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■ XTCの"Respectable Street"の歌詞について精読してみた
XTCの"Respectable Street"という曲がある。1980年に発売された4thアルバム "Black Sea" のオープニングトラックだ。この曲の歌詞を理解しようとしたことがなかったので、精読してみた。
まず全体としては、アンディ・パートリッジの出身地であるスウィンドンのような地方都市の庶民(労働階級)を揶揄/戯画化しているのだろう。
壁が薄いアパートで隣人のドアの開け締めがうるさかったり、隣人の会話の話題が丸聞こえで「中絶」「避妊」「どういう体位が歳とった旦那を喜ばせるか」「化粧品の販売員が持ってきたシワ伸ばし」だったりする。
サビがそれに対するツッコミになっていて、「ここはお上品通りだぞ」(下世話な話はやめろ)っていうことなのだろう。
以上のことは公式のMVを観るとより明確になる。XTCメンバーが扮するお上品な弦楽グループの隣人がパンクな老夫婦(セックス・ピストルズのアルバムを壁に飾ってる)で、XTCメンバーによる弦楽の演奏をうるさいって文句つけてる。つまり歌詞の内容をひっくり返してある。つかひねりを加えておかないと映像化出来ないだろうから。
さらにアンディ・パートリッジ自身のインタビューでは、スウィンドンの「本当にみすぼらしい小さなアパート」に住んでいたときの近くの通りがタイトルの由来だと言ってる。
実際のアンディの経験では、"Respectable Street"自体は自分のアパートのことではないし、見下す眼差しを受けたのはアンディなのだけど、それを歌詞の中では変形させている。図示するならこんな感じだろう。
皮肉的な表現なのだろうけど、相当捻れている歌詞だ。そう、曲のほうが捻れているのと同じように。(前にも書いたが、ヴァースのコードの二番目は 79987X- 98907X という命名不可能なやつ)
我ながら、なんでこんなにムキになっているのかと思うが、まあ、ブログのネタになると思って書いてる。
ということでだいぶ歌詞の内容が理解できてきたのだけど、一番のAメロの"immaculate receptions"(完璧な受け取り/受容)ってのがよくわからない。ググってみたら、"The Immaculate Reception"というのがアメフトの歴史的プレー(1972)であることを知った。
"on their portable Sony Entertainment Centers"ってのはテレビのことだろうから、辻褄は合う。でも複数形、単数形の違いがあるし、サッカーではなくアメフトはイギリスではありえない。というわけでこの点は未解決。
さらにググってみると、"portable Sony Entertainment Centers"とはソニーのウォークマンのことではないかという指摘があった。ソニーのウォークマンの日本国内販売が1979年。"Respectable Street"が書かれたのが1980年なので、ギリギリありうる。
でもそれだと、歌詞の繋がりがよくわからない。だって「避妊とimmaculate receptions」だから。それを音楽の内容と読むことは出来ないし。
XTC - Respectable StreetのMVを見直してみたら、「ソニー・ポータブル・エンターテインメント・センター」のときにアンディ・パートリッジがテレビを指差してた。これでウォークマン説は完全に棄却された。
このMV、ほかにもカラオケ動画かよってくらい説明的になっている。たとえば"Avon lady fills the creases"のくだりでは、アンディ・パートリッジが自分の顔のシワを伸ばしてる。
あと、Respectable Street自体はスウィンドンで住んでた家の近くの高級住宅街を表していて、そこのカーテンの隙間から見下した目で見てくる、という逸話が前述のインタビューで出てくる。
このインタビューの中で、アンディ・パートリッジが(「あなたは(自分の作品の)どのMVのファンでもないんでしょうか?」に答えて、)「ああ、どれも嫌いだよ。デュークスの 「Mole from the Ministry 」を除けばね。That one's okay.」って言ってるんで、"Mole from the Ministry."のMVを観てみた。
まあ、ストロベリー・フィールズ・フォーエバーのパクリ的なやつだった。たしかに、まあ"ok"って「許せる」くらいのニュアンスかな。