[カテゴリー別保管庫] 初期視覚野


2006年06月27日

マッカロー効果

Nature Neuroscience 7月号 "Contingent aftereffects distinguish conscious and preconscious color processing" Edward Vul and Donald I A MacLeod
マッカロー効果を使った話です。マッカロー効果じたいについてはマッカロー効果The McCollough Effect - An On-line Science Exhibitなどで体験することができます(注意事項有り。後述)。緑の縦縞とマゼンタの横縞をしばらく見といてから白黒の縞を見ると補色が色残効(after effect)として見える、というやつなのですが、おもしろいのは色残像などと比べて、効果がかなりあとまで残ることです。だから、気になる人はデモは避けた方がよいかもしれません。Wikipediaでみると、10分かけて効果を誘導してやると24時間持続するとのことです。
(色残像:after imageのほうは、たとえばOptical Illusions etcで経験できます。補色の画像を見つづけてから同じ画像の白黒版を見ると、色が付いて見える。同じ原理のやつが最近はてブでホッテントリ化していたのだけれどURL忘れた。)
んでもって、論文の方はというと、このような色残効を誘導するのに緑の縦縞とマゼンタの横縞を交互に見せるわけだけども、この二つの像の切り替えをものすごく速くしてやると(15Hz以上)、色の切り替えは見えなくなります。意識には上らなくなるわけです。それにもかかわらず、マッカロー効果は(弱いながらも)残る、これがnew findingです。マッカロー効果は網膜のレベルではなくてもっと先、LGNか大脳皮質かでのことと考えられていますので、一種のimplicit perceptionの例と考えることが出来るでしょう。


2006年02月21日

今週のF1000(2)

もひとつ。
Neuron 1/19の"Microsaccades Counteract Visual Fading during Fixation" Martinez-Conde。
静止網膜像の議論は「perceptionにactionは不可欠か」という問題(まさにいまNoë関連でとりあげている話題!)に直結する重要な事例で、昔からいろいろやられているのだけれども、microsaccadesが止まること自体がvisual fadingの直接的原因なのか自体はcontroversialであるのでそれを調べました、ということらしい。(イントロ読むと、現象自体は19世紀のうちに見つけられて、1950年代から延々と議論が続いていることがわかります。) んで、microsaccadeのamplitudeとvisual fadingとが関連していることがわかったと。
ともあれ、重要な話なんだけど、、コンタクトレンズを使ったretinal stabilizatoinとかではなくて、じっさいにmicrosaccadeを測定してという話になるとなかなかたいへんな様子。
Martinez-Condeは以前もNature NeuroscienceでV1ニューロンとの関連を見てます。"Microsaccadic eye movements and firing of single cells in the striate cortex of macaque monkeys" Microsaccadeしたときにニューロンがburstするそうな。
ともあれ、「visionがtouchと同じように、agentが環境に向けてprobeする(actionする)ことが不可欠なのかどうか」という問題を考えるときに必ず問題になる話のはずなのです。NoëがIT conversationsで話しているんですが、そこでも"probe"する、なんて表現をしてました。


2005年06月06日

static motion illusion

立命館大の北岡明佳氏といえば錯視の本やサイトで有名です(サイトで最初に出てくる「蛇の回転」ってすごすぎますよね)。これまでに"Perception"や"Vision Research"や"Perception & Psychophysics"などに視覚心理学研究の論文を出版しておられます。
今日たまたま氏のサイトを見ていたら、神経生理学者であるChristopher PackMargaret S. Livingstoneとともに書いた論文がJournal of Neuroscienceでin pressになっているということを知りました("Neural basis for a powerful static motion illusion.")。ニューロンのメカニズムという点になるとこの種の錯視図形は大きい(V1ニューロンの受容野と比べて)ので、contextual modulationの一種として扱うことになるのだと思うのだけれど、なんにしろ錯視量が強烈(それこそ"powerful" static motion illusion)なので、modulationの効果としても大きく出るのではないかと期待します。
First authorはJNP '03 "Space-Time Maps and Two-Bar Interactions of Different Classes of Direction-Selective Cells in Macaque V-1."の著者。


2005年02月09日

Plaid (Movshon vs. Born)

続きです。図2-4はおまけです。繰り返しますが、あくまで簡素なデモですので、いろいろ正確ではありません。たとえば、図3の赤と緑は等輝度ではないし。

m60z1.gif
図2

(追記:記述をアップデートさせました。)図2はAdelson and Movshon '82 Natureを元に。格子模様(plaid)が一つの固まりとして動いて見えるか、それとも二方向に独立して動く縞模様(grating)として見えるかどうかはいくつかのパラメータに依存しており、図2のように縞模様のコントラストが方向によって違うときには独立した二方向の縞模様として見えることを報告しました。なお、のちにStoner and Albrightは'98 Vision Researchにてこの効果が、コントラストが高い縞模様のほうがコントラストが低い縞模様よりも手前に見えるように脳が推測するためである、とする証拠を提出しています。

m60zz.gif
図3

図3はKingdom FAA '03 Nature Neuroscienceを真似したものです。輝度変化に基づいた縞模様(黄色と黒)と等輝度での色相変化だけによる縞模様(赤と緑)とを重ね合わせると、手前に色の縞模様が、奥の方に輝度による縞模様が見えて別々に動いているように見えるわけです(輝度による縞模様は川の流れの波紋の影のように見えると思います)。つまり、図2のような見かけの前後方向の知覚がここでは縞模様のパターンが色相によるか輝度によるかの違いによってできるというわけです。著者はこれを脳が格子模様を解釈するときに、実生活での陰の付き方の知識を援用しているためであるとしています。

m60z3.gif
図4

図4はAlbright and Ramachandran '90 Natureを真似したものです。格子模様が一つの固まりとして動いて見えるか、それとも二方向に独立して動く縞模様(grating)として見えるか、の決定要因としてここで彼らは縞模様が交わっている部分の輝度に注目しています。図3では重なりの部分の輝度をいくつか変えたものを切り替えて示しています。0が一番暗い場合、0.5が一番明るい場合で、どちらとも格子模様は固まって動いているように見えると思います。いっぽう、その中間(0.1-0.3)あたりのどこかでは二方向の縞模様が独立して動いているように見えるところがあると思います。これはこの中間の輝度では、重なり部分が透明になっているように脳が解釈しているためである、というわけです。ガラスの向こうに景色が映っているように解釈する、というわけで、つまりは脳はこのような格子模様を解釈するときにそのような知識を援用している、というわけです。


2005年02月08日

plaid (Movshon vs. Born)

m60z.gif
図1

いつも先走りぎみなのですこし丁寧にいってみます。

"Dynamics of motion signaling by neurons in macaque area MT." J Anthony Movshon。格子模様(plaid:発音注意。pl[ae]dです)の話。Gifアニメーションで作ってみました(図1)。縞模様が動いているところ(右上方向)にもうひとつ角度の違う縞模様が動いているの(右下方向)を重ねると格子模様が右真横方向に動いているように見えるわけです。なお、この図はガンマ補正のことをまったく考慮していない簡素なつくりですのでご注意を。以下がmatlabのコード。

clear all;close all;
M=[];
angledeg=60;anglerad=angledeg*pi/180;
freq=15;f=2*pi/freq;
[XW,YW]=meshgrid(-63:63,-63:63);
gauss=exp(-(XW/32).^2-(YW/32).^2);
a1=cos(anglerad)*f;
b1=sin(anglerad)*f;

for j=1:3
for theta=5:25:1000
	[XI,YI]=meshgrid(1-theta:127-theta,1-theta:127-theta);
	ZI1=gauss.*sin(a1*XI+b1*YI);
	ZI2=flipud(ZI1);
	ZI3=(ZI1+ZI2)/2;
	if j==1, Z=ZI1;
	elseif j==2, Z=ZI2;
	elseif j==3, Z=ZI3;
	end
	ZR(:,:,1)=(Z+1)/2; ZR(:,:,2)=(Z+1)/2; ZR(:,:,3)=(Z+1)/2;
	h=imshow(ZR);
	M=[M;getframe];
end
end

これをmovie2avi.mでaviファイルに変換して、それをフリーソフトでGIFアニメに変換しました。(ところで、いつのまにかUNISYSのGIF特許は失効していたのですね。)

いまだにmeshgridの使い方がマスターできていないのでYahoo groupのPsychophysics ToolboxでのDenis Pelli@NYUのリプライを元ネタに改変しました。なお、Denis Pelli Psychophysics Toolboxの元となったThe VideoToolboxの作者として有名だと思いますが、わたしはQUEST: a Bayesian adaptive psychometric method (pdf file)の著者としてはじめてその名を知りました。

つづきます。


2005年02月07日

Nature Neurosceince 2月号

というわけで当分は採りあげるネタには困らないのではありますが。


2005年02月03日

Transient Attention Enhances Perceptual Performance and fMRI Response in Human Visual Cortex

"Transient Attention Enhances Perceptual Performance and fMRI Response in Human Visual Cortex" Neuron, Volume 45, Issue 3, 3 February 2005, Pages 469-477. Taosheng Liu, Franco Pestilli and Marisa Carrasco。
Carrascoはpsychophysicistで、convert attentionが検出能を上げるというときになにを向上させているのか、spatial resolutionである(Nature '98)とか、appearance=perceived brightnessも変わる (Nature Neuroscience '03)とかいろいろ成果を上げています。基本的にbottomn-upのattentionに関して。
今回の論文はfMRIでgoal-directedの要素がない(prior probabilityに変化をもたらさないprecueを使った)attention taskでもearly visual cortexの応答が増加していること、しかもそれがprecueとtargetのシグナルのsummationによらないこと、を示しています。
これをどうやっているかというと、precue条件(cueが先でtargetが後)とpostcue条件(targetが先でcueが後)とを比較することによって、刺激への暴露時間は揃えておいて比較する、ということをやっています。これはfMRIが時間分解能がないからこの二つの条件を時間ドメインで分解できないだけで、電気生理でやるならかなりアホな条件、というか解釈が難しくなる(すくなくともprecueとtargetが物理的にまったく同じ条件にしておく必要がある)実験デザインです。行動データを見ててもpostcueによるマスキングの効果を考慮しないといけなさそうだし。MRのシグナルchangeへのprecueの効果がV1<V2<V3<V3a=V4(Fig.6)というのはもっともらしいけれど。


2004年09月17日

PLoS Biology 9月号

"Amplification of Trial-to-Trial Response Variability by Neurons in Visual Cortex." Matteo Carandini @ Smith-Kettlewell Eye Research Institute。
CarandiniはFersterのところで出したJNS '00 "Membrane Potential and Firing Rate in Cat Primary Visual Cortex."などで、cat V1のsimple cellやcomplex cellからintraで記録して視覚応答を記録することで、これらの細胞でどのようなsynaptic inputがあって、それがどのような出力(=spike)になるか、とくにspike数で定義されるreceptive fieldやorientation selectivityなどがどのようにしてできるかについて研究してきました。
ここで扱われているvariabilityの問題は長いあいだ問題になっていたものです。つまり、われわれがリンゴを見るときには、リンゴに特異的に応答するニューロンはたしかに活動しているのだけれど、繰り返しリンゴを見てるときにそのニューロンが出す活動電位の数はまちまちです。そこでいろんな疑問が出てきます。そのようなばらつきの元は何か、入力自体か、入力から出力を生成するところか。そのようなばらつきのある応答と私達のゆるぎないリンゴだという認識とはどういう関係にあるのか。後者に関しては多数のリンゴ応答ニューロンのoutputが平均されることでそのばらつきは消えるのか、という問題にもなります(究極には、その出力を「誰」が見ているのか、という問題になるわけですが)。
関連論文:

んで、今回の論文は前者の問題に答えようとしたわけです。In vivo intraで繰り返し視覚刺激をしたときの応答のばらつき(variability)を調べてやると、membrane potentialのvariabilityはspike数のvariabilityよりも小さかった、というのが結果でした。んでもって、そのようなばらつきの元はmembrane potentialの揺れからaction potentialを起こすthresholdがばらつくことによるという仮説の下にモデルを立てて説明した、ということらしい(さっぱり読んでない)。図の数からするとモデルの方がメインらしい。


2004年07月29日

Nature Neuroscience 8月号

  • "A morphological basis for orientation tuning in primary visual cortex." David Fitzpatrick。図だけしか見ていないけどこれすごいな。V1のlayer 2/3ニューロンのorientation selectivityがどうやってできるかを入力線維の走行パターンによって説明しようとするんだけれど、News and Views ("A shrewd insight for vision." Martin Usrey)のFigure 1にあるように、それがlayer 4からlayer 2/3への投射がねじれていることによって実現されている(分かりにくいから図を見てください)、ということを示したというのです。これはおどろき。普通そういったorientation selectivityは層を垂直に延びるaxonがdivergentに投射していること(そのときには今回のようなasynmetricalな構造は想定されていない)および層に平行な方向のlateralなconnectionとによって実現されるものだと思われていたわけですから。このことはV1のpyramidalニューロンが垂直方向に延びているとするコラム仮説の修正を要請するものだし、0-180degreeの方位を表象する領域がハイパーカラム的な構造をしていることを予言します。 また、これは重要なことだと思うのですが、V1の (optical iamgingで作る)orientation mapでのpinwheel center構造(NVのFigure.1での黄、緑、青、紫、赤に囲まれた領域。orientation selectivity map上での鞍点のようなもの。これもFitzpatrickやBohnhofferとかが明らかにしてきたもののはずですが)について、今回の論文で出てきたような構造(layer 4での回転する軸の中心に対応する部分がlayer 2/3でpinwheel centerになっていると考えればわかりやすい*1)から説明することもできます。 これまでの論文とどうconsistentなのかも気になるけれど、V1の局所回路についてずっとやってきたFitzpatrickに言われるのでは何もいえなくなってしまいます。
  • "Prediction of immediate and future rewards differentially recruits cortico-basal ganglia loops." 7/3のコメント欄でmmmmさんが言及した、銅谷先生のところでのfMRIの論文。
  • "Underlying principles of visual shape selectivity in posterior inferotemporal cortex."


*1:いや、中心が対応するという言い方も正確でないか。点と点との一対一対応にはないわけだから。なんにしろ、すぐにモデルが作れそう。


2004年07月17日

Annual Review of Neuroscience

"NEURONAL CIRCUITS OF THE NEOCORTEX." Rodney Douglas and Kevan Martin。
Douglas and Martinと言えば、1991年のJournal of Physiology四連報ですな。

麻酔下でV1からintraで記録しながら視覚刺激を与えるという方法論によって、V1ニューロンの視覚刺激応答等のパターンがいかにしてできているかをその回路とともに解明したのです。以前シナプス応答レベルの仕事をしてから行動動物のsingle-unitを記録するようになった私としては、これらの論文を読んだとき、これだ、と思いました。つまり、シナプス応答や回路のレベルでどういうことが起こっているかを動物の行動と結びつける、ということをするための一番の到達点だと思ったのです。それ以降私はV1ニューロンの応答と回路というものに興味を持ち、それがある種のカノニカルなものであるという作業仮説の下にやってきたと思います。
そののちで私の興味は多電極記録へと移行しましたが、スパイクを見るだけではなくてsynapticなイベントを見なければ、ニューロンの入力(PSP)から出力(スパイク)を変換する過程が見れていない、という意味での重要性がまったく薄れていないのは確かです。
In vivoでのintraというアプローチはのちにFregnacのNatureでの刺激応答時のshunting inhibitionの発見、さらにDavid Fersterによる膜電位のup- down-stateの発見などへとつながってゆきます。また、1991年以降にはoptical imagingによるV1のfuncitonal organizationの解明が劇的に進みました。このannual reviewでどのくらいそのへんが盛り込まれて進歩しているか、というのに興味があります。

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# ガヤ

関係ないですがV1について。KonigがCurrOpinNeurobiolで何やら書いているようですよ。読んでませんがAOPで出てますね。

# pooneil

おひさしぶり。königのは8月号のSensory systemsの号の原稿のようですね。リンク付けときました。ありがとうございます。


2004年05月13日

J Physiol

ガヤ日記で知った。JPってもう定期的にはチェックしなくなってる。
CLASSICAL PERSPECTIVES "Thirty years of a very special visual area, Area V5." S. Zeki
もとの1974論文もpdf化されてダウンロードできるようになっている。
視覚野のうち、運動の方向が専門的にコードされていると思われているMTは最初にZekiがmacaqueでidentifyしてV5と呼ぶようになった。(他の初期視覚野やextra striate cortexがV1,V2,V3,V4と分類されたのに従ってのこと。) のちにJohn Kaasが使ったMTの方が一般的には使われている。MTについての記念碑的業績は以前も紹介したNewsomeのperceptual decisionのneural correlateがMTにあるというものであろう。で、一般的にはMTと呼ばれていたのだが、humanのimagingの研究が進むようになると、humanではV5の名称が復活して使われるようになった。
ZekiのMT研究への最近の寄与は"The Riddoch syndrome: insights into the neurobiology of conscious vision."というやつで、hemianopiaのpatient GYでのmovementの処理とそのimagingを行っている。


2004年03月20日

Science '02

3/19について補完。CO blobについての最近の重要論文として、Sincich and HortonのScience '02 "Divided by Cytochrome Oxidase: A Map of the Projections from V1 to V2 in Macaques."がある。
それまでの研究からmagnoはV1のlayer4BからV2のthick stripeへ行き(そのままdoral streamへ)、parvoはV1のlayer2/3のblob外からV2のpale stripeへ行き(そのままventral streamへ)、konioはV1のlayer2/3のblob内からV2のthin stripeへ行く、ということがわかっている。
で、この論文でわかったのは、V1のblobのあるコラム(layer4も含む)からV2のthin stripeへ行き、V1のblob外のコラム(layer4も含む)からV2のthick stripeおよびpale stripeへ行く、ということだった。blog外からV2への入力はmagno(doral)とparvo(ventral)とがmergeしている、というのが重要な点で、いままでの三つのpathwayが独立に処理される、という考えからの変更が要求される、ということなんだけれど、今までの考えと、この知見とをどう組み合わせて現在バージョンを作ればよいかがいまいちわからん。
ちなみに続報(JNS '03)の"Independent Projection Streams from Macaque Striate Cortex to the Second Visual Area and Middle Temporal Area."からすると、V1からMTへの投射はCO blobコラムの内外の両方から来ているらしい。
もひとつ、これも。(The Journal of Comparative Neurology '02 "Pale cytochrome oxidase stripes in V2 receive the richest projection from macaque striate cortex."


2003年12月30日

Nature先週号

"Parallel colour-opponent pathways to primary visual cortex."
EDWARD CALLAWAY @ The Salk Institute。
CallwayはV1内のlocal connectionおよびLGN->V1のconnectionの構造についてずっと研究しつづけている。基本的には解剖学者。
色の情報処理について簡単にまとめる。網膜には三種類の光受容器があり、それぞれ主に赤(L)、主に緑(M)、主に青(S)を感受して活動する(実際にはそれぞれのスペクトルは広く、オーバーラップしている)。これらは網膜のretinal ganglion cellでLとMの差分から赤--緑の軸をコードする。また、S(青)とL+M (=黄色)との差分から青--黄の軸をコードする。これが色の二つの軸。この情報は大脳皮質の初期視覚野でさらに処理され、色空間上で非線形的な処理を受けて、小松先生が視覚連合野で見つけたような、彩度をコードしているようなニューロン活動などとして情報表現される。以上まとめ終了。
今回のCallwayの仕事は、LGNからV1へ投射する軸策の終止部位が上記の赤--緑をコードしているニューロンと黄--青をコードしているニューロンとで違うということを示したもの。
大脳皮質は細胞構築のパターンが層状になっていて、V1では表面から六層、さらに分類してlayer 1,2,3A,3B,4A,4B,4Cα,4Cβ,5A,5B,6とあるのだが、黄--青の軸策は4Aに、赤--緑は4Cに局在しているそうだ。
こういうことを明らかにするために彼らはLGNから投射してきているV1内の軸策からのrecordingをしている。実際の波形がないので、これがどのくらい確かなデータなのかいまいち評価できない。また、passing fiberから記録してしまえばあんなにきれいなデータになるわけもない。なんらかのしくみでterminalに近いところからのみ記録できているらしい。


お勧めエントリ

  • 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
  • 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
  • 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
  • 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
  • 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
  • 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
  • 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
  • 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
  • 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
  • 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
  • DKL色空間についてまとめ 20090113
  • 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
  • ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
  • Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
  • 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
  • MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213

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