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■ Science 2/11 leech decision
"Optical Imaging of Neuronal Populations During Decision-Making." K. L. Briggman, H. D. I. Abarbanel, W. B. Kristan, Jr@UCSD。
ふだん無脊椎動物の仕事はスルーしてしまいがちなのですが、これは何とかフォローしておきたい論文です。Leech(ヒル)のdecisionだそうです。LeechのDP nerveを電気刺激してやると、それに対してあるときはswimming行動を起こすし、またあるときはcrawl行動を起こす。このような行動分岐が起こるときのmidbody segmental ganglionのmembrane potential変化をvoltage sensitive dyeとFRETでimagingしてやる。すると、行動分岐に先だって一番早くニューロンの応答も分岐するものとしてcell208というのを見つけた。(Leechなので個々のニューロンが番号付けしてidentifyすることが可能なわけです。)じっさいにこのcell208を過分極させるとswimming行動が起こり、脱分極させるとcrawl行動が起こった、というものです。
いま調べたところ、behaviorに関してはすでにJNSにThe Journal of Neuroscience, December 15, 2002, 22(24):11045-11054 "Evidence for Sequential Decision Making in the Medicinal Leech."として出版されております。
んで、論文そのものに関してもいろんな点で興味を抱くのですが、私が考えておきたいと思うのは、「はたしてこれは"decision"なのだろうか」、「そもそもdecisionは行動としてどう定義すべきか」ということです。
たいがいperceptual decisionの仕事というものは、ランダムドットのようなambiguousな刺激に対して行動(左右どちらかへサッケードする)が確率的に変わる状況において運動指令自体ではないものを見つけ出そうとするわけです(刺激は同一で行動が分岐する場合)。可能性としてはほかにも「刺激は別だけど行動が同一な場合」とかいくつかのバリエーションが考えられますが、一番取り組みやすいのが前者の「刺激は同一で行動が分岐する場合」というやつでしょう。この論文のイントロでは3種類のストラテジーとして"sensory discrimination"、"choice competition"、"choice variability"という言い方をしてますが、どれも「刺激は同一で行動が分岐する場合」の話なので差があるように思えないんですが。
Glimcherなど、現在のdecisionの研究者たちがdecisionというときにはそれは「たんなる行動の確率的な分岐」だけではなくて、状況を規定するパラメータの変動させることによってどのように合目的に行われているか、というところに主眼があります。(Neuroeconomicsというときにはさらにそのようなパラメータが明示的に示されていない状況、"decision under uncertainty"を取り扱っているわけです。Glimcher論文でもinspection cost Iというやつは明示的に示されていませんでしたよね。) よって、あまりdecisionとは何か、というような根本的な問題には直面しなかったりします。じっさい、decisionのような認知心理学的なタームを議論するというのはじつのところ鬼門で、ちゃんと定式化するなら行動分析学的に取り扱わないといけない、ということになることでしょう。このへんに関して、ちょうどJeffrey D. SchallがCurrent biology 1/11にChoice-Decision- Intention-Actionを分けて説明しようとしている(Jeffrey D. Schall, Decision making, Current Biology, Volume 15, Issue 1, 11 January 2005, Pages R9-R11)のでそれをまとめてみましょう。というかこれの元ネタはNature Review neuroscience '01なんでそちらも読みましょう。(つづきます。)