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■ V1から上丘へ行く経路はなにをしているか 補足

Retinal ganglion cellはLGNだけでなく、上丘へも投射しているわけですが、RGCの細胞の形態と発火特性による分類というのは非常に進んでいるので、すこしこれについて補足を。

まず、元ネタはThe Cognitive Neurosciences III (2004)の"Origins of Perception: Retinal Ganglion Cell Diversity and the Creation of Parallel Visual Pathways" Dennis Daceyより。ちなみにこのDennis DaceyというひとがLGNのkonio layerに入力するblue-on cellがsmall bistratified cellという細胞グループであることをを示したNature 1994のファーストです。

LGNおよび上丘にretrograde tracerを注入して、retrogradeにlabelされたRetinal ganglion cellの反応特性を見たあとでdendriteの走行などのmorphologyを見てやる、というような仕事があって、macaqueのRGCは形態から17通りとかに分類されていて、メジャーなのがparasol cell (magno系)とmidget cell (parvo系)とsmall bistratified cell (konio系)で、これらでRGCの全populationの約75%を占めてます。これらはみんなLGNにしか行ってない。

上丘へ行ってるのは、recursive cellというやつで、これはdirection selective。SGSのニューロンはmacaqueではあまりdirection selectiveなものはないので、おそらくこのrecursive cellというのはSGSの応答のsourceとは考えにくい。もちろん、SGSへの入力にconvergenceがあればdirection selectivityがなくなってもいいんだけど。それから、べつのpopulationでmoderate monostratified cellというのがあって、これはあまり生理学的にはcharacterizeされていない。

以上の、上丘へ投射している細胞は全RGCのpopulationのうち約9%です。とても少ないと考えた方がよいでしょう。また、foveaかperipheralかによってもちがうでしょうし、上丘への投射は視野のnasal側かtemporal側か(鼻側か耳側か)によってassymmetricになっていることが知られています。(Rafalのhumanの仕事はこれを論文のロジックの重要なところに使っています。)

あと、現在の文脈で重要なのは、Melanopsin-containing cellです。これはさいきん一挙に話題となってますが、ほかのRGCとちがって、自分でmelanopsinを持っているので光感受性になってるのです。ふつうのRGCはrodやconeが光を受容して、それをhorizontal cell, bipolar cell, amacrine cellなどで処理したあとの情報を受け取るだけなのです。それで、このMelanopsin-containing cellは視交叉上核(SCN、サーカディアンリズムを持ってる)を介して松果体に情報を送っていて、サーカディアンリズムとか、pupil reflexとかに関わっていると考えられています。

このMelanopsin-containing cellが自分のmelanopsinだけでなく、cone, rodからも入力を受けていて、L+M-SのシグナルをLGNに送っていることを示したのがDaceyのNature 2005 "Melanopsin-expressing ganglion cells in primate retina signal colour and irradiance and project to the LGN"です。この細胞は上丘へは投射していませんが、pretectumへは投射しているので、もしかしたらこれがextrageniculate pathwayでcolorの情報を担っているのかもしれません。

さて、おつぎの元ネタはAnnual Review of Neuroscience 2000 "The Koniocellular Pathway in Primate Vision" Stewart Hendry and Clay Reidです。上丘のSGSからLGNへの入力というのはLGNのkonio layerにのみ終止しているということが知られています。LGNのKoniocellularのlayerというのはmagno, parvoのlayerの隙間にあるわけですが、このうちいちばんventral側、つまりmagno layer側のkonio layerだけにSGSからの入力が来ています。

あと、"The ventral-most K layers, however, are innervated by types of γ and ε ganglion cells, similar in several ways to the types of cells that send their axons to the superior colliculus and pretectum."なんて書いてある。またややこしくなってきた。いったいどういう種類のRGCの入力が上丘に来てて、それがさらにLGN konio layerにどういう情報を送っているか、という問題ですね。上丘にkonio系の入力が来ているとは思えないのだけれど。

あと、こんなふうに言ってる。

"Zeki (1995) has proposed, however, that a direct geniculo-extrastriate path could account for the same phenomenon. That proposal is particularly attractive given the robust innervation of the foveal representation of V2 and the likelihood that this region has been little explored in studies of V1 ablation or cooling because of its proximity to V1. Thus, a relatively rich innervation of V2, with its feed-forward projections to most other extrastriate areas, as well as a much poorer direct geniculocortical innervation of those other areas, could well give the K layers a central role in blindsight."

Blindsightはfoveaだけによらないこと、それからnhp studyでは多くの場合V1 lesionによってV2もablationされていること、などからして賛成できませんが、residual visionを支えるpathwayがM, P, Kのどれか、という視点は大変重要であると思います。

今日はこのへんで。


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