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■ 上丘と周辺視

リモートカメラだと頭がある程度動いていいとはいっても、30度とか動いたらもうデータが取れなくなる。複数のカメラを横に並べてやれば、広い画面の探索に対応できる。そういうのはコマーシャルレベルでは見ないが、研究レベルではググると出てくる。生理学出来ない環境のにネタのストックにしとく。

モニターの中を見ているくらいの狭い探索はマカクやチンプにとってはたぶんそんなにエコロジカルには重要でなさそう。上丘のマップを考えてみても、頭と目を動かして広い範囲を探索するのに最適化されているだろう。

上丘のマップの話を補足すると、JD Crawfordの一連の仕事 (たとえばNature Neurosci 2001) があって、上丘の眼球運動のベクターをコードしているのではなくて、網膜のどの位置に目を動かすかをコードしている。上丘のベクターマップでは偏心度の大きいところは非常に小さいけどこれは端的に60degとか大きいサッカードは普通はしなくて、頭を動かしてorientするからで、頭+目=網膜の位置の変位で考えると、大きな角度変化も上丘でコードしていることがわかっている。

Fovea付近の視覚の詳細な分析というのはたぶん大脳皮質の機能なので、saliency mapに基づいた視覚探索における上丘の役割ということを考えると、fovea中心主義は大脳皮質の機能を前提とした視覚科学の流儀をそのまま安直に使っているのではないかという恐れもある。

そういう点から考えると、色とか方位とかによるsaliencyってのはほとんど中心視野でしか使えてなくて、周辺視野で使っているsaliencyってのはmotionかflicker (onset, offset)くらいに単純化されるだろう。

つまり、staticなsaliency (frameごとにpixel間の関係だけで計算できる)はほとんど中心視野用で、dynamicなsaliency (luminanceやらいろんなものでdefineされた時空間的なエッジ)だけが周辺視野で使える。

たぶん心理物理でこういう研究はされているのだろうけど、motion saliencyが使えるとして、それは輝度、色、orientationみたいにいろんな属性でdefineされるわけで、周辺視でどのくらいのものが使えるかとかそのへんを抑えておく。

周辺視では赤背景の中を動く等輝度の緑丸とかの弁別能がどのくらい悪いかとかはvision researchの昔の論文とか探せば出てきそう。

そういう目で見るとこれとか面白い。 Peripheral vision: Good for biological motion, bad for signal noise segregation? 周辺視はバイオロジカルモーションが使える。

つまり、周辺視は皮質下のシステムが使えて、荒い空間解像度で早い時間応答でバイオロジカルモーション検出したり、affective blindsightみたいに感情の識別が出来たりする、なんて話になったら面白い。根拠がそんなにあるわけでもないけど。

前述の論文は渡邊克巳さんの論文 [Vision Res. 2005] の結果にたいする反論でもあって、ノイズに埋もれている場合は周辺視ではバイオロジカルモーションは使えない。

[Neuropsychologia. 2009] これを見ると、STSのbiological motionに関わる領域とEBA(extrastriate body area)はぜんぜん離れてる。うーむ、まだよくわからないな。


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