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■ 大学院講義準備中 / 応答潜時と正答率をモデルするdiffusion model
駒場集中講義「意識の神経科学」吉田正俊(生理研)は1月10日(木)3・4・5限(13:00-18:00), 1月11日(金)3・4限(13:00-16:20)、講義室は駒場キャンパス15号館4階409号室。学務情報:広域システム科学特殊講義Ⅴ
なお、講義は英語で行いますが、途中質問タイム多めにとって(日本語質問可)、脱落しないように話をする所存。あとトピックごとの構成なので部分的に聴講しても意味が分かるようにする予定。(努力目標)
正月明けて、駒場集中講義モードへ。研究所所属の者としては、この講義をいいものにして、「教育歴」として胸を張れるようにしたい。そういうわけできっちり仕上げていくつもり。
以前「次回の駒場の大学院集中講義 90min * 5 「意識の神経科学」の構想を練る」というエントリを書いたけど、それがかなり形が見えてきた。思案していたのは、「盲視」をどのように使うかだったんだけど、第一回の講義から導入する。
構成としては、
- 意識とは何か。気づきの神経相関。盲視概説。
- 気づきを測る: 信号検出理論、意志決定。
- 注意の神経ネットワーク、半側空間無視、サリエンシーモデル、予想コード 。
- 二つの視覚システム仮説、盲視詳細。
- Enactive view / Active vision。内部モデル。可塑性と意識。
こんなかんじだったんだけど、それぞれのところで、私の盲視の話を織り込む。実際問題、今回の五つのテーマはみな盲視のことを明らかにするために使った道具立てだ。これを軸にして話をするのがいちばん分かっていることを話すことになると思うし、話の統一性が出るだろう。浅くあれもこれもではなく。
たとえば、
- ではhit-missの比較を盲視でやっている。
- ではyes-no detectionとfored choiceとでのd'の乖離についての議論をする。普段ここまでやるのは難しいが今回は出来る。
- ではサリエンシーモデルの応用についてのカラバイの話をする。
- ではJNS2008以降の仕事でヒトとサルとの話を整理した上で話をする。いま書いてるBrain and Nerveの原稿での議論を持ってくれば、解剖学についても話をすることが出来るだろう。
- をどうするかが難しいところだったのだけれども、Alva Noeの話とかは最後にして、もっとactive vision的なもの、たとえばsaccadic suppressionとかSommer and Wurtzのefferece copyの話とかそっちからempiricalに攻めていくことにしたい。頭頂葉の話SugrueとかHaggardとかそっちも行きたいが、あんま手を伸ばすと浅くなってしまうだろう。このへんはスライド並べてギリギリまで思案することにする。そのうえで、JNS2008で「なんでV1 lesionするとサッカードのコントロールが出来なくなってしまうのか」についてのinternal model仮説まで持ってく。
これで盲視を軸にして視覚と眼球運動を中心にしたストーリーにすることが出来る。たぶんこれでいける。
というわけで講義の準備中。視覚刺激への応答の意志決定過程を説明するdiffusion modelのムービーを作ってみた。
たとえば、画面の上下どちらかの場所に視覚刺激が点灯するのでそれをなるたけ早く選択する。このような二択の状況で応答潜時と正答率とを両方モデルするのがdiffusion model。
横軸が時間(ms)で、evidenceのシグナルはランダムウォークしながら蓄積してゆく。上の閾値(上)に辿りつけば正解(マゼンタ)。でも20試行目のように、たまには下の閾値に辿りつく。これは誤答(緑)。10000回繰り返すと、正答と誤答の応答潜時のヒストグラムが出来る。
ここで出しているのは反応閾値は+-20、slope(上方向への刺激の強度に相当)は0.15の条件。これらの値はランダムウォークのgaussianのSDからの相対値となっている。
このようなモデルを使って盲視サルでの応答潜時と正答率をモデル化して盲視ザルでの意志決定の過程を推定したのがJNS 2008(ブログでの解説はJNS論文「線条皮質の損傷は慎重な意思決定およびサッカードの制御に影響を及ぼす」)だった。
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- / 投稿日: 2013年01月04日
- / カテゴリー: [Saliencyと眼球運動] [大学院講義「意識の神経科学」] [視覚的意識 (visual awareness)]
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