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■ ヴォネガット関連雑記
ヴォネガットのCat's cradleのkindle版を買って、日本語訳と原文の対応とか見てる。いくつかの点でわかりにくいところがあったので、たぶんそれは翻訳のためだろうと推測して。
102章の「自由の敵」のところで、ハリボテの標的にスターリンやヒトラーと並べて「それからなんとかいう日本人」とあるが、これは東条英機か昭和天皇あたりを訳で回避したのかと思ったが、原文も"some old Jap"だった。
116章の最後「空では、何匹もの虫がのたうっていた。虫は竜巻だった。」後ろのほうまで読むと竜巻のことを「虫」と読んでいることはわかるのだが、「虫」と言われてハチの大群みたいなものを想像していた。でも原文はworm。つまり、一本一本の竜巻をイモムシ(やミミズ)に喩えているのだった。
あと116章の印象的なシーン、「つかのま、わたしは夢を見た…ツバメ式飛び込み」ここは"swan dive"、つまりこんなん: SwanDiveActive.jpeg 一瞬時が止まって、スローモーションでの光景が浮かぶ。
正直なところ、ギャツビーのあれを思い出した。たったひとり、owl-eyed眼鏡の男だけが遅れて現れてこう言う、"the poor son-of-a-bitch"と。
「人生なんて、そんなものさ―カート・ヴォネガットの生涯」を図書館で見つけたので借りてきた。真ん中へん、つまり売れない作家時代からスローターハウス5でブレークするあたりを読んでて、すごく面白い。
無名時代にアイオワ大学でライティングの講師をしているときに再評価がなされ、旧作が再販され、スローターハウス5と続く2作分の前払金を受け取ったとき、ヴォネガットは45歳になっていた。すっげー沁みる。
村上春樹の「35歳問題」ってのがあるけど、そしてその意義とかすごく考えたことがあるのだけれど、でほんとのところ身に沁みたことがなかった。私のヒーローは夭折した早熟の才能者(ランボウとか中原中也)だったし、太宰や芥川が死んだ歳に自分は一体何をしたというのだろうという感覚だった。
つまりわたしは35歳問題に真摯に向き合おうとせず、いまだに人生に奇跡と一発逆転はあるんじゃあないかというさもしい妄想を捨てきれず、フワフワとフラフラとしている。馬鹿馬鹿しい表現をしてしまえば、私は今からでもロックンロールスターになれると内心思っているのだ。ほんとだよ。