« ChatGPTでブログの説明文章を作ってみた(2023年5月) | 最新のページに戻る | 「悍体、玉光堂楽器センター、シューゲ」(さうして、このごろ2023年3月b) »

■ 宅録/DTM生活について回顧してみた

元DTMマガジン編集長による貴重な回顧録:「DTMって市場自体が、霞のように消えちゃったんだろ」を読んだ。当時自分が直面していた状況がだいぶ謎解きできた。

ちょうどいい機会なので、これまでの自分のDTM生活について回顧してみた。以下は超個人的な記録だが、正確を期すために、昔の自分のブロク記事を見直してファクトチェックしてある(<-真面目)。


[1980年代] 高校生のときに宅録を始めた。宅録というのは、歌を歌ってギターを弾いて録音して、それを重ねてゆく作業のことだ。バンドでデモテープを作るのも同じ作業だが、私は当時やってたバンドを辞めてからは、ひとりでNeil YoungやCSNYのコピーとかをしていた。

宅録をするにはMTR(マルチトラック・レコーダー)が必要だが、持ってなかった。代わりに、親にねだって買ってもらったシャープのダブルカセットデッキを使ってピンポン録音をしていた。音を重ねるたびにヒスノイズが加わるので、出来上がりの曲はシューシューいってたっけ。

ドラムマシンも持っていなかったので、近所の団地のゴミ捨て場でスネアドラムとシンバルを拾ってきて、バスドラ代わりに枕をスティックで叩いて、マイクで音拾ってた。カセットデッキの入力部分でアナログ的にリミッタがかかるので、(リンゴ・スターのドラム的な意味で)案外いい音だった記憶がある。


[1990年代] 大学生になってバイトで収入を得ると、Fostexの4chカセットMTR X18H(写真)を買った。

これはカセットテープの片面のみを使って4chで倍速のスピードで録音ができる。つまり、標準的な60分カセットテープだと15分間の録音ができる。

これを使ってまずドラムトラックをch1に録音する。そのあとギターと歌を2ch,3chに録音する。それをミックスダウンしたものを4chに入れる。そうして空いたchにギターとハモリを入れる。こんなかんじで曲を録音することができる。やってることは60年代後半のビートルズと原理的には同じだ。90年代はほぼこのMTRとギターのエフェクタだけでやってた記憶がある。

その頃のことはFaceBookの公開記事に書いた。


[2000年代前半] DTMに手を伸ばした。でもこの時代のDTMの主流は先述の記事が(自虐的に)表現する「パソコンオタクが、GM音源1台(略)で既存曲を再現する腕を競う」というものだったようだ。じっさい、当時DTMマガジンとか2chの関連スレとかも見ていたけど、GM音源を持ってない自分にはぜんぜん馴染めなかった。

とりあえずDTMソフトのシンガーソングライター(SSW)とソフトウェアmidi音源VSC-88を使ってmidi打ち込みをしてみたが、ギターと混ぜて鳴らすにはぜんぜん物足りなかった。けっきょくソフトウェアMTR (記憶にないが、たぶんSoundEngine Free)でギターとボーカルを録音するところに落ち着いた。


[2000年代中盤] はじめてちゃんと使えるようになったDAWはSONARだった。時期は不明だが、SONAR LEが出てきたのが2005年なので、たぶんそのあたり。これでギターと歌の録音とmidi打ち込みを重ねられるようになった。ミックスとかマスタリングでどのくらいコンプレッサーかけるかとかそういうことを学ぶようになった時期だった。「サウンド&レコーディング・マガジン」とかよく買ってた。先述の記事で言う「サンレコ大好きイキり層」だったと思う。とはいえ「パソオタGM音源層」との対立については知らなかった。自分としてはただただやっと自分にも有用な情報源が見つかって喜んでいた。

その後、SONARがディスコンしたので(後にCakewalkとして復活したが)、移行先を探してFL Studioを使うようになった。これでブレイクビーツを貼り付けてそれにギターを重ねて録音できるようになった。当時は知らなかっけど、あれはまさにアーメンブレイクのトラックだった。あとVSTのフリー音源とかダウンロードしまくってたなあ。Delay Lamaとか。

それはまだ初音ミクが出る前だったのでFL Studioはver. 6か7だったと思う。そのあとFL Studio 7にFL-chanが誕生する顛末は(2chで)リアルタイムで見てた記憶がある。


[2000年代後半] 初音ミクは発売されたその年(2007年)に買って使い始めた。当時の自分のブログ記事に興奮した様子が記録されてる。

これは衝撃。第一代目VOCALOIDとデモソングを比べればレベルの上昇は歴然。日本ハジマタ

でもボカロ全盛時代の曲調(早口、高音、ヨナ抜き)があまり好きでなかったので、当時のニコニコ動画でのムーブメントには付いていけなかった。けっきょくシューゲイザー的な曲でボカロに歌わせて試行錯誤していた。

pooneil68 · Miku-gazer 2011 (Vocaloid2)

ついでに、NEUTRINOをいじった時のブログ記事::「ニューラルネットワークを用いた歌声シンセサイザーNEUTRINO」使ってみた」


[2010年代前半] 仕事場のPCをWinからMacに移動した機会に、家のDAW環境もLogic Pro 9に移行した。しかし、Logic Proはなんだか使いこなせなかったので停滞した。しかもMac OSがYosemite(2014)にアップデートされると、Logic Pro 9が非対応になってしまった。

そのタイミングで、音響プログラミング言語(Supercollider、Sonic Pi)をいじるようになった。ちょうどその頃、研究の方でProcessingとかArduinoとかをいじるようになった流れで、Makerムーブメントにハマっていた。

Supercolliderはちょっと特殊な文法を持つプログラミング言語で、日本語の資料が少ないので、英語の資料にあたるなど、かなりガチで学んでいた。当時のブログ記事: 「音響合成用プログラミング言語SuperColliderいじってます」

Processing + SuperColliderを使って、マウスをクリックしてインタラクティブに和音を合成する動画も作ってた: tonnetz(三和音のトーラス構造)についていろいろやってみた(1) (記事内にYoutubeの埋め込み動画あり)

そんなかんじで、インタラクティブでプログラマブルなものを作ろうとしてた。田所淳氏のブログや本を読んで、TidalCyclesやSonic Piによるライブコーディングを試してみたり。

当時はそれを今後の研究に加えていきたいという野望があったのだけど、年々忙しくなって、以前学んだことを忘れ、知識は増えない、という停滞状態に陥った。そういうわけで、これ方面の追求は10年代後半あたりで断念した。とはいえ、今でもこの方向は将来性があって面白いと思ってるので、CHAINでやりたいことのネタ帳に入れてある。


[2010年代中盤] Logic Pro 9がMac OSのYosemiteで使えなくなってしまったので、Ableton Liveを使うようになった。Ableton Liveは純正で入っているドラム音源がしっくり来た。それにベースをなるたけ低い音で打ち込むと、トリップホップもどき的な音が作れるようになった。

録音していたものをこっそりSoundCloudに載せるようになったのもこの時期だった。


[2010年代後半] しかし、Ableton LiveはずっとLite版を使ってきたのでいろいろ制限がある。Logic ProがXになったのを購入したタイミングで、まずはLogic Proを使いこなせるようになろうと、Ableton Liveを封印した。

Logic Pro ⅩにはFlex Pitchというピッチ補正機能(メロダインに相当)がついてるのに気づいた。これでボーカルのコーラスを補正できるようになった。しかもそれを教師データにして自分をトレーニングすることもできる。これは革命だわ。「Logic Proでピッチ調整使ってみた」

そんなわけで、Logic Pro Ⅹだけでだいぶいけるようになった。それでもドラムとギターの音ズレ問題には苦慮している。録音時のレイテンシーはちゃんと設定してるけど、それでも後で手動補正しないとぴったり合わない。以前Ableton Liveで録音していたときは問題にならなかったのだが。


[2020年代前半] 札幌に引っ越してきた。家にいる時間があまりないので、ほとんどDAWをいじる時間がない。

Logic Pro Xは機能には満足なのだけど、なんか音が好きでない。というか、Drummer機能で適当に作ったリズムでギター弾いてるだけでそこから工夫を加えることができなくなった。Addictive Drums 2を持っているので、それを使って好きなドラムの音を作ればいいのだが、たまにいじっているだけだと、そこまで工夫にする段階に行く前に休日が終わってしまう。どうやらDAWについても「新しいことを覚える前に、これまで覚えていたことを忘れる」というフェーズに入ってしまったようだ。

Ableton Liveがもうすぐver 12にアップデートされるので、このタイミングでStandard版を買ってAbleton Liveに戻ろうかと逡巡している。アカデミックだと2万円切るので、そんなに高い買い物ではない。しかしAbleton Liveを買ってもまあ使わないだろうなという予測がある。

(以前はMax for Liveでエフェクター自作するためにSuite版(アカデミックで4万円)を買うことも考えていたのだが、たぶん活用できないだろう。)


宅録/DTMは自分の趣味としてはほぼ唯一、途切れず続けているものだ。おそらくこれからも続けてゆくだろう。気がかりなのは聴力だが、いまのところ衰えはない。

でもそんな、自分の人生にとって重要だったものについて、忙しさにかまけて優先順位を落としてしまっていることに危機感を感じる。

…ということを自分の宅録/DTM生活を振り返りながら考えた。


お勧めエントリ


月別過去ログ