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■ 本が出版されます。「行為する意識: エナクティヴィズム入門」

告知です。

神経生理学者のわたし吉田正俊が、現象学者の田口茂さんと共著で本を書きました。タイトルは「行為する意識: エナクティヴィズム入門」です。青土社から5月下旬に出版の予定です。


わたし吉田正俊は神経生理学者として意識、注意、眼球運動などについて研究してきましたが、並行して「意識を解明するとはどういうことか」について問いながら、このブログ上でも活動してきました。

いっぽうで田口茂さんはフッサール現象学の研究者として「現象学という思考」などの著書のある方ですが、近年は意識や自己の問題について学際的な共同研究を進めておられ、西郷甲矢人さんとの共著「〈現実〉とは何か ──数学・哲学から始まる世界像の転換」という非常に重要な本を書いてます。

こういったバックグラウンドを持った二人が邂逅して、意識とは何かという問題について共同研究を始めた最初の成果が日本神経回路学会誌の解説論文、吉田+田口(2018)「自由エネルギー原理と視覚的意識」でした。

そのあとで北海道大学人間知・脳・AI研究教育センターが発足し、田口さんはそちらのセンター長となり、吉田はそちらの専任教員として着任することで同僚となったのでした。

この本がどういう本か、どういう狙いを持ったものか、そういうことについていろいろ熱く語りたいのだけど、まず今回は出版についての第一報ということでこのくらいで。(まだゲラの直し中なもんで。)


この本についてのサポートページを作成しました: 吉田正俊+田口茂「行為する意識: エナクティヴィズム入門」青土社 サポートページ こちらにおいおい資料を追加してゆきます。

今回の書籍では、幅広い層に読んでもらえるように、数式を入れないというルールを自分に課しました。青土社からの出版なので、おそらく「哲学・思想」の棚に並ぶだろうと予想したもんで。とはいえ、現在数多くある「意識本」と比較して読んでほしい。そういうわけで、「医学、脳・神経科学」の棚にも並ぶとより良いのだけど、さてどうなるか。

数式を入れないという判断をしたことで後になって困ったのは、「脳は力学系である」という主張を理解してもらうためには、微分方程式は避けて通れないということです。そういうわけで、補足資料の第一弾として「神経活動の力学系的モデルの初歩」のブログエントリーを前回作成しました。「数式がある方がわかる」という人にはこういう説明のほうがわかるはず。(短い記事だけで力学系を説明するのは無理なので、あくまでも本書を理解する際に下敷きとなっている理論的背景を、なるたけごまかさずに書くとこうなる、というのが記事の意図。)

今後は「アシュビーのホメオスタットの挙動のモデル」や「メトロノームの同期を蔵本モデルでシミュレーション」とかについて追加する予定。

目次や概要のような情報についてもおいおいこのブログ(およびサポートページサポートページ)に追記してゆくことにします。

ぜひご期待ください。


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