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■ BEATLESS (長谷敏司)についてメモ

(20230921) 長谷敏司のBEATLESSはハヤカワ文庫の原作とアニメを並行して読み進めていて、いま21話まで来た。原作は2012年、アニメ化は2018年だけど、「アナログハック」というテーマはChatGPTがある今、現実味が出てきてすごく面白くなってる。 長谷敏司氏のブログ記事: 「アナログハックの時代が、そろそろ始まりそうだ」

超高度AI《ヒギンズ》が最初に設計した(そして爆破された)のが《イライザ》、というところで「ピグマリオン」「マイ・フェア・レディ」から名前を取っているということに気づかないといけないの、俺にはムリ〜

それはそれとして、主人公の「遠藤アラト」の「アラト」って「新しい人」なんだろうなあと想像した。

ネットで見つけたコメント (ソースはこちらのコメ65 を補完):

「なんというかレイシア級は製造目的からすると、最初からあえて不完全にできていて、人間と一体運用されて初めて製造目的を達成できる様になってる節がある。
  • 戦略組めない人との戦いに勝つ道具 (紅霞)
  • 新しい物を生み出せない進化の委託先としての道具 (スノウドロップ)
  • 自分から積極的に動けない環境を整える道具 (マリアージュ)
  • 行動が行き当たりばったりな人間を拡張する道具 (メトーデ)
  • ってポンコツだらけやん」

    これはなるほどと思った。レイシアはアラトと組むことでこの物語の結末を生み出した。でも別の人と組むことによって、レイシアは「邪悪な謀略を繰り出す政治マシーン」となるIFもあったのだろう。

    逆にたとえば、スノウドロップが人間と組むことによって人間が進化するIFもあったのかもしれない。(とはいえ、そもそもスノウドロップに人間と組む動機がなかったけど。)

    そのようにヒギンズは「娘たち」を設計し、最後に設計されたレイシアが人間と組むことで破滅を避ける可能性を生み出したが、それでもギリギリ運任せだった、と読める。


    (20231029) 「BEATLESS」長谷敏司 (文庫版)を読了した。4月に購入してからアニメ版と並行して読んでいたが、やっと終了。アニメ版はモノローグがないので、アラトが状況に振り回されているようにしか見えないところも多々あるのだけど、文庫版の方でだいぶ補完できた。

    アラトはチョロいと言われつつも、自分の結論にたどり着くところは(宇野常寛的な意味での)決断主義ではなく、「ビジョンを持てるかどうか」の違いとして描写されていたと思う。

    いろいろ考察はできるけどそれは置いといて、印象深いシーンを思い出すと、始終冷静なレイシアよりは紅霞やメトーデのほうを思い出す。メトーデの悲痛な「信じて、信じて」が胸に来る。(「心に茨を持つ少年」のようだ。) むしろ紅霞やメトーデのほうが人間臭い行動をしていた。


    (20240317) 「redjuice × 長谷敏司対談」 さいきんBEATLESSを読んだ私には面白い記事だった。

    redboxってのは、BEATLESS内での造語で、AIが作り上げた人類未到産物のこと。AIの進歩を人間が必死に追いかけていることを赤方転移(遠ざかっている天体から来る光が赤い方向にずれる)になぞらえてredboxと読んでいる。もし人間が追いかけるのを諦めたらそれはblack boxとなるということを含意している。

    BEATLESSは2012年の作品だけど、いまのAIの状況を踏まえて読むことでより実感を持って読める。アニメも小説もおすすめ。


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