« Science Anosognosia(疾病否認)論文 | 最新のページに戻る | 論文いろいろ »
■ 自分で自分をくすぐる話
いととんぼさんのコメントに関連してSarah-Jayne Blakemoreの仕事をメモしておきます。
Nature neuroscience '98 "Central cancellation of self-produced tickle sensation"
自分で自分をくすぐるとくすぐったくないのは自分でくすぐる動作の指令を出したときにそれがfeedforward的シグナルを作って体性感覚野の活動をキャンセルするからだ、という仮説の元でhuman fMRIをやってみたら、くすぐりをキャンセルできたときには小脳が活動しているのがわかった、というもの。実際には自分でくすぐる条件の中で、くすぐりの指令からくすぐりマシーンの実際の動作までの間に時間的遅延が起こるようにすることで、くすぐったい状況とくすぐったくない状況を作って比較する、ということをやっています。
というわけで、こういう自分の動作をモニターするときの回路にはおそらく小脳を介したものと頭頂葉とを介したものとがあるわけだけど、Experimental Brain Research '03にてBlakemoreはAngela Siriguとともにレビューを書いてます:
"Action prediction in the cerebellum and in the parietal lobe" あくまで「自分の動作をモニターするときの回路にはおそらく小脳を介したものと頭頂葉とを介したものとがある」ということの問題提起であって、明確な機能的違いについてはspeculativeなものとあると断ったうえで、こんなふうに書いてます:
These studies suggest that the cerebellum makes rapid predictions about the sensory consequences of self-generated movement at a very low level of movement execution, presumably without awareness. In contrast, the parietal cortex predictive functions have been addressed using tasks tapping the most cognitive aspects of movement. It is possible that the prediction made by the cerebellum is unavailable to awareness, whereas the prediction made by the parietal lobe is concerned more with highlevel prediction such as strategic planning actions. Perhaps the predictions made by the parietal cortex can be made available to conscious awareness.
小脳の方は意識が関与しない予測で、頭頂葉の方は意識が関与する動作予測である、というわけです。
さらにConsciousness and Cognition '03 "Deluding the motor system"では、より明確にというかより大胆にというか、小脳は"predicting the sensory consequences of movement"に関わっていて、頭頂葉の方は「自他の区別」を含むような‘self-monitoring’ mechanismに関わっている、としています。
- / ツイートする
- / 投稿日: 2005年07月23日
- / カテゴリー: [内部モデル、遠心性コピー、アフォーダンス]
- / Edit(管理者用)
# いととんぼ
Nature Neuroscienceに論文が出ていることは知っていましたが、あとの2つは知りませんでした。情報をありがとうございます。話変わりますが、子供と花火をしたり、くすぐりあったりする合間に研究する(もしくは逆でもいいけど)というのは、人生の中で至福の時期のひとつと思います。充分にご堪能ください。