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■ Tirin Moore
ヤバイ。超重要。
玉川のシンポジウムに来るってんで、Tirin Moore @ Princeton の論文をいくつか読んでいった。
Mooreのいちばん有名な論文は
Nature '03 "Selective gating of visual signals by microstimulation of frontal cortex."
であろう。FEFを微小電気刺激することで、刺激部位とretinotopicallyに対応したV4のニューロンの視覚応答が増大する。つまり、FEFでのsaccadeの指令シグナルが遠心性コピーとして視覚野に戻ってきて視覚処理をコントロールしていると考えられるのだ。また、これと関連するものとして、
PNAS '01 "Control of eye movements and spatial attention."およびそのfull paper versionの
JNP '04 "Microstimulation of the Frontal Eye Field and Its Effects on Covert Spatial Attention."
において、FEFを微小電気刺激することでサッケードに影響を及ぼすだけでなく、covert shift of attentionにも影響を及ぼすことを示した。これはRizzolattiらのいわゆるpremotor hypothesisというやつのsupportとしての役割を果たしている。つまり、サッケード(眼球を動かすことによる注意の移動:overt attention)と目を動かさずに注意だけを移動するcovert attentionとが共通のニューロンメカニズムを使っているというもので、これは進化上でサッケードがどのようにしてOKRなどから独立したか、さらに眼球の動きとは独立に注意を向けられるようになったか、ということを考察するに当たって非常に面白い。
話をMooreの方に戻すと、つまりFERFの段階でサッケードの指令を出していると思われる領域がcovert shift of attentionの制御にも関わっていることを示して、両者が共通のニューロン群を使って行われていることを示唆している。このへんのreviewはこちら:
Neuron '03 review "Visuomotor Origins of Covert Spatial Attention."
さらにその前にMooreは
Science '99 "Shape Representations and Visual Guidance of Saccadic Eye Movements."
においてV4でpresaccadic activityがあることを示している。つまり、このScienceと上記のFEF微小電気刺激とを組み合わせてNature '03を出したということを考えるといかに理路整然と、狙ったとおりにパーツがはまっていくかのように仕事が進められていることに感動を覚える。
で、このへんを読んだ上で話を聞きに行ったし、この辺についての話を聞いてきたのだが、この人にはまだまだ重要な仕事があった。つづく(あと二日分の原稿完成)。
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- / 投稿日: 2004年05月26日
- / カテゴリー: [Papers_unclassified]
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# antares
それはもしかして、この間も話題にのぼっていた、Neuron 2002のMicrostimulationのことでしょうか?それとももっとNewなもの?Mooreのプレゼンでどのような質疑応答があったか、ぜひ知りたいです。楽しみにしてます。
# pooneilそう、それです。でも、M1の話はシンポジウムではしゃべりませんでした。シンポジウムでは微小電気刺激のパラダイムに付いての質問があったと思いますが、聞き逃しました。シンポジウムの内容はいままでのまとめという感じで上記のNeuronのレビューの通りにFEF microstimulation関連の話をしていたので、新しい結果はなかったように思います。
# antaresんで、明日はM1についての話を書きます。StrickがNature NeuroscienceでMooreのM1論文を批判したことはキャッチしております。このバトルはStrickの勝ちではないかというのが私の印象ですが、どうでしょう?
私も同感です。的を得た指摘だなと思います。いずれにせよ、やはりずいぶん注目を集めた論文で、関係者の関心は高かったと思われます。