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■ 大学院講義「注意と意識」やります

ひさびさに大学院の講義の担当が回ってきました。「認知と行動の脳科学」というシリーズの中の一回分(3/26)、二時間を「注意と意識」というテーマで担当します。生理学研究所というところは総合研究大学院大学・生命科学研究科・生理科学専攻の担当もしておりまして、私もそこの助教を兼任して総研大の学生さんの面倒を見たりとかしてるわけです。今回の担当は前回の大学院講義「記憶の脳内機構」以来のことです。ちなみにそのときの準備の様子は当ブログのスレッド大学院講義「記憶の脳内機構」にあります。それを見ていただければ、その2時間のためにどれだけ労力をかけたかわかっていただけると思うのですけど。

さて、今回ですが、いまどきだったら講義を撮影しておいて、オープンコースウェアとして公開できるようにしたらいいんじゃん?とか、そうでなくてもYouTubeにチャネルを作ってそこに挙げとくとかすりゃいいんじゃん?とかいろいろアイデアはあるんですけど、とにかく時間がない。このあいだちょろっと書きましたけど、こんどの4-6月はLaurent Itti@USCのところに短期滞在することになりましたので、それまでにいろいろ片付けないといけない。

というわけで本格的な準備は3月に入ったらすることとして、ざっくりとした構想だけメモっておきます:

  • 前回の講義の時のように、ヒト患者の症例から始めるというのがいいように思う。「記憶」にしろ「意識」にしろ「注意」にしろ、そういった認知的な概念を天下り的に定義してしまうというのはそれらの概念の実体化という意味でよくない。事実は逆であって、症例や現象を体系的に説明する概念として「注意」や「意識」という概念が作られ、こんどは操作的に定義して(priorによるselectionへの影響とかね)それに関連した脳活動を見つける、というのが現在までの脳科学で行われてきたことであるということを説明してみたい。(歴史的には前後が錯綜していてじっさいにはそうはなっていないのだけれど)
  • ただしプレゼンとしては、「意識」や「注意」が定義されずに話を進めるというのは聞く側にとってのloadが高いので正しいやり方ではない。「日常的には何を指しているか」という意味での定義をした上で、謎解きのように進めていって、ある程度納得のいく、クリヤーな操作的定義にまで持ってゆく、というストーリー作りができるとよい。
  • 一方で、「意識とは何か」「注意とは何か」みたいなやり方をするとドツボにはまる。概念は他の概念と分節されてはじめて一つの概念として意味のあるものになる。だから両者を対比するように扱うとたぶんうまくいく。「意識は注意とくらべて何が違うか? 注意は意識とくらべて何が違うか?」たぶんこの場面ではKoch and Tsuchiyaの"Attention and Consciousness: two distinct brain processes" (参考レジメ)を活用して、「どういうときに注意と意識が同じになり、乖離するのか」について説明するのがよい。
  • 前半は患者の症例と精神物理学、後半はfMRI、電気生理、rTMSというかんじでしょうか。関連する仕事はいくらでもあるので、いろいろ詰め込むというよりは、それなりにクリヤーになるように説明する方向を目指したい。生理学者として、本当はいろいろややこしいんですよと言いたくなるところをぐっと押さえて。
  • ただし、最後の最後でそういったクリヤーな構図を全部ぶっ壊して終わらす、というのがパフォーマティブな意味で私らしく、コンスタティブにも誠実であるという意味でいいのではないかと思う。それを講義のオチとうまく組み合わせることができると最高なのだけれど。(ハードル高すぎwwww)
  • これは完全に自分へのリマインダだけど、以上をぜんぶ英語でやらないといけない。そうとうかみ砕かないとみんな脱落するので、とにかく論旨をクリヤーにする。枝分かれを作らず、ほぼ一本道にして、しかし途中聞き飛ばしてもキャッチアップできるようにする。たぶんいちばん労力をかけるべきなのはここ。
  • Twtterでのフジイさんのこれを見て、「よし、俺がやっちゃる」と一瞬思ってから、わたしには無理だと思い直して、気負わずに準備する。
  • 今度こそ講義録は作っておきたい。出張講義のお呼びがかかるように。
  • やっぱり精神物理のデモンストレーションは面白いので、binocular rivalry, flash supression, motion-induced blindnessあたりはデフォで入れる。例の赤青メガネを注文しておく必要があるな。ちなみにASCONE07のときは少人数だったから自腹切ったけど。(以前はこちらで買った:STEREOeYe ショップ。一枚80円。こっちのフィルム型だと50枚注文して3500円。このぐらいならいいか。) Change blindness (アハ体験な)、attentional blink (ゴリラのあれ)とかも楽しいし。こんなことやってたらそれだけで話が終わってしまう。まあそういうんでもいいとは思う。いま我々がどういうツールを持っているのかってことの概説になるでしょう。英語での授業となると、なんかとにかくいろんなillusionを使って脳を調べるというのがこれまでの主流らしい、ってぐらいの伝わり方で十分かもしれない。(<-手抜くな)

ちなみに前回の「記憶」の時にはそれなりにネタを仕込んでオチを付けることができたので気に入ってる。ただ、ちょっとパーソナルなネタだったので、講義録を作るときに入れるか入れまいか思案してたら、けっきょく講義録を作らずじまい。(<-ぜったい言い訳) つーかいまそのときのスレッド読んでみたけど、ぜんぜん憶えてないし。

そんなかんじで。いまはそれよかルスツの冬のワークショップに間に合うように解析を加速中。んじゃーね。(<-なぜかちきりん風)


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