの活動パターンを示すニューロンが見つかった(Sakai and Miyashita, 1991)。

このニューロンは手掛かり図形に図形12を呈示した時に特異的に発火する。 さらに、その図形と対になっている図形(対連合図形)12'が手掛かり刺激として示された後、 このニューロンがコードしている図形12が選択図形としてモニターに提示されるよりもずっと早く、 遅延期間のはじめから徐々に反応を強めていく。 この遅延期間での反応の増大は、サルがこれから選択しようとする図形、即ち、手がかり刺激により想起される対連合図形に関係していると考えられる。 このようなニューロンを我々はpair-recall neuron(対想起ニューロン)と名付けた。 このようなニューロンでは、手掛かり刺激の呈示期に見られる反応は、 刺激を認識し記憶として貯蔵するニューロン機構に関係していると考えられ、一方、遅延期間の反応は、記憶の想起の過程に関与していると思われる。 この2つの過程が、同一のニューロン機構に担われていることが示唆される。

3.2.a. PACS課題による想起ターゲットへの反応の解明

今挙げた対想起ニューロンでの遅延期間の活動が長期記憶から取り出してきた図形を想起していることを反映したものであることを示すために、 我々のグループではこの想起の開始時間をコントロールするPACS (pair association with color switch)課題を開発した(Naya et. al., 1996)。

刺激図形は各図形対の一方は緑、もう一方は青としてある。 対図形連合課題と同様、サルがレバーを押して試行が開始され、手がかり刺激(G7)が提示される。 遅延期間の間に四角が提示されるが、delay1では四角の色は手がかり刺激と同じ(緑)で、delay2では四角の色は対連合図形と同じ色(青)に変化する。 このカラースイッチが記憶の想起の合図になる。 遅延期間の後、サルは手がかり刺激の対連合図形としてこの場合はB7を選ばなければならない(PACS trial)。 一方、対照としてカラースイッチがない場合はサルは手がかり刺激と同じ絵を選ぶことを要求される。 この試行は遅延見本合わせDelayed Matching to Sample(DMS) trialに相当する。 単一ニューロン記録を行うセッションでは、PACStrialとDMStrialは混ぜ合わされて繰り返し行われた。

手がかり図形にG7が提示されたときに、このニューロンでは強い反応を示している。 G7の対であるB7が手がかり刺激として提示されると、ニューロンはcueとdelay1の間は反応を示さないが、PACStrialの時のみ、delay2の開始後delay3にわたって、このニューロンは反応し続けている(pair-recall効果)。一方、G7が手がかり刺激とした提示されたときには、PACStrialでは遅延期の持続する活動がdelay2の開始より抑制を受ける(pair-suppression効果)が、DMStrialではニューロンの活動は、遅延期間中継続する。

この両者の効果は次のように解釈できる。 サルが見いだそうとしているターゲットはカラースイッチにより、手がかり刺激として提示された図形から、対連合図形に入れ替わる。 これが、ある細胞にとって、有効でない刺激から有効な刺激に変化する場合、そのニューロンの発火はpair-recall効果を示し、 反対に、ターゲットがその細胞にとって有効な刺激からそうではない刺激に変化するとpair-suppression効果が観測される。 これらの結果はTE野のニューロンは長期記憶から想起されたターゲットを表現していることを示している。 PACS課題において想起の合図により得られる遅延期間での反応はどのようなメカニズムで駆動されるであろうか。 何らかのトップダウン的メカニズムによって司令が送られてきているとしてそれがどこであるかというのが、次の疑問となる。

3.2.b. 前頭前野から伝わる想起のシグナル

このような司令を出すところの有力な候補として前頭前野皮質が挙げられる。 この領域と記憶の想起との関連については、サルでの脳切除実験や人でのfunctional MRIなどの報告がある 。 そこで我々グループでは脳梁切断ザルでの図形対連合記憶課題の成績を解析するという行動学的実験を行った(Hasegawa et. al., 1998)。

サルは脳梁膨大部と前交連の切断手術を受ける(partial split)。 この条件では大脳皮質の左右の半球間の結合は前頭葉を残し分断されている。 つまり、後頭葉、側頭葉の半球同士で視覚情報は伝わらない。 このようなpartial splitザルで記憶課題の成績を調べることで、 前頭葉を介して左右半球を伝わる情報、伝わらない情報を明らかにしようした。

記憶課題として二種類のものを行った。 両者とも基本的には前述の図形対連合記憶課題で、図形の提示位置のみが変えてある。 また、サルは図形の提示されるモニター画面の注視点を課題遂行中ずっと注視していなければならない。 2種類の課題のうちのまず一つがINTRA課題で、手がかり図形、選択図形は右または左どちらか同じ側にのみ提示される。 たとえば、はじめのセッションでは手がかり図形は左に提示され、選択図形も左に現れる課題が繰り返される。 どちらの視覚情報もpartial splitザルでは右半球に限局して入力することになる。 よってこの場合、図形の連合関係に関する長期記憶は右の側頭葉皮質で符号化されていると考えられる。 学習が完了した後、反対側(右側)に手がかり図形、選択図形ともに現れる課題が繰り返される。 すると無処置ザルでははじめの半球で学習が完成するまでにかかった試行数と比べてずっと少ない試行数で学習が成立するのに対して、 partial splitザルでははじめのセッションと比べて反対側でのセッションでの学習成立までに同じ程度の試行数が必要だった。

2種類の課題のうちのもうひとつはINTER課題で、手がかり図形と選択図形は別の視野に現れる。 手がかり図形が右に現れた場合、選択図形は左側に提示される。 よって、試行一回ごとに右半球から左半球へ何らかの情報が伝わらないとサルはこの課題を解くことはできない。 Partial splitザルではこの課題を解くことができ、90%弱程度の正解率を示すようになる。 対照として脳梁全体を切断して大脳皮質が完全に分断されたサル(full split)ではこの課題を解くことはできない。

INTRA課題とINTER課題、この二つの実験の結果を比較して言えることは以下のようになる。 INTRA課題の結果が示すように、長期記憶として蓄えられた図形の連合関係自体の情報は前頭葉の半球間を伝わらない。 しかし、INTER課題の結果が示すように、 片方の半球に入力した手がかり図形の情報から想起のために不可欠な信号が前頭葉を介して対側の半球に伝えられている。 このことは先ほど言及したような、長期記憶の想起のための司令を出している部位が前頭前野である とする非常に強力な証拠といえる。

4. まとめ

以上をまとめて図式化すると次のようになる。

図形対連合課題を解くときにはTE野と36野にあるpair-coding neuronが符号化している連合関係が読み出されている。 Pair-coding neuronは海馬を含む内側側頭葉との相互連絡によって形成、維持されている。 Pair-recall neuronの遅延期間の活動はおそらく前頭前野からの司令によって駆動される連合記憶の想起の過程を反映している。 対図形連合記憶課題を通して、様々な手法を用いることで、記憶の貯蔵、想起の過程が少しずつ明らかになってきた。 現状は、記憶に関連した単一ニューロン活動を見出し、さらに証拠を加えているというところであるが、 記憶のメカニズムの理解のためには、 さらにこのようなニューロン群のネットワークとしての振る舞いをどうやって観察し解析してゆくかというのが課題となるであろう。

脳科学は様々な分野の成果が集積して発展してきたが、 さらなる発展のためにはより多くのアイデアと多くの手法が組み合わされることが必要であると考えられる。

文献

Hasegawa, Fukushima, Ihara and Miyashita: Callosal window between prefrontal cortices: cognitive interaction to retrieve long-term memory. Science, vol.281: 814-818, 1998.
Higuchi and Miyashita: Formation of mnemonic neuronal responses to visual paired associates in inferotemporal cortex is impaired by perirhinal and entorhinal lesions. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.93: 739-743, 1996.
Naya, Sakai and Miyashita: Activity of primate inferotemporal neurons related to a sought target in pair-association task. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.93: 2664-2669, 1996.
Okuno and Miyashita: Expression of the transcription factor Zif268 in the temporal cortex of monkeys during visual paired associate learning. Eur. J. Neurosci. Vol.8: 2118-2128, 1996.
Sakai and Miyashita: Neural organization for the long-term memory of paired associates. Nature, vol.354: 152-155, 1991.
Yoshida, Naya, Ito, Shibata and Miyashita: Divergence and convergence of area TE -> area 36 pathway in macaque inferotemporal cortex. Jpn. J. Physiol. Suppl., vol.49: in press, 1999