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■ フリストンの自由エネルギー原理関連ツイートまとめ

(2012/6/22)昼ご飯でTom Froseとけっこう突っ込んだ話が出来たので(フリストンの自由エネルギー原理とヴァレラのコヒーレンス理論とか)これは有意義でした。

わたしの折衷主義的なアイデア(dorsalはenactiveでventralはpredictive coding)はTom Froseを満足させることは出来なかったけど、「自由エネルギー原理が平衡状態を前提としたものである点が限界」ということで意見が一致しました。


(2012/6/23)Tom Froseにも同じこと言われた。川人先生の双方向理論と同様、感覚と運動両方に適応できるところがインパクトなのはその通り。Predictive codingは腹側に限る、という方が正確です。背側腹側かは不明だけど、理論適応範囲を定めたいという動機です。

サッカードによる視覚探索の場面だと、自由エネルギー最小化はinfomaxと等価になって、これはNature 2005 とかで言ってることと同じになる(たぶん)。

Marrの3段階説で、物理的実装の層, アルゴリズムの層, 計算論の層ってあるときの計算論ってところがなにか最適化しようとするものを定める(ジャーク最小化とか)。自由エネルギー最小化ってのは計算論の層を抽象化してまとめようとしている。どちらも工学的問題解決だから話が収束する。

そうすると、いろんな計算論的問題があるんだけど、それの第4層に自由エネルギー最小化ってのが来て、すべてが根本的には同じ問題である、というなんかピラミッドみたいな描画になる。ここまでイメージを広げると、これはE=MC^2のような統一理論ではなくて、雑多な理論に共通性を見いだすメタ理論の提唱と考えた方がよいことが分かる。

(これはFrisotn自身も言っていた。何か新しいことを見つけたというのではなくて、それらを繋ぐものだから、自由エネルギー"principle"と呼んでいるのだと。)

視覚の方は腹側経路をメインにした論理構築で、運動の方はリーチングを元にしているというのがちぐはぐなのであって、vision-saccadeみたいな系で入口から出口までひとまとめで説明するというのが「統一的説明」が取るべき戦略ではないかという気がしてきた。


(2012/6/27)Perceptions as hypotheses: saccades as experiments まさに以前書いたフリストンでサッカードでベイジアン・サプライズだった。これ読んで駒場の冬学期の大学院講義までにこのへんネタにできるようにしておく。


(2012/6/28)(神谷さんによるFree-energy minimization and the dark-room problemの紹介に対して) ご紹介ありがとうございます。さらに論文出てるのですね。もうぜったい追いつけない。「暗い部屋問題」は行動選択の際にsurpriseを下げる=unlikelyな状態を避ける=餓えるまで動かないとかを避ける、で解決すると理解してたのだけどやっぱ問題なんですね。


(2012/7/25)Predictive coding云々と言い過ぎたが、神経生理学者としてどのくらい尤もらしいか言うなら、"explain away"するために「引き算」するって考えは、ぜんぜんニューロンの抑制ってものを分かってないと思う。ニューロンの抑制というのは線形的に足しあわされない。

Shunting inhibitionみたいなかんじで、コンダクタンスに効いてくる。だから、ニューロンの抑制は非線形的に、割り算のように効いてくる。これがHeegerのnormalizationモデルとかで使われている機構。

わたしがよく使う話で「ニューロンの応答はonsetで最大で、その後弱まる。だから、ニューロンの応答はfeatureそのものをrepresentしているのではなくて、そのsurpriseなのだ」みたいな説明をするけれども、じゃあなんでニューロンの応答はゼロにはならないかというと、それはexplain awayされてゼロになるのではなくて、割り算されて小さくなるから、というのが妥当なところだろう。

ちなみにIttiのbayesian surpriseでの説明では、temporal surpriseは時間が経てばゼロになるが、spatial surpriseはゼロにならないので、足し合わせるとゼロにはならない、という説明になる。あと、Fristonの図に出てくるlayer2/3がprediction errorでlayer5がpreditionというのは解剖学からの類推であって、生理学的には根拠がない。これはempiricalな問いなので、二光子の人にはぜひ検証してほしい。

とにかくempiricalな証拠が足りなくて、これまで出てきたようなRao and Balladのend stoppingとか、Hosoya et.al.のRGCとかはmodulationとかadaptationのレベルなので、これがfeature検出器説をrejectするわけではない。そういうわけで、このラインで寄与できることにこそ進むべき。

要は、生物学的なplausibilityだけ考えていると、計算論的原理がさっぱり見えてこないので、アラン・チューリングがやったみたいにsimplicityを見つけ出すべき。だから情報理論的に考えたいって話になる。


(2012/8/7)Attention Reverses the Effect of Prediction in Silencing Sensory Signals ハクワンとFloris de Langeとで、フリストンのラインで注意について議論してる。

Floris de LangeってのはDehaeneのところにいた人だった。


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