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■ 上丘についていろいろ(3) motion energy周辺

一年くらい前にツイートしたことを再編集して掲載。


なんでblindsightでmotion刺激が有効なのかをちゃんと考えるとどうもわからない。MotionはLGN->MTでもよいように思う。上丘のomni-directionalなニューロンからPulv経由でMTの応答ができているとは考えにくい。

IBROでトークの後のWurtzを捕まえて(みんな粘って質問してた)話を聞いてみた。Wurtzが言ってたのは、Pulvから記録して、MT刺激でantidromicが出るやつ(MT->Pulvの入力があるやつ)は方向選択性があって、アンチがないやつは選択性がない。

これはBerman 2008のfig.4になっている。Wurtzはsaccadic suppressionについてはSC->Pulv->MTを強調しているので歯切れ悪そうにしてたけど、これだと方向の情報はMT->Pulvと来てそうだ。

あと、盲視との関連に関しては、SC->LGN->MTの可能性もあるよと言ってた。これはSchmid論文にも書いてあることだけれども(Wurtzが言い出したことかもしれない)、前の日に聞いたEd Callawayのトーク(Neuron論文)でtrans-synaptic labelを使った仕事では、MT<-Pulv<-SGS(layer3b)はあるけれども、MT<-LGN<-SGS(layer3a)はないという話を聞いたばかりだったので、その話をしたらWurtzは意外そうにしていた。このへんは論文に書く必要が出てきた。


でもって、そういう目でもうすこしmotion processingについて勉強してみようと思ったらまた広大な領域が開けてしまって途方に暮れる。つまり、Adelson and Bergenみたいなmotion energyによる説明とdisplacementとをちゃんと分けないといけない。あと1st order, 2nd orderとか、phi motionとreversed-phiとかいろいろ重要な知見がある。(このへんの論文読んでると西田さんの名前が頻出する。)

盲視のGY氏はmotion刺激は定位や検出はできるが、方向弁別の能力はそれと比べると著しく低い(Azzopardi 2000)。つまり、上丘のomnidirectional cellっぽい。

reversed-phiに関してはneurophysiologyだと、AlbrightのJNP2005がMTの応答を記録してる。Rodmanの仕事で、上丘を抑制してもMTの応答は抑制されないってのはあるので、SC->Pulv->MTがmotionの情報そのものは持っていない。

Wurtzのストーリーは、SGIのsaccadeコマンドがSGSに戻ってきて、それがPulv->MTときて、MT/MSTで見られるsaccadic suppressionを作っているというもの。SGI->SGSの流れに関しては伊佐研のMeeさんのJNS&PNASを援用している。だから、motionの情報そのものを持っている必要はない。

いま混乱しているところ。いろいろパーツを並べてみる。motion energy vs. displacementと同様な話なんだろうと思うのだけれども、Vision research 2000 Brown & He (PDF)とか。

あー、わからねえ、Reichardt Detectorみたいな時間遅れつき差分計算と、motion energyモデルみたいなspatiotemporal filterでやってることは等価か?というかMarr的な意味で説明のレベルが違うという理解でよいのか?

@ykamit ありがとうございます。Adelson and Bergen (1985)を読んでみたら、fig.18でこの議論がなされていて、Reichardt Detectorのうちのあるバージョンでは等価になるとのことでした。

@ykamit ありがとうございます。そもそもわたしはReichardt Detectorがもっと単純な足し算だと誤解してたので(dendriteへの入力のイメージ)、神谷さんの指摘で道が開けました。


Reversed-phiがmotion energyで説明できるってのはGeorge Matherのサイトを見て納得した。子どもたちもこれ見ておもしろがってる。さらにtwo-stroke versionというのがシンプルかつ効果的で驚く。こちらもmotion-energyで説明できるらしい:"A motion-energy model predicts the direction discrimination and MAE duration of two-stroke apparent motion at high and low retinal illuminance" (PDF)

やっと思い出した。つまり、スタート地点はなんだったかというとPaul AzzopardiのPNAS2011で、盲視のGY氏にmotion illusionを見せたら、feature-basedが消えてmotion energyに応答した。

だからじつはretinotectalでmotion energyやってるかもよ、っていうけっこう衝撃的な主張なのだけれども、共著のHoward S. Hockという人が使っているこのillusionの説明がさっぱりわからないので難儀していたのだった。

supplementaryもなければ、著者のサイトにもなにも置いてない。勘弁してほしい。JoVとかだとwebにquicktimeとか貼ってあったりしていろいろと捗る。


Current Biology論文にも出したように、盲視でもsaliencyは使えるのだけれども、それをひっくり返して、盲視ではsaliencyしか使えない、という作業仮説を立てている。たとえば、色パッチ(灰色背景での等輝度の赤)の定位はできるけれども、色パッチの弁別(等輝度、等saturationの赤と緑)はできない。

そうすると、motionでも同じようなことが期待できる。motion刺激のcontent(方向)はわからないけれども、motion刺激の定位はできる。つまり、saliency mapでピークができるようなものは処理できる。そうして調べていたらぶつかったのが、Li and SperlingのNature 1995で、saliency-basedなapparent motionというのがあって、これが3rd orderで、あと1st, 2nd orderがあるというもの。わっけわからん。


George Matherのサイトにmatlabコード付きでmotion energy modelの解説があった。これで勝つる。

Ittiのsaliency modelでのmotion channelはこのmotion energy modelを使っている。つまり前後のframeの値を使う。ではIttiのbayesian surpriseのほうはどうか。基本的におんなじdetectorを使っているはずなので時間差分のさらに差分を取るようなことをしていることになって具合が悪いはずだ。本人に聞いてもそんなにformalな解説が期待できないので(というか私が理解できない)、いつかコードを読むべきか。


Azzopardi PNAS2011の刺激を理解した。というか刺激そのものが図に書いてあった。あまりに単純すぎて誤解してた。長方形が伸び縮みするだけだった。伸びる方向に動いているように見える。しかし、伸びる部分の輝度を反転させると、motion energy的には逆向きに動く。

そしてGY氏の損傷視野でだけ、この刺激が逆向きに動いているように見える。だいたいわかった。


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