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■ 生理研研究会「知覚学習と運動学習」提案代表者の柴田和久さんからコメント

生理研研究会「知覚学習と運動学習」のほうは参加申込受付中。ポスター発表もぎりぎり前日まで受け付けてます。ぜひいますぐ。

昨日のブログ記事を受けて、提案代表者の柴田和久さんからもTwitterで研究会についてコメントしていただきました。許可を得たので以下に転載します。(リンク情報などに編集あり)


@kazuhi_s_ 吉田さんのブログに乗っかって、僕も研究会についての個人的ないきさつとか考えを書いてみる。すでに参加予定の方、参加を検討してくださっている方への参考になれば。(以下連投)

@kazuhi_s_ ここ数年ずっと頭にあったのがこの論文

知覚学習と運動学習の共通点を議論した論文で、知覚学習のSagi、そして運動学習のLeo Cohen、両者をつなぐCensorによるもの。Fig 1がよくまとまってる。

@kazuhi_s_ 知覚学習も運動学習もダイナミックな過程で、訓練、固定、再活性、再固定というステージを経る。従って、知覚学習も運動学習も干渉 interference が起こったり、固定までに時間を要したりする。睡眠も重要な役割を果たす。

@kazuhi_s_ MC研究会に参加したりすると、さらに記憶研究ともつながりがあることがわかる。個人的な印象では、記憶研究がもっとも歴史が古く知識の蓄積も多い。記憶に運動学習が続き、そのあとにさらに知覚学習が続く。

@kazuhi_s_ たとえば干渉は記憶の場合古い研究がたくさんあり、運動学習の干渉は90年代に隆盛を迎え、知覚学習で干渉研究が増えたのは2000年代以降。でも、記憶と運動学習と知覚学習では実験的にできることが違うからか、互いに局地的に進んでいるトピックもあったりする。

@kazuhi_s_ 互いに似ている部分はあるけど、運動学習と知覚学習の研究は結構独立している。だからそれぞれの分野の人から話を聞いて議論したら、互いに得るものが大きいのではないかと思った。

@kazuhi_s_ 共通性とは別に、最近脳の興奮抑制のバランスと可塑性の関係が気になっている。講演者のひとりであるHenschさんは、90年代の終わりから、臨界期のげっ歯類の視覚野などで興奮抑制バランスと可塑性の関係を示してきた。

@kazuhi_s_ 興奮抑制バランスが重要なのは臨界期だけではないようで、最近は成体でも興奮抑制バランスと可塑性/学習が関係しているという仕事が結構出てきた。僕が渡邉武郎さんのところでやっていた仕事もその流れの一部と考えることができる。

@kazuhi_s_ ということで、干渉、固定、再活性といった学習プロセスが記憶、運動、知覚で共通していそうなこと、そして可塑性や安定性の調整は興奮抑制バランスが担っているんじゃないかという枠組みがおぼろげながら見えているのが現状だと思う。

@kazuhi_s_ 個人的には、共通性や興奮抑制バランスをキーワードに研究会を楽しめればいいなと。


柴田さん、ありがとうございます。

柴田さん@kazuhi_s_ も書いていたE-Iバランスの話はわたしも非常に興味があります。脳が「刺激に対する応答」ではないこと、脳でのコーディングを理解するための本質だと思うので。偶然だけど、ちょうど昨日のエントリの前にRenart et alのScience 2010 Asynchronous State論文をJCでやったときのメモを書いてた。「Asynchronous State」

van Vreeswijk and SompolinskyのScience 1996にあるみたいなカオスとか、neuronal avalanchesでself-organized criticality出てくる話 (J Neurosci. 2009 Dec 9; 29(49): 15595–15600)とか、このあたりにはいろいろあるけれど、とにかくE-Iバランスを保った状態にあることが脳の正常な機能には必須で、だから可能な脳状態というのはおそらくずっと少ないだろう(ref忘れた)とかそういう話に興味がある。


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