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■ Pooneil Radar 2009
いろいろ書きたいネタが貯まっているんだけど、もうすこし調べておかないとしょうもないことしか言えないという中途半端な状態なので、ネタ帳的にいろいろ書き付けておきます。
タイトルの元ネタは"O'Reilly Radar"っていう、ティム・オライリーのレーダーにかかった今後面白くなると思われるネタ集みたいな話で(たとえばIT conversationのpodcastでOSCON2004のときのトーク)、それをもじって命名するとはどんだけオレも自我が肥大化しているかっていう(って書くと後輩が「吉田さん、どんだけの使い方間違ってます」って指摘してくれるという親切システム。)
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以前からgeneralized linear mixed model(GLMM)について調べてる。fMRIの世界ではFristonのおかげでrandom effect modelがSPMに導入されて標準化されたので、複数の被験者のデータからのinferenceにrandom effect modelが使われるようになった。
一方でnhpのsingle-unit studyではこのへんが遅れている。fMRIと比べて、被験者の数が少なく、記録しているニューロンの数や、繰り返しの試行数が多い。だからたいがい被験者のデータはmergeするし(必要に応じて被験者ごとに検定したり)、試行数の繰り返しは平均して使ってしまう。これはよくない。
データ構造は一般的には、被験者数がn=2-3で、その中で複数のニューロンを記録して(n=100ずつとか)、さらにそれぞれのcellで各条件で最低限10trial以上の繰り返しを行っている。つまり、nested designのmixed modelになってる。Rのmodel式で書くと(lme4でのnotation)、Firing rate ~ condition + (1 | Subject) + (1 | Subject:Cell) + (1 | Subject:Cell:Trial)みたいな構造を考える必要がある。しかも応答変数Firing rateの実体はNumber of spikesだから、計数データとして"generalized model"にしとかないといけない。
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このへんを勉強しようとすると、生態学がいちばん進んでいるのがわかる。生態学はフィールドでどの区画にどれだけの個体がいるかみたいな情報を扱うから。北大の久保拓弥氏のサイトとか見るとたくさん資料があって、超助かる。あと、GLMMが経験ベイズの一種であって、階層ベイズによって包括されるというこの図を見て感激した。こういうことをもっと知りたい! (いろいろ読んだけどここでは省略。)
階層ベイズをもっと体系的に組み込んで、実験系全体をモデル化するようなことに興味がある。たとえば"Hierarchical Modelling for the Environmental Sciences"の4章の図4.2見てほしいんだけど、こんなかんじで脳の解剖学的な拘束条件とか全部突っ込む。
- いろいろあってneuroshare関連の話に多少関わってるので、話が通じるくらいには勉強してる。要は自分の解析と一体化させることが出来たらいいんだけど、neuroshare形式を使った解析ソフトがそんなにあるわけでもないのですよね。FINDとかがmatlabが主体になっているのは実際的ではあると思うけど、オープンソースという観点ではRとかでできないっすかね。上記の問題意識からすると、Rベースでunit/LFP/ECoGにとってのSPMみたいなの作ればさ、Fristonになれるんじゃないですか。だれかやって!
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nhpを使った実験をしてゆくにあたって、いかにして適切なトレーニングをしていくか考えなければならないとずっと思ってた。そのためにはpositive reinforcement techniqueに基づいたトレーニング法を採用するのが正しいはずだ。しかしこの分野は資料が少ない。J. Appl. Anim. Welf. Sci. 5(4)に特集があって役に立つ。単行本だけど「うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで」カレン プライアが名著で、前述の特集号でも参考文献として引かれてる。
ちなみにこの人はイルカのトレーニングの創始者で、犬のクリッカートレーニングにも大きく寄与してる。しかも"The creative porpoise: training for novel behavior"のファーストオーサーだった! (これはベイトソンの本にも出てくる「それまでにしたことのない行動をすると強化される」というメタな学習の例)
あと、「動物感覚」も良いことが書いてあるのでまとめておきたい。スキナー的なものへの敵意が混ざっているので取扱い注意だけど。
ともあれ、微妙なissueなので、書くときはちゃんと書かないといけない。 - このブログはMovable typeのver.3.33で出来ていていい加減古いので、アップデートしようと思ってる。Movable type 5が出るって発表が出たあたりから、アップデートするか、wordpressに移るか決めるためにテストしてました。Ubuntuの9.04のserver editionが出てたんで、virtualboxに入れたり、vmwareに入れたりして。でも最終的な決断が出来ず。正直いまのままでもいいやって感じで、テンプレートいじったりしていろいろ工夫する情熱を失ってる。
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以前のエントリでNIPS-SSCのregistrationとかabstract suibmission用にOpen Conference Systems (OCS)ってのをいじってるというのを書いたことがありました。じつはいろいろテストをして、いろいろ手を加えて(無駄な階層をどんどん削って)、とりあえず稼働できるところまでは来たんだけど、けっきょく扱えるのがわたし一人で、それだったら手動でやっても余り手間が変わらないということでけっきょく止めにしました。
というわけでその間の奮戦記とかいろいろあるんですが、まとめるのさえ面倒になってしまった。どうしてだれも日本語化とかしないですかね。でもこの方向で行くのが正しいと思うので、機会があったらまたチャレンジしたい。(ここ最近のわたしの行動を見てもらうとわかると思うけど、基本はDIYでいこうってわけ。) -
Facebookのアカウント取って細々と使っているのだけれど、せっかくだからもっと活用したい。とくにNIPS-SSCつながりでFriendが増えたので、英語でなんか書いておきたい。というわけで、ブログで英語のエントリの作成をして、それをFacebookに「ノート」としてimportしてる。
こっちは日本語だと書きにくいこととかを書こうと思う。たとえば、秋くらいに"The Electric Kool-Aid Acid Test"(の訳書)を読了していまは原書で読み直してるところなんだけど、へんに誤解されないようにこういう話題は英語に持ってゆく。 - なんかポストロックっぽくギターをかき鳴らして、ビデオに撮って、YouTubeに挙げて、埋め込みでエントリ作るってネタがずっとあるのだけれど、実行している暇がない。キャプションに「お遊戯的なことなら 外でやってくんない?」って入れるところまで決めてあったのに、つーかクラウザーさんネタだったのにもう古くて使えないぢゃないか。
- 将来のプロジェクト関連。これはいろいろ。パーツ自体よりは組み合わせが大事だと思うんだけど、こういうのはいろんな人のところに行って吹聴しては、反応見てる。
- 自分の健康についてはいつかきっちり書いておこうと思う。ってほんとうに単なるToDoリストになってしまいました。Get Things Done! 話を戻す!
- 以前に「細胞外電極はなにを見ているか 」というのと「細胞外電極はなにを見ているか リニューアル版」というエントリで、細胞膜でのイベントから細胞外電位の発生までの生物物理的な話をまとめたことがありました。あそこで足りなかった視点のひとつは電極の特性の件でして、電極のコンタクトの面積や抵抗でどのように波形が影響されるかみたいな話をちゃんとまとめておかなければと思ってます。つーかわたしである必要なんか無いんだけど。誰かやってほしい。ほかにも、microstimulationについてとか、電気生理用のアンプについてとか、わたしはそっち方面のバックグラウンドがないので、将来のため、教育者として、きっちり勉強しておきたいと思ってます。
- Saliency mapについては将来のプロジェクトのひとつではあるけど、もっといろんな繋がりが可能なので、もうすこし自分で使えるようになっておきたい。たとえば、Ittiはあくまでスタンドアロンでのneuromorphicなシステムとして捉えているようだけれど、OpenCVとかで使えるようなライブラリにしちゃえばいいんじゃん?とか思う。あと、あらかじめシステムとして構築するのではなくて、data-drivenにシステムを作る方向へ行きたいですよね。実際そういうことをやっている人はすでにいる。たとえばFelix A. Wichmannの"Non-linear System Identification: Visual Saliency Inferred from Eye-Movement Data"とか。(そういうわけでPRMLとか読んでるわけ。)
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Overtrainした状況でのくりかえし行動での脳活動というパラダイムを越えてゆくためには、膨大な行動データから特定の行動を自動的につり上げてくるというようなことが必要であって、そういうアルゴリズムを開発している人はいないのだろうかと思ってた。わたしのPCには「行動のデータマイニング」というフォルダがあって、そこには去年の冬あたりにサーベイしたときのファイルが残っていて、「センサネットによる行動パターン識別システムの開発」とか「バイオロギング研究所」(リンク切れ)とかそういうのを集めたところまで行って、止まってた。
そしたらATRの神谷さんがいろいろ教えてくださって、一挙に道が開けた。そもそもわたしは「エソグラム」という言葉すら知らなかったのだけれど、ここに広大な領域があるのを知った。ということでここすごく勉強したい。
って書いてたらそれなりに分量はあるな。計画を書くとそれで満足してしまうというありがちな展開を経ながらも、このブログは続いていくよ。普通頻度が下がってゆくとどっかで静かに消えるというのがありがちなブログの終わり方なのだけれど、一ヶ月更新がなかったあとでいきなり週に3回書いたりするのがこのブログ。RSSに入れてチェックしておいてください。(7年目に突入したよ!!)
# viking
Human fMRIと違って、nhp single unit recordingは測定そのものに「ノイズが少ない」のですから、自ずとfMRIにおける統計とは考え方が変わってくるのではないでしょうか?
というのは、ヒトfMRI実験におけるBOLD信号が、blurring effectだの血管効果だの、はたまたin-flow effectとBOLD effectとのせめぎ合いだの、といった多くの未解明な複合要因のバランスとして得られるものであるという事実を考えると・・・あくまでもtaskなりeventなりの効果だけを見るためにfMRI(のSPM解析)でrandom effectsに着目するのはnoisyな測定系であることを考えれば当然の帰結でしょう。
これに対して、それほどnoisyではないnhp single unit recordingではそういう問題を考える必要性は薄くて、なればこそ個体数n = 2,3でも許容されるということだと思うのですが。
ですから、ここでGLMMなり別の統計を提案するということであれば、考慮すべきは何よりもまず「どの測定量がばらつくのか」ということを事前に仮定するということだと思います。それが個体間であれば個体数nを増やしてSPMのrandom effectsライクにいくしかないわけですし、ニューロン群間であればそこに着目した統計値を採用する、という流れになるのではないでしょうか。
# pooneilコメントどうもありがとうございます。
論点はどこでしょうか? Single-unit studyにGLMMは必要ないというご意見でしょうか?
いままでは問題とされてこなかったけど本当は問題なわけです。だから、統計モデルとしてexplicitに扱いましょうよ、という問題提起だと思っていただければと思います。
返答としてはこんなもんなんですが、インスパイヤされたことをエントリにしてみました。そちらもぜひご覧ください。