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■ Perirhinal cortex(嗅周皮質)の構造と機能つづき

さてさて、つづきで機能についてですが、non-human primatesとrodentsとでのperirhinal cortexのfunctionを比較して議論するレビューというのはなかったような。だいたい、rodentsでは海馬至上主義が蔓延していて、海馬内でDG-CA3-CA1で分担してencodingからrecallまでやってしまうようなストーリーになってたりするのであれでいいのだろうか、と思うことがあるのですが。ま、このへんは種差の問題もあって簡単ではない。Non-human primatesでは伝統的に視覚経路についての研究が進んでいるので、視覚入力がどのように処理されて、内側側頭葉記憶システムに入力してくるか、というような視点を持っているのが強みです。Rodentsだったらたぶん、視覚入力よりは違うものを使った方がよいのかもしれない。最近のRGM Morrisの話とか、Eichenbaumの話とかはだいたいolfactory系の刺激で砂を掘らせるとかそういう方向に行ってる。あのラインで感覚処理系と記憶系とを繋げてゆくというのがいちばん将来性があるのではないか、というのが私の持論です。うお、脱線。でも脱線が面白いもので。(このフレーズ使うのは何回目だろう。)

なんてエラソーなこと書いてて久しぶりにPubmed検索してみたら、MurrayのAnnual Reviewというのが出てますね。これが「non-human primatesとrodentsとでのperirhinal cortexのfunctionを比較して議論するレビュー」というのではいちばん良さそうです。

ただ、このレビューはMurrayが近年主張している、perirhinal cortexはmemoryだけでなく、percetual aspectにも関わっているのだという話に偏っている傾向があります。そういう意味ではnon-human primatesだけになりますが、

こちらの論文のほうがperirhinal cortexのmemoryに関する機能についてレビューするという機能をよく果たしていると思います。(上記の論文を間違えていたので訂正しました。ご指摘ありがとうございます。)

なお、Elisabeth A. MurrayはMishkinの弟子です。その昔、海馬のlesionよりも扁桃体のlesionのほうがrecognition memory testの成績が落ちるなんて話があったのですが、けっきょくそれは扁桃体のlesionでは扁桃体にアプローチするときにperirhinal cortexを損傷させていたからだなんてオチがあったわけです。そのへんの仕事をしてたのがMurray EA and Mishkin Mでした。

このへんで力尽きました。

コメントする (2)
# NORI

pooneilさん、こんにちは。私もperirhinal cortexに興味を持っているので、とても楽しく読ませてもらっています。ところで、ここで紹介しているMurrayたちの論文は同じ物なのですが、それでいいのでしょうか?

# pooneil

ご指摘どうもありがとうございます。間違えてたので直しました。
ところで、ratとmonkeyとでのperirhinalの相同性ってどのくらい明らかになっているのでしょうか。言及したBurwell 1995とかだとニッスル、Timm's stain、AChEを並べて議論しているようですが、いまだったらSMI-32とかもっといろんなマーカーでのimmunohistochemistryを頼りに出来そうです。Richmondの話であった、dopamine系の投射も重要ですし、いろんなものの発現プロファイルがこの問題に大きく貢献できるのではないかと思ってます。
また、私はどうしてもventral visual pathwayからの入力に注目しがちですが、rodentの海馬がspatial mappingに大きく関わっているという点で、dorsal pathwayからの入力がどういう経路を介しているかにも興味があります。Non-human primatesだったら、parietal-retrosplenial-parahippocampal-hippocampusという流れが確立しているように思えますが、rodentsだったらより入力が強烈なのではないか、とか考えたり。
それではまた。


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