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■ ヒトの脳にはニューロンがどのくらいあるか

ヒトの脳にニューロンがどのくらいあるかちゃんと測った論文がAzevedo et.al. 2009で、860億個だそうな。体積の80%を占める大脳皮質に19%のニューロンがあって、体積の10%を占める小脳に80%のニューロンがある。なにげに小脳すごい。この事実は小脳の重要さを強調するために引用されたりする。たとえばRoger LemonのLife without a cerebellum

小脳の説明をするのに、大脳はCPUで、小脳はGPUで並列計算するのに向くアーキテクチュアになっていて、わざわざM1から長い線維伸ばして計算させてまた戻すとかコスト払っているので、大脳皮質の構造では出来ないようなことをやってんだろう、とか説明をしたりする。ほんとうのところはわからない。小脳に聞いてください。

Azevedo et.al. 2009でのもう一つのポイントは、ニューロン-グリアの比率は1:101:1くらいで(3/26訂正。Thanks to Gayaさん)、これはほかの霊長類でも同じということ。そういう意味ではヒトの脳はマカクとかと比べてとくに特別なわけではない。

The human brain in numbers: a linearly scaled-up primate brain 同じ著者が書いたレビュー。これの図3がよくて、いろんな齧歯類、霊長類の脳の重さとニューロン数が一覧できる。

それによると、マウスは脳重が0.4gでニューロン数が7千万、ラットは1.8gで2億、マーモは7.8gで6.3億、マカクは87gで63億、ヒトは1500gで860億。こういうデータを持っておくと講義とかそういうときに捗るんでオススメ。

追記3/26: ニューロン:グリア比が1:1ってのはけっこう重要な話で、上述のFrontier誌を読んだところ、これまで信じられていた1:10というのはほとんど根拠がないうえに、神経神話「人間は脳の10%しか使えていない」の元となっている可能性があると。グリア比が多いことが分かっているのは視床だったり、ventral pallidumだったりというところでの報告だけで、大脳皮質ではグリア比が2を超えることはない。いちばんニューロン数の多い小脳では逆にニューロンの方が多くて、ニューロン:グリアの比は>=25:1 (at leastって書いてある)。 以上の数字はHerculano-Houzel本人の仕事ではなくて、それまでの文献から得られたものなので、カウント方法にはそんなに依存しなさそう。

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# Gaya

あれ?この論文では「ニューロンとグリアの比率は、かつては1:10だと言われたこともあったが、実際には1:1だった」と主張していますよ。それがメインの発見だからこそ、論文のタイトルにもなっているのかと。

# pooneil

あ、ほんとだ。斜め読みで完全に誤読してました。もうちょっと読んでから直しておきます。ご指摘ありがとうございました。


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