« カポーティとかグラースサーガとかブローティガンとか読んでます | 最新のページに戻る | VOCALOID 2 »
■ 上丘の細胞構築
もうすぐ神経科学大会ですね。私は一日目の午後に口演です。眼球運動のセッションの一番最後で、視覚1の直前。ちょうどいい位置に入れてもらいました。ぜひ見に来てください。
毎年7月末にあるトレーニングコースではラットの上丘、視覚皮質、バレル皮質などから急性で記録をしてあとでhistologyで記録部位を同定するということをやっております。わたしはだいたい電気生理の解析とhistologyの解析の担当をこの3年くらいやってます。上丘の細胞構築(cytoarchitecture)をきっちり把握しておく必要がありますので、元ネタにあたっておいたものをまとめておきます。
まず、上丘とはなんぞや、から始めてると時間がありませんが、上丘は中脳にあります。つまり、視覚皮質よりも腹側(ventral)で、視床よりも尾側(caudal)です。上丘は大きく分けて、retinaからoptic nerveを介して視覚入力が入ってくる入力層と、脳幹のサッケードジェネレーターに眼球運動の指令を送る出力層とに分かれます。おおまかには入力するoptic nerveが入ってくるSOと、メインの入力層であるSGSと、メインの出力層であるSGIとがわかれば充分です。
教科書的な図はありませんが、PNAS 2007 "Identity of a pathway for saccadic suppression"がopen accessなので、これの図を見てもらえると良いのではないでしょうか。Fig.3を見るとSGS,SO,SGIの順に並んでいることがわかるかと思います。さらにFig.2をみてもらうと上丘はさらに6層に分かれることがわかります。いちばん表面にある薄い層であるSZを入れると全部で7層構造です。ちょっと大脳皮質とは細胞構築が違う。ただ、SO=4層、SGIの大きい出力ニューロン=5層のpyramidal neuronくらいに当てはめてイメージすることはできるかもしれません。
解剖学の論文ってのは細胞構築、つまりニッスル染色でみた、細胞(主にニューロン)の大きさや密度などが層ごとにどのようなパターンを示しているか、の記述というのがずらずら並んでたりするので、それを読んで顕微鏡で標本を見てどこがどの層なのか「目を慣らす」という作業が必要となってきます。
Ratの上丘でのこのような細胞構築の分類の元となった論文は以下のJCN 1981です。これはさらにcatでの細胞構築JCN 1974 Kanaseki and Spragueを下敷きにしています。
J Comp Neurol. 1981 Sep 10;201(2):221-42. "Trigeminal projections to the superior colliculus of the rat." Killackey HP, Erzurumlu RS. PMID: 7287928
論文から抜き書きで7層についての記述を。
-
SZ: the stratum zonale
"a thin, loosely patched layer, which contains small neurons" -
SGS: the stratum griseum superficiale
"densely packed with cellular elements and is relatively thick" -
SO: the stratum opticum
"primary composed of fibrous elements with some scattered cells" -
SGI: the stratum griseum intermidiale
"band of large neurons readily detectable in Nissl preparations"
"densely packed with cells and is thick, like the stratum griseum superficiale" -
SAI: the stratum album intermediale
"characterized by patched of fiber bundles intermixed with a few cellular elements" -
SGP: the stratum griseum profundum
"has a layer of large neurons at its dorsal border" -
SAP: the stratum album profundum
"a fibrous layer that separates the superior colliculus from the periaqueducal dray"
細胞構築を決めてやるために必要なことは基本的にはこのような記述がすべてなのです。もちろん、immunohistochemistryとかでどこかの層がなんか特異なマーカー(CaMKIIだとかIh channelだとかcalcium binding proteinだとか)を持っているかを目印にしたりとか、トレーサーを注入して、投射関係などからさらにくわしく調べられ、consistencyの確認や、さらなる層の細分化が起こるわけです。たとえばの例として、LGNがmagnocellularとparvocellularに二分されていて、層のあいだの隙間はinterlaminarなんて言われていたところをCaMKII α-unitで染めることによってkoniocellularの層が確立する、ということもありました(Science 1994 Hendry and Yoshioka)。Koniocellularという言葉自体はその前からあったんですが。
ちなみに、ネットで探してみたらヒトでの上丘の細胞構築については「中脳蓋-上丘を主として-」を見つけました。
- / ツイートする
- / 投稿日: 2007年09月05日
- / カテゴリー: [上丘、FEFと眼球運動]
- / Edit(管理者用)