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■ 「理不尽な進化」読んだ!(2年前に)
旅のお供に「理不尽な進化」(吉川浩満 著)を持ってきた。第1章を読み終わったけど今のところいい感じ。「適者」は強者ではなく、ニッチの埋め合いであって、進化とは必ずしも進歩ではないこと、「適者」であるがゆえに一見トートロジーに見えるということ、このあたりについて正しく理解したいと思っていた。
ここで紹介されている「理不尽な絶滅」を自分の人生と実存に引き寄せて読んでしまいたいところだが、まさにそういった進化観とと実存と認知バイアスというのがこの本のテーマなわけで、あんまり即断せずに読み進めていこうと思う。
「理不尽な進化」は最終章まで来た。なるほど「回帰する擬似問題」とか「心脳問題」のときと同じ構造を持っている。進化論が歴史と適応の組み合わせであり、これは意識での一回性の問題と同じなのだな。そして袋小路の成り方もよく似ている。機能主義者の無意識的な形而上学的コミットメント問題とか。
ほかにも「「お話としての説明」と「科学としての説明」という対比」の話と繋げて考えてみたりとか、いろんなとっかかりがあって、頭のなかで重要なところに杭を打つことができたような気がする。これを起点にもっと進めてゆくことにしよう。
あと、フリストン自由エネルギーとも関わる「最適化」の問題。歴史の影響から逃れ得ないがゆえの「奇妙な生物」と「messyな解決法」。期待に依存しない「アルゴリズム的解決」と物理に拘束された「embodiedな解決」。IITや自由エナジーをこちらから鍛えることができないだろうか?
「理不尽な進化」は読了してたけどメモ書くのを忘れてた。パウル・クレーの「新しい天使」くだりとかしびれた。トラルファマドール星人のように永遠の相のもとに進化、そして我々の歴史を見るならば、それはランダムウォークと枝分かれた先が消えたものでできた樹形になるわけで、その消えた先を見て"So it goes"と言ったんだなとか改めて感じ入った。あれの話でも、なんかしょうもないもの盗んで射殺された話とか、そういうときに"So it goes"というフレーズが繰り返されたはずだ。
あと、この本を読んだことで、Varelaが「知恵の樹」や「身体化された心」で「ナチュラル・セレクション」に対抗するために使った表現「ナチュラル・ドリフト」の概念を理解する準備がやっと整ったように思う。たぶん「アルゴリズム」なのかそれとも「来歴」なのかという問題に回帰するはず。