« Non-trivial information closure (NTIC)は何を計算しているのか | 最新のページに戻る | pooneilの膝改造日記 »

■ 盲視にipRGCsは関わっているか? アップデート2020

2012年の記事になるけど、「盲視に関わるMPKチャネルの経路」という記事で、内因性光感受性網膜神経節細胞ipRGCsが盲視に関わるかどうかについて言及したことがある。

つまり、ipRGCsって元々はnon-image-forming vision、たとえば視野全体の光量の違いによって瞳孔反射が起こるとか、そういうのにしか関わってないと思われてた。

でもこちらの論文が出て、ipRGCしかないマウス(錐体、桿体はノックアウトされてる)でも縞模様とただの灰色(どちらも視野全体での光量は同じ)を区別できる、つまりipRGCはimage-forming visionにも関わっているということが提唱されるようになった。

それで、それ以降の研究の進展をフォローしてなかったので、調べてみた。

こちらで、ちょうど2014年以降の新しい論文がリストされてる。みたところ、ipRGCだけを選択的に刺激して、錐体、桿体は刺激しないような視覚刺激を使ってその応答を見るという研究が増えてる模様。

(S錐体についても、S-cone isolating stimuliというのが使われてた。あれと同じアプローチか。)

こちらではそのような刺激条件でマウスdLGNの20%の細胞が活動する、つまりipRGCからの入力を受けているという話になってる。これは意外というか、上記の記事で書いたように、ipRGCはLGNを経由せずに、上丘や視床枕に直接入力するから、盲視に関わる可能性があるかもと思っていたのだけど、もっとふつうにLGNにも入力しているらしい。

あと、同じ刺激をヒトに提示した実験があって、ipRGCはヒトでの色知覚にも貢献しているらしい。

しかし「ipRGCだけを選択的に刺激」というタイプの研究は、網膜の細胞の個人差を考慮した厳密な実験条件が必要で、そのうえでも、微妙なズレが効いているのではないかという疑いが消えないので、個人的には信用してない。(S-cone isolating stimuliのときにそれを痛感したので。)

というわけで、盲視にipRGCsが関わっているか?についてはあまり大きな進捗はないようなのだけど、このネタ、マーモセットでも使えるようにはしておきたいなと思った。


お勧めエントリ


月別過去ログ