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■ pooneilの膝改造日記
[第1日目] 先月ジョギング中に左膝を痛めて歩けなくなって、MR撮ってみたら左膝の前十字靭帯が全断裂していることがわかったので、再建手術を受けることになった。今日(9/7)から入院で明日が手術。9月23日退院予定。ネットは使えるのでここに記録しておく予定。
手術の概要はこのあたりにあるけど、
ざっくり言って、どっかから靭帯とってきて、骨に穴開けて靭帯通して、ボルトで留める(<-ざっくりしすぎ〜)。術後すぐは神経ブロックと尿カテーテルで移動不可だと。もう脱走したくなってきた。
病院の説明によると、術後一週間は車椅子か両松葉杖で体重かけずにリハビリ、一週間後あたりから体重をかけながら歩く練習、退院前には片松葉杖で歩く練習、とのこと。先は長い。運動できない分肥満に気をつけないといけないが、コロナで外出禁止なので、間食買いだめしてきた。
病院食はちゃんと量はあって、でも塩分控えめな感じで健康的だった。もしかして間食せずにこれだけ食べればダイエットになるんじゃねーの?
ほんとうは内容的にはFBに書いたほうが、旧友への近況報告になってよいのかもしれない。でもFBだといちいち「悲しいねボタン」とか押されるのも気がひける。そういうわけで、我が心の故郷であるtwitterで続けることにした。スルー気味にウォッチしておいてください。
手術前の検査がだいたい終わったので、仕事ができるようにセットアップした。MBPのバッテリーが膨らんできてヤヴァいので、キーボードとマウスは外付けを使ってる。はっ、これってもしかしていわゆるワーケーションなのでは?(<-チガウ)
[2日目] 毛剃り完了。いま栄養液の点滴が始まった。手術は14時から。
手術無事終了。予定通り14:00スタートで、16:50あたり終了とのこと。
全身麻酔の経験が面白かったので、メモっておく。手術室まで歩いていって、手術台に乗り、麻酔科医の先生と会話しながら(こちらが研究者なの知ってる)、「いまレミフェンタニル入れましたよ」「ああこれで鎮静ですね」「はい、ではこれからプロポフォール流します」「ああたしかに冷やっとしますね、そういえばプロポフォールって懸濁液なんで」というあたりで意識が無くなってた。意識が消える瞬間がわかるのがすごい感覚。
次に目覚めたときは手術室で、はい、目覚めました、みたいなのが聞こえて、わたしもとっさになにか喋った気がするけど、憶えてない。エレベーターに乗せられて、自分の部屋まで連れて行かれて、ベッドの上に載せられるのとか、ぜんぶ憶えているのだけど、たぶんまだしっかりとは目が覚めてない状態。
よく全身麻酔は睡眠とは違って時間が経過した感覚はあまり無い、というけど、たしかに睡眠のあとのような時間経過感はない。かといって、目をつぶって開いたら術後だった、みたいな一瞬の経験というのとも違う。なんとも表現し難い不思議な感覚。
それの理由は、プロポフォールが切れて目が覚めたとはいえ、まだ覚醒しきってない状態が当分続いたからで、じっさいに家族や同僚にスマホからメールを打ったのが18:00くらいなので、60分くらいはまだ目覚めきってない状態が続いていたものと思われる。(術後にTwitterに書き込んだのは18:10)
この時間帯の経験についても記録しておく。ベッドに戻ってきてすぐは、硬膜下麻酔と神経ブロックが効いているので、膝の周りは全く痛みはない。というか触覚自体がない。その先の左足首と指のみが触覚、というか感覚のみがあって、まだ動かすことはできない。つまり、左足先のsense of agencyはないけど、body ownershipはあるような状態が続く。そこから60分たって、いまは左足首と指が動かせるようになり、スネや膝も固定されているのがわかる。
[第3日目] 昨晩は痛みは出なかったのでよかったが、尿カテーテルがなんか違和感であまり眠れなかった。主治医の説明によれば今日から痛みが出るかもとのこと。麻酔科医の説明によれば神経ブロックが切れるのが24時間なので。リハビリは明日からで今日は安静にする。
[第4日目] 昨日は昼から微熱が出た(37度後半)。医師によると手術後に熱が出るのはよくあるとのこと。膝は痛みが出ないのでこのまま行けるかと思ったら甘かった。明け方4時くらいに痛みで目が覚めて、ボルタレン飲んだけど痛みは引かず、そのまま夜が明けた。
朝昼のロキソニンが効いたのか、昼になってやっと左足を持ち上げることができるようになった(痛いけど)ので、車椅子でトイレに行ってきた。今日の午後で抗生剤(セファゾリン)の点滴は終了。術前からライン入れっぱなしだったのがやっと外せるので、嬉しい。チクチクして微妙にストレスだったから。
今日は3時過ぎからリハビリ第一回目。それまでに昼のロキソニンが効いて痛みが減ってくれるとよいのだけど。
膝の痛みがだいぶ引いたので、リハビリも問題なく終了。体を温タオルで拭いて、体温も平熱に戻って、だいぶ頭がはっきりしてきた。(術後はずっと重苦しい状態が続いていたので。) 持ってきた緑本のAICの章を開いてみたが、読む気力は出なかった。来週から本気出す。(あまり出したくないが。)
[第5日目] 昨日も熱が上がり、明け方は膝の痛みが出た。それでもちゃんと眠れたのでよかった。今日からいよいよリハビリが本番突入。午前の一時間で電気刺激や左脚のモモ上げをやって、午後の一時間で両松葉杖(左足荷重0%)の練習や脚の横上げをやった。どう考えても明日は筋肉痛。
[第6日目] 昨晩も微熱(37度前半)が出た。膝の痛みはロキソニンでなんとかなってる。動かそうとすると角度によっては痛いが、要領さえわかればなんとかなる。今日もリハビリで左膝周りの筋力強化と両松葉杖の練習。まだ昨日の筋肉痛が来てないということは明日来るということか。
病院は6時起床、21時消灯で、3食を毎日同じ時間(7:30, 12:00, 18:00)に摂るのだけど、確かにこれっていいなと思った。いつもは腹減って集中力切れたら14時くらいに昼ごはんは生協かセコマだったけど、午後に眠くなったりするので。この機会に朝型に移行できたらなおよいけど、そっちはわからん。
リハビリの時間以外はずっと病室で、トイレに行くとき以外はヘッドの上にいる。気分転換に車椅子に乗って本読んだりもするが、あまり不満もない。とはいえ、外に出たい欲望が高まる情報(旨い店とか)には意図的に触れないようにしているが。なるたけ心が平穏であるように心がけている。
[第7日目] 今日のリハビリは自主トレで脚上げ10回3セット3方向。そのあと髭剃って洗髪してさっぱりしたので記念写真。洗髪台の使い方がヘタクソでTシャツをびしょ濡れにしてしまった。体を拭いてから膝のお皿を動かす運動。左足のお皿周りが見えないことからわかるように、まだめちゃ腫れてる。
EMSでは膝のお皿(膝蓋骨)を引っ張っている大腿四頭筋の内側(内側広筋)を刺激してた。刺激に同期させて、自力でも筋肉を収縮させる。正常側ではお皿の動きで確認できるのでカンタンなのだけど手術した側はお皿を触ってモニタしながら正しく収縮できてるか確認しながら行った。
なんだかんだとまだ膝の痛みは出ている。ロキソニンは一日3回で一週間分処方されていて、たぶんこれ以上は長く飲ませないだろう。明後日までにロキソニン無しでも済むところまで回復してほしい。かなり気をつけて、左足に体重かけないようにしているのだけど。
[第8日目] 昨日は頭が痛くて何もできず。熱も37度前半だったし、明け方は膝の痛みで目が覚める。けっきょくアイシングがいちばん有効で、寝る前にアイシングしてたのがぬるくなって逆に熱を持たせてしまうのが明け方4時ということらしい。
[第9日目] 今朝も4時くらいに痛みで目が覚めたが、対策はわかったので、即ナースコールしてアイシング再開。これで十分眠ることができた。今日のリハビリではついに左足に体重1/2をかけて立つ。鏡の前で「クララが立った!」をやった。写真を取りそびれたが。
午前中には抜糸も済ませた。写真は以下の通り。グロ注意。抜糸は局麻も無しで一瞬だった。手際が良い。そのあと3Mステリストリップで固定。俺が研究で使っているのと同じwwwとテンションが上った。(マーモちゃんは即剥がすが、吉田は人間なので剥がさない。)
今回の手術は、ACL完全断裂の再建 + 半月板裂傷部分を削るという手術で、内視鏡を使って最小限の侵襲で行う、ネットで調べた通りの術式だった。どこから再建用の腱を持ってくるかはそれぞれのようだが、私の例では膝裏内側の腱をとった。このため、アキレス腱伸ばし的な動きにはひきつれを感じる。
今回経験したのはよく確立した術式だったけど、それでも疼痛、患部の腫れ、尿カテーテルの不快感など、しんどいことがいろいろあった。人類の医学の発展はまだまだ不十分だなと実感した。BMIが進歩して健常人への埋め込みを実現するためには、この種の苦痛をすべて取り除く必要があるだろう。
とくに尿カテーテル、あれは人生でもう二度とやりたくない。確かに排尿はできているけど、妙な残尿感があって、手術直後の夜に何度も目が覚めた。けっきょくあの妙な残尿感は尿ではなくて空気だったらしい。後日尿カテーテル抜いた後めっちゃ空気出た。尿カテーテル改善した人にノーベル賞出したい。
今日も夜から37.3度となった。なかなか終わらん。
[第10日目] 今朝も午後くらいから微熱が出てる。リハビリの方は両足立ちでのスクワットがはじまった。左右のバランスが悪い。手でサポートしての左膝の屈曲では、90度曲げたいところだが85度どまり。膝とふくらはぎがまだパンパンに腫れているので、物理的にこれ以上いかない。
[第11日目] 昨晩はアイスノンを置いておいてもらうようにして、朝3時くらいにそれを自分で取り替えて寝たらすぐ眠ることができた。リハビリの方は膝の屈曲やスクワットの要領がだいぶわかってきた。ベッドでも膝の屈曲をするため、ベッドに腰掛けて作業するが長続きしない。
[第12日目] 主治医と相談をして、9/23の退院ということで話が進んでいる。あいにくこれから連休なので9/20-22はリハビリもなくただ寝ているだけとなる。術後2週(9/22)から左足の荷重が体重の2/3となり、両松葉杖から片松葉杖になる。膝の装具も今使っている膝が曲がらないものから膝が曲がるやつに変わる。これらの使い方を全部教わって、その日のうちに退院ということで、かなり慌ただしくなりそう。ともあれ先が見えてきた。退院したら肉と寿司食べたい。
膝の回復の方は、両松葉杖で問題なく歩くことができて、リハビリも日々向上している。ただし、ふくらはぎの腫れは引かない。主治医によれば、膝裏の静脈が詰まっているのかも、ということで、普段はなるたけ装具で締め付けないようにして、いろんな姿勢で膝の屈曲をするようにしている。
ただし、膝下の外転が起こらないように気をつけてる(前十字靭帯に負担がかかるため)。膝の伸長(0度以下の屈曲)も前十字靭帯に負担がかかるらしいが、私の膝は元々健常側でもそっち方向には曲がらないようなので、今とくに問題ではないだろうとのこと。
熱は今日も37.3度。ロキソニン続けすぎでは?
[第13日目] 血液検査の結果、D-dimerの値が大きいとのこと。ふくらはぎの腫れから、膝窩静脈での血栓(DVT)が疑われたので、エコーで検査。もし血栓があれば、血栓が飛ばないように絶対安静で処置だったが、エコーで血栓が無いことが確認できて、とくに方針変更なし。ほっとした。
膝の屈曲のテストも110度までいった。前回測ったとき(~1wk)は87度で、術前は120度だったので、だいぶ回復してきている。ある一定以上曲げると膝周りの腫れで物理的にテンションがかかってくるのと、膝内側の術部(いちばん縫合が長いところ)の痛みが出てくるので、その手前で止める感じ。
[第14日目] ふくらはぎの腫れの対策のため、昨日はベッド上では装具を外して、膝の曲げ伸ばしをしてみた。これが奏功したらしく、今日のふくらはぎ周りの測定では2cm減で右と同じ程度になった。(でも筋肉の減少も加味する必要あり。) 膝の腫れも引いて、お皿の形が見えてきた。
上記の術後5day(第7日目)と比べると、そこから一週間でだいぶ腫れが引いたのがわかる。
[第15日目] 膝とふくらはぎの腫れがだいぶ引いて、膝の屈曲もがんばらなくても90度をキープすることができてる。もうふつうに片松葉杖で歩けるだろう?と思うけど、指示通り両松葉杖で歩行している。腫れが引いてみると、術後の13日で左足の筋肉がだいぶ落ちているのを実感する。
「六花亭の喫茶」ってさんざん通りがかったけど行ったことないな。北大の北20条門近くに「北大エルム店」があるけどここは喫茶がない。札幌駅南口の「札幌本店」はテナントのヤマハミュージックにはなんどか行くのだが、喫茶に行こうと思ったことがない。退院したら行こう。
[第16日目] 今日から膝の装具が、新しいコンパクトで膝を曲げられるタイプになった。いままでは膝固定用でかさばるわ下にずり落ちるわで、装着するのがが億劫だった。新しい装具なら片松葉杖も問題なくできる。これなら日常生活に問題なく復帰できる。いよいよ明日退院。
とはいえ、新しい装具でもけっこう締め付けっぱなしになるので、移動時だけ装着して、研究室でのPC作業時は外している、という運用になりそう。ともあれこれで、中央キャンパス2号館から生協食堂まで往復する目処がついたので、ひと安心。
今回の入院ではいろいろしんどかったけど、コロナのせいで外出禁止というのが堪えた。毎日同じ部屋からの同じ景色で、リハビリに行っても同じ景色で、隣のパン屋の煙突から出る熱で歪む空気を眺めてた。インターネットを窓にして、外に出ようという気持ちを(太陽みたいに)直視しないように心がけてた。
それでも今は「退院したらMARUZEN&ジュンク堂書店 / 紀伊國屋書店 / トリトン / 六花亭行きてえなあ」みたいに思うのだけど、たぶん退院したらどうでもよくなるだろう。「実際にどこかに行くこと」ではなくて「行こうと思えば行けること」さえ叶えば、たぶん私は充分なんだ。(<-感覚運動随伴性?)
[第17日目] いま最終日の診療が終わって、荷造りしているところ。これから午後のリハビリして、入院費の精算をして、これで退院。この部屋ともおさらば。毎日繰り返し眺めたカレンダーと部屋の窓からの風景。あんなに外に出たかったのに、今は、忙しい日常に戻るのが億劫な気持ち。
退院して家に帰ってきた!家を出てくるときに生ゴミ全部処分してきれいにしてきたので、留守の間にコバエ大発生ということもなかった。今日はこのまま休みにしたいところだが、血栓マーカー(D-dimer)の値が今朝も高かったので、念のため別の病院の循環器内科を受診することになった。今日はまだ続く。
循環器内科でエコー検査したら、ヒラメ筋の毛細血管に血栓があるということで、血栓を溶かす薬(リクシアナOD錠)が処方された。もし(エコノミークラス症候群みたいに)太い血管に血栓が見つかっていたら、入院して絶対安静だったということで、大事に至らなくてよかった。
病院を出てみたら、すでに午後6時近くなっていて、周りは暗くなっていた。私が外の世界から隔絶している間に、この街はすっかり秋になっていたということに気がついた。L’automne déjà ! (アルチュール・ランボー)
まだ続きはあるけど、ここまでとしておきます。