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■ JNS 2003年1月号。 Journal club前の予習

"Controlled Movement Processing: Superior Colliculus Activity Associated with Countermanded Saccades"
Paré @ Queen's UniversityとHanes @ National Eye Institute。
HanesはJeff Schallとcountermanding task中のFEFのニューロン活動を記録してきた。今回は同じパラダイムで上丘からsingle unitを記録した。Hanesの出世作はScience '96
"Neural Control of Voluntary Movement Initiation"
で、今回の論文と直で関わるのはJNP '98。
"Role of Frontal Eye Fields in Countermanding Saccades: Visual, Movement, and Fixation Activity"
まずかんたんにcounermanding taskの説明:

  • まずコントロールのタスク。動物はタスクの開始で注視点を見つめる。すると注視点が消え、サッケードの標的の点が現れる。こちらにサッケードすると報酬が貰える。
  • いっぽう本命の課題では、注視点が消えて標的が現れたしばらくあと(25-275ms)に、ふたたび注視点が現れる。このとき動物は標的へサッケードせずに注視点を見つづけなければならない。しかし持ちこたえられずにどうしてもサッケードしてしまう試行がある割合で出る。この行動の結果と神経活動との相関を調べる、というのが基本的なアイデア。
JNP'98でHanesはFEFのmovementニューロンがsaccadeを止めた(coutermanded)試行ではサッケード前に上がってきてた神経発火が下がってゆくのを見出している。
で、JNS'03は同じ課題で上丘から記録しているわけだが、それでどういう新しいことが見出せたかが重要。FEFにある情報が上丘に行くのはあたりまえなので、FEFで見られるような神経活動が上丘で見られるのはあたりまえであり、それではJNSは通らない。JNPレベルでしょう。というわけで何か新しいものがあるはず。
要旨を読む限りだと、
  • [サッケードをキャンセルするかしないかによる神経発火パターンの差が出る時間]のほうが[サッケードをキャンセルするかしないかがいちばん瀬戸際のときの時間]より10msだけ早い
  • そしてこの10msという時間は上丘の発火から実際のサッケードまでにかかる時間よりも短い
というところがポイントのようだ。結局、countermanding taskではサッケードのdecisionシグナルが閾値を越えるところまであがってくるのをサッケード中止のdecisionシグナルが上がってきて追いつくかどうかによって決まるわけだが、この両シグナルがどこで追いつくのか、ということが問題になりそう。上の結果からすると上丘ではないことになりそうなのだが、よくわからん。


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