[カテゴリー別保管庫] 生理研研究会2010「身体性の脳内メカニズム」


2010年11月11日

生理研研究会アンケート締め切りは11/19(金)

生理研研究会参加者の方でまだアンケート記入がお済みでない方はぜひこちらから:生理研研究会webサイト

締め切りは11/19(金)です。締め切り次第集計結果をwebサイトにアップします。各講演者の講演に評価を付けるという過酷かつたいへん役に立つ仕様となっておりますので、そのへんもあわせてぜひ見に来てください。

併せてポスターアワードのページも作成しました。写真付き。ツイッターや生理研サイトでのプロフィールページの私の写真がサギっぽくなってきたので、どうやらそろそろ「本当の自分」に戻らなくてはいけないようです。それはそれとして。ではまた。


2010年10月25日

生理研研究会ハイライト

生理研研究会ぶじ終了しました。
アンケートページオープンしてます。参加者の方ぜひ感想送ってください。記憶が薄れぬうちにぜひ。
こちらから:生理研研究会webサイト

そう言ってる私の記憶がどんどん薄れてきているのですけど、研究会のディスカッションでナイスなやりとりがあったので記録しておきます。物議を醸しているようですが、私はあそこで起こったこと全部に満足です。それぞれのやりとりでそれぞれがどう考えたかも重要ですが、あのやりとりを見たオーディエンスに対してインパクトを与えることに成功したと思うんです。そこが大事。

記憶を頼りにして書いているんで、間違いがある場合はご指摘いただければ幸いです。つーかやっぱustreamとか使えるようにして、俺じゃなくて誰か若い人が文面書き起こしてアップしてくれる、みたいなそんな展開でいけるようにしたいなあ。

それでかいつまんで書きますと、磯田さんの講演のあとで池上さんが指定討論者として質問を始めたところでナイスなバトルが展開したんですが、ざっくり言うと、磯田さんと池上さんでやりとりしていて、池上さんから、ここで見ているものは自己なのか? 静的な状況を見ていて自己がわかるのか? 条件の引き算だけでほんとうにわかったことになるのか? といった疑問が提示されて、磯田さんから、これだけで答えが出るとは思っていないけれども、自己・他者の処理の一部を捉えていることは間違いない、という応答をしてさらに話が止まらなくなっているところへ筒井さんが加わって、磯田さんの仕事は神経生理としてたいへんきれいなデータで素晴らしい仕事なのにそこがわかってない、という擁護があって、池上さんから、磯田さんの仕事自体を否定するつもりはない、しかしこのような神経生理学的方法だけで先に行けるのか疑問だ、という話があって、そこへ國吉さんが、池上さんの話をパラフレーズして池上さんはどうしたら自己・他者のシステムを作れるのかという構築主義的立場からものを言っているということを理解してほしい、という話があって、そこへ吉田が池上さんの話はneural correlate批判と自己の定義の二つの論点があって、自己の定義の方は神経生理学内で対処可能な問題だって話をして、藤井さんが今のようなやりとりで神経生理学者が自分の正当性の中に閉じこもるようなやり方はとても良くない(あとは藤井さんのブログ参照)という話をして、ところでなんで俺は説教してるんだっけ、池上さんが悪いんだな、と藤井さんが笑いを取って険悪な空気は払拭しつつ終了した、 というのが顛末です。

私は全体としていい議論だったと思うし、名前隠す必要ないと思うんでイニシャルトークにはしてません。嫌な人はもちろん言ってもらえれば消しますので。

それでこの話、いろんな方向から読み解けるのだけれど、ひとつコンテキストを付けておくと、まさにこういうバトルを展開したくて村田さんと吉田とで磯田さんのトークに池上さんが指定討論者をしてもらう、という組み合わせにしたんです。(池上さん呼んだのは村田さんの発案。) ツイッターでのやりとりですけど、

alltbl @pooneil #ascone 横やりですいません。意識の問題だと、どうしても、マッピング問題でいいのか、ということと、システムは自動ロボットだ、ということを避けて通れないと思うのですが、どうなんでしょう。こないだAndy とも議論になったけど。
alltbl #ascone  僕が学生なら、脳の物理的な状態や回路と、意識のある状態を結びつけても、それは説明になるのか、ということ。それがマッピング問題ですよね。
alltbl #ascone  自動ロボット問題は、そもそもシステムがいろいろ時分で決定していくような状況を考えないなら、意識なんて問題にならない。そういう人工システムはまだつくられていない
pooneil まったく同意します。今日こんなこと書きました:http://bit.ly/b23Bjf RT @alltbl: #ascone 意識の問題だと、どうしても、マッピング問題でいいのか、ということと、システムは自動ロボットだ、ということを避けて通れない
pooneil .@alltbl: さきほどのMarrの話に関しても、マッピング問題でやってることと、Marrの工学的アプローチとの関係を明確にしたいと思ってのことなのです。ただ問題は二段階あると私は思っていて、マッピング問題は意識だけにかかわらず、他の概念、自己と他者であっても問題になる…
pooneil .@alltbl: つまり、表象を捉えるだけで終わっていて、その表象を操作する「プロセス」(=統語論)じたいがぜんぜんなされていない、というのが現段階での第一の問題であると考えております。そのうえで記号接地問題で問題とされるような意識特有の第二の問題が出てくる、と考えています。
pooneil .@alltbl: ですので、生理研研究会で私が池上さんに神経生理の磯田さんの指定討論者になっていただくことで期待していたことの一つは、こういったマッピング問題の指摘でした。ゆえに、それはきっと神経生理学者全般に突き刺さると書いたのです。http://bit.ly/bxOdTL
alltbl @pooneil ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります。しかし、問題は脳の内部で解決できる問題ではないですよ。ぼくは、maximalismを宣言します。

とこんなかんじだったわけです。そういうわけで池上さんがマッピング問題(neural correlate問題)と自動ロボット問題を出してくださってこういう展開になったときは私は座長をしながらガッツポーズを取ったんです。ただ一つ予想外だったのはじつは会場にあまり神経生理学者がいなかった! あの場には居合わせておくべきだったと思いますよ。

以下私の解釈だけど、磯田さんの受け答えは神経生理学者としてはまっとうな答えだったと思うけど、ちょっとプロテクティブだったと思う。だからあそこで筒井さんが、磯田さんの仕事がいい仕事であることを強調してくれたことは良かった。そうでないとオーディエンスにあの仕事の価値がわからずじまいだったと思し、池上さんから磯田さんの仕事自体が悪いと言いたいわけではない、といった言明を引き出してくれたのもよかった。そのうえで國吉さんが池上さんのめちゃ独特な表現をパラフレーズして説明してくれて、これは神経生理学的パラダイムと構築主義的パラダイムとの衝突なんだってことを説明してくれた。わたしが言おうとしていたことは自動ロボット問題に対応させて、もっと不確定性の生まれる状況を作ってテストができるという可能性を示唆した。時間的に藤井さんのコメントで最後ってことにしたので、あの喧嘩を買う人がいなかったってのはちょっと残念だけど、たぶんどっかでまた続くはず。

そのあと懇親会で池上さんと磯田さんとけっこう長く話をした。池上さんの発言はいろいろ印象深かったんで書いておくと、なんでもneural correlateで捉えてしまうminimalismは謙虚なようであってじつは傲慢なのであって、だからこそmaximalismなのだ、out-and-out constructingなのだ、とまた独特なフレーズで言われたんだけど同じフレーズをツイッタでも使ってたからこんどはついていけた(これはいわば構築主義のマニフェストなのだ)。僕がその話でインスパイヤされて、なるほど、じつはほぼあらゆることにneural correlateは見つけられてしまうし、そういう作業仮説(これこそクリックのastounishing hypothesisそのもの)でやってきたんだけど、その万能さ自体が首を絞めてるのかもしれない、なんて話をした。

それから、池上さんは熱力学の話をもってきて、熱の概念が個々の分子というレベルではなくてその統計的性質というのにたどり着くまでに熱素の概念を考えるといった回り道があったことを例えとして、説明の階層のレベルがほんとうにニューロンの活動で正しいのかどうかは自明でないこと、そして、そういった説明ができなくなるようなところでサイエンスをやるべきだと主張した。これはつまりクーンのパラダイム論の通常科学と革命的科学の後者の話だ。それを受けてわたしが言ったのは、なるほどそういうsingularityを探せということならば、たとえばSUAでの限界はどこか考えるといいのかもしれない(ここでさっきのneural correlateの万能性の問題と繋がる)、たとえば意識、それからエピソード記憶のような一回性の現象にneural correlateという概念はそぐわない、こういうところがsingularityと言えるんではないか、なんて話をした。「エピソード記憶にneural correlateはない」ってフレーズは池上さん気に入ってくれたようだ。

alltbl エピソディック・メモリーにもNCCはない。だったら、どこにCがみられるのか。いやいや、Cはみるのはやめて、デザインしましょうということ。

まあとにかくいろいろあったんだけれど、この議論はまだこれからも続くと思うんで、だんだん考えを育ててゆきたい。あと、今回の研究会は生理研という神経生理学がホームで構築主義がアウェイの場所だったはずなんだけど、逆にしても面白かったはず。

まあそんなわけ。繰り返し言うけど、これは私の方から見た解釈。補足が必要だと思った方はコメント欄に書いてください。今週末ASCONEがあって準備が必要なんでしばらくここは放置しておく予定です。ではまた。


2010年10月23日

生理研研究会ぶじ終了しました。

生理研研究会ぶじ終了しました。
アンケートページオープンしてます。参加者の方ぜひ感想送ってください。
こちらから:生理研研究会webサイト

追記:コメント欄伸びてるんでそちらもどうぞ。

コメントする (9)
# 池上高志

楽しかったです。
 できれば、スピーカーは半分で、みんなが議論できると良いと思いました。特に、ポスターの内容についてとか。
ポスターは2日にして、A/Bにわけて、ポスターする人が他のポスターも観られるようにするのがいいと思います。

あと、会場がちょっと大きすぎて、暗いしwifi がないのが、残念。

# pooneil

池上さん、指定討論者どうもありがとうございました。
ポスターの件、会場の件、参考とさせていただきます。
実際、これまではもっと小さい会場でもっと途中質問しやすい雰囲気でやってきたのですけど、参加人数が増えてきたので今年は広い会場で行いました。ちょっと空気が変わりつつあることが気になってます。質問者も一部に限られてましたし。
ともあれご意見どうもありがとうございました。

# ふじー

MC研究会では、全員ポスターみたいな縛りにしましたけど、とりあえずそこそこ集まりましたよね。でも、それも賛否両論で、じっくり話すのにどういう形式が良いのかはよく分からないですね。

参加者を増やす方向を目指すよりも、リアルな参加者は人数を絞って、USTなんかでつぶやきを不特定多数のヒトに入れてもらって、そのつぶやきを拾うというのも良いのかもしれません。

もしくはUnconference形式を試すのも面白いかもね。

#

講演者 指定討論者 参加者の皆様
お疲れ様でした。
おかげ様でいい会になったのではないかと思います。今後ともこの研究会を宜しくお願いいたします。


吉田さん
お疲れ様でした。
いろいろ細かいところまで、きっちりアレンジしていただきありがとうございます。 殆ど吉田さんにおんぶにだっこで申し訳ありませんでした。
これまで毎年この会を引っ張ってただき、本当に心から感謝しています。大変だとは思いますが、これからもこの会が続きますように期待しています。MC研究会のように、運営も吉田さんに近しいコアメンバーで、分担していくのも一つやり方かも。運営のアイデアやこれからのテーマなど、コアメンバーにゆだねるのも手かもしれません。
細かいところは、これまでのように二人でやるのも決定が早いのでいい点もありますね。

# 村田 哲

追伸
この前の投稿は村田 哲です。すみません。

# pooneil

藤井さん、ありがとうございます。
人数絞ってustreamとか、Unconference方式(こっちは知りませんでした)とか興味あります。
以前からわたしは「合宿したい」みたいなこと書いてましたけど、その方向の発展系である気がします。生理研研究会とはちがった枠組みで考えた方がいいかもしれません。

# pooneil

村田さん、お疲れさまでした。
コアメンバー方式は取り入れたいですね。ちょっとそのへん考えてることがあるんで続きに書きます。

# pooneil

こういう研究会には二つの機能が必要で、programming committeeとlocal organizing committeeとがあって、local organizing committeeの部分はなんとか私の手を離れてもうまくいくようにしたい。Student committeeを組織して当日の運営だけではなくて前日までの企画とかも進めてもらうとかそのへんできると良いかも。Webサイトの運営とかustreamのセットアップとかそのへんをまかせるとか。
Programming committeeの部分はコアメンバー方式がよいと思う。講演者の人選とかトークの数とかポスターの形式とかも含めていろんな人のアイデアを集める方がよい。けど、MC研究会と違って毎年顔ぶれが変わるのがコアメンバーの結成にとって難点。(これまでの4回で皆勤しているのはたぶん松元さんと村田さんだけ。) たとえばいったんテーマを決めてから、年ごとにコアメンバーを結成するってのはありかもしれない。
私としてはちょっとこれまで抱え込みすぎたなと思ってる。もっと人を巻き込んでいって、みんなのものにしていかないと愛想尽かされる。
あと、指定討論者とかいままでお願いしてきた方たちが忙しくなりすぎてる。たぶんもうすこし若い人たち(<-エラそーだぞ!)に入ってもらった方がよい。これはすぐにでもやったほうがよい。
とかなんとか、そんなこと考えてます。

# 村田哲

固定のコアメンバー決めてもいいのでは?
その中でテーマを選ぶということでもいいと思います。
吉田さんやこれまで関わった人間がしてもいいし、手を挙げてもらってもいいのでは。
若い人にも入ってもらって。



2010年10月12日

予習しよう!!!

いよいよ生理研研究会「身体性の脳内メカニズム」近づいてきました。でもって、その場で講演聞けばそれでいいって言えばそれでいいんだけれど、せっかくなんでいろいろ予習しておくとよいと思うんですよ。それで講演者やポスター発表者の方のところへ行って質問したりとかしてみるだけでずいぶんと身になるもんです。

すくなくとも私自身は講演のその場で気の利いた質問などひねり出すことはできなかったから、とりあえず付け焼き刃でいいから知識付けて、背伸びしながらやってきました。このブログでも以前の研究会でこんなかんじで関連する本とか論文とか読んできました:

だんだん手抜きになっているところが見えるのがあはれをさそうわけですが、ともあれ。

以前も書きましたが、「ソーシャルブレインズ 自己と他者を認知する脳」(東大出版)はよかったですよ。

平田さん、宮崎さんそれぞれ担当されている章がありますので、これ読んでいけば、そこからの差分として話が聞けるはずです。この本を見るとほかにも村田さん、友永さん、明和さん、と今回参加される方の名前が出てきてきます。ある種の学派を形成していると言えるかもしれません。

國吉さんの仕事に関して資料を探してみましたけど、トークのPDFがいくつか見つかりました。

住谷さんの仕事に関してですが、「幻肢痛を鏡を使って直す」の話はラマチャンドランの「脳のなかの幽霊」の2,3章にその話があります。でもやっぱ、じっさい患者さんはどんなかんじなのかいろいろ知りたいですね。ほかにweb探してみましたが、以下で言及されてます。

内藤さんの仕事は多岐にわたるのでなにを読めばいいか、要旨からするとこれらの論文の話

とかが出てきそうです。あと、要旨にあった「運動と感覚の双対性」これに激惹かれる。これは川人先生の感覚運動統合の双方向性理論の関係でしょうか?

磯田さんの今度のトークはこれまでに発表されている仕事よりはもっと新しいことをお話ししていただけることになってますので、ちょうどよい資料がないですね。私自身はさきがけでの発表を聞いた方の話と、SFN2009のabstを見て講演をお願いしました。去年のSFNのabstはmeeting plannerからアクセスできます。

  • Neuronal basis of socially oriented performance monitoring. I. Design of a behavioral paradigm for monkeys
  • Neuronal basis of socially oriented performance monitoring. II. Agent-related neuronal activity in the medial frontal cortex

あと、今年のSFNでも続編の発表があります。要旨はmeeting plannerからアクセスできます。

  • Learning from other’s error and the role of the medial frontal cortex in monkeys

さてさて、それでは岡崎で会いましょう!!! 今年は懇親会場は20時30分でいったん終了させますが22時まで使用可能です。そこで継続して語るのがいちばん安上がりで落ち着いてしゃべれることでしょう。飲みに行きたい人は東岡崎駅前ですが、よくある展開としては手羽先食うために「世界の山ちゃん」あたりに行くとかですかね。


2010年10月06日

要旨集作成しました

生理研研究会「身体性の脳内メカニズム」です。

要旨集を作成しました。サイズは3.8MB。こちらからダウンロードできます。

講演者、ポスター発表者の皆様へ:要旨集をご確認いただいて、間違いなどありましたらお早めにご連絡ください。

申し込みも今の時点ですでに50人越えてますんで講演者、運営をプラスするとすでに70人オーバー。最終的には例年のトータル参加人数100人よりも多くなりそうです。

会場は大会議室にして、昨年の国際シンポジウムと同じですんで200人入りますが、後ろの方の椅子を撤去してなるたけ前の方に座ってもらって、議論とかしやすいようにしておく予定です。

それではまた。


2010年10月04日

ポスター締め切りました

生理研研究会「身体性の脳内メカニズム」です。ポスター申し込みは10/1(金)で締めきりました。合計19人の応募をいただきました。どうもありがとうございます。

ポスター発表者の方へ:せっかくの「身体性」がテーマの研究会ですので、いろいろ実演してもらえると楽しいと思います。(ポスターアワードをゲットするためにはこれが一番効果的という話もあり。) 電源やテーブルや空きスペースなどあらかじめ確保したい方は前もって連絡ください。

ポスターのタイトルと発表者のリストを作成しました。要旨集もまもなくアップする予定です。いよいよ始まるなってかんじがしてきました。ではまた。


2010年09月25日

ポスター締め切り延長します

生理研研究会「身体性の脳内メカニズム」です。ポスターセッションの締め切りは昨日9/24でしたが、まだまだ会場に余裕がありますので、締め切りを一週間延長して10/1(金)とします。奮ってご応募ください。

今のところいただいているポスターはたとえば、「ラバーハンドイルージョン時の心理物理」「自閉症でのEBAのfMRI」「麻痺患者の視覚体性感覚統合」「ロボットの自己身体の拡張」「身体イメージ拡張のシミュレーションモデル」みたいなかんじでけっこうバラエティーあります。こちらの準備ができ次第webサイトに要旨をアップしていきますので。


2010年09月17日

「身体性の脳内メカニズム」へのお誘い

生理研研究会の運営手伝い/旅費援助ですが、募集人数に到達しましたので締めきりました。

生理研研究会のwebサイトをアップデートしました。ポスターセッション締め切りまであと一週間です。以前「身体性」ってなんだかわからんな、という人に向けて「「身体性」ってなんすか? 」ってエントリを作りました。要は、そんなに厳密に捉えずに気楽にポスター応募してください、ってことです。

じっさいのところ、今回の講演者の方の話は実際にはチンパンジーの社会性と協力行動だったり(平田さん)、幼児の発達時の模倣行為だったり(宮崎さん)、マカクの自己と他者に関連したニューロン活動だったり(磯田さん)、運動感覚と身体像の機能イメージングだったり(内藤さん)、幻肢の神経学だったり(住谷さん)、発達と身体性の視点からのロボティクスだったり(國吉さん)するわけです。このへんからイメージを膨らませていただけるとよいかと思います。(いま書いたのはテーマは吉田によるめちゃいい加減な説明なので、詳しくは月末に公開される講演者の先生の要旨をご覧ください。)

今回は共同オーガナイザーの村田哲さんにも文章を書いていただきまして、私が勝手に[「身体性の脳内メカニズム」へのお誘い]というタイトルを付けてみました。こちらから:[「身体性の脳内メカニズム」へのお誘い] なお、村田さんから許可を得たので以下にも転載します。

西洋思想においては現象学において身体と精神がつながりの深いものとして考えられるようになりました。一方、日本では、仏教や芸能において古来から身体とこころは一体のものとして考えられていましたが、思想としての身体論が系統だって議論されてきたのは、それほど古いことではありません。さらに言えば、心と身体の関わりを身体性という言葉で、サイエンスの上で議論するようになったのは、ごく近年になってきてからです。

そもそも身体性という言葉は、学問分野やさらには研究者の立場によって様々な使い方をされます。しかし、その共通項は、「こころ」が「からだ」をうごかすだけでなく、「からだ」が「こころ」をうごかすことも考える必要があるということではないでしょうか。さらに、心と体はそれぞれが環境と関わりを持ちます。

こうした考えは、哲学・思想のみならず、認知科学、心理学、発達心理学,比較心理学、神経心理学、計算論、ロボティクス、神経生理学、精神科学、リハビリテーション、生態学、社会学などの様々な分野の研究者がもっているに関わらず、身体性にかかわる研究発表は、いまだ各分野・領域内の発表にとどまることが多いと思います。

運動・身体意識・身体変容・道具・コミュニケーション・社会性・行動・空間認知・共感・アフォーダンス・発達・模倣・ミラーニューロン・自己・他者などなど関連するキーワードも数え上げればたくさんでてきますし、この他にも沢山あると思います。今回の講演者も様々な分野の方をお呼びしております。学問領域を超えて心と体の関わりを研究しているお考えの多数の方々にお集まりいただいて、是非活発に発表・討論をしていただきたいと思います。

……って村田さん、いきなり現象学や仏教じゃみんな引いちゃいますよwとも思いましたが、このキーワード見て引っかかった人が応募してくださればよいかと思います。ちなみに私自身はembodied cognition派で、ヴァレラとか読んできた人間なので、現象学とか仏教とか言葉が出てくるだけで愉快なんですけどね。そのへんについてはこちらのスレ参照で:オートポイエーシスと神経現象学

つまり、私自身のモティベーションとしては、意識の生成メカニズムとして環境と身体の交互作用は必須なんだろうと思ってるんだけど、どう必須なのか語れるようにもっとこの分野のことを知りたい、というわけです。

それでは岡崎で会いましょう!!! ちなみにはじめて岡崎に来る方へ:東岡崎駅から会場までは緩やかな上り坂です。荷物が大きい方はタクったほうが良いかも。


2010年09月16日

生理研研究会では運営手伝い/旅費援助を募集中

生理研研究会のwebサイトをアップデートしました。プログラム(案)などが掲載されました。webサイトはこちらから:研究会webサイト

研究会ではでは運営手伝い/旅費援助を募集中です。あと残り三人です。三島ロッジの方は締めきりましたが運営手伝い/旅費援助の方の分はキープしてあります。


2010年09月10日

「身体性の脳内メカニズム」運営手伝い/旅費援助 募集中です

すかさず宣伝。

今年の生理研研究会ですが、今年のテーマは「身体性」です。参加申し込みを受付中です。運営手伝い/旅費援助も募集中です。こちらはあと残り三人です。三島ロッジの方は締めきりました。(運営手伝い/旅費援助の方の分はキープしてあります。) お申し込みはこちらから:研究会webサイト

ポスター発表も募集中です。ポスター出すかどうか思案中の方へ:「身体性」にこだわって躊躇する必要ありません。「身体性」に興味のあるオーディエンスのところに持って行って興味もってもらえそうなものだったら遠慮せず出してください。ぶっちゃけ応募が少ないんでピンチです。どうかよろしくお願いします。


2010年09月07日

「身体性」ってなんすか?

今度の生理研研究会は「身体性」がテーマなんだけど、ところで「身体性」っていったいなによ?って話になった。たしかに「社会性」とか「動機付け」とかよりもわかりにくいかも。もっと広くアピールして、ポスター応募増やすためにどうすればいいか考えてみる。
なんか説明を書いてみればいいのだろうか。「定義」とか言い出すとややこしくなるので、例示的に書いてみる。
"Embodied cognition"(wikipediaそれからInternet Encyclopedia of Philosophyに説明あり)の訳として言えば、「物理的制約の下でどのように認知が可能になるのかを考える立場」とかそんな言い方になるだろう。かっこつけて「ぼくら人間が空を飛べないので鳥とは違ったように世界が切り取られる」とか言ってみたりする。これは認知側からの言い方で。
行動側から言うならば、運動制御の人が、腕の重さとか慣性とか考えて、そのような感覚フィードバックを明示的に扱っている場合には身体性をやってると言えると思う。でもそういう人は必ずしも「身体性」とかいう言い方をする必要性を感じてないかもしれない。
認知と行動とを両方考慮する視点が核なのだな。でも、普通に知覚運動変換をやってる人にも「身体性」という概念は必要がない。一方向でなくてループができている必要がある。それはonlineでループを作っていなくても、学習とかでofflineで回っていればよいように思う。
身体による制約を重視すると、agentとenvironmentの関係を取り扱うことになるので、自己-他者とか社会性とかも含むことになる。
「身体性」って機能に関連した概念ではないからなあ。「注意」「意志決定」「動機付け」みんなある種の機能として捉えられる。「社会性」ですらコミュニケーションみたいな機能として捉えるからあまり迷わない。「身体性」って言葉はじつはある種の立場の表明を含意している。でもそういうこと言ってコワモテにすると門戸が狭まるので、強調するつもりはない。
じつは講演者選びの時に村田さんと相談していたのは哲学者を呼んで「身体性」について歴史的経緯も含めて語ってもらう、ってのを考えていたんだけれど、バランスとか人数とか考えてけっきょくそのアイデアはボツにした。
いろいろ書いたけど、じつのところ、定義にこだわりはない。参加希望の方は、講演者の顔ぶれを見て、この人たちと議論がしたいと思った人は臆せずどんどんポスターを出していただけたらありがたい、というのが結論(予定調和的!!!)。懇親会費も安くします。では岡崎にて!
研究会web サイト: http://www.nips.ac.jp/%7Emyoshi/workshop2010/index.html


2010年08月19日

生理研研究会2010 「身体性の脳内メカニズム」受付始まりました

今年の生理研研究会ですが、以前も予告しましたように、今年のテーマは「身体性」です。講演の先生も確定して、今日から参加申し込みの受付を始めました。こちらから:研究会webサイト

日本のミスター・ミラーニューロン、近畿大学の村田哲さん(ラボのwebサイトおよび「脳のセミナー」へのリンク)といっしょに準備してきました。

特別講演は東京大学大学院情報理工学研究科の國吉康夫先生(ロボティクス)にお願いしました。それに加えて5人の先生方から講演をしていただきます。OISTの磯田昌岐先生(神経生理学)、東大麻酔学教室の住谷 昌彦先生(神経学)、ATR/NICTの内藤栄一先生(脳機能イメージング)、林原類人猿研究センターの平田聡先生(チンパンジー)、玉川大脳研の宮崎美智子先生(発達心理)。勝手に分野をざっくりと記入してみましたが、様々なバックグラウンドを持っている先生にお話しをしていただけるように考慮しました。

いくつか去年からの差分などを。

  • ポスターセッション申し込み受け付けてます。発表内容が「身体性」の範疇に入るかどうかはそんなに厳密に捉えてくださらなくてけっこうです。「身体性」に興味がある人と話をするとっかかりにできそうなら充分です。
  • 運営手伝いは今年も募集してます。募集期間が短いのでお急ぎを!
  • 昨年は国際研究集会でしたが、今年は国内での研究会ということで発表、議論は日本語で行います。
  • 今年は参加費としてコーヒーブレーク代およびポスターアワードなどを含めて500円徴収することにしました。ご理解のほどお願いします。

以下にMLや各先生方に送付したメールのコピペしておきます。

-----------------------------------------
生理研研究会 認知神経科学の先端 身体性の脳内メカニズム
参加募集・ポスター募集・運営手伝い募集のお知らせ

生理研研究会「認知神経科学の先端」シリーズも今年で4回目となりました。
2007年は「注意と意思決定」、2008年は「動機づけと社会性」、
2009年は『意識』をテーマとして開催して好評のうちに終了しました。
2010年は身体性をテーマとして、電気生理、機能イメージング、
発達心理、ロボティクス、霊長類研究、神経心理といったさまざまな
アプローチで活躍されている先生方にお集まりいただき、
最近の研究成果を紹介していただきます。
今年も、昨年同様の成功を目指すとともに、
さらに多様なバックグラウンドを持った方々との対話を
広げてゆきたいと考えております。ぜひお誘い合わせの上、ご参加ください。

ポスターセッションを募集しております。
若手の方の運営手伝いも募集中です。(旅費等の支援も行います。)

* 日時: 平成22年10月22日(金)13時 ~ 10月23日(土)12時
* 場所: 自然科学研究機構 岡崎コンファレンスセンター 2F中会議室
* 参加費: コーヒーブレーク代 500円 (懇親会には別途費用がかかります。)
* 提案代表者:村田 哲 (近畿大学・医学部)
 所内対応教官:伊佐 正(生理学研究所 認知行動発達研究部門)
 世話人:吉田 正俊 (生理学研究所 認知行動発達研究部門)
* 各種申し込み手続き:Webサイトをご覧ください。
 Web site: http://www.nips.ac.jp/%7Emyoshi/workshop2010/

-------------
●講演者 (敬称略)

  * 特別講演:國吉 康夫(東京大学大学院情報理工学研究科)
  * 磯田 昌岐 (沖縄科学技術研究基盤整備機構 (OIST) )
  * 住谷 昌彦 (東京大学医学部麻酔学教室)
  * 内藤 栄一 (ATR・脳情報研究所/NICT)
  * 平田 聡 (林原類人猿研究センター)
  * 宮崎 美智子 (玉川大学・脳科学研究所)

-------------
●参加申込の手続き

生理研研究会サイト
http://www.nips.ac.jp/%7Emyoshi/workshop2010/
にあります申し込みフォームにご記入の上、お申し込みください。
二、三日以内に、折り返し吉田から受領確認のメールを送信します。

-------------
●ポスター発表の募集

初日の10/22の夕方にポスターセッションを行います。
懇親会会場を兼ねておりますので、じっくりと議論に時間を費やすことが出来ます。
講演者の先生を含む多くの方とご自身の研究成果について発表、議論するチャンスです。
ぜひ活用してみてください。

募集するポスターの対象領域は「身体性」に関連する実験的研究です。
神経科学、心理学、計算機科学、認知科学、ロボティクス、哲学を含みます。
「身体性」との関連性は広く捉えた上でお申し込みいただいてよいと考えております。

ポスター発表申し込みの手続きに関しましては、
生理研研究会サイト
http://www.nips.ac.jp/%7Emyoshi/workshop2010/
にあります募集要項をお読みになった上でお申し込みください。

-------------
● 運営手伝いの募集

研究集会の自律的な運営および若手の方への旅費等の補助とを兼ねまして、
運営の手伝いを募集しております。
往復の旅費の提供を予定しております。
運営手伝いを希望される方は、参加申し込み手続きの際に、
運営手伝いの選択肢にチェックを付けて下さい。

-------------
以上、ご不明な点につきましては、
吉田 正俊 生理学研究所 認知行動発達研究部門
(myoshi@nips.ac.jp)
までお願いします。
----------------------

学問の秋がやって参りました。お申し込みは今すぐ! (通販番組っぽく。)


2009年11月27日

アンケート集計 / 来年は「身体性の脳内メカニズム」です!

NIPS-SSC workshopのアンケートの集計が終了したのでwebサイトにポストしておきました。PDFファイルにしてあります。全体的に好評だったのでよかったです。ぜひこれを将来につなげていきたいです。

ということでさっそく来年の研究会ですが、もう始動してます。以前のエントリでも書きましたが、日本のミスター・ミラーニューロン、近畿大学の村田哲さん(ラボのwebサイトおよび「脳のセミナー」へのリンク)といっしょにオーガナイズするということで相談を始めています。

タイトルは「身体性の脳内メカニズム」。英語で言うならembodimentです。自己・他者・身体の認知、模倣、共感などの領域で実際に手を動かしている若手の方にしゃべっていただくという方向性で、これまでと同様、議論が活発に出来るような形を目指します。学際的にいきたいので、神経生理学、脳機能イメージング、理論モデル、神経心理、発達心理、動物心理、ロボティクスなどの関連の領域から講演者の方を選考しているところです。学際的にやるときのポイントはどれだけ脳と結びつけることを意識しておられるかという点だと思っているのですが、ともあれご期待下さい。

まだわたしも勉強中ですが、どうやらいちばんの参考図書となるのは「ソーシャルブレインズ 自己と他者を認知する脳」(東大出版)になりそうです。ということで図書館から借りて読んでます。みなさんもぜひ。

さいきんはクリス・フリスの「心を作る」も読んでます。だれかあそこ行って仕事してきた人とかいたら今回のテーマ的にも適任だと思うのですけどね。わたしにとっては身体性とベイズ脳ってのは直結するんで、身体性ってのは周辺領域なんかじゃあなくって、ニューロンのcodingの本質に関わっていると思ってます。ってのがこないだのわたしの「アクティブな知覚」で言おうとしてたことに繋がります。

あー、いま思いついたけど、再来年はBMI、というか操作脳科学でcoding/decodingまで含めたあたりがテーマというのでどうですかね。毎年少しずつオーバーラップしながらテーマを移動させてゆくという意味では悪くないのではないでしょうか。技術的な面よりも、脳情報の活用・制御によって私たちの身体・知覚表象がどのように変わるのかというあたりに焦点を置ければ楽しいと思います。Coding/decodingの議論ができるほど進歩してればなお良いなあ。脳プロと連携しつつも違ったかんじでアプローチできるとよいのですけど。なんてかんじでネタは尽きないね。

話を戻すと、来年の日程は現在のところ10/15(金)-16(土)を予定してます。神経科学大会とSFNの間ということでこれもいつもと同じです。

ともあれ、まだ現在申請作業中ですので、開催できるかどうかは例年3月に確定します。随時レポートしていきたいと思います。ではまた。

追記:事業仕分け関連はいろいろ思うところはあるけど、ここには書かずにTwitterの方だけにしときます。


お勧めエントリ

  • 細胞外電極はなにを見ているか(1) 20080727 (2) リニューアル版 20081107
  • 総説 長期記憶の脳内メカニズム 20100909
  • 駒場講義2013 「意識の科学的研究 - 盲視を起点に」20130626
  • 駒場講義2012レジメ 意識と注意の脳内メカニズム(1) 注意 20121010 (2) 意識 20121011
  • 視覚、注意、言語で3*2の背側、腹側経路説 20140119
  • 脳科学辞典の項目書いた 「盲視」 20130407
  • 脳科学辞典の項目書いた 「気づき」 20130228
  • 脳科学辞典の項目書いた 「サリエンシー」 20121224
  • 脳科学辞典の項目書いた 「マイクロサッケード」 20121227
  • 盲視でおこる「なにかあるかんじ」 20110126
  • DKL色空間についてまとめ 20090113
  • 科学基礎論学会 秋の研究例会 ワークショップ「意識の神経科学と神経現象学」レジメ 20131102
  • ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』合評会レジメ 20130628
  • Marrのrepresentationとprocessをベイトソン流に解釈する (1) 20100317 (2) 20100317
  • 半側空間無視と同名半盲とは区別できるか?(1) 20080220 (2) 半側空間無視の原因部位は? 20080221
  • MarrのVisionの最初と最後だけを読む 20071213

月別過去ログ