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■ JNP

"Accuracy, Information, and Response Time in a Saccadic Decision Task."
Roger Carpenter @ University of Cambridge。
来週のvision seminarではこれをやることにする。
人間の行動の反応潜時というものは経験的に逆数をとるとgaussianで分布していることがわかっている。だから潜時の検定をするときは逆数に変換してからt-testしたりする。
Carpenterはdecisionの研究者で、Humanの眼球運動(サッケード)の潜時の分布からLATERモデルというのを提唱している。CarpenterのLATERモデルでは、evidenceの量がlinearに上がってきてあるthresholdのところまで来たところでdecisionが行われるとしている。イメージを掴むためにはJNPのfigure 1を参照のこと。このlinearにあがってゆく直線のスロープがgaussianに分布することを仮定してdecisionの起こる時間はgaussianの逆数で分布することを説明する、というわけだ。(だから、decisionのthresholdがgaussianに分布していると仮定しても説明できる。)
Carpenterはこのモデルを使って、実験条件を操作してdecisionの条件を変えたときの反応潜時も変化を説明できるかどうかをいろいろやってきた。その代表作がNature '95Nature Neuroscience '00
LATERモデルではdecisionの変化は(1)decisionするthresholdの変化(thresholdの低下またはbasalレベルの上昇) (2) evidenceが蓄積していくslopeの変化、のどちらかとして説明される。Natureでは反応すべき標的が出る位置の割合を変えてやって、このprior probabilityの違いによる反応潜時の分布が(1)でのbasalレベルの上昇によって説明できることを示した。一方、Nature Neuroscienceでは[被験者が不正確でもいいからなるたけ早く反応するとき]と[被験者が遅くてもいいからなるたけ正確に反応するとき]とでの反応潜時の違いが(1)のthresholdの低下によって説明できることを示した。つまり、なるたけ早く反応しなければいけないときは判断の基準を甘めに取っている、ということ。(なお、(1)の二つは分離できてない……はず。) 今回のJNP論文ではNewsome方式のランダムドットの動き方向を判断させるタスクを用いて、motion coherenceが高いとき(たとえば100%のドットが右へ動くとき)とmotion coherenceが低いとき(たとえば54%のドットが右へ動くとき)とでの反応潜時の分布が(2)でのevidenceが蓄積していくslopeの違い、で説明できることを示した。
1/5に扱ったcountermanding taskについて書いたものこのLATERモデルのこと。Carpenter自身もhumanのpaperをVision Research '99に出している。
なお、このモデルが持っている問題のひとつは、このモデルがいまだhumanのstudyでのみ有効であって、animal studyでは明示的には扱われず、ニューロンメカニズムの解明とつなげられない点にある。Shadlenの論文のいくつか(JNS '02JNP '01)はかなり近いところにあってLATERモデルを踏まえてはいるが、明示的にこれを扱うところには行っていない(潜時の分布をLATERモデルでfittingしたりしてない*1 )。そのうち出てくるかも。ここ数年のSFN行った人知らない?


*1:いや、もっとちゃんと言えば、Shadlenのはdecision thresholdが一定でそのまでシグナルが上ってくるslopeが違っている様子をLIPニューロンに見出している。あくまで明示的には扱ってない、ということで。


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