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■ 「カエルである」ってどんなかんじかな?
カエルの視覚について調べてる。盲視について「カエル脳の復活」みたいなわかったようなことを言うわりにはカエルの視覚のことほとんど知らないことに気付いたから。
これまで知っていたのはせいぜい
- Lettvin et al 1959 ("What the Frog's Eye Tells the Frog's Brain" bug detector論文)
- David IngleのScience 1973 "Two Visual Systems in the Frog " (Goodaleの二つの視覚システム説の先駆け)
くらいだった。
ところが、カエルの場合の二つのシステムというのはtectum(=上丘->orienting)とpretectum-thalamus(->avoidance)となっている。pretectumといいつつ、こっちはgeniculocortical系の前進なんだろって思ってた。
でもざっと調べてて、JP Ewertの一連の仕事があるってのを知った。Wikipediaだとこのへん:
神経生理学の仕事なんだけど、行動的にはニューロエソロジーなんで、出てくるジャーナルが違ったりして観測範囲から外れてた。
でもって、この図を見て混乱してきた。Pretectumからtectumにpresynaptic inhibitionが来ている。これ自体はIngleのもうひとつのScience 1973で分かっていたことをトランスミッターレベルで明らかにしたということらしいのだが、ともあれ、これでtoadのpretectum-thalamusをprimateのLGNとは同一視できなくなった。PrimateではSC->LGNという結合はあるが、LGN->SCは知られてない。
Goodaleの仕事にあるように、盲視ではobstacle avoidanceは残存している。(ただし、delayを入れるとその能力は消える) PNAS2009 これをIngleのストーリーとつなげようとすると、SC->orientingで、LGN->dorsal pathway またはSC->Pulv->dorsal pathwayでobstacle avoidanceなんて話になる。
Primateだとpretectumは視覚情報処理的にはあんまたいした仕事してないので(accommodationとかblinkとか)比較的無視されがちなのだけれども、盲視における役割として考えてみようと思う。
以前考えたことがあるのだけれども、盲視での「なにかあるかんじ」というのがなんらかの体の応答を(prorioceptiveに)モニタしている可能性というのはずっとあって、もしpretectumが寄与していて、accommodationとかがそのときに変わっているかもしれない。Pupil sizeの応答も知られてる。輝度揃えてもなるかは不明。
EwertのBBS1987ってのがあって、これは読む価値あるだろうけどアクセスできない。驚いたのはDaniel Dennettがこれにコメントしていることで、哲学者なのにすげー実験の知見を勉強している。
デネットのコメント、ざっと読んだが、要はホムンクルス/カルテジアン劇場批判で、カエルは単純な視覚運動変換しか持っていないのでZombieに見える。ヒトと脳はそんなには違っていないのだから、ヒトにホムンクルスがあるように思わせるのは脳ではなくてその行動なのだ、みたいな話か。(正確には、カエルの話だけに終始してる。) なんかカエルとprimateでの脳の可塑性の違いとかいろいろ突っ込みたいところはあるが、また読み返してみることにしてみよう。
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- / 投稿日: 2012年10月04日
- / カテゴリー: [上丘、FEFと眼球運動] [視覚的意識 (visual awareness)]
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