« さうしてこのごろ201601 | 最新のページに戻る | さうしてこのごろ201602 »

■ 「意識研究ネットワーク」の年会(CoRN2019)を1月に岡崎で開催します

こんど1月に岡崎で意識研究に関する国際シンポジウムを開催します。参加申し込み、ポスター発表申し込みを受付中です。ぜひご参加ください。情報は以下の通り。各分野のMLに流しているのと同じ文章です。このブログではもう少しシンポジウムの狙いなどについて書いてみましょう。

Consciousness Research Networkは、意識研究のアジア・パシフィック地域での共同研究推進のネットワークづくりをめざして活動をはじめました。WebサイトでAdvisory Boardのメンバーを見てもらうとわかりますが、だいたい国際意識学会(Association for Scientific Study of Consciousness, ASSC)に関わっている人が多いです。しかし、ASSCおよびツーソンとは異なる第3の極となることを目指して、まずはアジア・パシフィック地域でのネットワークづくりをしているという状態です。

昨年第一回の年会を台北にある国立陽明大学で行いましたが、講演者19人、参加者100名以上という盛況な会となりました。第二回の年会はこの日本で、このわたし吉田がlocal organizerを行うということになりまして、アラヤの金井良太さんと相談しながら、そして途中からは名古屋外大の佐藤亮司さんにも加わっていただいてプログラムを作成してきました。

本年会の特色は「討論セッションとそれに先立つチュートリアルセッション」の時間を設けた点です。昨年の神経科学大会後のサテライトシンポジウムでBeyond NCCで4つのお題について議論する、というものだったのですが大変盛り上がりました。盛り上がりすぎてけっきょく3つしか終わらなかったっていう。これの発展形を今回加えたいと思ったというわけです。

テーマに関してですが、私のこだわりで、科学者と哲学者がもっと会話できるようにしたいということから討論セッション#1のテーマは「意識研究のために哲学者と科学者はどのように協力すればよいのだろうか?」、討論セッション#2のテーマは「意識研究において理論的なアプローチは必要だろうか?」というものにしました。

討論セッションのテーマを考えるにあたって、はじめに持っていたイメージは「科学を語るとはどういうことか —科学者、哲学者にモノ申す」だったんだけど、そんでもって討論セッション#1のテーマは「意識研究のためには哲学なんて要らないんじゃないの?」「意識研究のためには科学なんて要らないんじゃないの?」みたいな荒れそうな感じを考えてました。でも荒れるだけだと相互理解が深まらない。そこで議論をする人には前提知識を共有しておいてもらいたい、そう考えて、チュートリアルセッション#1では「心の哲学と意識のハードプロブレム」について哲学者(東大のJohn O’Deaさん)にレクチャーしてもらって、参加者はそれを同じ日の午前に聞いておく、というふうにしたというわけです。

討論セッションではパネリストの方に5-10分程度話題提供をしてもらって、そこから議論を始めるということにしています。討論セッション#1のパネリストの一人は東海大学の田中彰吾さんが確定してます。田中彰吾さんはリハビリテーションの現場などで哲学者として関わってきた方ですので、どのように哲学側から寄与できるかお話いただけることでしょう。もうひとりのパネリストを探しているところなのですが、科学者側から語れる人がいいですね。自分がやりたいという人は吉田まで連絡ください。

もうひとつの討論セッション#2としては、Beyond NCCのときに盛り上がった(紛糾した)情報統合理論IITについてもう一度、海外の人も含めた上で議論したいと考えました。ただし、あのときの議論を考えると、情報統合理論IIT自体の理論構成の細部に立ち入って議論するよりは、より一般性の高い問題、つまり「意識の理論というものはありうるのか、あるとしたらどういう形になりうるのか」ということこそが議論するべきところではないかと思いました。パネリストとしては科学者側がアラヤの金井良太さん、哲学者側が広島大学の宮園健吾さんに話題提供と問題提起をしていただけることになってます。討論セッション#2に先立つチュートリアルセッション#2では、そのような理論的アプローチのひとつとして、大泉匡史さんに意識の統合情報理論についてレクチャーを行っていただきます。

今回のシンポジウムの裏テーマは科学者と哲学者の対話となっています。ひとつの理由はConsciousness Research Networkの前回参加者が日本はほとんどが科学者で、台湾、中国はほとんど哲学者だったということがあって、国際共同研究を促進する際には科学者と哲学者との対話がそもそも必要だろうと考えたというのがあります。

もう一つの理由としては、私がASSC15(2011年に京都で開催、代表は松沢哲郎先生)でプログラム委員をやっていたときの印象ですが、私自身が科学者ということもあって、日本国内の哲学者に十分リーチできていない、十分議論できる機会を持てていないというものがありました。今回はそこをなんとかしたい、ということでそれ以降にできた繋がり、とくに北海道大学の田口茂さん、名古屋外大の佐藤亮司さんを通して意識研究に関連性のある哲学者に声をかけていった次第です。

さあどうでしょう?討論セッションもチュートリアルも面白くなるんではないでしょうか?討論セッションが盛り上がるかどうかは参加者しだいですので、ぜひナイスなツッコミができる方の参加をお待ちしております。岡崎でお会いしましょう!

ポスターセッションもやります。ぜひ演題出してください。意識研究そのものでなくても大丈夫。将来意識研究をしたい人が自己紹介するつもりでいまやってることを持ってきてくれればよいです。こちらもぜひよろしく。


  • 日時: 平成31年1月23日(水)13時 ~ 25日(金)18時
  • 会場: 岡崎コンファレンスセンター(名鉄東岡崎駅より徒歩10分)
  • 参加費:無料
  • 研究会webサイト:https://www.conresnet.org/
  • 基調講演:
    • 北澤 茂 (大阪大学)
  • 一般講演:
    • Qiufang Fu (Chinese Academy of Science, China)
    • 本城 咲季子 (筑波大学)
    • Po-Jang (Brown) Hsieh (Duke-NUS Medical School, Singapore)
    • Hakwan Lau (UCLA, USA, University of Hong Kong, HK)
    • Ying-Tung Lin (National Yang-Ming University, Taiwan)
    • 田口 茂 (北海道大学)
    • Lu Teng (NYU Shanghai, China)
    • 渡辺 正峰 (東京大学、マックスプランク研究所)
  • 討論セッション
    • #1 “How to collaborate philosophy and science for consciousness research?”
      • パネリスト: 田中 彰吾 (東海大学) + TBA
    • #2 “Theoretical approaches to consciousness research: Is it necessary? Is it possible?”
      • パネリスト: 金井 良太 (株式会社アラヤ) + 宮園 健吾 (広島大学)
  • チュートリアルセッション
    • #1 “Introduction to philosophy of mind and the hard problem of consciousness” by John O’Dea (Univ Tokyo)
    • #2 “Introduction to integrated information theory (IIT)” by 大泉 匡史 (株式会社アラヤ)
  • オーガナイザー:
    • 金井 良太 (株式会社アラヤ)
    • Ying-Tung Lin (National Yang-Ming University, Taiwan)
    • 南部 篤 (生理学研究所)
    • 佐藤 亮司 (名古屋外国語大学)
    • 吉田 正俊 (生理学研究所)

参加費無料。参加登録、ポスター申し込み受付中。

くわしくは研究会webサイトから:https://www.conresnet.org/


お勧めエントリ


月別過去ログ