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■ 盲視に関わるMPKチャネルの経路

2012/11/20

「V1から上丘へ行く経路はなにをしているか」これをアップデートした。まず、教科書的にはMPKはパラレルであるように考えられている。

SC_MPK_anatomy_mod_k1ss.png

でも実際にはV1の中でかなり混ざっているってのが最近のCallawayの知見。Nat Rev Neurosci. 2009 "Parallel processing strategies of the primate visual system"

さらにV1をバイパスする経路を考えてみると、Koniocellularの系が活躍していることが分かる。

SC_MPK_anatomy_mod_k2ss.png

LesionしたマカクではW cell(=konio系)がマカクでSCに行っている。メラノプシン系はマウス。ラットでの知見。

ipRGCsが盲視に関わるかどうかの話をアップデートしておくと、Neuron 2010 "Melanopsin-Expressing Retinal Ganglion-Cell Photoreceptors: Cellular Diversity and Role in Pattern Vision" でipRGCsがpattern visionにも関わる(rot, cone欠失マウスでgrating vs uniformの弁別)ってのがある。

よく知られているSCNやOPNに行くやつはM1 ipRGCで(こっちはサーカディアンリズムとかに関わる)、それとはべつに、dLGNやSCへ投射するnonM1 ipRGCがある。TINS 2011 "Intrinsically photosensitive retinal ganglion cells: many subtypes, diverse functions"

Pattern visionに関わっているのであれば、ipRGCによる光への応答がどのくらい速いのかが重要だけど、PLOS Biology 2010 "Melanopsin Contributions to Irradiance Coding in the Thalamo-Cortical Visual System"を見る限りだと100msとかの潜時で出ているっぽいので充分速い。(斜め読み)

ただし、こちらはmRGCsって言ってるので同じクラスの細胞になるのかよく分からん。著者ごとに名前の付け方が違っているんだろうと思うんだけど。

Pupil reflexとかのproprioceptiveな感覚を盲視ではモニターしていて、ゆえに視覚ではなくて名状しがたい感覚になるのだ説(盲視の能力そのものではなくて「なにかあるかんじ」の説明)からすれば、ipRGC->pretectumがblink経由で情報与えてるかも。

V1から上丘への投射というのは、LGN(M)->4Calpha->4B->5/6interblob->SGSというルートがある。このため、TehovnikのようにV1 L6を微小電気刺激するとSCがドライブされてサッカードが起こる。

いっぽうでNassi et.al. Neuron 2006 "The Parvocellular LGN Provides a Robust Disynaptic Input to the Visual Motion Area MT"ではLGN (P)->V1 layer6 Meynert cells -> MTというルートでMTにもparvo入力が入る。 V1 layer6 Meynert cellsってのはSCにも投射しているかもしれない。

となると、LGN(M, P) -> V1 layer6 Meynert cells -> SC というルートでカラーの情報をV1経由でもらうことが出来るかもしれない。

昔のCoweyの論文 Neuroscience. 1995 "Nasal and temporal retinal ganglion cells projecting to the midbrain: implications for "blindsight"."を読むと、V1 lesion後に生き残ったRGCの細胞はW cell (koniocellular)であると書いてある。つまり、マカクでもretinotectalでS錐体の情報は入る。

ではなんでBrian WhiteのJNS2009 "Color-related signals in the primate superior colliculus"で上丘で速い色応答が出なかったのか。それはSGSから記録してないからじゃん?ってことになる。CatではM cellはSOへ、K cellはSGSへ入力する。Acta Neurobiol Exp 2004 "Motion sensitivity in cat's superior colliculus: contribution of different visual processing channels to response properties of collicular neurons"

なるたけコンタクト小さい電極で浅いところから記録して、DKLで刺激を作って、saturationをmaxにしてやる。つまり、backを灰色ではなくて、blueにしたうえでyellowへの応答を取る。このぐらいやれば応答が出てくるんではないだろうか?

「V1 layer6 Meynert cellsってのはSCにも投射しているかもしれない」というのは当てずっぽうではなくて、Meynert cellsだって言ってる人がいる。

上丘浅層にrabies virus入れて、V1経由で二次で染まるLGNのニューロンを調べてみればいいと思う。Konio, parvo両方が染まるはず。

Lyon 2010 "A disynaptic relay from superior colliculus to dorsal stream visual cortex in macaque monkey"でMTにrabies virus入れてdysynatpicにSCが染まる。これはinferior Pulvを経由している。2011年のIBROのときにCallawayがトークをしてたのでいろいろ質問した。うろ覚えだけど、SC->LGN->MTの可能性を聞いたら、染まっているSCの層はLGNに投射するlayerではないからunlikelyだという話を聞いた。たしかにあらためて Lyon et al 2010を読むと、そういう議論をしている(p.275左上)。SCのlayer2a->LGN(K)とlayer2b->infPVとなってる。

でもって、MTに入れて染まるのはSC layer 2b。 これでSC->PV->MT説にけっこう自信を持った。Leopordの言うようなSC->LGN->MT説は解剖学的にはunlikely。

それでもやっぱりパルボ系をSCに持ってくるのは難しい。しかし、実際にはLGNのレベルでも生理学的にはMPKは混ざっている。Logothetis et al Science. 1990 "Perceptual deficits and the activity of the color-opponent and broad-band pathways at isoluminance"ではこう書かれている:

These results suggest that impairment of visual capacities at isoluminance cannot be uniquely attributed to either of these systems and that isoluminant stimuli are inappropriate for the psychophysical isolation of these pathways.

つまり、isoluminantにしても、LGN parvoのニューロンの応答はゼロにはならない。

2012/11/20

マーモセットではretina->inf Pulv->MTがLGN->MTやV1->MTよりも早く形成される。JNS2012 "The Early Maturation of Visual Cortical Area MT is Dependent on Input from the Retinorecipient Medial Portion of the Inferior Pulvinar" 呼び水説として尤もらしい。この著者は以前にもadultでこの経路を報告している。Front. Neuroanat. 2010 "Retinal afferents synapse with relay cells targeting the middle temporal area in the pulvinar and lateral geniculate nuclei"

Eur J Neurosci. 2007 Selectivity of human retinotopic visual cortex to S-cone-opponent, L/M-cone-opponent and achromatic stimulation Human fMRIでDKL(lum, R/G, B/Y)のそれぞれの刺激で視覚野がどのようにactivation起こるか。MTの活動パターンがとても特異。B/Yでboldが下がってる。

fMRIでのBOLDがベースラインから下がるのはけっして抑制とは言えないわけだが、とにかくほかの領野とはものすごく違っていることが分かるし、やっぱLGN->MTのkonioがfunctionalに効いてんだろう、とすごく印象深い。

2012/12/4

高等研カンファレンス二日目より参加。ポスター発表終了。狙い通りDavid Leopoldと議論をすることが出来たのでミッションコンプリートした。David LeopoldはRGCからLGNとSC両方へ投射しているニューロンの重要性を強調していた。これはJNS 2008 "Y-cell receptive field and collicular projection of parasol ganglion cells in macaque monkey retina"およびJNS 2008 "The smooth monostratified ganglion cell: evidence for spatial diversity in the Y-cell pathway to the lateral geniculate nucleus and superior colliculus in the macaque monkey"のこと。

これはmagnoであって、parvoではない。retina->SCにkonioがあるとする私の持論についてはけっこうふつうに肯定していたので驚いた。ただ、上記のJNS2008二つを見たら、"lacked measurable S-cone input"って書いてあった。うーむ、いまだにS-coneがSCに入っているという証拠は見つからず。

2012/12/5

まさに俺得論文。Cerebral Cortex 2012 "Bypassing Primary Sensory Cortices A Direct Thalamocortical Pathway for Transmitting Salient Sensory information"


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