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■ 選択した行動の正解不正解をコードする前頭前野内側部

Nature Neuroscience 2007 "Medial prefrontal cell activity signaling prediction errors of action values" Madoka Matsumoto, Kenji Matsumoto, Hiroshi Abe and Keiji Tanakaに関して。だいたいこれでわたしの方からは言い切ったかんじになるのではないかと。
Medial frontal cortexに関する重要なレビューとしてRushworthによる、Trends in Cognitive Sciences 2004 "Action sets and decisions in the medial frontal cortex"があります。これを読んできました。多少まとめます。
もともとmedial frontal cortex (ここではpreSMAとACCを含んでいるようです)はNiki and Watanabe 1979による先駆的仕事やhumanのERP studyでerror related negativityというのが取れることなどから、errorやconflictのmonitoringをしていると考えられてきたのだけれど、最近の仕事からACCはもっとactionとそのoutcome(negativeなものだけでなくpositiveなものも)とを関連づけるところと考えられるようになってきた、というのがその骨子です。今回のNature neuroscience論文がこのレビューに対する答えになっているということがよくわかるかと思います。
それで、レビューの方では松元健二さんのScience 2003のほうをかなり大きく採りあげて、ACCがactionとreinforcement value of its outcomeとを関連づけた活動を保持している証拠のひとつとしています。Science 2003 "Neuronal Correlates of Goal-Based Motor Selection in the Prefrontal Cortex" Kenji Matsumoto, Wataru Suzuki, Keiji Tanakaのほうでは、刺激条件(図形AとB)/行動選択(Go or NoGo)/報酬条件(Rewarded or unrewarded)の2*2*2の組み合わせをブロックごとにスイッチするという課題を行っていました。それで、ACCで見つかったのは行動選択*報酬条件で交互作用があるニューロンでした。つまり、go-rewarded/go-unrewarded/nogo-rewarded/nogo-unrewardedの4通りのうち、nogo rewardedでのみ活動する、といったニューロンが見つかったというわけです。Science論文ではこの活動について"goal-based action selection"という言い方をしていましたが、Rushworthはaction-outcome relationshipという言い方をしています。この意味では、Science 2003と比べてNature Neuroscience 2007の結果を見ることも重要です。Nature Neuroscience 2007は学習が進んだら消えてしまうような成分を見ているのでその点では違いは明確なのですが。
また、以前にmuscimol injectionなどの可能性について考えてみましたが、lesion実験にかんしてはRushworthらの論文(JNP 2003 "The Anterior Cingulate and Reward-Guided Selection of Actions")がレビュー内で紹介されています。メインの課題(Reward conditional response selection)は、taskのはじめにpelletをもらったときはレバーを引くと2個目のpelletが出てきて、taskのはじめにpeanutsをもらったときはレバーを横に倒すと2個目のpeanutsが出てくる、というものです。この課題の成績はlesionによって落ちます。一方で、コントロール課題(Visual discrimination learning)は図形の対があって、どちらかがrewardとassociateしています。Rewardとassociateしている図形を選べばrewardがもらえる。いわゆるconcurrent discrimination taskというやつですな。こちらはACC lesionによって成績は落ちない。よって、stimulus-reward associationにはACC lesionは影響を及ぼさないけれど、action-reward associationは影響を受ける、というわけです。
あと、議論のネタとしては、ACCというのはfMRIとかで見ててもいろんなcognitiveな条件で光るようだし、かなり「自我の座」っぽいイメージのあるところだと思うので、ACCとはなんなのか、人の損傷症例とかと合わせてconsistentな説が作れるかどうか、というあたりが面白いところですかね。有名なPhineas Gageの症例での損傷部位はもっと前の方になるんでしょうか。
だんだんとりとめなくなってきたんでこのへんで。
次回の予習シリーズは小川正さんのtop-down attentionとbottom-up attentionの統合に関する論文について行いたいと思います。ではまた。

コメントする (5)
# araragi

はじめまして。
非常に参考になるエントリ、ありがとうございます。

表示が乱れて読みにくいのですが、
あたしが使っているのがエクスプローラーだからでしょうか?

# pooneil

ご指摘どうもありがとうございます。Firefoxでは問題なかったので気付きませんでした。そういえば以前にもid:natsumotoさんのブクマhttp://b.hatena.ne.jp/natsumoto/20070719#bookmark-5326726
でOperaでもずれるというご指摘がありました。ソースを見直して、IE6とOpera 9でも正常に表示されるのを確認しました。どうもありがとうございます。
ちなみに横幅についてはCSSで
max-width=640px
というのを指定していますので、firefoxやOperaやIE7では全画面表示してもエントリが横に伸びないようになっているのですが、IE6以前ではそれは効かないようです。
それから、フォントは
font-family: Verdana, Arial, sans-serif;
という形で指定していて、わたしの環境ではゴシック体を表示するようになっているのですが、環境が違うと明朝体になっているかもしれません(古いPCのIE5で見たらそうなっていたことがあります)。
ほかに見にくい点などお気づきのことがありましたらご指摘ください。

# natsumoto

拾っていただいてありがとうございます。(やっと気づきました……)
Opera 9.5で、快適に見られてます。お手数おかけしました。

# pooneil

どうもどうも。よかったです。
自分はFirefox派でして、Operaはチェック用にしか使ってないのですが、Operaは良いですか? 速いって聞きますが。

# natsumoto

おそいマシンだと速く感じますねー。
カスタマイズとかしなくても、メールソフトやRSSリーダとして、ふつうにつかえるので、重宝しております。


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