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■ 伝染するあくび("contagious yawning") つづき。

7/27のCorreggioさんへの返答から膨らませてみました。
Cognitive Brain Research '03 "Contagious yawning: the role of self-awareness and mental state attribution."(pdf)についてまとめます。
被験者にヴィデオであくびをしている人の映像を見てもらって、あくびをするかどうか数えます。この数(=あくびが伝染しやすいかどうか)とさまざまな心理テストとの相関を調べてやるわけです。
まず、自己意識の障害についてのテストであるSPQテストのスコア(自己意識に障害があるとこのスコアが上がります)と伝染したあくびの数は反比例します。つまり、自己意識をしっかり持っている人ほどあくびが伝染しやすいのです。
また、自分の顔を見つけ出すテストでも、このスコアが高い(自己意識を持っている)人ほどあくびが伝染しやすい。
それから、「心の理論」研究で使われるお話を聞いてその中に含まれるfalse belief(だれがなにを勘違いしているか)およびsocial faux pas(だれがどんな良くないことをしているか)を報告するテストをすると、social faux pasのほうのみcontagious yawningの数と相関があるというのです。著者はこのことから、他者の立場に立って考える能力がcontagious yawningに関わる、とします。(ここはなんかデータが汚いわけですな。)
ところでこの論文、被験者が普段からどのくらいあくびをするかについては記載がないのではないでしょうか。そうしたら、あくびが伝染しやすいのか、ちょっとしたきっかけですぐにあくびが出やすいのかわからないのだけれど。ほかの論文でも、コントロールとしてヴィデオの中で微笑む人をみて何回微笑むか(当然ゼロ)というのを出しているのを見たことがあるけれど、そうではなくて、コントロールとは、退屈なビデオを見ているうちに何回あくびをするか、ではないでしょうか。このへんどうしてるんだろ。
というわけで7/27のCorreggioさんへの返答につなげると、Imitationとcontagious yawningとはミラーニューロンシステムを共有している一方で、幼児のimitationにはまだ自他の分離(self-awareness)と他者の顔色をうかがうような社会性(心の理論を必要とするようなmental-state attribution)とが欠けていて(Cognitive Brain Research ’03)、それらがあってはじめてcontagious yawningのように高度な認知的行動が起こる、ということのようですね。そしてもちろん、ミラーニューロンシステムとはたぶん、ただのimitationにのみ関わるのではなくて、そのようなimitationを通して心の理論と共感とを獲得していくダイナミックな過程に関わっている、ということになるのでありましょう(Rizzolattiは読んでないけど、こういうことを言っているのではないですか)。


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