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■ 「V1の人」さんへの返答

20040315のreverse corelationに関するエントリに「V1の人」さんからコメントをいただきましたのでこちらで返答を。

まずは参入ありがとうございます。Early visual関連の方でコメントされている方は少ないので、ぜひ、ほかの項目にもコメントございましたらお願いします。(たとえば、さいきんのMovshonのNature Neurscienceのplaid論文でのPack and Bornへの無視っぷり、あれはさすがにひどいと思いませんでしたか?)

「刺激への応答が線形的であって高次の作用がないこと」が保証されていないといけないというよりも、「」内のような仮定で解析を行うことにより(たとえ高次の作用があったとしてもそれをaverage outして)線形成分のみを抽出する方法である、と捉えた方が良いのではないかと思います。

なるほど、そうでした。応答するシステム自体は非線形でもよいわけで、無相関の刺激を使うことによってそれぞれの項(一次の項、二次の項、…)を独立にして、cross correlationを使ってそれぞれの項のkernelを計算する、という話でした。("Spikes"のappendixなど読み返してみたりしてます。)

そうなると私の言おうとしていたことは、「刺激が無相関でない(ホワイトでない)ときに何が起こるか」というところに集約されて、それは近年のnatural imageを使ったreverse-correlation-likeなreceptive field mappingの研究、たとえば

このへんあたりがやろうとしたことと関連あるのかな、と思いあたりました。

刺激空間に関して雑感ですが、reverse correlationで使うような刺激パターンは高次視覚野を充分にはdriveしないわけですが、それでも、たとえば、その刺激パターンがものすごい偶然に顔の線画のようになったら顔ニューロンをdriveすることができるわけです。そういう意味では理論上はreverse correlationで最適刺激を見つけることはできるわけです(もちろん空間的にものすごい高次のkernelを見つけるということになり、組み合わせの大爆発が起こるわけですが)。では仮想的に繰り返しを無限に行えるとしたらそういうoptimal刺激群を見つけることができたとしたら、あとはその刺激パターン群を説明できるように次元を下げてやる(「ひとことで言えばそれらは顔です」とか)だけの問題になるのでしょうか。もちろん、高次視覚野をうまいことマッピングするような刺激空間がないであろうことはわかったうえで思うことなのではありますが。

また、無相関でない刺激という意味では、いわゆる"spike-triggered averaging"、たとえば、筋電図をmotoneuronのspikeでSTAして関連する筋を見つけるといった仕事はreverse correlationと違って入力は無相関ではないわけで、その理論背景にも興味があります。

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# V1の人

 お返事ありがとうございます。いきなりとりあげられてドキドキしてます。

 あと理論的なところといえばJNS'04の元の

Estimating spatio-temporal receptive fields of auditory and visual neurons from their responses to natural stimuli.
Theunissen FE, David SV, Singh NC, Hsu A, Vinje WE, Gallant JL.
Network. 2001

とかでしょうか。求めたいのが空間受容野とか周波数領域での受容野であれば、この辺のように刺激の自己相関で補正するなどしてやれば刺激がnatural sceneでもなんとかなるようです。

一方で、選択性のある軸がそもそもよく判らない場合は補正の仕様もないし、もうあんまり数学的な枠組みとは関係ないところで、活動が起きたちょっと前の刺激を集めてきて何が良かったのか「人が」「後付で」検討しましょうというのが元ネタ(Hasson et al. Science 2004)の考え方なんでしょうねえ。刺激セットを刺激間インターバルなしで与えて後ろ向きに相関を求めれば何でもreverse correlationということでしょうか。

 おっしゃる通り、理論上はホワイトノイズ刺激の反応からもっと高次の選択性(顔など)を求めることは可能だと思います。実験する立場からしてもassumptionfreeで使えるホワイトノイズはいろいろ便利です。(assumptionは解析時に入れてやればいいわけですね。いろんな空間を探索して選択性のある軸を探すと)。高次でもV4ぐらいまではノイズで解析できたという話が去年のSFNでありました。

そのSFNで発表していた人(たしかLivingstone labの人)はまた別のアプローチも行っていて、V4細胞の受容野にnon-Cartesian Grating等の刺激(Gallant et al 1993,1996)を高速に提示してreverse correlationすることで、刺激セット内のどの刺激クラス(たとえば同心円等)に対してよく反応するのかということを計測していました。これが出来るのなら藤田先生@阪大が使われているような「1:顔 2:手 3:唇 4:白衣を着た人 ・・・」みたいな任意の刺激空間(?)でIT細胞に対するreverse correlationをすることも出来る??

 筋電図をSTAするというのは不勉強ながら知りませんでした。なるほどいろんなところで使われているのですね。

# K

>また、無相関でない刺激という意味では、いわゆる"spike-triggered averaging"、たとえば、筋電図をmotoneuronのspikeでSTAして関連する筋を見つけるといった仕事はreverse correlationと違って入力は無相関ではないわけで、その理論背景にも興味があります。

はじめまして、神経科学についてほとんど知らず、意味のあることが言えるかどうか分からないのですが、理論的背景については少し分かるところがあると思うのでコメントさせてもらいます。
まず、"spike-triggered averaging"についてですが、これはある程度調べる対象に仮定をおけば、reverse correlationから出てくる結果と定数倍を除いて等しいことが証明されています。具体的には

"Theoretical Neuroscience",Peter Dayan,L.F.Abbott,MIT Press,2001

のChapter1,2に詳細が載ってあります。より具体的にはその中の式(2.6)です。但しこれは、1入力1出力の系におけるものなので、実際に使われるような入力が平面における刺激s(x,y,t)の入力の場合の正当性については結果だけが示されているだけで、証明されていません(式(2.25)を参照)。
余談ですが、

"Analysis of Physiological Systems:THe whoite noise approach",Marmarelies P.Z,Marmarelies VZ,New York:Plenum Press,1978

のChapter4の最後のほうに多入力1出力の系について載ってあるので、それをもとにがんばれば上のことも証明できるかもしれません。
次に、一般に無相関でない刺激を入れた場合についてのreverse correlationについてですが、

"Reverse correlation in neurophysiology",Dario Ringach,Robert Shaply,Cognitive Science 28(2004),147-166

の記述を見る限りでは

"A Subspace Reverse-correlation Technique for the Study of Visual Neurons",D.L.Ringach,G.Sapiro,R.Shapley,Vision Res,vol37,No 17,2455-2464,1997

において数学的な証明が扱われているようです。(おそらく線形でStatic Nonlinearityをかましたシステムとして扱っていると思います、読んでないので間違ってたらすいません)
そもそも、reverse correlationのもととなったのは

"Nonlinear Problems in Random Theory",N.Wiener,New York:Wiley,1958

においてWienerがVolterra expansionをGaussian white noiseに対して直交化するように変形したのが始まりだったと思うので、WienerのCyberneticsと関係して、制御理論(もしかしたら関数解析学)の方で、このことに関する厳密な理論が展開されているかもしれません。(まったく調べていないので分かりませんが)

# pooneil

Kさん、ご紹介どうもありがとうございます。さっそく"Theoretical Neuroscience"読んでみました。2/28のエントリでまとめておきましたのでよければご覧ください。


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