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■ 部室でジャムった日のこと。

長雨で曇ったガラス窓にそっと文字を書いていたらブルーな気持ちになったので、懐古的なことを書いてみる。(ここまでは全部ウソ)
その昔わたしが大学の教養課程にいた頃、あるサークルに入ってました。そのサークルはちょっとマイナーめな(ロック系)音楽を聴くという活動をしていて、わたしはそこでいろんな音楽を知りました。毎週誰かが担当になっては、だれかバンドとかを選んで、カセットテープを編集して、簡単なバイオグラフィーと曲説明のハンドアウトを作って、それを見ながら教養の教室を借りてそこで酒を飲んだりたばこを吸いながら音楽を聴く、ということをしていました。ある回はCaravanだったり、またある回はPere Ubuだったり、Familyだったり、ローザ・ルクセンブルグだったり、というかんじ。灰野敬二のライブに行ったこともありました。ライブハウスで、観客はサークルの人間だけ。
ある週はみんな一曲持ち寄るという企画だったのだけれど、それを知らされていなかったわたしは仕方なくその場でギターを弾いて、My my, hey, heyを歌ってみたり(奇をてらい気味)。でもコード勘違いして憶えていて、Am-G-Fmaj7のところをAm-G-Amで弾いてたもんだからみんな珍妙な面持ちで、あとでそれを知って恥ずかしくなった、なんてドジっ子伝説もありました。
参加してた人はみんなちょっと栄養状態悪いかんじの、痩せてて顔色悪い、まさしくロックな人たち(芸大系の人もいたような)でしたが、わたしはといえば、当時は出身高校の水泳部のコーチと掛け持ちしていて、黒光りして筋肉もりもりでしたので、えらい場違いなやつが来たもんだというかんじがあったような。
活動後は下北沢の王将で夕食と談笑。吉祥寺で飲んだりとか。ま、中央線沿線文化、といえばわかりやすいでしょうか。そういう中にわたしはいました。レコード屋巡りしたり、単館上映の映画をひとりで見たりとか。
当時はちゃんと正規のサークルとして認められていて、部室もちゃんとありました。文化系サークルの部室というのはいくつかのサークルがひとつの部屋に固まっているのだけれど、うちは音楽をかけるサークルなものだから、大音量でレコードをかけては、他のサークルといざこざを引き起こすこともあったり。
さてそんな部室でジャムった日のこと。午前中の授業に遅刻したかなんかでそのまま部室に直行してみたら、なんだか知らない人がいる。髪の毛は長くてぼさぼさで、ガリガリ。作業服を着てたから学生じゃなかったのかもしれない。ひとりでアコースティックギターを弾いていて、めちゃうまい。なんかブルースっぽいのを演ってる。それを見た私はふとピンと来て、もひとつあったアコースティックギター(わたしの私物)を手にとって、基本のコード進行(E-E-A-E-B-A-E-E)を始めてみた。そしたらそいつがそれに合わせてソロを弾き出したので、こちらも適当にリフを加えてみたり、リズムパターンいろいろ変えてみたりしつつ展開させてみた。そしたらいきなりそいつがバッキングに回り出したので、あわててソロを弾く。ぜんぜんダメダメ、ボロボロなのだけど、なんとか24小節(2 verse)ぐらいやって、また相手に渡してやる。またそいつのソロが始まって、どのくらい続けたかおぼえがないけれど、いいかげん手詰まりになったあたりで終了。
自発的に起こったこの状況にわたしが感激していると、そいつは黙って(黒縁めがねの無表情なやつだった)部室から出て行った。そのあとで、わたしはそいつと一言も言葉を交わさなかったことに気がついたのです。それ以降その男を見かけることはありませんでした。
これがその日の話。そのときのことを懐かしく思い出します。自分の人生でそんな風に自然に、うまく呼吸があってなにかをしたことなどなかったと思います。どちらかというとさりげなさとかをあきらめて、かっこわるいくらいに相手の望みを聞き出して。プレゼントあげたりとかそういう場面のことね。ああいうヴァイブ(と書くとついwとか付けたくなるけど)にはあこがれるし、ほんの少しは知っている。だけどすごく遠い。
ふと思いついてサークル名と大学名で検索をかけてみたのだけれど、みつからなかった。あのサークルはもうなくなってしまったんでしょうね。
(オサーンくさいエントリになってしまったことを認めます。もはや17年前の話なのですから。学生時代のわたしが団塊の世代の回顧話を見るように、いまの学生がわたしの世代を見るのかと思うと、ほとんど愕然としたりする。Don't trust over forty!なんつて。この括弧の中は削除した方が潔いな。)

コメントする (2)
# edouard

くすんでて、映像が浮かんできそうな、いい文章だと、二十歳前のガキは思いました。

# pooneil

どうもありがとうございます。
十代の方が読んでいるということ自体に驚きました。
はてなアンテナのリストも見ましたが、めちゃ幅広いですね。
これがまさに「高速道路」の例でしょうか(勝手に納得)。


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